サンタクロース(シンタロー・キンタロー・グンマ)
ふんふんふ~ん♪ふんふんふ~ん♪ふんふんふ~んふふ~ん♪
満面の笑顔で鼻歌を口ずさみ、スキップしながら総帥室へ向かう。
グンマは朝からご機嫌だった。
「シンちゃ~ん、ちょっと良い~?」
「返事を聞く前にずかずかと入って来てるじゃねぇか。」
「えへへ~。ごめ~ん」
セリフとはうらはらに、少しも悪びれない様子のグンマだが、
シンタローにとってもグンマにとっても、それは普段の風景。
「見て見て~!すごいでしょう!!みんなのぶんを用意したんだよ~!」
そう言って両手に持っている特大ファンシー靴下の数々をシンタローに見せる。
「この靴下にね~サンタさんからお菓子をい~~~っぱい入れてもらうんだ!」
「サンタは良い子にしかプレゼントはくれね~んだぜ。」
「うん!ぼく良い子だよ!」そう答えるグンマに「あっそ」と気のない相槌。
「僕、シンちゃんは「お前はまだサンタを信じてるのか」って言うと思ったよ。
だって子供の時はシンちゃん僕にそう言ってたよね?」
「ああ、ガキの頃はそう思ってたんだけどよ、サンタは本当にいるんだぜ。
なんてったって俺が本物に会ったんだからよ。信じないわけにはいかないだろ?」
「ええ!?本当!?いつ!?どこで会ったの!?僕も会いたい!!」
「どこって、それはパプ・・・」シンタローは言いかけた言葉を飲み込んだ。
気まずい沈黙が訪れる。その沈黙を最初に破ったのはシンタローだった。
「サンタサンタって騒ぐ前に、コタローの誕生日を忘れるわけにはいかねー。」
「うん、そうだよね。」そこでとめておけば良かったとグンマは後悔した。
でも、何かを・・・誰かのことを思い出しているシンタローを見ると
どうしても言葉を続けずにはいられなかった。
「・・・でも誕生日はコタローちゃんだけじゃないんだよね?」と。
再び訪れる沈黙。そして今度その沈黙を破ったのはグンマだった。
「あ、そ~だ!僕もう研究室に戻らないと!じゃあね~シンちゃん。」
来た時と同様にシンタローの答えを聞く前に総帥室を後にする。
研究室に戻ってくるとキンタローがいた。
俯き加減のグンマを見ると眉間に軽くシワを寄せ心配顔で近付いてきた。
「どうした?シンタローに何か言われたのか?」
「違うよ、キンちゃん。シンちゃんは悪くないんだよ。
それに何か言われたんじゃなくて、シンちゃんは何も言わないんだ。」
黙ってグンマの話を聞くキンタローが視線で続きを即す。
「シンちゃんはね、パプワ島の話をしようとしないんだ。
シンちゃんの中でいろいろ思うこともあるからなんだろうけど・・・
それだけじゃないんだ。僕のせいだよ。僕が悪いんだ。」
少しの沈黙のあと、グンマは話を続けた。
「パプワ島の話を聞くと、あの島でいきいきしていたシンちゃんを思い出すんだ。
それを思い出すと、またシンちゃんがどこか遠くへ行ってしまう気がして怖くなる。
今度は二度と戻ってこなくなるんじゃないかと凄く不安になってしまうんだ。
・・・だから、パプワ島の話は嫌い。
パプワ島の話を笑顔で聞きたい。シンちゃんが望むなら、シンちゃんが幸せなら
どこに行くと言っても笑顔で送り出したい。心からそう思う。
でも・・・。シンちゃんが望まなくても、もしも不幸になったとしても
「総帥」という立場に縛られていてほしい。もうどこにも行かないでほしい。
ずっと僕達のそばにいてほしい。心からそう願う僕もいる。
シンちゃんは僕がパプワ島の話をされるのが嫌だと知っているんだ。
だから僕の前であの島の話をしないようにしてる。気遣ってくれてるんだね。
僕はそれを知っているのに・・・笑顔にはなれないんだ。
・・・本当は、そんな自分が一番嫌い。」
「俺とシンタローのことも嫌いか?」
そこまで黙って聞いていたキンタローが突然口を開いた。
グンマは一瞬とまどってしまったものの慌てて答えた。
「そんなことないよ!!大好きだよ!!」
「俺もシンタローもグンマのことが大好きだ。
だからグンマもグンマが大好きな俺とシンタローが
大好きだと思っているグンマを大好きになってほしい。」
「キンちゃん・・・・。ありがとう。キンちゃんにも気遣ってもらっちゃったね。
僕、なんだか急に元気が出てきちゃった!!キンちゃん、本当にありがとう!!」
「俺は今グンマの役に立ったのか?」
「もちろんだよ!!キンちゃんのおかげで元気が沸いてきたんだよ!!」
「そうか。俺はグンマやシンタローの力になれているのかとずっと考えていた。
力になれていないのではと考えると苦しくなる。これが不安というやつなのか。」
眉間のシワをより深く刻みながら考え込むキンタロー。
グンマから見てキンタローは強く、落ち着いて余裕があるように見える。
そんなキンタローでも不安なことがあり、それと闘っている。
そしてシンタローを支え、自分を思い遣ってくれている。
もしかしたらシンタローだって、今何か不安なことがあるかもしれない。
それでも立ち止まらずに進み続けている。
自分だけが置いてけぼりにされているようで焦る気持ちにかられて
周りを見る余裕もない自分のことをグンマは悔いていた。
「本当は僕もわかってはいるんだ。このままじゃ駄目だってこと。
もっとシンちゃんやキンちゃんに頼ってもらえるようになりたい。
シンちゃんに甘えてばかりいないで、僕も強くなる!
皆が安心して笑顔でいられるように、僕は強くなるよ!!」
「俺も負けてはいられないな。」
「僕だって負けないよ~!それに・・・
良い子じゃないとサンタさんからプレゼントをもらえないもんね。」
「サンタ?サンタとは伝説上の老人であるサンタクロースのことか?」
「そうだよ!でも伝説上じゃなくて本当にいるんだよ!!
だってシンちゃんは本物に会ったことがあるって、さっき言ってたもん!」
「なっ・・なんだと!?事実上の人物ならば俺も聞きたいことがある。
プレゼントを選ぶ経緯や資金、良い子悪い子の判別方法や
赤い鼻のトナカイやソリをどのような原理で飛行させているのか
煙突のない家への進入経路・・・・・」
「じゃあさ~!!今度僕と一緒にシンちゃんに詳しく聞きに行こうよ!」
1人でブツブツと言い続けるキンタローの言葉を遮る形となったが
キンタローもさほど気にせずに「そうだな」と嬉しそうに微笑んだ。
キンちゃんがいてくれるから僕は前を向ける。
シンちゃんがいてくれるから僕は強くなれる。
この時、グンマは自分のことが好きになれた気がした。
ふんふんふ~ん♪ふんふんふ~ん♪ふんふんふ~んふふ~ん♪
満面の笑顔で鼻歌を口ずさみ、スキップしながら総帥室へ向かう。
グンマは朝からご機嫌だった。
「シンちゃ~ん、ちょっと良い~?」
「返事を聞く前にずかずかと入って来てるじゃねぇか。」
「えへへ~。ごめ~ん」
セリフとはうらはらに、少しも悪びれない様子のグンマだが、
シンタローにとってもグンマにとっても、それは普段の風景。
「見て見て~!すごいでしょう!!みんなのぶんを用意したんだよ~!」
そう言って両手に持っている特大ファンシー靴下の数々をシンタローに見せる。
「この靴下にね~サンタさんからお菓子をい~~~っぱい入れてもらうんだ!」
「サンタは良い子にしかプレゼントはくれね~んだぜ。」
「うん!ぼく良い子だよ!」そう答えるグンマに「あっそ」と気のない相槌。
「僕、シンちゃんは「お前はまだサンタを信じてるのか」って言うと思ったよ。
だって子供の時はシンちゃん僕にそう言ってたよね?」
「ああ、ガキの頃はそう思ってたんだけどよ、サンタは本当にいるんだぜ。
なんてったって俺が本物に会ったんだからよ。信じないわけにはいかないだろ?」
「ええ!?本当!?いつ!?どこで会ったの!?僕も会いたい!!」
「どこって、それはパプ・・・」シンタローは言いかけた言葉を飲み込んだ。
気まずい沈黙が訪れる。その沈黙を最初に破ったのはシンタローだった。
「サンタサンタって騒ぐ前に、コタローの誕生日を忘れるわけにはいかねー。」
「うん、そうだよね。」そこでとめておけば良かったとグンマは後悔した。
でも、何かを・・・誰かのことを思い出しているシンタローを見ると
どうしても言葉を続けずにはいられなかった。
「・・・でも誕生日はコタローちゃんだけじゃないんだよね?」と。
再び訪れる沈黙。そして今度その沈黙を破ったのはグンマだった。
「あ、そ~だ!僕もう研究室に戻らないと!じゃあね~シンちゃん。」
来た時と同様にシンタローの答えを聞く前に総帥室を後にする。
研究室に戻ってくるとキンタローがいた。
俯き加減のグンマを見ると眉間に軽くシワを寄せ心配顔で近付いてきた。
「どうした?シンタローに何か言われたのか?」
「違うよ、キンちゃん。シンちゃんは悪くないんだよ。
それに何か言われたんじゃなくて、シンちゃんは何も言わないんだ。」
黙ってグンマの話を聞くキンタローが視線で続きを即す。
「シンちゃんはね、パプワ島の話をしようとしないんだ。
シンちゃんの中でいろいろ思うこともあるからなんだろうけど・・・
それだけじゃないんだ。僕のせいだよ。僕が悪いんだ。」
少しの沈黙のあと、グンマは話を続けた。
「パプワ島の話を聞くと、あの島でいきいきしていたシンちゃんを思い出すんだ。
それを思い出すと、またシンちゃんがどこか遠くへ行ってしまう気がして怖くなる。
今度は二度と戻ってこなくなるんじゃないかと凄く不安になってしまうんだ。
・・・だから、パプワ島の話は嫌い。
パプワ島の話を笑顔で聞きたい。シンちゃんが望むなら、シンちゃんが幸せなら
どこに行くと言っても笑顔で送り出したい。心からそう思う。
でも・・・。シンちゃんが望まなくても、もしも不幸になったとしても
「総帥」という立場に縛られていてほしい。もうどこにも行かないでほしい。
ずっと僕達のそばにいてほしい。心からそう願う僕もいる。
シンちゃんは僕がパプワ島の話をされるのが嫌だと知っているんだ。
だから僕の前であの島の話をしないようにしてる。気遣ってくれてるんだね。
僕はそれを知っているのに・・・笑顔にはなれないんだ。
・・・本当は、そんな自分が一番嫌い。」
「俺とシンタローのことも嫌いか?」
そこまで黙って聞いていたキンタローが突然口を開いた。
グンマは一瞬とまどってしまったものの慌てて答えた。
「そんなことないよ!!大好きだよ!!」
「俺もシンタローもグンマのことが大好きだ。
だからグンマもグンマが大好きな俺とシンタローが
大好きだと思っているグンマを大好きになってほしい。」
「キンちゃん・・・・。ありがとう。キンちゃんにも気遣ってもらっちゃったね。
僕、なんだか急に元気が出てきちゃった!!キンちゃん、本当にありがとう!!」
「俺は今グンマの役に立ったのか?」
「もちろんだよ!!キンちゃんのおかげで元気が沸いてきたんだよ!!」
「そうか。俺はグンマやシンタローの力になれているのかとずっと考えていた。
力になれていないのではと考えると苦しくなる。これが不安というやつなのか。」
眉間のシワをより深く刻みながら考え込むキンタロー。
グンマから見てキンタローは強く、落ち着いて余裕があるように見える。
そんなキンタローでも不安なことがあり、それと闘っている。
そしてシンタローを支え、自分を思い遣ってくれている。
もしかしたらシンタローだって、今何か不安なことがあるかもしれない。
それでも立ち止まらずに進み続けている。
自分だけが置いてけぼりにされているようで焦る気持ちにかられて
周りを見る余裕もない自分のことをグンマは悔いていた。
「本当は僕もわかってはいるんだ。このままじゃ駄目だってこと。
もっとシンちゃんやキンちゃんに頼ってもらえるようになりたい。
シンちゃんに甘えてばかりいないで、僕も強くなる!
皆が安心して笑顔でいられるように、僕は強くなるよ!!」
「俺も負けてはいられないな。」
「僕だって負けないよ~!それに・・・
良い子じゃないとサンタさんからプレゼントをもらえないもんね。」
「サンタ?サンタとは伝説上の老人であるサンタクロースのことか?」
「そうだよ!でも伝説上じゃなくて本当にいるんだよ!!
だってシンちゃんは本物に会ったことがあるって、さっき言ってたもん!」
「なっ・・なんだと!?事実上の人物ならば俺も聞きたいことがある。
プレゼントを選ぶ経緯や資金、良い子悪い子の判別方法や
赤い鼻のトナカイやソリをどのような原理で飛行させているのか
煙突のない家への進入経路・・・・・」
「じゃあさ~!!今度僕と一緒にシンちゃんに詳しく聞きに行こうよ!」
1人でブツブツと言い続けるキンタローの言葉を遮る形となったが
キンタローもさほど気にせずに「そうだな」と嬉しそうに微笑んだ。
キンちゃんがいてくれるから僕は前を向ける。
シンちゃんがいてくれるから僕は強くなれる。
この時、グンマは自分のことが好きになれた気がした。
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