肩を突かれ、窓際まで追い詰められたのは突然で、俺は咄嗟に右手のひらに気を溜める。
それを解き放つより早く、明らかに狙ったタイミングで、なにやら小さくもない固まりを口唇に押し入れられた。
だから結局不発の右手は、抵抗なのか同意なのかも曖昧に、相手の腕を掴むに止まったのだった。
「・・甘ぇ」
口唇を離して、数秒。
べたべたになった舌を突き出して文句をいえば、アラシヤマは柔らかく笑ってみせた。
「シンタローはん、お帰りなさい」
「わざわざ熱烈な出迎え、ありがとよ」
皮肉が通じないわけでもあるまいに(元々、皮肉なんぞ気にしないやつではあるか)やはり、アラシヤマは笑ったままで、今度は比較的軽めに人の舌先を舐める。
甘い。
アラシヤマの舌と俺の舌、もう、どっちの責任なんだかわからないけれど。
「今回の遠征、ずいぶん長かったどすな」
「ああ、でも予定通りだろ」
「・・シンタローはん、今日、何日か覚えてはります?」
徹夜仕事だとか遠征で何ケ月も本部を離れたりだとか、そんなのがしょっちゅうだから、不便しない程度には日にちの感覚なんて失っている。
それでも記憶の糸を辿ってみて、ついでに壁にかかったカレンダーを見やれば、容易にアラシヤマの言いたいことは理解できた。
癪では、あるが。
「・・おじさんの誕生日」
「・・いや、それとは別件で」
今日がなんと呼ばれる日か、なんて。
無理矢理であろうとも、イベントを象徴する物体を既に受け取ってしまった以上、どうでもいいことのような気がして。
まだまだ口に残る甘さがなんだかおかしくなって、久しぶりに笑った。
それを解き放つより早く、明らかに狙ったタイミングで、なにやら小さくもない固まりを口唇に押し入れられた。
だから結局不発の右手は、抵抗なのか同意なのかも曖昧に、相手の腕を掴むに止まったのだった。
「・・甘ぇ」
口唇を離して、数秒。
べたべたになった舌を突き出して文句をいえば、アラシヤマは柔らかく笑ってみせた。
「シンタローはん、お帰りなさい」
「わざわざ熱烈な出迎え、ありがとよ」
皮肉が通じないわけでもあるまいに(元々、皮肉なんぞ気にしないやつではあるか)やはり、アラシヤマは笑ったままで、今度は比較的軽めに人の舌先を舐める。
甘い。
アラシヤマの舌と俺の舌、もう、どっちの責任なんだかわからないけれど。
「今回の遠征、ずいぶん長かったどすな」
「ああ、でも予定通りだろ」
「・・シンタローはん、今日、何日か覚えてはります?」
徹夜仕事だとか遠征で何ケ月も本部を離れたりだとか、そんなのがしょっちゅうだから、不便しない程度には日にちの感覚なんて失っている。
それでも記憶の糸を辿ってみて、ついでに壁にかかったカレンダーを見やれば、容易にアラシヤマの言いたいことは理解できた。
癪では、あるが。
「・・おじさんの誕生日」
「・・いや、それとは別件で」
今日がなんと呼ばれる日か、なんて。
無理矢理であろうとも、イベントを象徴する物体を既に受け取ってしまった以上、どうでもいいことのような気がして。
まだまだ口に残る甘さがなんだかおかしくなって、久しぶりに笑った。
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