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総帥室の立派な机の上には、小さな飴の瓶がひとつ置いてある。


ちょっとレトロな硝子の瓶に、小さな小さな飴玉が幾つも入っている。
ビー玉のように光を透かせて、目に優しいとりどりの色合いで。


疲れたときには甘いモノ、糖分はすぐに吸収されるから、疲れを自覚したらすぐ摂取した方がと良いと言って、置いていったのは髪を切ったばかりの従兄弟。新しいことを知るのが楽しくて、ひとつ知るたびに、それを自分に教えたくてたまらない。

自分はもう一人の従兄弟のように甘いモノが格別好きなわけではないし、重厚なマホガニーの机の上にこれはどうかと思うのだけれど。真面目な顔で理屈っぽいことを説明しながら、大の男がやたら可愛らしい飴玉の瓶を差し出す姿は妙に微笑ましく、つい拒否の言葉が出てこなくて。
半ば強引に机の上に定位置を定めたその瓶は、中身が減ることもないまま、減らないから結局どこにもやれないでいる。

どうしたものかと、未だに困っているのだけれど。

普段は世話を焼く相手に、背伸びをするように世話を焼かれるのは、少しくすぐったい。
大人しく世話を焼かれる自分に、満足そうに嬉しそうに微笑む珍しい表情が、何となく悪い気はしない。

時折、総帥室を初めて訪れる部下が目に留めては、重々しい部屋とのミスマッチに目を丸くするたび、素知らぬ振りを押し通す。
知らん振りをしながら、どうしたものか困っている。

机の上の困った存在。
減らないから、どこにもやれない。

 



残業に次ぐ残業の、深夜ひとりきりの執務室で、ふいに思い出したように手に取ってみる。

疲れたときには…と訥々と説明する声がおぼろに耳に甦って、こういう時、確かに自分は疲れているのだろうと思う。

ペンを放り出して書類の上に頬杖を付いて、気付くと手にしている、ひんやりと滑らかな硝子の感触。
冷たい蛍光灯の明かりに透かせて、瓶を振るとからりからりと澄んだ音を立てる。
硝子越しに柔らかに色付いた、少し歪な丸いやさしい形。
しんと静まりかえった部屋に淡く響く音まで、誘うように甘い。

甘いモノは苦手だ。きらいなのではないけれど。
好きなわけではない、苦手だ。きらいでもないけれど。

疲れたときには…
疲れたときに口にするそれは、きっと染み入るように効くだろう。
そうして胸灼けと、甘いばかりの後味だけ残して、いつの間にか跡形もない。

疲れたときには…
からりからりと涼しげな音とは裏腹に、傾ける瓶の中、減らないなくならないそれは、いつまでも甘いまま。

疲れたときには…
甘いモノは苦手だから。
減らない、困った居候に困ったように微笑んで、そっといつもの定位置に戻す。

疲れたときには…
甘いそれを口にはしなくても、

 

「…ぅし。」


 

それはやっぱり疲れを癒してくれるのです。


 

 

 

 




後書き。

うわぁ、自分らしくない乙女チック加減。どーした私!いやでも、浮かんじまったものはしょーがない。
うっかり絆されちゃってるシンタローさん。絶対キンタローさんのやることには甘いんだって。
元々どうも友情とか家族モノは下手にカップリングよりイチャ甘になる傾向があるので、家族兼カップリングにしてしまうと、もうどうしようもないなと、たった今気が付きマシタ(吐血)。

 

 

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