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4年間。一体いつの間に立場が逆転したのやら。赤子のようなゼロの状態から歩き始めた新しい従兄弟は、気付けば口も達者になっていて、今では自分の世話を見るのが仕事とばかりに、見事なお気遣いの紳士然。すっかり可愛げのなくなった従兄弟だが、湧いてしまった情とは恐ろしいモノで、どうも自分は一度絆された相手には弱いらしい。あの子どもに対してもそうだったと思えば、全く進歩がないものだと苦笑するしかない。
ひな鳥のような彼が後を付いて回るのを、弟を構うように面倒を見て、科学者としての成長に感心しきり、学問に留まらない多彩な才能に舌を巻いて、力比べでは競い合い、気付けば彼は自分の片腕として隣に控えるようになっていて、誰かに頼るのを良しとしない自分がいつのまにか彼を頼みにしていて。
4年間という短い期間のあまりの変化に、周りには随分、驚かれたけれど。自分が変わったというよりも、向こうの成長に連れて、相対的に自分の対応が変わっただけで。

ああ、でも。

いつから彼に弱音を晒すようになったのだろう。
彼があんまりにも自分を見透かすから。どんな壁も鎧も無いもののように、簡単に一番脆い部分に触れるから。
嘘偽りのない、心からの言葉だから。

「…敵わねぇよなぁ」

あんまりにも真っ直ぐ、ひたむきに心を寄せるから、向かい合わせにある自分の心まで引きずり寄せられた。
この先の道がどう続くのか。
わかっているのは自分たちがお互いに影響を受けずにはおれないだろうということ。
彼が変われば自分も変わるし、自分が変われば彼も変わるだろう。

「なんだ?」
「いや…」

もう一つには戻れない、相対する二つであるからこそ。
君が一歩、その場所を動くたび。
自分の立つ場所も絶え間なく変わる。
比例グラフのように、0のラインを挟んだ彼方と此方、座標の上をぐるぐる動きながら。
このベクトルはどこへ向かい、どこへ辿り着くだろうか。

「そんなの、決まってるな」

迷うことなんかない。
進む先はひとつだけ。

「行こうぜ」

 

共に肩を並べて、恐れることなく、ただ前へ。

 

 

 




後書き。

ぽっと降って湧いてきた散文。シンちゃん独白。
振り返ってみれば嵐のような激動の4年間でも、中心の彼らは向かい合って或いは背中合わせになって、道のりは隣り合って、一緒に一歩ずつゆっくり歩いてきた二人なんではないかと。

 

 

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