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01. 友情










紅茶の薫りは暖かくやわらかで。
窓の外に広がるのは穏やかな晴天。
仕事の合間の休憩というにも、あまりに平和な昼下がり。
そんなさなかに、

「シンちゃん、連想ゲームです。友情っていえば?」

と、のんきな顔のグンマに尋ねられて。
即座に出たのは

「パプワ」

の三文字。ここまでは、穏当。





「あ、うん。そうだね」

彼の島の友人の名前を聞いて、
グンマは花がほころぶように、にっこりと笑う。

「じゃあ、その次は?」
「……何が、言いてーんだよ」
「士官学校のハナシしてるのに、全然名前出てこないなーって」

笑顔の兄弟のその台詞に。
表情が凍りついたのは、敗北宣言も同じだった。





グンマは士官学校でもちょっと特殊な立場だったし、
俺らの同期生の当時のことはほとんど知らないみたいだったから。
せがまれるままにトットリやらミヤギ、コージの話は、確かにしてた。


にしても。
投げかけられたその言葉のイメージとして、
瞬間、降って湧いてきたのは、この上なく暑苦しい男の姿。


イタズラっぽい笑顔、なんて、なまじ顔だちがかわいらしいだけに、凶悪で。
なんとかその言葉に関する明るいイメージ
―――たとえば、士官学校での一コマだとか、戦場でのふとした交流だとか、
そういったものを必死で思い出そうとしてみるものの。
友情パワーと叫びつつ炎上するアイツの強烈過ぎるインパクトの前に敢え無く惨敗。
がしがしと髪を掻き毟る。


「あー……違う、もっとこう…ポジティブなイメージが……」
「あはは」


白いクリームに包まれたケーキにフォークを入れつつ、屈託なく兄弟は笑う。


「食い込まれちゃってるねえ、シンちゃん」


主語を入れずに言うその気遣いだか揶揄だかがムカついて。
思わずグーで殴ってしまった。久しぶりに。


グンマは前みたいに泣き出したりはせず、ひどいよーと言いながら尚、笑った。










友情なんて大層な言葉が相応しいわけじゃなく、コレはもうほとんど悪夢の条件反射。
俺はアイツのために何一つしてやったことはないし、
これからだって何一つしてやるつもりもない。けれど。










大体、鬱陶しいにも程があるだろ。





言葉ひとつで、何もかも許して笑う男なんて。



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