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gds
4.大人気ないにも程がある。






「キスはすんなよ」

情事の最中。
唐突に甥っ子がそう言った。

「あぁん?何でだよ?」

するなと言われるとしたくなるのが人間と言うもので――。

「――てめッ!イヤだっつってんだろ!!」

身動きがとれないようにがっちりと顔を抑えて唇を近付けると、案の定鋭い瞳で睨まれた。
一般人ならばこの一睨みで気を失うものもいるだろう。
しかしながら生憎コイツは自分の甥で、幼い頃からよく知っている。睨まれたところで痒くもなんともない。

――むしろ煽られる。

「『すんな』とは聞いたが『イヤ』とは聞いてねー」

ニヤニヤと笑いながらそう言えば「今言った!」と喚かれる。

「とにかく離せッ!!」
「離したらオメー逃げんだろ?」
「当たり前だッ!!くそッ、この馬鹿力!!」

振り解けないことが余程悔しいのか、真下の甥っ子は顔を赤くして怒っている。

「何で駄目なんだヨ?」

――たかだかキス一つで照れるような関係でもあるまいし。

素直に疑問を口にすると、騒いでいた甥っ子の動きが何故かピタリと止まった。

「…どうした?」

不審に思ってその瞳を覗き込むと、それがフイと逸らされてしまった。
人の目を真っ直ぐに見て話をするコイツのこの行動はおかしい。

「…言わねーなら続行な」
「――ッ!?ちょッ、待…ッ」

そのまま言うまで待ってやっても良かったが、正直真っ最中に止められて気分のいいものではない。
言う気がないのならば言わせてやればいいだけのこと。
力押しでその唇を奪ってやった。

「~~~~~ッ!!」

いつものように舌を割り込ませて歯列を舐め上げ、逃げる舌を追いかけて絡ませる――それだけで慣らされたコイツはあっさりと陥落する。
本当に嫌だと思っているのならば、舌を噛み付いてくるだろう。それをしないという事は止める必要がないということだ。

「――…ッ、は、ぁッ」

途中で呼吸を助けるために一度唇を離すと、言葉もままならないくせに潤んだ瞳だけは真っ直ぐに此方を睨んでいた。

「煽ってんのか?」

「ぬかせ…ッ、っくしょー、やっぱ苦ッ…」

悔しそうにしながら手の甲で唇――というか舌を擦るその様子に『ああ』と思い当たる。

「何だオメー、煙草が駄目なのかよ」

確かに『苦い』と聞こえた。
それは間違いなく自分の舌の事を指している。
一日中煙草をふかしている己の舌はさぞかしその苦味を含んでいることだろう。
かく言う今も、ベットに入るまで煙草を吸っていた。

「ガキだな」

思わず鼻で笑ってしまった。

「うっせー!」

甥っ子は機嫌の悪さを隠す素振りもなく舌打ちをした。
そう言えばコイツが煙草を吸っている姿は見たことがないなと、今更ながらに気付く。
多分――息子を溺愛するどこぞの阿呆が、健康に悪いとかなんとか理由を付けて吸わせないのだろう。

「――とにかく、これで分かっただろ。もうすんなよ」

『ガキはどっちだ』とぶつぶつ文句を言いながら、何故か甥っ子はベットから降りようとしている。

「おいこら」

何処へ行く気だと腕を掴めば

「興醒めした」

――と一言告げて掴んだ腕を振り払われた。
そしてそのまま『やってられるか』と言わんばかりの怒気を露にして、素早い動きで衣服を着込んでいく。

「オイオイここまでしてお預けかよ」

「知るか」

勝手に処理しろ――そこまで言われてピキッときた。

「ほーーぅ」

若干低めの声を出して立ち上がる。

「な…ッ、何だよッ!?」

真っ裸のままで近付けば、甥っ子は身体を強張らせて後ずさった。

「お前もいい加減学習能力がねーなぁ、シンタロー」

不適に笑って、勢いよく床を蹴った。

「なッ…―――ん―――ッッ!!?」

一瞬で近付き、逃げる身体を捕まえて、避ける暇など与えることなく何かを言おうとしていた唇を奪った。

「んんーーッ、っく!!」

今度は大人しくされるつもりはないのだろう。
舌を噛み付く気はないようだが、身体を捩って離れようと暴れている。
殴りかかってくる腕を掴み、蹴り上げようとする足は己の足を絡ませる事でその動きを防ぐ。
どうやっても逃げようがないと分かっているのに、必死に暴れる姿が子供のようで妙に笑えた。

「んっ…くッ…」

弾力のある舌に己の舌を絡ませると、やはりその苦さが嫌なのか必要以上に逃げられた。
ならばと、口内のあちこちを殊更ゆっくりと舐め上げてやる。

「んんッ!!」

ビクンと身体が大きく跳ねた。
どうやら弱い部分に触れたらしい。一瞬にして殴ろうとしていた腕の力が抜けたのが分かった。
そのまま歯の裏側にもゆっくりと舌を這わせ、零れる唾液も気にせずに反応を示す場所を執拗以上に攻め立てれば、やがて逃げていた舌が諦めたように大人しくなり無意識に絡められた。

(キス一つで可愛いモンだなオイ)

ピチャピチャと室内に響く水音が心地良い。
音がするたびにビクビクと身体を震わせるその様子に酷く満足する。
先程まで自分を睨んでいた鋭い瞳は、今は熱を帯びて潤んでいて何処か遠くを見るように焦点が合っていない。
その目がどんなに自分を煽っているか――コイツはわかっていないのだろう。

「ん…ふ…」

すでに抵抗する力をなくしたのようで、動きを封じ込めるために絡ませた足を解けば、支えがなくなったかのようにずるずるとその身体は床へと落ちていった。
ペタリと床に腰を付いてしまった状態の甥っ子をニヤニヤと眺める。

「――…くっそお…ッ」

荒い息を吐くその姿は、本当に男心をくすぐってくれる。

「ヨかったか?」

ん?としゃがんで真っ赤になった顔を覗き込む。

「ほざけッ…!」

「素直じゃねーな。ホレ、続きすんぞ」

お預けってのは趣味じゃねーんダヨと、へたり込んでいる身体をヒョイと持ち上げた。

「うわッ!?」

当然のことながら、キス一つで腰が抜けた甥っ子は逃げる間もなく腕の中に収まった。
いわゆるお姫様抱っこというやつでベットまで運び、無造作にその身体を投げ捨てる。

「――ぶッ!!?」

ぼすんと音を立ててシーツに沈み込む姿が、間抜けだなと思うが口には出さずにおく。
これ以上からかうと本気で拗ねてしまうだろうから。

「てめ…ッ!!」

すぐさま身体を反転させて素早く蹴りを入れてくる足をかわして、勢いよく覆い被さり動きを封じた。

「っとに懲りねーなオメー。何度同じポジション取られてんだよ」

「うるせーこの力馬鹿ッ!ナマハゲッ!!極潰しッ!!!」

逃げられないと悟ったのか、次々に飛び出てくる罵声に苦笑する。

「これもパターンだな。ガキかテメェは」

毎度の事だぜ?と笑ってやると、甥っ子は何故か顔をまた真っ赤に染め上げた。

「…くそったれ!」

「ヘイヘイ」

最後の抵抗というよりは負け惜しみにも聞こえるその一言の後、大人しくなるのもいつものパターンだという事に――コイツは気付いていないんだろうなと、もう一度苦笑した。



ゆっくりとした手付きで大人しくなった身体に指を這わせながら、ふと思い出して手を止めた。


「…おい」

「――ナンダヨ」


ジロリと睨む姿に『可愛くねーな』と言おうとして、その可愛くないヤツに手を出しているのは誰だと思い当たり、それを言うのは止めた。



そのかわりに――。




「オメーは吸うなよ?煙草」


――俺が苦いのはヤだからヨ




耳元にそっと囁けば、甥っ子は一瞬目を大きくした後に心底呆れたような顔をした。
それでもその後に俺様を引き寄せて――…




「死ね」




綺麗に笑ってそう言って、唇が触れるだけのキスをしてきた。






END


2006.04.30
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