11.只今取込み中。 ※同じ始まりでマジシン小説も書いてますが、内容は別物です。
別に見ようと思ったわけじゃなく、何となく付けてみただけだった。
一般家庭にはあまりないであろう大きさのテレビ画面に映ったのは、女と男の後姿。
どうやらドラマか映画らしい。
興味がなかったのでチャンネルを変えようと、リモコンに手を伸ばした時だった。
「『好き』と言う想いが『カタチ』になって残ればいいのに」
そんな台詞を女の方が口にした――。
+++
「純愛だねー」
ケケケッと茶化すようにそう言って、ハーレムは酒瓶を口に運んだ。
「おい、見てねーんだったらチャンネル変えろよ。ニュース見せろ」
そんなハーレムからリモコンを取り上げようと、シンタローが手を伸ばしてきた。
「おーっと」
それをするりと交わしてリモコンを遠くへと放り投げると、シンタローはあからさまに顔を顰めた。
「死にてーのか、アル中」
「そーカリカリすんなって。カルシウム不足なんじゃねーの?」
ニッと口元を吊り上げたハーレムに、シンタローが溜息を零す。
「うざ…」
小さな声だったが、その声ははっきりとハーレムの耳に届いた。
「っとに可愛くねーなー、この甥っ子はよォ」
「うわッ!?」
手を伸ばしてシンタローの腰を掴んで引き寄せると、油断していたのかその身体はあっさりと腕の中に収まってきた。
「何しやがる!?」
「暴れんなヨ」
予想通りバタバタと暴れる手足を、それでも器用に押さえつけて抱き締めると、シンタローは諦めたように大人しくなって、また嫌そうに溜息を付いた。
「酔っ払い…」
「その酔っ払いにあっさりと抱っこされちまったガキはどいつだー?」
ニヤニヤと笑って言ったハーレムに、シンタローの眉間の皺が濃くなる。
それでもシンタローがこれ以上抵抗してこないのは、この状況を嫌がっていないからだ。
素直ではないシンタローの、遠回しな甘えにハーレムは気付いている。
シンタローは自分からは決して甘えてこない。
だからシンタローがそれを望んでいる時は、見逃さずに此方から仕掛けてやらなければならないのだ。
「ったく――面倒なガキだな」
まぁそんなガキにイカレちまってる俺も俺だ――ククッと声が漏れた。
「あ?何か言ったか?」
ハーレムの呟きにシンタローが顔を上げた。
どうやら内容は聞こえていなかったらしく、ハーレムは「何でもねェ」と受け流した。
そんなハーレムにシンタローは気にした様子もなく、興味なさげに「ふぅん」と言ってテレビに視線を移す。
「なーまだコレ見てんのか?」
「あ?別に最初から見ちゃいねーよ」
「なら何でニュースに変えたら駄目なんだよッ!!」
ハーレムの腕の中でシンタローがまた暴れだす。
そう言えばニュースが見たいとか言ってたなと、ハーレムは思い出す。
別に面白くもないだろうにと思うのだが、目の前のドラマに興味を示すよりはマシかと、どうでもいいことを考える。
テレビの画面では黒髪の女が男に向かって微笑んでいた。
「―――…」
その顔を見て、ふと先程の台詞が頭の中に蘇った。
――「『好き』と言う想いが『カタチ』になって残ればいいのに」――
「…形になったら大変だっての」
「は?」
前触れもなくそう言ったハーレムに、シンタローは意味不明だと不思議そうな顔をした。
「んー、ホレ、さっきあの女が言ったろ?」
「聞いてねー」
テレビ画面に映る女を指差したハーレムに、シンタローはきっぱりと言う。
「あー、好きだって想いが形になって残ればいーとかってな」
口にすると恥ずかしーなと思いながらも説明すると、案の定シンタローはそんなハーレムを見て『キモッ』と引いていた。
その態度に腹が立ち、遠慮なくシンタローの頭を叩いてやる。
「俺が言ったんじゃねーっての!」
「――たッ!?アンタすぐ手ェ出すクセ、直せよ!!」
「オメーには言われたくねェ」
恨めしそうに言われた台詞に即座に言い返すと、シンタローは「俺はいいんだ!」と俺様的な答えを返してきた。
「ったく…どーゆー教育してんだよ」
あの馬鹿兄貴と、ハーレムは兄の姿を思い出すが、すぐに考えるだけ無駄だと溜息を付いた。
「でもよォ、大変だな」
唐突にシンタローがそう言って顔を上げた。
叩かれた事はもうどうでもいいらしい。特に機嫌を害した様子もなく、真っ黒な瞳を真っ直ぐハーレムに向けている。
「あん?」
いきなりナンダ?とハーレムが同じようにシンタローの目を見ると、シンタローは先程ハーレムがしたのと同じようにテレビの画面を指差した。
「アンタの言った『想いが形に』ってやつ」
「俺が言ったんじゃねー」
ハーレムは間違えるなと釘を刺すが、シンタローは全く気にしていないようだった。
「どっちでもいーじゃん、俺はアンタから聞いたんだし」
シンタローはサラリとそう答えると、ニヤリと笑ってハーレムの首に腕を回してきた。
「――…!」
どこか挑戦的な瞳をして、ゆっくりと近付いてくるシンタローのその顔に、ハーレムは表情には出さずに見惚れる。
「…どうしたよ?」
積極的じゃねーかと、腰に手を添えると、シンタローはもう一度口元を吊り上げて言った。
「形になったらアンタが俺のコト、どー思ってるのかはっきり分かるよな?」
「……………」
「――ぷッ、」
言われた言葉に呆然とするハーレムに、シンタローが可笑しそうに噴出した。
「すげー顔、してんぜ?アンタ」
クック、と笑うシンタローは、ハーレムから一本取れたことが嬉しいのか上機嫌だった。
(―――っとに可愛くねぇ…ッ)
人の揚足を取るのは大好きだが、その逆ははっきり言って面白くないハーレムだ。
大人気ないと分かっていても何か仕返しをしてやりたいと考える。
そこでふと、ある事を思い付いた。
ハーレムはニヤリと笑ってシンタローを見た。
「…な、なんだヨ?」
何かを感じ取ったのか、シンタローの身体が強張ったのが分かった。
しかし此処で逃がしてやるほどハーレムは親切ではない。
ゆっくりとシンタローの顎に指をかけてその顔を持ち上げる。
「ハ、ハーレム?」
焦った様子で逃れようと微かな抵抗を見せるシンタローだったが、それを許さずに唇が触れそうなくらいに近い距離まで顔を寄せた。
「そうだよなァ、俺様の気持ちがカタチになんてなって残ったりしたらよォ、お前さん大変だなァ?」
殊更言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぐと、シンタローの身体がビクッと震えた。
「な、なんで…ッ」
シンタローの顔が微かに赤くなっていた。よく見れば瞳も揺れている。
シンタローは真面目に迫られる事に弱い。
冗談半分で襲えば、確実に言葉と手足で反撃してくるが、此方が真面目な態度で好意を見せると途端に弱々しくなり、どうすればいいのか分からなくなって萎縮してしまう。
ハーレムはそれを知っていて、あえてじっくりと攻め寄る。
「俺の気持ちがカタチになんかなったら、お前、潰れちまうゼ?」
「な――!?」
シンタローの目が驚きで見開かれた。
何を言っているんだ?とでもいいたいようなその目に笑いが込み上げる。
「重いぜ?――俺様の『スキ』の『カタチ』はよ」
「―――ッ」
そこまで聞いて、やっとハーレムの言いたい事が分かったのか、シンタローの頬にサッと朱が走った。
「ん~?どーした、顔が赤くねェか?」
ニヤニヤと笑いながら突っ込むと、シンタローは「うるせェッ!!」と憤慨する。
「――クソッ、何でアンタはッ」
悔しそうに此方を睨んでくる姿が、ハーレムにはおかしくてたまらない。
なんだかんだと言ってもこの甥っ子は、自分から見ればまだまだ子供だ。
素直な感情表現がとても心地良いと思う。
「ん?俺様が何だって?」
意地悪く聞いてやれば、シンタローはますます怒りを露にする。
「~~~~ッ」
先程のしてやったり顔はどうしたのか――口をへの字にして俯いて、何かを必死に考えているようだ。
「シンタロー~?」
下を向いてしまったシンタローの顔を覗き込む。
「―――ッ」
するとシンタローは何かを思いついたのか、何故か自分と同じように不適な笑みを浮かべて顔をあげた。
「?」
「い、言っておくがな!テメーだってそうなんだからなッ!!」
負けるもんか!と言うオーラがシンタローの身体から滲み出ている。
「あ?」
『何が?』と聞くよりも先にシンタローが、ビシッと人差し指をハーレムに向けてきた。
「俺の、ス…、ス――ッ、『スキ』の――、カ、『カタチ』でッ、つッ、潰れちまうのはよッ!」
「………」
シンタローの言葉に、ハーレムは一瞬呆気に取られた。
――舌噛みながら赤くなって言う台詞じゃねーだろ。
そう思ったが口には出さずにおく。
負けん気の強い甥っ子の、精一杯の反撃であろうから。
(今のテメーの顔、鏡で見てみるかァ?)
本当にコイツと一緒にいると退屈はしないとハーレムは思う。
別に勝ち負けの勝負をしているわけでもないのに、シンタローはハーレムの言葉を素直に受け取ることを、負けとしてみるのだ。
此方を睨み続けるシンタローに、ここで自分の兄のマジックであれば『嬉しいヨvシンちゃんッvv』と素直に喜ぶのだろうが――。
(生憎俺もテメーと同じ気質なんだヨ、甥っ子)
チロリとシンタローの顔を見ると、反論してこないハーレムに『勝った』とでも思っているのか、その表情に余裕が戻ってきていた。
そんなシンタローに、ハーレムは『残念だったな』とニヤリと笑い――。
「なら、二人仲良く圧死だな?」
そう言って――シンタローの唇に掠める様な優しいキスを落とした。
「~~~~~~ッ!!!!」
――ボンッ、そんな音が聞こえた気がした。
目の前には可笑しいくらいに真っ赤になったシンタロー。
顔だけではなく、耳まで真っ赤になっている。
「――っとに可愛いヤツだな、お前さんはよォ」
ククッと笑って抱き締めると、腕の中でシンタローが観念したのか、「くそったれ」と負け惜しみの一言を漏らした。
――涙目でンなこと言われたって、誘われてるようにしか見えねーんだぜ?
ハーレムはニヤリと口元を吊り上げて――もう一度シンタローの唇にキスを贈った。
END
2006.04.30
200.09 01サイトUP
ちょっと補足を…。
も、もしかしたらこの小説を読んで『アレ?』と思う方がいらっしゃるかもしれませんが(多分いないと思いますが…)、昔、別ジャンルで同じ台詞を使った漫画を描いたことあります。話は違うのですが同じような台詞を使ってるのでちょっとご報告…(汗)
別に見ようと思ったわけじゃなく、何となく付けてみただけだった。
一般家庭にはあまりないであろう大きさのテレビ画面に映ったのは、女と男の後姿。
どうやらドラマか映画らしい。
興味がなかったのでチャンネルを変えようと、リモコンに手を伸ばした時だった。
「『好き』と言う想いが『カタチ』になって残ればいいのに」
そんな台詞を女の方が口にした――。
+++
「純愛だねー」
ケケケッと茶化すようにそう言って、ハーレムは酒瓶を口に運んだ。
「おい、見てねーんだったらチャンネル変えろよ。ニュース見せろ」
そんなハーレムからリモコンを取り上げようと、シンタローが手を伸ばしてきた。
「おーっと」
それをするりと交わしてリモコンを遠くへと放り投げると、シンタローはあからさまに顔を顰めた。
「死にてーのか、アル中」
「そーカリカリすんなって。カルシウム不足なんじゃねーの?」
ニッと口元を吊り上げたハーレムに、シンタローが溜息を零す。
「うざ…」
小さな声だったが、その声ははっきりとハーレムの耳に届いた。
「っとに可愛くねーなー、この甥っ子はよォ」
「うわッ!?」
手を伸ばしてシンタローの腰を掴んで引き寄せると、油断していたのかその身体はあっさりと腕の中に収まってきた。
「何しやがる!?」
「暴れんなヨ」
予想通りバタバタと暴れる手足を、それでも器用に押さえつけて抱き締めると、シンタローは諦めたように大人しくなって、また嫌そうに溜息を付いた。
「酔っ払い…」
「その酔っ払いにあっさりと抱っこされちまったガキはどいつだー?」
ニヤニヤと笑って言ったハーレムに、シンタローの眉間の皺が濃くなる。
それでもシンタローがこれ以上抵抗してこないのは、この状況を嫌がっていないからだ。
素直ではないシンタローの、遠回しな甘えにハーレムは気付いている。
シンタローは自分からは決して甘えてこない。
だからシンタローがそれを望んでいる時は、見逃さずに此方から仕掛けてやらなければならないのだ。
「ったく――面倒なガキだな」
まぁそんなガキにイカレちまってる俺も俺だ――ククッと声が漏れた。
「あ?何か言ったか?」
ハーレムの呟きにシンタローが顔を上げた。
どうやら内容は聞こえていなかったらしく、ハーレムは「何でもねェ」と受け流した。
そんなハーレムにシンタローは気にした様子もなく、興味なさげに「ふぅん」と言ってテレビに視線を移す。
「なーまだコレ見てんのか?」
「あ?別に最初から見ちゃいねーよ」
「なら何でニュースに変えたら駄目なんだよッ!!」
ハーレムの腕の中でシンタローがまた暴れだす。
そう言えばニュースが見たいとか言ってたなと、ハーレムは思い出す。
別に面白くもないだろうにと思うのだが、目の前のドラマに興味を示すよりはマシかと、どうでもいいことを考える。
テレビの画面では黒髪の女が男に向かって微笑んでいた。
「―――…」
その顔を見て、ふと先程の台詞が頭の中に蘇った。
――「『好き』と言う想いが『カタチ』になって残ればいいのに」――
「…形になったら大変だっての」
「は?」
前触れもなくそう言ったハーレムに、シンタローは意味不明だと不思議そうな顔をした。
「んー、ホレ、さっきあの女が言ったろ?」
「聞いてねー」
テレビ画面に映る女を指差したハーレムに、シンタローはきっぱりと言う。
「あー、好きだって想いが形になって残ればいーとかってな」
口にすると恥ずかしーなと思いながらも説明すると、案の定シンタローはそんなハーレムを見て『キモッ』と引いていた。
その態度に腹が立ち、遠慮なくシンタローの頭を叩いてやる。
「俺が言ったんじゃねーっての!」
「――たッ!?アンタすぐ手ェ出すクセ、直せよ!!」
「オメーには言われたくねェ」
恨めしそうに言われた台詞に即座に言い返すと、シンタローは「俺はいいんだ!」と俺様的な答えを返してきた。
「ったく…どーゆー教育してんだよ」
あの馬鹿兄貴と、ハーレムは兄の姿を思い出すが、すぐに考えるだけ無駄だと溜息を付いた。
「でもよォ、大変だな」
唐突にシンタローがそう言って顔を上げた。
叩かれた事はもうどうでもいいらしい。特に機嫌を害した様子もなく、真っ黒な瞳を真っ直ぐハーレムに向けている。
「あん?」
いきなりナンダ?とハーレムが同じようにシンタローの目を見ると、シンタローは先程ハーレムがしたのと同じようにテレビの画面を指差した。
「アンタの言った『想いが形に』ってやつ」
「俺が言ったんじゃねー」
ハーレムは間違えるなと釘を刺すが、シンタローは全く気にしていないようだった。
「どっちでもいーじゃん、俺はアンタから聞いたんだし」
シンタローはサラリとそう答えると、ニヤリと笑ってハーレムの首に腕を回してきた。
「――…!」
どこか挑戦的な瞳をして、ゆっくりと近付いてくるシンタローのその顔に、ハーレムは表情には出さずに見惚れる。
「…どうしたよ?」
積極的じゃねーかと、腰に手を添えると、シンタローはもう一度口元を吊り上げて言った。
「形になったらアンタが俺のコト、どー思ってるのかはっきり分かるよな?」
「……………」
「――ぷッ、」
言われた言葉に呆然とするハーレムに、シンタローが可笑しそうに噴出した。
「すげー顔、してんぜ?アンタ」
クック、と笑うシンタローは、ハーレムから一本取れたことが嬉しいのか上機嫌だった。
(―――っとに可愛くねぇ…ッ)
人の揚足を取るのは大好きだが、その逆ははっきり言って面白くないハーレムだ。
大人気ないと分かっていても何か仕返しをしてやりたいと考える。
そこでふと、ある事を思い付いた。
ハーレムはニヤリと笑ってシンタローを見た。
「…な、なんだヨ?」
何かを感じ取ったのか、シンタローの身体が強張ったのが分かった。
しかし此処で逃がしてやるほどハーレムは親切ではない。
ゆっくりとシンタローの顎に指をかけてその顔を持ち上げる。
「ハ、ハーレム?」
焦った様子で逃れようと微かな抵抗を見せるシンタローだったが、それを許さずに唇が触れそうなくらいに近い距離まで顔を寄せた。
「そうだよなァ、俺様の気持ちがカタチになんてなって残ったりしたらよォ、お前さん大変だなァ?」
殊更言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぐと、シンタローの身体がビクッと震えた。
「な、なんで…ッ」
シンタローの顔が微かに赤くなっていた。よく見れば瞳も揺れている。
シンタローは真面目に迫られる事に弱い。
冗談半分で襲えば、確実に言葉と手足で反撃してくるが、此方が真面目な態度で好意を見せると途端に弱々しくなり、どうすればいいのか分からなくなって萎縮してしまう。
ハーレムはそれを知っていて、あえてじっくりと攻め寄る。
「俺の気持ちがカタチになんかなったら、お前、潰れちまうゼ?」
「な――!?」
シンタローの目が驚きで見開かれた。
何を言っているんだ?とでもいいたいようなその目に笑いが込み上げる。
「重いぜ?――俺様の『スキ』の『カタチ』はよ」
「―――ッ」
そこまで聞いて、やっとハーレムの言いたい事が分かったのか、シンタローの頬にサッと朱が走った。
「ん~?どーした、顔が赤くねェか?」
ニヤニヤと笑いながら突っ込むと、シンタローは「うるせェッ!!」と憤慨する。
「――クソッ、何でアンタはッ」
悔しそうに此方を睨んでくる姿が、ハーレムにはおかしくてたまらない。
なんだかんだと言ってもこの甥っ子は、自分から見ればまだまだ子供だ。
素直な感情表現がとても心地良いと思う。
「ん?俺様が何だって?」
意地悪く聞いてやれば、シンタローはますます怒りを露にする。
「~~~~ッ」
先程のしてやったり顔はどうしたのか――口をへの字にして俯いて、何かを必死に考えているようだ。
「シンタロー~?」
下を向いてしまったシンタローの顔を覗き込む。
「―――ッ」
するとシンタローは何かを思いついたのか、何故か自分と同じように不適な笑みを浮かべて顔をあげた。
「?」
「い、言っておくがな!テメーだってそうなんだからなッ!!」
負けるもんか!と言うオーラがシンタローの身体から滲み出ている。
「あ?」
『何が?』と聞くよりも先にシンタローが、ビシッと人差し指をハーレムに向けてきた。
「俺の、ス…、ス――ッ、『スキ』の――、カ、『カタチ』でッ、つッ、潰れちまうのはよッ!」
「………」
シンタローの言葉に、ハーレムは一瞬呆気に取られた。
――舌噛みながら赤くなって言う台詞じゃねーだろ。
そう思ったが口には出さずにおく。
負けん気の強い甥っ子の、精一杯の反撃であろうから。
(今のテメーの顔、鏡で見てみるかァ?)
本当にコイツと一緒にいると退屈はしないとハーレムは思う。
別に勝ち負けの勝負をしているわけでもないのに、シンタローはハーレムの言葉を素直に受け取ることを、負けとしてみるのだ。
此方を睨み続けるシンタローに、ここで自分の兄のマジックであれば『嬉しいヨvシンちゃんッvv』と素直に喜ぶのだろうが――。
(生憎俺もテメーと同じ気質なんだヨ、甥っ子)
チロリとシンタローの顔を見ると、反論してこないハーレムに『勝った』とでも思っているのか、その表情に余裕が戻ってきていた。
そんなシンタローに、ハーレムは『残念だったな』とニヤリと笑い――。
「なら、二人仲良く圧死だな?」
そう言って――シンタローの唇に掠める様な優しいキスを落とした。
「~~~~~~ッ!!!!」
――ボンッ、そんな音が聞こえた気がした。
目の前には可笑しいくらいに真っ赤になったシンタロー。
顔だけではなく、耳まで真っ赤になっている。
「――っとに可愛いヤツだな、お前さんはよォ」
ククッと笑って抱き締めると、腕の中でシンタローが観念したのか、「くそったれ」と負け惜しみの一言を漏らした。
――涙目でンなこと言われたって、誘われてるようにしか見えねーんだぜ?
ハーレムはニヤリと口元を吊り上げて――もう一度シンタローの唇にキスを贈った。
END
2006.04.30
200.09 01サイトUP
ちょっと補足を…。
も、もしかしたらこの小説を読んで『アレ?』と思う方がいらっしゃるかもしれませんが(多分いないと思いますが…)、昔、別ジャンルで同じ台詞を使った漫画を描いたことあります。話は違うのですが同じような台詞を使ってるのでちょっとご報告…(汗)
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