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ぐい、と腕を引っ張られて、一歩隣に移動する。

 

それをした相手を一瞬だけ見遣るけれど、彼は特に普段と変わりはない様子で自分の隣に立って、まっすぐ前を向いていた。
行動は不可解ではあってもそれ自体は些細なことだし、その場は自分もさして気にせず流してしまった。

 

けれど、それが何度も重なってくれば流石に気になってもくるというもので。

 

「なぁ。毎度毎度、ナニやってんの、お前」

 

白衣を羽織った従兄弟の前にお茶を出してやりながら、シンタローはそう切り出した。
問うているのは、従兄弟の奇行のことである。

向かい合うソファの間のテーブルには、本日のお茶菓子と、それ以外に何枚かの小さな紙切れが乗っていた。
以前撮ったものの現像が出来たからと、シンタローが先程、纏めて受け取ったばかりの写真の束である。

受け取ったそれを見るともなく見ているうちに撮影した際の従兄弟の不思議な行動のことを思い出し、どうしようもなく気になってしまって、従兄弟の分を渡しに来るついでに事の真意を尋ねに来た次第だった。

 

「この時とか、この時とか。…これン時もそうだな。お前必ず、俺を一歩横に退けてから隣に立つだろ。何か意味あるのか?」


「ああ、そのことか。勿論だ」

 

些か緊張気味に訊ねたシンタローに対し、受け取ったお茶を一口含んで沈着冷静に頷いた従兄弟は、しごく真面目な顔で宣うた。

 

「重大なことだ。写真を撮るとき、三人並んだら、真ん中になると寿命が縮むと」

 

最大級の目眩が襲ってくるより早く、条件反射的にシンタローはその続きを確信した。

 

「グンマが、そう言ってたんだな」




「そうだ」

突っ伏しながらも断言すると、従兄弟は相変わらず大真面目にこっくりと頷いた。


「………信じたワケ、それ。」


こめかみを押さえて、シンタローはもう一人の無邪気に迷惑な従兄弟を呪った。
余計な、そして間違ったことを吹き込むなと、あれほど言っているのに、あの馬鹿。

 

改めて写真を見返すと、確かにプライベートの、特に3人で撮った場合に必ずと言って良いほど、その行動はされていた。
写真を撮るときに、彼がよく中央に立つことにはもちろん自分も気付いていたけれど。

こうやって写真に過去を残すことも、彼がようやっと出来るようになったことのひとつで、だからよっぽど写りたいのかと、

…てっきり、そんな風にばかり思っていたのに。

 

ため息が零れた。


「お前、…馬鹿」
「それは悪口か?」

呆れた風ではあるけれど、罵る言葉の割に棘のない響きに、キンタローが不可解そうに首を傾げた。
対人関係の経験が少ない彼には、言葉を額面通りに受け取るのが精一杯で、言葉の裏を読むなんて芸当はまだ出来ない。

「そーだよ、この馬鹿」
「連呼するな」

む、と眉を寄せる素直な反応に、シンタローがくく…と喉で笑った。

「馬ぁー鹿」

更に繰り返してやりながら、小さな子供にそうするように従兄弟の頭を抱きしめてやる。
馬鹿と言いながらその行為は酷く言葉と裏腹で、キンタローは戸惑ったように口を噤んだ。
そんな従兄弟にシンタローも困ったように笑った。


全く、何てことをしてくれるのだか。
馬鹿なことを信じて、馬鹿な真似をして。

微笑ましいやら、いじらしいやら。

しかも無自覚に素でやっているのだから、タチが悪い。

 

「ホント、しょーがねぇなぁ…お前」

 

いつまでも笑っていると、抱きしめる腕を引き剥がして少々機嫌を損ねた従兄弟の顔が正面にきた。
不機嫌にふて腐れていたのに、目があった途端にその表情は消えて、今度は逆に抱きしめられた。

「だから、何が馬鹿なんだ?それとお前、笑いたいのか泣きたいのか、どっちだ?」
「あーもー、うっせぇよ」

笑えるから、そんな泣きそうな顔すんな、馬鹿。



 

 

 


「…とりあえず、次は二人で撮ろーぜ」



 

 

 

そしたら、馬鹿な真似するお前のせいで、俺の寿命も縮まないだろ。

 

 

 

 

 




後書き。

天然なキンタローさんは、グンちゃんの言うことも真に受けて、真面目におもろかしいことをしてくれそうです。特にまだ南国以降の初期ごろ何かは。
シンちゃんもそんなキンちゃんの素ボケに慣れてしまった頃には、すっかりボケツッコミの呼吸が出来上がってる二人なんではないかと。

 

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