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sks
この従兄弟は器用だが不器用だ

ついさっき俺にタイの結び方を教えたのはこの目の前に居る従兄弟だ。
なのに今その従兄弟は自分のタイを結べずに首をかしげている。
俺はしげしげと従兄弟を見詰める。
他人のタイは結べるのに、自分のタイは結べないというのもおかしな話だ。
「っかしーな…」
ぶつぶつと呟きながらシンタローはネクタイを弄っている。
普段、シンタローはネクタイを結ぶ事は無い。
真紅の総帥服のシャツは胸元が開いていてネクタイを結ぶような形にはなっていないし、
シンタローは私服にかなりラフなものを好んで着ているからだ。
そして総帥服を着用出来ないような公式の席は大概において正装が必要な夜会やパーティで、
その場合は当然タキシードを着用する事になる。
考えてみれば、シンタローがスーツを着る機会はそうそう無いのだ。
だから、結び慣れていないといってしまえばそれまでなのかもしれない。
だが、シンタローは先程実に器用に俺のネクタイを結んで見せたのだ。
どうして自分のタイだと結べないのか。
不思議でならない。
俺はシンタローのタイに手を伸ばした。
シンタローの襟元の歪な形になった結び目に指を差し入れて手前に引くと
結び目はいとも簡単に緩んだ。
ほどけたネクタイにシンタローが眉を寄せる。
「貸してみろ」
俺が言うとほんの少し不本意そうな顔を見せたものの
シンタローは諦めたように大人しく、タイから手を離した。
他人のタイを結ぶのは初めてだが、
シンタローが先程俺のタイを結んだ手順を思い出す。
上質の絹で誂われたタイは布地同士が触れ合うたびにシュッと小気味のいい音を立てた。
「こうか?」
多少ぎこちなくではあるが結ぶ事が出来た。
シンタローが襟元を見る。
多少緩みがあるが、形はきちんと出来ている。
シンタローは感心したように瞬いた。
「初めてにしちゃ上出来だ」
言って俺の肩を軽く叩く。
「お前ホンッとーに器用だな」
苦笑しつつシンタローは俺の結んだタイをしめる。
軽く襟元を調節すれば、全く問題がなく形が整う。
俺はシンタローが先程結んだ自分のタイを解いて、もう一度今度は自分で結びなおす。
自分のタイを結ぶ分には絞める加減もわかって他人のものを結ぶよりやはり容易い。
「自分のものを結ぶ方が簡単に思えるんだが」
お前は器用なのか不器用なのか分からないな
思ったまま口にすれば
俺の言葉にシンタローはわざとらしくしかめっ面をして見せる。

「手の掛かる身内が多いからな」

答えになっているような、なっていないような
そんなシンタローの呟きに俺は軽く肩をすくめた。
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