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御題01-10 *10-和装 *09-写真 *08-さりげなく *07-半身 *06-一日の終わりに *05-総帥服 *04-しぐさ *03-視線の先に *02-距離 *01-シンクロ
[ キンシン好きに捧げる30のお題  1-10]  //  11-20 21-30

キンシン同盟さまが配布されているお題をお借りしました。キンシン同盟さまは現在閉鎖されております。
1ページを10題ごとに区切り、短めの文章で構成しております。上のプルダウンメニューからどうぞ。

開始日:2004/02/11-終了日:2004/10/20 
  

















[ 01 : シンクロ ]

「なあ……」
「シン……」   
「「……」」


ひとしきり会話もやんで持て余した時は時計がなんとなく目に入る。
たいていその頃はもう眠る刻限で。とくにまたどちらかが相手の部屋に泊まったときだったりする。


そろそろ風呂に入ってきたらどうか、とかベッドに行こうだとか。
誘い合う言葉が重なってしまうと、つい互いに黙り込んでしまうことになる。

こんなときは互いになんとなく気まずく、照れくさい。


[ 02 : 距離]

たまに互いに別々に行動をとるときがある。
たとえばシンタローが商談で、俺が研究のため別の地へと赴く。
あるいは、シンタローも俺も遠征でバラバラに出征するとき。

短いときはせいぜい3日ほど。長いときは何ヶ月も顔を合わせることが出来ない。

会いたいけれど会えない。
声だけ、メールだけ、あるいはそれすらない時間。


シンタローから離れた地でやるべきことが終わったとき、心のうちは歓喜に満たされる。
これで帰れる。ようやく会える。俺の名を呼ぶ声を聞くことが出来る。シンタローを抱きしめることが出来る。

そうなったらもう急いで帰るだけ。



俺の艦のタラップが降りた。
青い空、白い雲、聳え立つ本部。居並ぶ団員、艦や飛行船の発着陸の音。
   
シンタローに会いたい。早く。一秒でも早く。顔を合わせて、抱きしめたい。早く。
募る気持ちを押さえて、冷静さを装って一段一段踏みしめるように降りていく。

本当は駆け下りて、真っ先に彼の元へと行きたい。会えなかった間の飢餓感を早く満たしたいけれど。
   
出迎えご苦労だとか、いなかった間の様子だとか言わなくてはいけないこと、聞かなければいけないことはある。
それらをすべて終わせればあとはもうシンタローまでまっしぐらだ。

俺がどんなにシンタローに会いたかったか。抱きしめたかったか。
彼がいない時間が物足りなかったか。

それらをすべてシンタローに伝えたい。




エレベーターのドアが開いた。彼は私室にいる。
足音はいつもと同じ規則正しい音を刻む。
けして走ったりはしない。
早く会いたい。けれど、こんなにも彼が足りなくて焦ったように欲しがる自分を見せたくない。
   
カツカツ、と床が俺の靴で鳴る。
もうきっとシンタローの部屋までこの音は聞こえている。

ドアが見えた。
あと少し。もう少しだ。

感情のまま急げばいいだけなのに、20cmの距離がもどかしい


[ 03 : 視線の先に ]

従兄弟は俺の髪が好きだ。俺の眼が好きだ。
金色の髪と青い瞳。彼が焦がれて止まないもの。

彼の黒い髪と瞳のほうが綺麗だというのに。
  
一族の誰もが嫌悪する禍々しい青い目をシンタローは焦がれている。
秘石が彼を作っていたことを吹っ切れたようでいても。
彼の父が彼をかわらず愛していても。


シンタローはこの金と青に焦がれ続けている。

ああ、そんな顔で見つめないでくれ。
おまえは単純に俺の色に惹かれて見つめてくれているだけなのに。
誤解してしまう。

この金色も青い色も俺だけが持ってるわけではないのに。


[ 04 : しぐさ]

キンタローはいつもきちっとした格好をしている。
俺が赤い総帥服を着ているときはたいてい暗色系のスーツを。
グンマや高松と研究室にいるときは白衣を羽織り、研究者然としている。


そんなアイツが仕事が終わってネクタイを解く瞬間が好きだ。

羽織っていたジャケットをゆっくり脱いで、几帳面に壁に掛ける。
長い指が布を手繰る。しゅるっとシルクが擦れ、音が鳴る。
それから、第一ボタンだけ外すのだ。

そのしぐさはいつ見ても惚れ惚れする。
だって、アイツはその繊細な指使いで俺を翻弄するから。


[ 05 : 総帥服 ]

その服はなんとなしに違和感を感じた。
総帥の象徴と言えるほどの長い間、伯父が着続けていた所為もあるのだろう。
金色の髪の伯父が着ていたときは派手に感じたその色は、黒い髪ではいくらか落ち着いて見えるはずだった。

けれども、違う。
従兄弟の体を通して見ていた、鏡に映る姿とは違う。深い緑色の団服とも、南の島でのラフな格好とも違う。
なんとはなしに落ち着かないのだ。浮いているとでも言うのだろうか。

「あー、やっぱ似合わねえな」
鏡の前で従兄弟は何度も繰り返す。
自信でも違和感を感じているのだ。なんとなくおかしいと。

「やっぱ、親父の方が似合ってるよな。ちくしょう」
あ~あ、とため息をついて従兄弟は髪をかき上げた。

「たしかに伯父貴の方が似合っていた」
「いちいち言うなよ。馬子にも衣装って言いたいんだろ」
「マゴニモ?」
「似合うようには実績積めってことだよ」

「ちくしょう。ぜってえハーレムあたりに笑われる。てめえはいいよな~、スーツでよ」

……そんなこと言われても困る。

「おまえもスーツにすればよかったじゃないか」
「んなわけにいかねえだろ。総帥なんだからよ」

総帥だからか。だったら…。

「……とことんやるしかないな」
「ああ」


お時間です、と伯父の秘書が入ってきた。  これからシンタローは伯父の跡を継ぐ。

「行くぞ、キンタロー」
最初が肝心だからな、見てろよと従兄弟は笑った。
  

ああ、しっかり見てるさ。誰よりも近い位置でおまえがそれを着こなしていく様を。


[ 06 : 一日の終わりに ]

夜も更けると、そっとドアの開く音がする。
息を殺して彼は近づいてくる。
俺が眠っているか確認して、それから音を立てないようにベッドサイドにしゃがみ込む。

従兄弟は俺の顔を見ている。目を閉じていても彼の視線は強く感じる。
俺はその視線に反応しないように眠っている風を装い続ける。

ばれないように。不自然に見えないように。

ふっとシンタローが小さく息を吐いた。きっとうすく微笑んでくれている。
眠ったままのコタローにしている表情が浮かべられてるのだろう。
   
わずかに風が起こった。
彼の指が俺の頬や前髪に当てられた。
シンタローはやさしく髪を撫でてくれる。いつも、そっとそっと撫でてくれる。

その手はコタローに対して向けられる繊細な手つきと一緒で。
やさしいあたたかみが伝わってくる。


髪にそっと口付けが落とされた。
「おやすみ」という小さな囁きとともに。

シンタローがそっと離れ、ドアへ向かう気配がする。。
おやすみ、シンタロー。
今日もまた狸寝入りがばれなくてよかった。

俺が起きていることをおまえが知ったらきっと怒るだろうな。
照れ隠しに怒鳴りつけて、もう二度としてくれないだろう。


だから、そのときがくるまで俺は眠りを装い続ける。


[ 07 : 半身 ]

24年もの間、彼と共生してきた。
気の遠くなるようなその時間の流れに抗い、恨んだこともある。
従兄弟の檻から解放されたときの歓喜、一人で在ることの愉悦。

けれども、今は。

どろどろとした負の感情。孤独と自由になれないもどかしさと掻き毟りたくなる焦燥感。
それらに閉ざされたあの時間が懐かしく思い出されることがある。

もう二度と二人で一人の体を共有することなどしたくはない。
シンタローの声が、表情が、すべてが手を伸ばすことの出来ない場所にあるのなんて耐えられない。
   

けれども。

あの頃の俺、シンタローの檻に閉ざされ彼からしかなにものも得られない世界を。
誰よりも近くで彼が見たものを見、彼の感情を解していたあの頃が。


たまに酷く懐かしく思い出すことがある。


二人で在る今とはまた違った、誰よりも近かった時間が懐かしい。
思い出すたびにそれは苦く感じるけれど、甘美な記憶


[ 08 : さりげなく ]

「曲がってるぞ」
さりげなく従兄弟が廊下に控えていた団員のタイを直した。
「制服の乱れは集中力の乱れにつながるからな」
気をつけろ、と言い残してシンタローが前を進む。


従兄弟の後を付き従いながら、ちらりと先の団員に目をやると彼は頬を上気させていた。

   
なんだか、おもしろくない。
タイが曲がっていたら直すのは分かる。でも口で言えばいいことだ。
総帥がわざわざ手をかけることもないじゃないか。

なんだか、おもしろくない。

シンタローの後に続いて、会議室を入る。
資料が配られ、某国の情報がスクリーンに投影されても気が晴れない。
グラフも丁寧な説明も新たに浮上した事実も何もかもが頭に入ってこない。
無理やり叩き込もうとしても、靄がかかり集中できない。


なんだか、おもしろくない。

シンタローが他のヤツの世話を焼いたことも、タイを直す所作が手馴れていたことも。
おもしろくない。


[ 09 : 写真 ] R様に捧げます。

崩れ落ちた壁、壊れた機器、がなりたてるように鳴るアラートの中を突き進む。
ここはもうすぐ爆発する。
計算どおりならあと10分。
けれども目的のものを奪うまでは脱出できない。  

螺旋状の階段をひたすら駆け上がる。
   
喚き声、怯える声、声にならない悲鳴が充満する。
俺を認め、ガンマ団の人間が攻めてきたことを理解し逃げ惑う人、人、人。

小銃を構え、ナイフをちらつかせ、俺に向かってくる戦闘員達。
けれど、そんなことでいちいち足を止めることなど出来ない。

タイムリミットまであと10分。いや、もう5分になるか。

掌中に青い光を熾し、撃つ、撃つ、撃つ。
死人さえ出さなければいい。敵が逃げ遅れるのは俺の責任じゃない。とうに勧告はしてある。
第一、破壊しないようになど心を砕く必要はない。
どうせ、もうすぐ爆発するのだ。



廊下はがらんとしていた。
諜報部員の報告書で見た瑠璃色の壷も淡い色彩の絵画も飾られていない。
めぼしいものは運び去ったのだろう。
人っ子ひとりいない。刃向かう敵も逃げ惑う人も何もいない。
俺の逝く手を遮るのは何もない。
   
さあ、急がないと。

眼魔砲の衝撃でドアを壊す。
ばらばらと壁も崩れ落ちた。
天井の照明が破片とともに落ちてくる。バチバチと床に火花が散った。


部屋の中央に置かれた机を引っ掻き回す。
積み上げられた書類をやファイルを捲り、目当てのものを探す。

ない。ない。ない。くそっ。

壊れんばかりの勢いで引き出しを開け、探す。
フロッピーディスクも戦闘員名簿も必要ない。
拳銃も金貨も葉巻も関係ない。鍵の束は……。

次の引き出しにもない。隠してあるのかと思い、天板を拳で打つ。でも、ここにもない。
殴りつけた拳に血が滲む。
けれど、そんなことどうでもいい。探さなくては。

早く早くと気が急く。急ぐあまり、指が縺れる。鋭利な刃物と化した紙で傷つく。
けれど、どうでもいい。



ああ、あった。
三番目の引き出しに目的のものはあった。
   
黒いコートを肩に引っ掛け、きっと見据えている従兄弟の写真。
まだ、どこの組織にも出回っていない彼の顔。

WANTEDと朱で書かれたファイルにそれは綴じられていた。
びりっと、勢いよくそこから剥がし取る。


懐に大事にそれを仕舞う。大事に、そっと仕舞う。
まるで、写真でなく本人を扱うようにそっと。

ああ、よかった。これで、シンタローに危害は及ばない。
爆発音が遠くに聞こえた。
   
さあ、帰ろう。任務完了だ。
帰ろう、シンタローの元へ。


[ 10 : 和装 ] とある方に捧げます。

旅行なんて初めてだった。
従兄弟の視点を通した現実ではなく、自分の目で、足で、手で感じられるようになって久しい。
ひとりで出かけたことも泊りがけの学会も、従兄弟と二人で何日にも及ぶ遠征をこなしたことはある。


だが、こういうのは初めてだ。
ガンマ団の保養所とやらに来たのも初めてだし、本部以外でくつろげるところなどあるとは思ってもいなかった。
最近忙しかったから行ってみようぜ、と従兄弟が俺を誘ったときも、休むならどこにも出かけないほうがいいのにと思っていたくらいだ。

窓の外には雪がちらついている。
美しく刈り込まれた緑色にはらはらと花弁のようにそれは溶けては消えていく。
ぼんやりと外の景色を眺めていると、肩を叩かれた。

「寝てんじゃねえだろうな?」
「誰がだ。俺は別に眠ってなどいない」
「あんまり黙ってるから思っただけだよ、つっかかんなよな」
ほら、早くしろよと彼は続ける。
ばさばさ、と衣服を脱ぎ散らかしはじめたシンタローに俺は慌てた。

「何しているんだ!?」
「…ンだよ。今更、恥ずかしがる仲じゃねえだろ。俺、生き返ったとき素っ裸だったじゃねえか」
「そうじゃない!なんのために脱いでいるんだと聞いているんだ」

まったく訳が分からない。
訝しげに見ていると、スラックスを畳に落としながらシンタローが口を開いた。

「メシ食う前に露天風呂に入るんだよ。温泉はあとでいいとして、内風呂は暇なうちに入っておこうぜ。
ここの温泉、何種類もあるって親父言ってたし。楽しみだよな!俺最近、肩張ってさ。効くといいんだけど。
ああ…内風呂へはそっちのガラスドアからでも出れるから、わざわざ服脱ぐのに脱衣スペースまで行くことねえだろ。
浴衣もタオルもさっき仲居さんが持ってきたまんまだし」

ほら早くしろ、と彼は急きたてる。しかし……。

「そういうものなのか?」
「そういうもんなんだよ。おまえもとっとと脱げよな。あ、タオルで前隠せよ」
「今更恥ずかしがる仲ではなかったんじゃないか……」
「馬ー鹿。常識なんだよ。あとで大浴場行ったときに隠さなかったら恥かくのおまえなんだぞ」

そうなのか…?

「……大浴場には女の子もいるかもしれないからか?」
「ちっげーよ!!普通は男同士でも隠すんだよ!ガンマ団の保養所が混浴なわけねえだろっ」

そういえばそうか。……隠すのは常識なんだな。覚えておこう。
   
「だが、シンタロー。俺は浴衣など着たことないぞ」
パジャマじゃダメなのか、と二組の浴衣を指しながら従兄弟に言うと彼は「ダメだ!」と言った。

「温泉とくりゃ浴衣なんだよ!!着せてやるから心配すんな」

そうか…。温泉とくれば浴衣なんだな。これも常識か。

「わかった。脱ぐから待っててくれ。俺は分からないが、温泉にもいろいろルールがあるんだろう」

シャツに手をかけると、シンタローは「たたむのはあとにしろよ」と口にする。
皺になるのはいやなんだが……。
しかし、仕方ないか。これが温泉での常識ではな。



衣服をすべて取り去り、彼の後に続く。
外の雪は止んでいない。変わらずひらひらと舞っている。ぐずぐずしていると寒いだろう。


「ああ。そうだ、あとで卓球もしようぜ。浴衣に卓球はツキモノだしな!」
ちゃんと着せてやるから心配すんなよ、と彼は笑った。

シンタローが開けたガラス戸から冷たい空気が流れ込む。
素肌にジンジンと冷たい空気が刺してくる。



「極楽だよな~。な、そう思うわねえか?いいだろ?露天風呂も」
「ああ」

俺もシンタローも、雪もすべてが湯煙に包まれる。 
ひんやりと指す空気に触れた後に浸かる湯は、熱く感じた。
熱い、けれど気持ちがいい。張り詰めていた筋肉がすっと解けていく。

「シンタロー」
「ん?」
 
「来てよかった。温泉もいいものだな。風呂とはまた違う」
「ああ。いいだろ?また来ような」
今度はコタローも連れてきてえなー、としみじみと従兄弟は口にした。

ああ。そうだな。今度来るときはコタローも一緒がいい。 

湯煙の中、雪がひらひらと蝶のように舞う。
そのひとひらが、すっと湯に溶けて消えた。






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