しらゆきひめ
「白雪姫は、かわいそうね」
僕はシンちゃんと絵本を広げている。
雪がふっている。おにわで小さな雪だるまを作って、そのあと雪がっせんをした。僕はとちゅうで泣いてしまって、シンちゃんはおこったようなこまったような顔で「泣くな」といった。
「ほら、グンマ、行くぞ」
シンちゃんの手をぎゅってにぎったら、なみだがとまった。
きがえてお昼ごはんのあとは、たかまつに「中にいてください」って言われて、絵本のじかん。
シンちゃんは「赤ちゃんみたいだ」ってぶつぶつ言ってたけど、たまにはいいよね。
たかまつがもってきてくれた絵本は、白雪姫だった。
お母さまがいなくなった白雪姫がかわいそうで、僕はため息をつく。
それに、あたらしいお母さまはまじょなんだ。とってもこわい。
「ハーレムおじさんは、サービスおじさんのことまじょっていってる」
「でもサービスおじさまはこわくないよ」
「こわくないね」
「ふしぎだね」
雪がふるお外はしずかだ。絵本をめくる音だけがきこえる。
おきさきさまになったお母さまは、自分がせかいでいちばんきれいだと思ってる。
「ずうずうしいね」
絵を見た僕が思わずいったら、シンちゃんがわらって僕をおした。
だってこの絵で見ると、あんまりきれいじゃないもの。
まほうの鏡だってそう思ったみたい。「せかいでいちばんきれいなのはだぁれ」っていわれて、「白雪姫です」っていっちゃった。
「―――このお姫さまって、シンちゃんみたいだね」
しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。
「僕は男の子だからお姫さまじゃないよ」
「うん、でも」
いおうと思ったけどやめた。シンちゃんはすぐおこるから。
なんかいきかれても、「いちばん白雪姫がきれい」っていっちゃう鏡。
めいれいされても、白雪姫をたすけてあげるかりゅうどさん。
ちいさなからだでも、白雪姫をまもろうとがんばる7にんの小人たち。
みんな白雪姫のことが好きなんだ。
とってもこわいことも、こわくなくなるくらいに。
(やっぱりシンちゃんといっしょだよ)
おもっているうちに、シンちゃんは「めでたし、めでたし」までよみおえる。
僕はぽつんといった。
「白雪姫は、かわいそうね」
「かわいそうくないよ」
ちょっとおかしないいかたで、シンちゃんがわらう。
「王子さまとけっこんして、しあわせにくらしたんだよ」
「だって」
たまたまとおりかかっただけの王子さまだよ。
白雪姫がえらんだわけじゃない。
みんな白雪姫のこと好きなのに、みんなそれでよかったの?
僕なら、いやだ。
シンちゃんをほかのだれかにあげるなんて。
「白雪姫は、おもしろかったですか?」
絵本をかえしにいったら、たかまつにきかれた。
僕は少しかんがえていった。
「僕、大きくなったら白雪姫とけっこんする」
「はっ!?」
白雪姫も王子さまのこと好きなら。
僕が王子さまになればいいんだ。
たかまつは「それは少しむずかしいのではないかと…」とぶつぶついっている。
わかってないみたいだけど、おしえたげない。
しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。
みんなが好きになる人。みんなを好きになる人。
だけどだれにもあげない。まほうをかけて、わたさない。
(きっと、せかいでいちばんきれいになるよ)
僕だけの、しらゆきひめ。
「白雪姫は、かわいそうね」
僕はシンちゃんと絵本を広げている。
雪がふっている。おにわで小さな雪だるまを作って、そのあと雪がっせんをした。僕はとちゅうで泣いてしまって、シンちゃんはおこったようなこまったような顔で「泣くな」といった。
「ほら、グンマ、行くぞ」
シンちゃんの手をぎゅってにぎったら、なみだがとまった。
きがえてお昼ごはんのあとは、たかまつに「中にいてください」って言われて、絵本のじかん。
シンちゃんは「赤ちゃんみたいだ」ってぶつぶつ言ってたけど、たまにはいいよね。
たかまつがもってきてくれた絵本は、白雪姫だった。
お母さまがいなくなった白雪姫がかわいそうで、僕はため息をつく。
それに、あたらしいお母さまはまじょなんだ。とってもこわい。
「ハーレムおじさんは、サービスおじさんのことまじょっていってる」
「でもサービスおじさまはこわくないよ」
「こわくないね」
「ふしぎだね」
雪がふるお外はしずかだ。絵本をめくる音だけがきこえる。
おきさきさまになったお母さまは、自分がせかいでいちばんきれいだと思ってる。
「ずうずうしいね」
絵を見た僕が思わずいったら、シンちゃんがわらって僕をおした。
だってこの絵で見ると、あんまりきれいじゃないもの。
まほうの鏡だってそう思ったみたい。「せかいでいちばんきれいなのはだぁれ」っていわれて、「白雪姫です」っていっちゃった。
「―――このお姫さまって、シンちゃんみたいだね」
しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。
「僕は男の子だからお姫さまじゃないよ」
「うん、でも」
いおうと思ったけどやめた。シンちゃんはすぐおこるから。
なんかいきかれても、「いちばん白雪姫がきれい」っていっちゃう鏡。
めいれいされても、白雪姫をたすけてあげるかりゅうどさん。
ちいさなからだでも、白雪姫をまもろうとがんばる7にんの小人たち。
みんな白雪姫のことが好きなんだ。
とってもこわいことも、こわくなくなるくらいに。
(やっぱりシンちゃんといっしょだよ)
おもっているうちに、シンちゃんは「めでたし、めでたし」までよみおえる。
僕はぽつんといった。
「白雪姫は、かわいそうね」
「かわいそうくないよ」
ちょっとおかしないいかたで、シンちゃんがわらう。
「王子さまとけっこんして、しあわせにくらしたんだよ」
「だって」
たまたまとおりかかっただけの王子さまだよ。
白雪姫がえらんだわけじゃない。
みんな白雪姫のこと好きなのに、みんなそれでよかったの?
僕なら、いやだ。
シンちゃんをほかのだれかにあげるなんて。
「白雪姫は、おもしろかったですか?」
絵本をかえしにいったら、たかまつにきかれた。
僕は少しかんがえていった。
「僕、大きくなったら白雪姫とけっこんする」
「はっ!?」
白雪姫も王子さまのこと好きなら。
僕が王子さまになればいいんだ。
たかまつは「それは少しむずかしいのではないかと…」とぶつぶついっている。
わかってないみたいだけど、おしえたげない。
しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。
みんなが好きになる人。みんなを好きになる人。
だけどだれにもあげない。まほうをかけて、わたさない。
(きっと、せかいでいちばんきれいになるよ)
僕だけの、しらゆきひめ。
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