今日はパパと一緒にお買い物に行った。
お店ですれ違う人たちにじろじろ見られて恥ずかしかった。
確かに世界一かわいい美少年と、やたらデカいおっさんが歩いてたら見たくもなるよね。
『美しさは罪。』美貌のおじさまに教えられたことを思い出す。
Dad, give me a dream day.
晩ごはん用の食材を買い終えた後のこと。
「何か欲しいものはある?」
「欲しいもの? 世界とか?」
「それはシンちゃんに止められたから無理だよ。まったく、お前は本当にパパ似だね」
「そこでため息をつかないでよ。こっちだって好きでパパに似たわけじゃないよ。とにかく、何なら買ってくれるのさ」
「うーん…無難にお菓子とか?」
「わかった。じゃあ選んでくるよ」
「別にお菓子とかじゃなくてもいいのに…シンちゃんに似て無欲な子だねぇ」
「これがいい」
「……………………………………………………………」
「無意味に長い沈黙はやめてよね、パパ」
「あ、ああ、ごめんね。ちょっとフラッシュバックしてたものだから」
パパは僕の手の中にあるお菓子の箱をまじまじと見つめた。
変なものを選んだつもりはないけどなあ。
「M&Mを箱ごと持ってくるなんて豪快な子だね。昔ハーレムも同じことをしていたよ。コタローに敬意を表してパパ似は撤回して、ハーレム似にしてあげよう」
「そんなわけのわからない敬意はいらないよ。パパに似てる方が幾分かマシに思えるからパパ似でいいよ」
「節々に引っかかるところがあったけど、まあいいよ。お菓子はみんなで分けなさいね」
「えぇぇぇえ!? 僕のなのに! 僕が買ってもらったのに!」
「だめー。グンちゃんやキンちゃんとわけっこしなさい。みんなで食べると、もっとおいしいから、ね?」
老人がウィンクしたってかわいくないよ。
そういうのは、僕みたいな美少年がやってこそ、サマになるんだから。
「…はぁ~い」
しぶしぶ返事をすると、いいこいいこと頭をなでられた。
「もう、子ども扱いしないでよ」
「お前はまだ子供じゃない。ほら、おうちに帰るよ」
荷物は二つ。両方ともパパが持った。
だから、パパの両手には、何かが入り込む隙間はないわけで。
言いたかったことも、言えなくなってしまう。
「片方は僕が持つ」
「そう? …じゃあ、こっちを持って」
僕のお菓子が入った袋。他にネギとかが入っている。箱ごと買ったM&Mががさがさと音を立てていた。
早くおうちに帰ってわけっこしよう。
「はい」
すっ、と差し出された手。
「手、つないで帰ろう」
それは僕が言いたかったこと。
言い出せなかったこと。
この人にはわかっているのだろうか。僕がしてほしいこと、したいこと。
全部、お見通しなのかもしれない。
だってさ。どんなに否定したって僕はまだ子供だから。守ってくれる手がほしい。
「…ん」
ひんやりとした手は、ごつごつとして大きかった。
「コタローの手はあったかいねぇ」
熱さと冷たさが混じりあい、その部分が溶けていくような感じがする。
パパと僕の、境界線が消えていく。
「パパの手が冷たすぎるんだよ」
右手にはビニール袋。左手にはパパの大きな手。パパの右手は僕が占領した。今だけは僕のもの。
今だけは、お兄ちゃんのことを忘れてよ。
「シンちゃんともこんな風に歩いたっけなぁ。20年近く前だよ」
やっぱりパパは、お兄ちゃんのことが大好きなんだ。
僕と二人でいる時でさえ、お兄ちゃんの話題ばかり。
パパの頭の中はお兄ちゃんでいっぱい。
僕のことだけを考えてはくれないの?
「だけどシンちゃんはやんちゃだったから、すぐに私の手を振り解いて、どこかへ行ってしまうんだ」
夕日に照らされたパパの顔は、少し寂しそうだった。
「でもお前は違うね。こうして私の手を握っていてくれる」
ほら、とつないだ手を揺らす。
「ありがとう」
お前は私から逃げないでいてくれる。
あの子と違ってお前は私に真っ向から立ち向かってきて、力の限り抗う。
「お前だけが、本当の私を見ているのかもしれないね」
秋の風が僕達の間を駆け抜けた。
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vsマジックならシンタローは逃げ、コタローは立ち向かっていくと思うのです。
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