9.おそろい ※『2.初めての』の後日談です。
――時々アイツが何を考えているのか、本当に分からなくなる時がある。
ピアス騒動から二週間程経ったある日のことだった。
ピアスの変わりだと渡された箱を、表面には出さずに内心喜びながら開けた。
紙の箱を開けると中からもう一つ箱が出てきた。
ビロード調の白い布が張り込んである上品な箱だ。
ピアスの時の箱とは違い、随分と重厚な感じになっているその箱を見て、ピアスよりも高いものを買ってきたんだと思った。
(別に安モンだっていーのに)
キンタローから貰えるものなら、自分は何でも喜んで受け取る自信があった。
自分の為にキンタローが用意したものなのだから、それがどんなものだって嬉しいのだ。
俺はどこかワクワクしながら箱に手を添えた。
ピアスの時でキンタローのセンスが良いことは分かったから、今度はどんなものなのだろうと期待もあったのかもしれない。
――ぱか。
良い音がして蓋が開く。
そして中に入っていた物を見て――俺は固まった。
入っていたのは、中にダイヤが埋め込まれている綺麗なプラチナリングだったのだ。
「良いデザインだろう。お前には絶対に似合う」
悪びれもなくキンタローが真顔でそう言ってくる。
「………」
そんなキンタローの意見には返事を返さずに、俺は黙り込んだ。
機嫌の良さそうな顔のキンタローとは逆に、俺の頭の上に暗雲が立ち込め始める。
確かにデザインは良い。
そして埋め込まれているダイヤが安物ではないことも分かる。
しかし――。
しかし、だ!!!
これはどう見ても――…。
その事実を受け止め難く、わなわなと肩が震える俺に気付きもしないで、キンタローはさらに衝撃的な事を告げてきた。
「どうやらこれはペアリングらしい。だから俺も同じものを持っている」
ゴ――ン。
決定打。
「……キンタロー……」
「何だ?」
「お前…コレ買う時何て言って買った…?」
思わず声が低くなってしまう。
「特に何も。ピアスと交換してくれとは言ったがな。――あぁ、丁度ピアスを買った次の日からフェアが始まっていたらしくて、コレが必要だったのなら先に聞いておけば良かったと言われた」
「…そのフェアのタイトルは?」
駄目だ――声が震える。
落ち着け…落ち着け俺ッ!!!
「ああそういえば見てなかったな。ただ――」
「『ただ』?」
「サイズを聞かれて、両方同じでいいと答えたら妙に変な顔をされた」
「―――――ッツ!!」
よく見ると、リングの内側には俺の名前が彫ってある。
そして見せなくてもいいのに、キンタローが自分の分だと言って見せてきたキンタローのリングには、勿論の事キンタローの名前が彫ってあった。
――はっはっは!
そりゃー、店員も妙な顔くらいするだろーナ!
同じサイズだと言われてどんなデカイ女だよ!?と思えば男の名前を言われてよ!
しかもコイツ、その店員にご丁寧に名刺を渡してきたらしい。
『ガンマ団』のネーム入りの名刺をな。
『キンタロー』も『シンタロー』もそうそうよくある名前じゃない。
しかも泣く子も黙ると言われているガンマ団の人間で、その名前と言えば当てはまるのは一人ずつしかいないことくらい、一般人でも分かるだろう。
こりゃー吃驚☆だ!!!
ガンマ団の総帥様ったら、男相手に凄いもの贈られちゃってるネ♪あっはっは!!
ブチン!!
――俺の中の何かがブチ切れた。
「こォの馬鹿キンタローーーッ!!!間違いなくエンゲージリングじゃねーかーーーーッ!!!」
団内に悲痛な叫びが響き渡る中、当のキンタローだけが「何だそれは?」という顔をしていて――。
酷く泣きたくなった俺を、その場に居たティラミスが温かい(哀れむとも言う)目で見ていた…。
END
2006.05.07
2006.08.21サイトUP
――時々アイツが何を考えているのか、本当に分からなくなる時がある。
ピアス騒動から二週間程経ったある日のことだった。
ピアスの変わりだと渡された箱を、表面には出さずに内心喜びながら開けた。
紙の箱を開けると中からもう一つ箱が出てきた。
ビロード調の白い布が張り込んである上品な箱だ。
ピアスの時の箱とは違い、随分と重厚な感じになっているその箱を見て、ピアスよりも高いものを買ってきたんだと思った。
(別に安モンだっていーのに)
キンタローから貰えるものなら、自分は何でも喜んで受け取る自信があった。
自分の為にキンタローが用意したものなのだから、それがどんなものだって嬉しいのだ。
俺はどこかワクワクしながら箱に手を添えた。
ピアスの時でキンタローのセンスが良いことは分かったから、今度はどんなものなのだろうと期待もあったのかもしれない。
――ぱか。
良い音がして蓋が開く。
そして中に入っていた物を見て――俺は固まった。
入っていたのは、中にダイヤが埋め込まれている綺麗なプラチナリングだったのだ。
「良いデザインだろう。お前には絶対に似合う」
悪びれもなくキンタローが真顔でそう言ってくる。
「………」
そんなキンタローの意見には返事を返さずに、俺は黙り込んだ。
機嫌の良さそうな顔のキンタローとは逆に、俺の頭の上に暗雲が立ち込め始める。
確かにデザインは良い。
そして埋め込まれているダイヤが安物ではないことも分かる。
しかし――。
しかし、だ!!!
これはどう見ても――…。
その事実を受け止め難く、わなわなと肩が震える俺に気付きもしないで、キンタローはさらに衝撃的な事を告げてきた。
「どうやらこれはペアリングらしい。だから俺も同じものを持っている」
ゴ――ン。
決定打。
「……キンタロー……」
「何だ?」
「お前…コレ買う時何て言って買った…?」
思わず声が低くなってしまう。
「特に何も。ピアスと交換してくれとは言ったがな。――あぁ、丁度ピアスを買った次の日からフェアが始まっていたらしくて、コレが必要だったのなら先に聞いておけば良かったと言われた」
「…そのフェアのタイトルは?」
駄目だ――声が震える。
落ち着け…落ち着け俺ッ!!!
「ああそういえば見てなかったな。ただ――」
「『ただ』?」
「サイズを聞かれて、両方同じでいいと答えたら妙に変な顔をされた」
「―――――ッツ!!」
よく見ると、リングの内側には俺の名前が彫ってある。
そして見せなくてもいいのに、キンタローが自分の分だと言って見せてきたキンタローのリングには、勿論の事キンタローの名前が彫ってあった。
――はっはっは!
そりゃー、店員も妙な顔くらいするだろーナ!
同じサイズだと言われてどんなデカイ女だよ!?と思えば男の名前を言われてよ!
しかもコイツ、その店員にご丁寧に名刺を渡してきたらしい。
『ガンマ団』のネーム入りの名刺をな。
『キンタロー』も『シンタロー』もそうそうよくある名前じゃない。
しかも泣く子も黙ると言われているガンマ団の人間で、その名前と言えば当てはまるのは一人ずつしかいないことくらい、一般人でも分かるだろう。
こりゃー吃驚☆だ!!!
ガンマ団の総帥様ったら、男相手に凄いもの贈られちゃってるネ♪あっはっは!!
ブチン!!
――俺の中の何かがブチ切れた。
「こォの馬鹿キンタローーーッ!!!間違いなくエンゲージリングじゃねーかーーーーッ!!!」
団内に悲痛な叫びが響き渡る中、当のキンタローだけが「何だそれは?」という顔をしていて――。
酷く泣きたくなった俺を、その場に居たティラミスが温かい(哀れむとも言う)目で見ていた…。
END
2006.05.07
2006.08.21サイトUP
PR