忍者ブログ
* admin *
[130]  [129]  [128]  [127]  [126]  [125]  [124]  [123]  [122]  [121]  [120
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

y


『相思華』――――葉は花を想い、花は葉を想う。
            決して合間見えることは出来ない愛しき片割れ。





「彼岸花がもう咲いているのか」
 道の脇に揺れる赤い焔――― 一般的に彼岸花と呼ばれる花だ。細い茎の先に艶やかな赤い花びらが踊っている。
 いったい、いつ芽を出すのか、気がつけばその赤が目に付く。
 近づいて、それに手を伸ばす。だが、触れる間際に躊躇うように指先が揺れた。
 よく考えてみれば、この花に触れたことは、ほとんどなかった。
 小さい頃から、この花には毒があると教えられたせいだろう。確かに、茎や球根には毒性がある。口にすれば、吐き気や下痢を催すことがあるという。
 だが、それを知ってからも、触れる機会はなかった。
 その姿が、燃え盛る炎に似ているためだろうか。
 だが、実際それは、熱い火ではなく、ただの花。触れたところで、傷などは負わない。
 危惧すべきことは何もない。
 ならば、なぜ触るのを躊躇うのだろうか?

「アラシヤマ……」

 思わず漏れた自分の言葉に、シンタローは、ぴくりと身体を揺らす。危うく、彼岸花の花びらに指先が触れそうになり、慌てて引っ込めた。
 そうする必要はなかったのだけれど、けれど、やはりなぜか触れられぬ雰囲気をそれを持っていた。
 それがなぜなのか………気付いていながら、シンタローは気付かないふりをする。
 目の前には、赤く燃える炎の花。
 それに連想されることなど、たったひとつで、だからこそ、シンタローは目をそむける。自分の気持ちと共に。
 
 それは、誰にも―――自分自身ですらも気付いてはいけない気持ちだ。

 
 シンタローは、立ち上がった。
 もう瞳には、焔の花は映らない。



 ただ、その背後で、ゆるりとそれは揺れていた。






 『彼岸花』―――花言葉は想うは貴方。
           ただ、貴方だけ。






-----------------------------------------

『相思華』は、韓国語での『彼岸花』の名前らしいです。
それから、『彼岸花』の花言葉のひとつが『想うはあなた』だそうです。

 
PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved