好意から花を贈られて悪い気のする人間は、たぶん、いないと思う、けれど。
アイリス、百合、ストック。
「あなたを大切にします、純潔、永遠の恋・豊かな愛」
スミレ、マーガレット、勿忘草。
「誠実・愛、心に秘めた愛、真実の愛」
白バラと赤バラ、スターチス、ライラック。
「尊敬、愛・情熱、永久不変、愛の芽生え」
ジャスミン、ニコチアナ。
「私はあなたのもの、あなたがいれば」
興味深そうに響く、高い声。
今朝、花言葉辞典を片手に現れたグンマは、俺が放っておくのをいいことに部屋を駆け回っては、いちいち花に付属された意味を(知りたくもないのに)教えてくれている。
重いため息を堪えながら、俺は、痛み出したこめかみを押さえた。
突然、花束及び鉢が総帥室に届けられ始めて、1ケ月ばかり。
現在の総帥室には花が溢れている。
むせ返るような甘い匂いにも、部屋とは不釣り合いな鮮やかな色彩にもいいかげん慣れたものの、贈り物の意図がわからないことは怖い。
(わかりすぎるからこそ怖い、とも言えるか)
贈り主を知っているはずのキンタローは、訊かれないかぎりその名を出さないだろうし、俺も敢えて訊く気にはなれない。
そして、断定しようと思えば断定できる贈り主は、花が届き始めてから姿を見せていない。
「シンちゃん、大丈夫?」
「・・・ああ」
「えーとね、昨日の花はアイビー。花言葉は永遠の愛、友情、信頼」
脱力して、背もたれに全体重を預けた。
ぎし、と皮の軋む音とほぼ同時に、扉が軽快に開いて。
「シンタロー、今日の花だ」
「・・・あんがとよ」
いつも通り、キンタローの手によってデスクに置かれた鉢植えには、オレンジ色の花が咲き誇っている。
見慣れない、珍しい形。
「・・グンマ、これは?」
「ん、ん~~~~え~と、あ!ストレリッチア、だって」
「ストレリッチア?」
「ストレリッチア、もしくはストレチア。和名は、極楽鳥花」
力が抜けたはずの体から、さらに力が抜けた。
色も、名前も、1人の男のことを彷佛とさせる。
「花言葉は、恋する伊達男」
アイリス、百合、ストック。
「あなたを大切にします、純潔、永遠の恋・豊かな愛」
スミレ、マーガレット、勿忘草。
「誠実・愛、心に秘めた愛、真実の愛」
白バラと赤バラ、スターチス、ライラック。
「尊敬、愛・情熱、永久不変、愛の芽生え」
ジャスミン、ニコチアナ。
「私はあなたのもの、あなたがいれば」
興味深そうに響く、高い声。
今朝、花言葉辞典を片手に現れたグンマは、俺が放っておくのをいいことに部屋を駆け回っては、いちいち花に付属された意味を(知りたくもないのに)教えてくれている。
重いため息を堪えながら、俺は、痛み出したこめかみを押さえた。
突然、花束及び鉢が総帥室に届けられ始めて、1ケ月ばかり。
現在の総帥室には花が溢れている。
むせ返るような甘い匂いにも、部屋とは不釣り合いな鮮やかな色彩にもいいかげん慣れたものの、贈り物の意図がわからないことは怖い。
(わかりすぎるからこそ怖い、とも言えるか)
贈り主を知っているはずのキンタローは、訊かれないかぎりその名を出さないだろうし、俺も敢えて訊く気にはなれない。
そして、断定しようと思えば断定できる贈り主は、花が届き始めてから姿を見せていない。
「シンちゃん、大丈夫?」
「・・・ああ」
「えーとね、昨日の花はアイビー。花言葉は永遠の愛、友情、信頼」
脱力して、背もたれに全体重を預けた。
ぎし、と皮の軋む音とほぼ同時に、扉が軽快に開いて。
「シンタロー、今日の花だ」
「・・・あんがとよ」
いつも通り、キンタローの手によってデスクに置かれた鉢植えには、オレンジ色の花が咲き誇っている。
見慣れない、珍しい形。
「・・グンマ、これは?」
「ん、ん~~~~え~と、あ!ストレリッチア、だって」
「ストレリッチア?」
「ストレリッチア、もしくはストレチア。和名は、極楽鳥花」
力が抜けたはずの体から、さらに力が抜けた。
色も、名前も、1人の男のことを彷佛とさせる。
「花言葉は、恋する伊達男」
PR