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ks
何処か遠くで鐘が鳴り始めた。
百八つの煩悩を落とすという、除夜の鐘が。



素顔のままで



「何を考えてる?」
さらりと髪を梳かれ、シンタローは視線を隣の男に移した。
「・・・去年の今頃何してたかなって」
「今みたいにおまえとベッドの中にいたぞ」
「・・・一昨年は?」
「同じようにこうしてベッドの中に」
「んで今年もかよ! 全く除夜の鐘もテメーには何の効き目もねェな!!」
だが有能な補佐官で親愛なる従兄弟でもある恋人は不敵に眼だけで微笑した。
「煩悩を落とす鐘か。―――成程、俺には関わりなど無さそうだ」
そのほうがいいか、と囁かれて思わず眼を閉じる。


聖人君子のようになった俺の方がいいか?
おまえを求めることもせず、おまえを泣かせることもせず。
この手もこの指もこの唇も、もうおまえに触れることはない。
そんな俺の方がおまえはいいというのか?



耳朶に吹き込まれる熱い声は強い魔力を帯びていて、それだけでシンタローは大きく呼吸を乱してキンタローの広い胸にしがみついた。
大きな手はむしろ赤ん坊をあやす母のような優しさで長い黒髪を撫でているだけなのに、その温もりがシンタローの全身を震わせては宥め、そしてぐずぐずに溶かしてゆく。
「大丈夫か?」
からかうような声が気に障って金色の頭をばしっと叩いてやった。
「今ので脳細胞が五億は死んだぞ。脳細胞は再生しないんだ。いいか人の脳というのは」
「うるせェ、二度言うな!」
もう一度殴ろうとした手首をがしっと掴まれ、視界がふわっと反転した。
「答えをまだ聞いていないぞ、シンタロー」
深く澄んだ青い秘石眼に真上から覗きこまれる。
「おまえがそのつもりなら、泣いて縋って答えるまで虐めてやる」


有言実行の男の物騒な宣言に思わず身体が竦みあがる。
降伏するのは癪だがここは致し方ない。


「・・・今のままのオマエでいい。―――」


途端ににこりと浮かんだ子供のような笑みに思わず微笑を返し、今年もまた同じ年越しになることを覚悟してシンタローは瞳を閉じたのだった。

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