忍者ブログ
* admin *
[1386]  [1385]  [1384]  [1383]  [1382]  [1381]  [1380]  [1379]  [1378]  [1377]  [1376
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  しらゆきひめ

「白雪姫は、かわいそうね」

僕はシンちゃんと絵本を広げている。
雪がふっている。おにわで小さな雪だるまを作って、そのあと雪がっせんをした。僕はとちゅうで泣いてしまって、シンちゃんはおこったようなこまったような顔で「泣くな」といった。
「ほら、グンマ、行くぞ」
シンちゃんの手をぎゅってにぎったら、なみだがとまった。

きがえてお昼ごはんのあとは、たかまつに「中にいてください」って言われて、絵本のじかん。
シンちゃんは「赤ちゃんみたいだ」ってぶつぶつ言ってたけど、たまにはいいよね。
たかまつがもってきてくれた絵本は、白雪姫だった。

お母さまがいなくなった白雪姫がかわいそうで、僕はため息をつく。
それに、あたらしいお母さまはまじょなんだ。とってもこわい。
「ハーレムおじさんは、サービスおじさんのことまじょっていってる」
「でもサービスおじさまはこわくないよ」
「こわくないね」
「ふしぎだね」
雪がふるお外はしずかだ。絵本をめくる音だけがきこえる。
おきさきさまになったお母さまは、自分がせかいでいちばんきれいだと思ってる。
「ずうずうしいね」
絵を見た僕が思わずいったら、シンちゃんがわらって僕をおした。
だってこの絵で見ると、あんまりきれいじゃないもの。
まほうの鏡だってそう思ったみたい。「せかいでいちばんきれいなのはだぁれ」っていわれて、「白雪姫です」っていっちゃった。

「―――このお姫さまって、シンちゃんみたいだね」

しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。

「僕は男の子だからお姫さまじゃないよ」
「うん、でも」
いおうと思ったけどやめた。シンちゃんはすぐおこるから。

なんかいきかれても、「いちばん白雪姫がきれい」っていっちゃう鏡。
めいれいされても、白雪姫をたすけてあげるかりゅうどさん。
ちいさなからだでも、白雪姫をまもろうとがんばる7にんの小人たち。

みんな白雪姫のことが好きなんだ。
とってもこわいことも、こわくなくなるくらいに。

(やっぱりシンちゃんといっしょだよ)

おもっているうちに、シンちゃんは「めでたし、めでたし」までよみおえる。
僕はぽつんといった。

「白雪姫は、かわいそうね」

「かわいそうくないよ」
ちょっとおかしないいかたで、シンちゃんがわらう。
「王子さまとけっこんして、しあわせにくらしたんだよ」
「だって」
たまたまとおりかかっただけの王子さまだよ。
白雪姫がえらんだわけじゃない。
みんな白雪姫のこと好きなのに、みんなそれでよかったの?

僕なら、いやだ。
シンちゃんをほかのだれかにあげるなんて。


「白雪姫は、おもしろかったですか?」
絵本をかえしにいったら、たかまつにきかれた。
僕は少しかんがえていった。
「僕、大きくなったら白雪姫とけっこんする」
「はっ!?」

白雪姫も王子さまのこと好きなら。
僕が王子さまになればいいんだ。

たかまつは「それは少しむずかしいのではないかと…」とぶつぶついっている。
わかってないみたいだけど、おしえたげない。

しろいはだ。
くろいかみ。
あかいくちびる。

みんなが好きになる人。みんなを好きになる人。
だけどだれにもあげない。まほうをかけて、わたさない。
(きっと、せかいでいちばんきれいになるよ)

僕だけの、しらゆきひめ。

PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved