おうちでねこをかうときは
あめもむちもやくにたちません
ねこのきがむくまで
しんぼうづよくまちましょう
COME ON, MY SWEET
俺の部屋には時々猫がやってくる。
偉そうで、我が儘で、勝手な黒猫。
「こっちにおいで」
ちょっちょっ、と呼んでも見向きもしない。
美味しいご飯を作っても、ふかふかの寝床を用意しても、まるで知らんぷりを決め込んでいる。
俺は肩を落として溜息をつく。
まあ、とっくの昔に諦めてるんだ。
だって猫の気を変えさせることなんて神様だって出来やしないだろう?
暫くその猫のことなど忘れた振りをして本を読んでいると、猫はちょっとずつ近づいてくる。
視界の隅にちらちら動く黒い影をなるべく見ないように、俺は視線を逸らしている。
猫は漸くその気になったのか、俺の足に甘えるように身体を擦りつけてきた。
だが肝心なのはここからだ。
すぐにその漆黒の背中を撫でたりしてはいけない。
苛々した猫にフーッと唸られて、嫌というほど引っ掻かれる羽目になる。
足の間をぐるぐる回る猫を、そうだな―――五分くらいだろうか、放っておく。
そうすると猫は痺れを切らしたように俺の膝に脚をかける。
そして甘えた声で一声鳴くのだ。
―――全くだらしがないことだが、その声に俺は至って弱い。
「・・・おまえは我が儘過ぎるぞ」
抱き上げると猫は真っ黒な瞳で俺を凝視めて可愛らしく首を傾げる。
「そんな顔をしても駄目だ」
そっと俺の頬に触れる前足には鋭い爪を隠しているくせに。
大人しく抱かれていたかと思えばその一瞬後には、俺の胸から飛び出していってしまうくせに。
そう―――猫という生き物と共に暮らすには、無限の忍耐が必要だ。
(それでも俺はおまえに夢中だから)
少しは手加減してくれないか、シンタロー。
あめもむちもやくにたちません
ねこのきがむくまで
しんぼうづよくまちましょう
COME ON, MY SWEET
俺の部屋には時々猫がやってくる。
偉そうで、我が儘で、勝手な黒猫。
「こっちにおいで」
ちょっちょっ、と呼んでも見向きもしない。
美味しいご飯を作っても、ふかふかの寝床を用意しても、まるで知らんぷりを決め込んでいる。
俺は肩を落として溜息をつく。
まあ、とっくの昔に諦めてるんだ。
だって猫の気を変えさせることなんて神様だって出来やしないだろう?
暫くその猫のことなど忘れた振りをして本を読んでいると、猫はちょっとずつ近づいてくる。
視界の隅にちらちら動く黒い影をなるべく見ないように、俺は視線を逸らしている。
猫は漸くその気になったのか、俺の足に甘えるように身体を擦りつけてきた。
だが肝心なのはここからだ。
すぐにその漆黒の背中を撫でたりしてはいけない。
苛々した猫にフーッと唸られて、嫌というほど引っ掻かれる羽目になる。
足の間をぐるぐる回る猫を、そうだな―――五分くらいだろうか、放っておく。
そうすると猫は痺れを切らしたように俺の膝に脚をかける。
そして甘えた声で一声鳴くのだ。
―――全くだらしがないことだが、その声に俺は至って弱い。
「・・・おまえは我が儘過ぎるぞ」
抱き上げると猫は真っ黒な瞳で俺を凝視めて可愛らしく首を傾げる。
「そんな顔をしても駄目だ」
そっと俺の頬に触れる前足には鋭い爪を隠しているくせに。
大人しく抱かれていたかと思えばその一瞬後には、俺の胸から飛び出していってしまうくせに。
そう―――猫という生き物と共に暮らすには、無限の忍耐が必要だ。
(それでも俺はおまえに夢中だから)
少しは手加減してくれないか、シンタロー。
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