ところで
喧嘩してから早くも二週間が経とうとしている。
その間、会話はおろか顔を合わせていない。
これは意図してではなく、例えば運悪く学会があったり、支部へ視察に行ったりと互いの仕事の為であった。
しかし、まったくの偶然であるかといえばそうではない。
視察の予定はもっと先だったのに、切羽詰まった仕事がないからと強引に進め、もともと行くつもりのなかった学会に参加した。
大喧嘩ではなくささいな言い争いだったのに、ほんの少し避けてしまったことから、顔を合わせることが気まずく感じてしまう。
それでも偶然に会うかも知れないという不安を抱えながら、平静を装っていた。
しかし、あっけなく時間は過ぎていく。
顔を合わせないようにするのがこんなにも簡単だとは、思ってもいなかった。
例えば屋敷にいる時間など、ずらそうと思えば互いにいくらでもずらせるし、なにより二人とも研究室や総帥室に仮眠スペースを設けてある。
二三日帰らなくとも不都合などはない。
一方は司令塔の最上階、一方は奥まったところにある研究棟。
結局毎日のように顔をあわせるなど出来ていた今までが、どれだけ意図して作られたものであったのかわかっただけだ。
たかが二週間、されど二週間
それくらい顔を合わせなかった事など、沢山ある。
きっとこれからもそうだろう。
しかし、それは逢おうとすれば、だ。
どこかで逢うだろうという淡い期待は無くなった。
相手に会おうという意志がどれほど無意識下で働いていたのかも解った。
だから
「悪かった」
「すまない」
どんなに言い訳を凝らしたとしても、最後に行きつく場所はただひとつ。
話を聞いてくれて、そばにいるのが当たり前。
ふとしたときに、誰もいないのは虚しくて。
「結局、簡単なことだったんだな」
「全くだ」
もう、くだらないことで離れないように。
「ところで、何が原因だったんだっけ?」
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