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作・斯波

言いたいことがたくさんある
言葉にならないほど
言えないこともたくさんある
涙がにじむほど



BLUE ON BLUE



おまえの眼は、海のようだな。
そう言ってくれるおまえに出会うまで、俺はずっと闇の中にいたんだ。

「シンタロー」
低い声に名前を呼ばれて振り返る。部屋の中央に佇むおまえは、夕陽を浴びてちょっと眩しそうにこっちを見ていた。
金色の髪に夕陽が映えて、まるで本物の黄金のように綺麗だった。
俺は音もしない絨毯を踏んでおまえに近づいた。燃えているような髪に指を差し入れて梳いてみる。おまえは怪訝そうに眼を細めた。
「どうした?」
「綺麗な髪だな。―――」
俺の一族は皆金髪に碧眼だ。
だがそれぞれ少しずつその色は違う。薄かったり濃かったり、並んで立っているとその差はよく分かる。その中でもこの男のは本物の金糸を織り込んだような濃い蜂蜜色だった。
「眼も、綺麗だ。サファイアを溶かしたらきっとこんな色になるだろうぜ」

透き通るような金色の髪も、深い湖のような青い瞳も。
決して俺には与えられなかったもの。
否応なしに自分の異端を見せつける、この黒髪と黒い瞳が俺はずっと嫌いだった。


「そうか?」
逆光に顔をしかめておまえは少しだけ笑った。俺の隣を擦り抜けてカーテンを引く。
遮光の厚いカーテンが光を閉ざすと、途端に部屋の中は薄暗い夜に変わった。
「俺はおまえの髪の色の方が好きだな。艶々して、鴉の濡れ羽色だ」
「慰めてくれてんのか?」
「馬鹿な」
二十四年間同じ身体を共有してきたのに、今のおまえの手は俺のより大きい。
長い指に包まれた頬がかっと熱くなるのが自分でも分かった。
だが咄嗟に引いた俺の身体をその手は離そうとせず、逆に俺は広い胸の中に抱きこまれる形になってしまった。
「俺はこの黒い髪が好きだ。黒い瞳が好きだ。おまえの瞳を見ていると、俺はいつも夜明け前の海を見ているような気持ちになる」
「・・・・」
「そのまま深い海の底まで引きずりこまれても構わない―――そう思うんだ」
俺を凝視める大きな眼は深く澄んで、おまえの眼こそ海のようだと俺は思った。
昔テレビで見たことのある、氷河から続いているあの北の海みたいだ。
ああ―――そうだな。
俺だってその海に溺れるんなら、沈んで凍ってしまっても平気だぜ。

近づいたおまえの唇を、目を見開いたまま受け止めた。

顔を離したおまえは、困ったように眉を寄せた。
「・・・眼を開けたままキスする奴があるか」
「だっておまえの眼、見てたかったから」
「近すぎて見えないだろう」
人間の眼は、いいか人間の視機能というものはだな、と講釈を始めたおまえの顔を引き寄せて、もう一度キスをする。
驚いたように見開いたおまえの眼の中にあったのは、哀しいくらい綺麗な青い海だった。


「―――シンタロー」
離した唇から洩れた声は、かすかに掠れていた。
「俺を挑発しているのか?」
苛立ったような口調に、俺は喉の奥でくくっと笑った。
「気づくのが遅えよ」
歯列を割り、柔らかな舌が入ってくる。わずかにコーヒーの味がするそれに舌を絡めて、俺はやっと眼を閉じた。

人は生まれたときに二つに裂かれる。
だから一生かけてその半身を探し求めるのだと、昔俺にそう言ったのは意外にロマンチストな叔父のハーレムだった。
―――その相手を見つけるまでは俺もおめえも半人前ってこった。
笑いながら言われた言葉を、今なら俺は完全に理解出来ると思う。

(俺の、失われた半身)
次第に激しくなる口づけに、心ばかりでなく身体までが熱くなる。
(こんなのは、おまえだけだ)
キスするのも、抱かれてもいいと思うのも。
その海になら足を取られて沈んでしまっても本望だとさえ信じられるのも。

切羽詰まった声が耳許で俺の名を呼ぶ。
眼を上げて、端整なその顔を見つめた。
「好きだ、キンタロー。―――」

もがけばもがくほど、おまえに溺れてゆく。
(俺にはおまえしか)

もうきっと、離れられない。


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天然なキンちゃんを見ると可愛すぎて、
グンマさんあたりに突っ込んで欲しいところなのですが、
でもやっぱり紳士は格好良いのだと信じております。

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