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作・斯波




最も多く愛する者は
常に敗者であり
常に悩まねばならぬ



LOVE LOVE LOVE



午後十一時。
風呂から上がり、ミネラルウォーターのボトルを開ける。
シンタローはまだ帰ってこない。

午前零時。
携帯電話を開いても、着信は入っていない。メールも無し。
「あいつ・・いつまで飲んでいるつもりだ」


―――今日は伊達衆と飲みに行くから。
―――・・・そうか。
―――先寝てていいぜ、遅くなると思うし。

きっと忘れているのだろうな。
昨日ベッドの中で、明日の夜はおまえの好物を作ってやると笑って約束してくれたことなんて。


午前零時半。
俺は溜息をついて立ち上がった。
「・・そろそろ寝るか」
相手はもういい年齢をした大人だし、束縛を最も嫌うタイプだ。
心配しても仕方がない、と思う自分に苦笑いした。
(心配してる訳じゃないくせによく言う)

俺は嫉妬している。
そして腹立たしくも思っているのだ―――その笑顔を、太陽のように誰にでも惜しみなく振りまく恋人のことを。


どう考えても惚れているのは俺の方で。
どう考えても振り回されているのは俺の方で。
待っているのも俺。
愛していると言うのも俺。
喧嘩して謝るのもいつも俺。


シンタロー。
おまえはちゃんと俺のことを愛してくれているか・・・?


午前一時。
俺の部屋の扉が乱暴に叩かれた。
ベッドに向かおうとしていた俺は足を止めて振り返った。
「―――シンタロー!?」
急いで扉を開けると、泥酔したシンタローを支えて立っていたのは陰気で根暗なガンマ団の№2だった。
「アラシヤマ・・・」
「遅うなってすんまへんどしたな」
「あ、いや・・他の連中は?」
「ミヤギとトットリが喧嘩してコージはんが仲裁中。ほな後、よろしゅう」
「おい、アラシヤマ」
性格も口も悪いが無駄に酒の強い№2はひょいと肩をすくめた。
「もう堪りまへんわ、惚気ばっかり聞かされて」
「―――え?」
「酔ってもうてからはシンタローはん、ずーっとあんさんの話どすえ。もう帰ります言うてもあかん、上司命令やいうて引き留められて、ええ迷惑どす」
「・・・」
「今夜は師匠と約束してたのに。―――帰ったら絶対燃やされるわ」
「それは・・済まなかったな」
つい謝ってしまってから、何で俺が謝らねばならんのだとはたと気づく。
「俺様総帥は明日も朝から仕事やで。ちゃんと起こしてや」
「おまえに言われなくてもちゃんとそうする」
「あっそ」
「手間をかけたな、もう帰れ」
「用が済んだら厄払いかい。―――ああ、キンタロー」
「何だ、早く帰れと言っているだろう」
微妙に視線をずらしたまま、根暗な殺し屋がふっと微笑う。

「あんさん、愛されてますなあ。―――」


午前一時半。
酒と煙草の匂いをさせて幸せそうに眠っているシンタローの唇にそっとキスをした。
―――何も心配することなんかなかった。
おまえはいつでも側にいるんだから。
俺の所に、ちゃんと帰ってくるんだから。

「・・・愛してる、シンタロー」


そして翌日、俺たちは見事に二人揃って遅刻したのだった。



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マカアラ前提のアラシヤマは意外に協力的。
心友のためですから。
そんな相手にも「根暗」呼ばわりを忘れないキンちゃんです。

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