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さあ

時間は絶え間なく流れていて、止まる事がない。
だから、これは区切り。


その上着に袖を通すと鏡で己の姿を確認する。
「うわー」
お世辞にも似合っているとはいえない、深紅の制服。
唯一、総帥のみ纏う事の出来る服。
鏡の中の自分を見て溜め息を吐くとあちこちを確認し始める。
丈などで問題ないことを確認すると、もう一度鏡の中の自分を鑑みる。
そこでふと、髪を縛っていた布を解く。ぱさりと静かに音を立てながら髪が広がっていく。
一族では、ありえない漆黒の髪と瞳。
ちぐはぐな赤と黒。
それは自分の様であり、またこれからのガンマ団を表しているようでもあった。
どこか違和感のある、まるで幻。
それでも、自分が選んだのは、父親を越えたいからではなく。
軽いノックと共に、人が入ってくる。
こちらの返事も聞かずにはいってくるのは数人。
「ようやく、着たんだね」
あの島から帰ってきてすぐに引退を宣言した、マジック。
彼は、実の息子のグンマでなく、キンタローでもなく、シンタローに跡を継がせることを団全体に伝え、そのまま隠居生活を送っている。
「やっぱり似合わねぇよ」
突然の引退に混乱した団内に、シンタローが今までの方針を変えると言い出し、さらに追い討ちを掛けた。
そして、その言葉が公布されて以来、各地に散らばっていた軍隊は帰国し、明日の就任式を固唾を呑んで見守っている。
「まあ、私も最初はそうだったよ」
くすくすと笑いながらマジックはシンタローの後ろに立つ。
鏡越しにシンタローの姿を見るとそっと頭を撫でた。
「これからが、大変だぞ」
「ああ」
シンタローも後ろを向かずに鏡に向かって頷く。
口で言うのはたやすいが、実際に行うのは難しい。
これからは、依頼を受ける、という形でガンマ団は力を行使していく。
弱きを守るための力として。
今までのように、ただ暴れるだけではいけない。それを納得しない者がどれだけいることか。
そこでふと、シンタローは自分の背がマジックと大差ないことに気が付く。
慌てて振り返ると、そこにはマジックの瞳が近くに在った。
「どうかしたのかい?」
「…いや、これからなんだな、と思っただけだよ」
何故か急に、父親が身近なものと感じた。
冷徹であり、一生敵わないのではないかと思っていた、父親。
そんな、彼でもきっとこうして不安に思ったことがあるのではないか。
なぜかそんなことが頭に浮かんだ。
「頑張りなさい、きっとシンちゃんなら出来るよ」
それが、きつく大変なことであろうとも。
赤い服に畏怖と嫌悪の念。
それは団内だけでなく、各国にあるだろう。
その種をまいたのはマジック本人であり、そのことが少しばかし心に引っかかっていた。
「パパも好き勝手やってきたからね。シンちゃんもおもっきりやりなさい」
それでも、シンタローなら何とかできるのではないかと思ってしまうのは親の欲目であり。
「好き勝手言うなよな」
苦笑いをするその顔を見て笑うと、もう一度頭を撫でる。背中を押すように強く、そして優しく。
「大丈夫だよ、きっとね」
シンタローはもう、自分の背中を見ていない。前を見ているのだから。
そう、マジックは感じていた。あの島で、総てのものが変わったから。
もう、雛は親鳥の元には返ってこない。
それでも、きっとマジックは子供のことを考えずにはいられなかった。
「何があろうとも、パパはシンちゃんの味方だよ」
「へいへい」
聞き飽きた台詞は、とても暖かく。





雛は巣立っていくように

ここがスタート

さあ、始めよう
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