クリスマス休暇の最終日、シンタローが着替えを終えてダイニングに下りていくと、懐かしい匂いがした。柑橘系の冴え冴えとした匂いが自己主張する背後で、ほのかに鶏と根菜類が混じる。幼い頃、父親がつくってくれた正月料理のそれだった。
驚き半分、期待半分でキッチンをのぞき込むと、しかし目に入ったのは父親のものではない金髪の後ろ姿だ。いぶかしさに眉を寄せたちょうどそのとき、男が振り返って、目があった。青い瞳と向かい合うこと半瞬、先に口を開いたのは、相手の方だった。
「明けましておめでとうございます。――早かったな。いまちょうどお前を起こしに行こうと思っていたところだ。グンマはコタローのところへ顔を出している」
「これ、作ったのはおまえか?」
半ば相手の言葉を無視するように、シンタローは疑問を投げかけた。鍋の方を振り返って、キンタローはそれが指示語の対象物であると確認すると、静かに首を横に振った。
「作ったのは伯父貴だ。部屋になにか取りに行くあいだ、餅を見ていろと言われた」
言われた視線の先では、数個の丸餅が七輪にかぶせた網の上で転がっている。キンタローが器用に菜箸でころりと転がすと、ほどよく色づき張りのでた表面が見えた。
「箸、使えるようになったのか」
「グンマに教えてもらってな。慣れればフォークやトングよりこっちの方が扱いやすいものだな」
「そう、か…」
キンタローが「誕生」して島に渡り、ここに帰ってきて何ヶ月も経っていない。にも関わらず、キンタローの物覚えは早かった。
もとより自分のなかで様々なことを見聞きし、思考の下地ができていたこともあるのだろうが、砂地が水を吸い込むように知識を吸収している。シンタローが数ヶ月忙しくしていた間に、西欧式のマナーから軍事知識、一般常識はあらかた頭に入ったとは聞いていたが、このぶんでは日本の伝統的なしきたりまで理解しているに違いない。
有能すぎる従兄弟兼未来の右腕の姿にひっそりとため息をつき、シンタローはダイニングテーブルに着いた。卓の上には一瞬ここがどこだか忘れさせるような、純和風の食器が用意されていた。
普段使いのカトラリー類はどこかへしまわれ、代わりに袋に入れられた柳箸と屠蘇用の杯が並べられている。おそらく中身のぎっしり詰まっているであろう重箱も、ダイニングテーブルの端の方に見えた。これで雑煮が用意できれば、足りぬものとてないだろう。
「なあ、親父はなに取りに行ったんだ?」
いぶかしく思うままに疑問を言葉に乗せれば、キンタローは少し躊躇った様子で言いよどんだ。知っているのか、ともう一歩踏み込んで聞けば、キンタローは困った顔をしてみせる。
「言うなと言われた」
不満げな顔なのは、それ以上の追求をされたくないからなのだろうか。だが、そうして隠されると知りたくなるのが人というものだ。
「黙っててやるから、言ってみろ。ほら」
しつこく突っついてやれば、キンタローは仕方なさそうにため息をついて、肩をすくめた。どうやら諦めたようだった。
「ちょっと待っていろ」
言い置いて、七輪の上の餅を皿にうつし、椅子に座ったシンタローの方に近づいてくる。そして、まるで極秘事項であるかのように、耳打ちした。お年玉だ――と。
シンタローは一瞬だけ自分の耳を疑い、それから生まれたてと言っても過言ではない従兄弟の思考回路を疑った。お年玉なんて、子供のもらうものだ。いい年をした自分たちがもらうことがあり得るのだろうか。
そこまで考えて、シンタローは疑いの矛先を変えた。普通なら考えられないとしても、あの父親なら話は別だ。楽しそうなイベントなら、子供の年齢なんか考えないのがあの男だ。
「せっかく正月準備を頑張ったのに、肝心のものを用意し忘れた、大失態だ、と慌てていたな」
いちど吐いてしまえば後はどうでも良くなったのか、キンタローは補足するように言葉を紡いだ。
やはりか。シンタローは一瞬のめまいを覚え、瞑目した。
「あの馬鹿親父、いいかげんに子供扱いはやめろって言うのによォ…」
「しかし、日本の伝統なのだろう? 目上の者が目下の者に金銭を与えるというのは昨今になって変化した風習だが、かつては祭神に供えた餅を祭神の代理たる一族の長が一族のものに分け与えることによって、その加護を得てその年を健康に過ごすことができるよう祈念するという習慣だったはずだ。ならば成年であろうと未成年であろうとかまうことはないだろう」
どこからそのようなデータをインプットされたのか、小難しいことを言いながら小首をかしげる従兄弟の姿に、シンタローは反論する気力を失ってしまった。
それでも、せめてもの抵抗とばかりに「この年で親父からのお年玉って、ふざけやがって…」と呟いて肩を落とすと、キンタローが不思議そうな声を上げた。
「どうしてそんなにこだわるんだ、シンタロー」
「別にこだわる理由なんかねェよ」
ただ、成人して何年も経つのに子供扱いされるのがなんとなく許せないだけだ。そう反論しようとする前に肩をつかまれ、なかば無理矢理振り向かされた。
目の前には、至近距離にキンタローの瞳。一瞬どきりとして、気を取られた隙に顎を取られて口づけられた。と気がついたのは、キンタローの唇が離れてからのことだった。あまりの衝撃にぽかんと口を開けたままでいると、キンタローは少し口の端をつり上げた。
下心のようなものを持ち合わせているわけではないのだろうが、してやったりといわんばかりの表情に見えて、腹立たしさがこみ上げた。
「てめェ、何しやがる!」
「お年玉だ。伯父貴以外からなら問題ないんだろう?」
「なにがお年玉だ! だいたい、お前は0歳児じゃねぇェか!」
心外だといわんばかりに、キンタローは呆れた顔でシンタローを見た。
「忘れたか? 肉体年齢だけでいえば、俺はお前より6歳年上だ。お前があの島で乗っ取ったジャンの身体は、まだ18歳だったのだからな」
至極当然とでも言いたげな口調で数ヶ月前の奇妙な体験を指摘され、シンタローは一瞬だけ怒りに我を忘れそうになった。
「うるせえ、年下のくせに!」
子供扱いなんかされたくない、という言葉は、「ならば」という声を耳にした直後、キンタローの唇に飲み込まれた。
わずかに開けてしまった唇から無理矢理入り込むように口内に舌が進入してくる。あまりの唐突さに、とっさに抵抗することも忘れてされるがままになっていると、遠慮のかけらすらなく口内をまさぐられる。
「ちょ、ん……っ、んっ…」
ふだん触れる体表よりも高い体温が生々しい。上顎を舌先で撫でられると、くすぐったいような切ないような気持ちになってくるが、視界に映るのは金髪の己の半身の姿だ。それを意識すると、いたたまれない。なにより、グンマや父親がいつ戻ってくるか分からないというのに、こんな姿を見せられるはずがない。
嫌だという感情一種類だけが、頭の中を支配した。残された力のありったけを振り絞り、両肩を掴み。
「も、やめろ、って……っ!」
言うと同時に渾身の力で両腕を突き放した。両手の長さの分だけ離れた男を、シンタローは遠慮なく怒鳴りつけた。
「てめッ! いきなり、なに、しやがるッツ!」
怒りで乱れてしまった声の先で、キンタローはふだん通りの顔で立っている。ぶつけた怒りと押しのけた衝撃のぶんだけダメージを受けているはずだが、そんなそぶりさえなく平然としているのが、さらに腹立たしさを煽った。
「お年玉、だ」
「だからお年玉ってのは!」
「年長者が年少者に与えるもの、なのだろう」
まるで言いたい言葉を予測していたかのように、返ってくる解説。しかし、分かっているのではないかと言おうとした矢先に、思わぬ言葉がシンタローの耳に飛び込んだ。
「だから、お前は年下の俺からお年玉を貰うのは許せない。だが年下の俺がお年玉を貰う分には――お前の理屈からすれば、問題はないはずだ」
訳の分からない理屈が、まるで当たり前であるかのように口から飛び出してきて、シンタローは絶句するしかなかった。いったいこんな三段論法のような論理の暴走を許してきたのは誰だ。
考えられるのは、この男のやることなすことをすべて賞賛しそうなマッドサイエンティストか、いつまでも頭の中にお花畑が広がっていそうな暢気な従兄弟か、父性愛という言葉を大きく勘違いしているスキンシップ過剰の父親のいずれかだ。
怒りの代わりに沸々と疲労感がわき上がり始めるのを感じる。シンタローは己の中に残った冷静さをすべてかき集めて、聞いた。お年玉の概念は知っているくせに、お前はどうしてこんな行動に出たのか、と。
「0歳児にふさわしいものといえば金銭よりも菓子か何かなのだろうが、甘いものといったら他に見あたらなかった。キスは甘いものだ、と聞いていたからな。――もっとも、あまり甘いとは思わなかったが」
自称する年齢とは裏腹に、返答の言葉は0歳児にはふさわしくない出来だった。
シンタローはあの島が己の堪忍袋の緒を存外丈夫にしてくれていたのだということを、なによりも実感していた。昔だったら、この時点でこの部屋は影も形もなかっただろう。キンタローに対する怒りよりも、たった数ヶ月でこの男に妙なことを教え込んだ人間に対して。
どうやってこの男の思考回路を正してやろう。こんな行為は誰とでもするべきものじゃないと教え込んでやるのが先か、それとも、こんな馬鹿なことを吹き込んだ人間を聞き出すのが先か。
シンタローの動作が止まったのを不審に思ったか、きょとんとした表情でキンタローが首をかしげる。シンタローは黙ってその金色の髪を優しく撫でてやった。0歳児にしてやるように。
そして、決心したのだった。こいつは絶対に、俺がまともに教育をし直してやる――と。
驚き半分、期待半分でキッチンをのぞき込むと、しかし目に入ったのは父親のものではない金髪の後ろ姿だ。いぶかしさに眉を寄せたちょうどそのとき、男が振り返って、目があった。青い瞳と向かい合うこと半瞬、先に口を開いたのは、相手の方だった。
「明けましておめでとうございます。――早かったな。いまちょうどお前を起こしに行こうと思っていたところだ。グンマはコタローのところへ顔を出している」
「これ、作ったのはおまえか?」
半ば相手の言葉を無視するように、シンタローは疑問を投げかけた。鍋の方を振り返って、キンタローはそれが指示語の対象物であると確認すると、静かに首を横に振った。
「作ったのは伯父貴だ。部屋になにか取りに行くあいだ、餅を見ていろと言われた」
言われた視線の先では、数個の丸餅が七輪にかぶせた網の上で転がっている。キンタローが器用に菜箸でころりと転がすと、ほどよく色づき張りのでた表面が見えた。
「箸、使えるようになったのか」
「グンマに教えてもらってな。慣れればフォークやトングよりこっちの方が扱いやすいものだな」
「そう、か…」
キンタローが「誕生」して島に渡り、ここに帰ってきて何ヶ月も経っていない。にも関わらず、キンタローの物覚えは早かった。
もとより自分のなかで様々なことを見聞きし、思考の下地ができていたこともあるのだろうが、砂地が水を吸い込むように知識を吸収している。シンタローが数ヶ月忙しくしていた間に、西欧式のマナーから軍事知識、一般常識はあらかた頭に入ったとは聞いていたが、このぶんでは日本の伝統的なしきたりまで理解しているに違いない。
有能すぎる従兄弟兼未来の右腕の姿にひっそりとため息をつき、シンタローはダイニングテーブルに着いた。卓の上には一瞬ここがどこだか忘れさせるような、純和風の食器が用意されていた。
普段使いのカトラリー類はどこかへしまわれ、代わりに袋に入れられた柳箸と屠蘇用の杯が並べられている。おそらく中身のぎっしり詰まっているであろう重箱も、ダイニングテーブルの端の方に見えた。これで雑煮が用意できれば、足りぬものとてないだろう。
「なあ、親父はなに取りに行ったんだ?」
いぶかしく思うままに疑問を言葉に乗せれば、キンタローは少し躊躇った様子で言いよどんだ。知っているのか、ともう一歩踏み込んで聞けば、キンタローは困った顔をしてみせる。
「言うなと言われた」
不満げな顔なのは、それ以上の追求をされたくないからなのだろうか。だが、そうして隠されると知りたくなるのが人というものだ。
「黙っててやるから、言ってみろ。ほら」
しつこく突っついてやれば、キンタローは仕方なさそうにため息をついて、肩をすくめた。どうやら諦めたようだった。
「ちょっと待っていろ」
言い置いて、七輪の上の餅を皿にうつし、椅子に座ったシンタローの方に近づいてくる。そして、まるで極秘事項であるかのように、耳打ちした。お年玉だ――と。
シンタローは一瞬だけ自分の耳を疑い、それから生まれたてと言っても過言ではない従兄弟の思考回路を疑った。お年玉なんて、子供のもらうものだ。いい年をした自分たちがもらうことがあり得るのだろうか。
そこまで考えて、シンタローは疑いの矛先を変えた。普通なら考えられないとしても、あの父親なら話は別だ。楽しそうなイベントなら、子供の年齢なんか考えないのがあの男だ。
「せっかく正月準備を頑張ったのに、肝心のものを用意し忘れた、大失態だ、と慌てていたな」
いちど吐いてしまえば後はどうでも良くなったのか、キンタローは補足するように言葉を紡いだ。
やはりか。シンタローは一瞬のめまいを覚え、瞑目した。
「あの馬鹿親父、いいかげんに子供扱いはやめろって言うのによォ…」
「しかし、日本の伝統なのだろう? 目上の者が目下の者に金銭を与えるというのは昨今になって変化した風習だが、かつては祭神に供えた餅を祭神の代理たる一族の長が一族のものに分け与えることによって、その加護を得てその年を健康に過ごすことができるよう祈念するという習慣だったはずだ。ならば成年であろうと未成年であろうとかまうことはないだろう」
どこからそのようなデータをインプットされたのか、小難しいことを言いながら小首をかしげる従兄弟の姿に、シンタローは反論する気力を失ってしまった。
それでも、せめてもの抵抗とばかりに「この年で親父からのお年玉って、ふざけやがって…」と呟いて肩を落とすと、キンタローが不思議そうな声を上げた。
「どうしてそんなにこだわるんだ、シンタロー」
「別にこだわる理由なんかねェよ」
ただ、成人して何年も経つのに子供扱いされるのがなんとなく許せないだけだ。そう反論しようとする前に肩をつかまれ、なかば無理矢理振り向かされた。
目の前には、至近距離にキンタローの瞳。一瞬どきりとして、気を取られた隙に顎を取られて口づけられた。と気がついたのは、キンタローの唇が離れてからのことだった。あまりの衝撃にぽかんと口を開けたままでいると、キンタローは少し口の端をつり上げた。
下心のようなものを持ち合わせているわけではないのだろうが、してやったりといわんばかりの表情に見えて、腹立たしさがこみ上げた。
「てめェ、何しやがる!」
「お年玉だ。伯父貴以外からなら問題ないんだろう?」
「なにがお年玉だ! だいたい、お前は0歳児じゃねぇェか!」
心外だといわんばかりに、キンタローは呆れた顔でシンタローを見た。
「忘れたか? 肉体年齢だけでいえば、俺はお前より6歳年上だ。お前があの島で乗っ取ったジャンの身体は、まだ18歳だったのだからな」
至極当然とでも言いたげな口調で数ヶ月前の奇妙な体験を指摘され、シンタローは一瞬だけ怒りに我を忘れそうになった。
「うるせえ、年下のくせに!」
子供扱いなんかされたくない、という言葉は、「ならば」という声を耳にした直後、キンタローの唇に飲み込まれた。
わずかに開けてしまった唇から無理矢理入り込むように口内に舌が進入してくる。あまりの唐突さに、とっさに抵抗することも忘れてされるがままになっていると、遠慮のかけらすらなく口内をまさぐられる。
「ちょ、ん……っ、んっ…」
ふだん触れる体表よりも高い体温が生々しい。上顎を舌先で撫でられると、くすぐったいような切ないような気持ちになってくるが、視界に映るのは金髪の己の半身の姿だ。それを意識すると、いたたまれない。なにより、グンマや父親がいつ戻ってくるか分からないというのに、こんな姿を見せられるはずがない。
嫌だという感情一種類だけが、頭の中を支配した。残された力のありったけを振り絞り、両肩を掴み。
「も、やめろ、って……っ!」
言うと同時に渾身の力で両腕を突き放した。両手の長さの分だけ離れた男を、シンタローは遠慮なく怒鳴りつけた。
「てめッ! いきなり、なに、しやがるッツ!」
怒りで乱れてしまった声の先で、キンタローはふだん通りの顔で立っている。ぶつけた怒りと押しのけた衝撃のぶんだけダメージを受けているはずだが、そんなそぶりさえなく平然としているのが、さらに腹立たしさを煽った。
「お年玉、だ」
「だからお年玉ってのは!」
「年長者が年少者に与えるもの、なのだろう」
まるで言いたい言葉を予測していたかのように、返ってくる解説。しかし、分かっているのではないかと言おうとした矢先に、思わぬ言葉がシンタローの耳に飛び込んだ。
「だから、お前は年下の俺からお年玉を貰うのは許せない。だが年下の俺がお年玉を貰う分には――お前の理屈からすれば、問題はないはずだ」
訳の分からない理屈が、まるで当たり前であるかのように口から飛び出してきて、シンタローは絶句するしかなかった。いったいこんな三段論法のような論理の暴走を許してきたのは誰だ。
考えられるのは、この男のやることなすことをすべて賞賛しそうなマッドサイエンティストか、いつまでも頭の中にお花畑が広がっていそうな暢気な従兄弟か、父性愛という言葉を大きく勘違いしているスキンシップ過剰の父親のいずれかだ。
怒りの代わりに沸々と疲労感がわき上がり始めるのを感じる。シンタローは己の中に残った冷静さをすべてかき集めて、聞いた。お年玉の概念は知っているくせに、お前はどうしてこんな行動に出たのか、と。
「0歳児にふさわしいものといえば金銭よりも菓子か何かなのだろうが、甘いものといったら他に見あたらなかった。キスは甘いものだ、と聞いていたからな。――もっとも、あまり甘いとは思わなかったが」
自称する年齢とは裏腹に、返答の言葉は0歳児にはふさわしくない出来だった。
シンタローはあの島が己の堪忍袋の緒を存外丈夫にしてくれていたのだということを、なによりも実感していた。昔だったら、この時点でこの部屋は影も形もなかっただろう。キンタローに対する怒りよりも、たった数ヶ月でこの男に妙なことを教え込んだ人間に対して。
どうやってこの男の思考回路を正してやろう。こんな行為は誰とでもするべきものじゃないと教え込んでやるのが先か、それとも、こんな馬鹿なことを吹き込んだ人間を聞き出すのが先か。
シンタローの動作が止まったのを不審に思ったか、きょとんとした表情でキンタローが首をかしげる。シンタローは黙ってその金色の髪を優しく撫でてやった。0歳児にしてやるように。
そして、決心したのだった。こいつは絶対に、俺がまともに教育をし直してやる――と。
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