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■4話 by Yukio

マジック

「何って…こうしないと、シンちゃん抵抗するだろう?」
 背後から、シンタローの顔を見つめて、楽しげに囁く。
 相当悔しいのか、形のいい唇を噛み締めて怒りに震えている。
 その様子にほくそ笑みながら、彼の顎に一指し指を置くとそのまま、喉元からくっきりと隆起した鎖骨をなぞり、総帥服のボタンに指をかける。
 その後の行動を読んでか、立ち上がろうとシンタローの身体が浮き上がる。…否、浮き上がろうとしたという所か。
 左腕でしっかりと固定していた為、実際にはさほどの抵抗でない。
 その隙に右手を器用に走らせて、ボタンを全て外して左右に開くと、淡い色の小さな飾りを先端に乗せた、ほどよく筋肉のついた胸が目に入った。
 なおも小さな抵抗を繰り返すシンタローを見やりながら、無言で拘束していない左腕から邪魔な衣服を無理矢理はいだ。
「ちょっ…!冗談でもやりすぎだろっ!…っく!!」
 まさか、執務中にここまでするとは思っていなかったらしく、シンタローが本格的に焦ったのか拳を私の腕めがけて突き出した。
(甘いよ…シンちゃん。パパはいつでも本気だよ)
 …だから、お前は甘いというんだよ。
 袖から左腕をはぎとれば、もう自由にしておく必要は無い。受け止めた左手をそのまま捻り右手と同様にヘッドレストに縛り付けた。
「おや、冗談でこんなことをするようなお友達がシンちゃんには居るの?…許せないね」
 …こんなにスムーズに行くとは思わなかった。
 目を細めて背後からシンタローの耳元に囁くと、彼の肌が朱に染まりピクリと身じろいだ。
「痛い?そんなことないよね」
 へットレストに括りつけられた、シンタローの手に軽く唇をつけると、そのまま左手の肘あたりまでゆっくりとなぞり…背後から手を差込んで、彼の背中でごわついている服を引っ張り胸元を露にする。
「その友達とは…こんなこともする?」
 シンタローの言葉をわざともじりながら、肘の内側の二の腕あたりに、吸い付いてうっすらと紅い後を残した。
 そのまま、イスに手をかけると反転させてシンタローと向き直る。
「どうするつもりだよ……」
 こんな状況だというのに、気丈に私を睨みつける。そんな瞳でさえ、私を誘っているようにか思えない。
「どうしようか…。どうすると思う?」
 片手を肘かけてにそえて、もう片方の指先で耳の後をなぞると、シンタローの身体がヒクン、と反応する。
 そんな自分の反応が嫌なのか、紐を千切ろうと腕が小刻みに震え、歯は食いしばっている。
 …このままでも問題は無いが、この先暴れられて逃げられては面白くない。
 …念には念を…転ばぬ先の杖ってね。ニタリと唇を吊り上げると、その笑みにシンタローが狼狽の色を濃くする。
 …う~ん、久々に見たな。シンちゃんのこういう顔…新鮮・新鮮。
「今、シンちゃんを縛ってる紐ね。特殊なゴムでね…最近作らせたんだけど、どんなに力入れても無駄よ」
 まっ、暴れたいなら暴れてもいいよ。幸い、跡がの残らない素材にしてあるし。
 私がそう言うと、瞳を一瞬見開き、ガタガタと諦め悪く腕を一層振るわせる。
 意識が腕に向いているうちに、身体を足の間に割り込ませると、片膝をシンタローの左腿に乗り上げて、ベルトに手をかけた。
「テメェ、ふざけろよ…」
 ギリギリと歯を食いしばり、興奮に目元を朱に染めて滲ませるがその瞳には、不思議なほどの色気がある。
 その様子が、私の欲望にまた火をつける。
「そんな顔しても、煽るだけだといつも、言ってるだろう」
 言いながらスラックスのベルトと、ボタンを外すとシンタローは息を飲む。
 私の手がファスナーをゆっくりおろしているのを見て、彼は一層焦ったように、
「やめ……っ、やめろって!」
「腰をあげて」
 そのままスラックスを、臍の下あたりまで下ろして促すと、シンタローは歯を噛み締めて、逆に腰を強く座席に押し付ける。
「腰をあげなさい。 このまま放置してもいいんだよ。……それか、今から誰か呼ぼうか……ん?」
 見上げてやると、屈辱に歪んだ顔でおずおずと、腰を浮かせる。
「……いい子だ」
 私は囁いて首筋に顔を埋めると、滑らかな肌に口をつけて軽く歯を立て、腿に乗せた足を下ろすとパンツごとスラックスを抜き去った。
「……あっ……」
 シンタローの唇が微かな喘ぎを漏らす。
「感じちゃった? まだ早いよ」
「何が…っ」
 その言葉に一笑すると、右足を掴み肘掛かけると足首を括りつける。
「おい…何してんだよっ!解けっ」
「何って…楽しい事に決まってるだろう」
 言いながら、抵抗する左足を掴むと同じように肘掛に括りつけた。
「すぐに、お前も…楽しくなるよ……」
(悦くなるの間違いかな…)
 数歩、シンタローの前から下がると、腕を組んで鑑賞するように下から上へと、ゆっくりと視線を動かす。
 両腕をヘッドレストへ括り付けられ、両足を肘掛にかけられて縛られ、M字開脚のシンタローの姿を…。
「見るな…ッ!見るんじゃねぇっ……さっさとやめろ!」
 恥ずかしそうに、身を捩じらせて、視線が合わないように顔を背けかぶりを振りながら、拒絶の言葉を口しても、露になった彼の欲望は立上がりかけていて…。
「やめて欲しいの?…それならどうして……」
 私はすぐ近くまで行くと、彼のやや立上がったものを見つめながら言う。
「…こんな風に硬くしかけてるのかな」
「違う…達ってなんかない」
 これまでの行程で、彼のものが少しではあるが立上がりを見せている。
「コレが感じてないと言うんだね…じゃあ、シンちゃんはどこか一番感じるのか、私に教えてくれないか」
 指先で、硬くなりかけた茎の部分をそっと悪戯に上下に擦り、指を離して彼の顎を掴むと、顔を正面に向きなおさせる。





■5話 by Hisui

シンタロー

「すぐに、お前も…楽しくなるよ……」
 艶を含んで歌うような声で囁かれる。

 ふざけんなっ。
 わざわざこんな場所で、こんな格好にされた時点で、楽しくなる要素なんか全然ないだろうが。
 いつも腰を下ろしている革張りの椅子が違うもののように感じられるのは、右袖を除けば「ほぼ」ではなく「確実に」全裸に剥かれた皮膚が、直接触れているからだ。
 身を捩れば、体温に馴染んだ場所からぺり、と引き剥がされ、新たに触れる冷たい感触が再び肌に吸い付いて温まっていく。
 この感触だけでも気色悪いっていうのに、更に腕は首の後ろへ上げられ、両足は開かれ、腋の下も、股間も全て晒されたとんでもない格好のまま椅子に括り付けられて、楽しい気分もあったものじゃないだろ。
 くそっ。どんなに暴れても戒めは痛みを感じはしないが、きつく食い込む圧迫感だけは確実に伝えてくる。

 なのに。
 マジックが手をかけた跡が僅かな熱を持つように感じた。
 肌を辿った指の体温。腕の内側や首へと遠慮なく吸い付いてきた唇の熱さ。そして、服を掴んで引き剥がす際に掠めた生地の摩擦からさえ、熱を移されたかのように皮膚が粟立つ。
 全ての感覚が生々しく、忘れていたもどかしい熱を呼び覚まし、身体は素直に反応を示しているのが自覚できた。
 隠すこともできず、ただ浅ましく欲望を示す身体を、明らかにそれを愉しんでいる視線の前に差し出すしかないのが口惜しい。
 それでも、明らかに欲望を示す自身に直接触れる指が動けば、薄い皮膚を通して伝わる刺激に腰が揺れ、更に快感を求めてしまうのは、仕方がないことで。
 喉が震えたのだってそれが気持ち良いからってわけじゃないというのに、全てをわかったような視線が肌に纏わりつくのが疎ましい。
 顎をとられると、愉しげに目を細めて見下ろしてくるマジックと視線がかち合う。今の状況が俺の意に沿わぬものであることを伝えようと眉を顰めたまま睨み返すが、薄い唇の端が僅かにつりあがって笑みが深まるだけだった。

「コレが感じてないと言うんだね…じゃあ、シンちゃんはどこか一番感じるのか、私に教えてくれないか」
「は?何馬鹿言って…」
 そんなこと言われて教えられるわけがないだろう。そうでなくても既に言い様に振り回されてこのザマだ。これ以上付け上がらせてたまるか。
 と、続けて口走ろうとした言葉は、耳許を擽る吐息と声に打ち切られた。
「教えたくないっていうなら、ひとつずつ確かめていくとしよう」
 そのまま耳朶を柔らかく食まれ、かかる息の熱さから逃れようと喉を反らすが、後頭部を支える椅子に遮られる。
「耳も気持ち悦かったよね。確か…」
「…なっ……ぁ!」
 強張る身体に一切触れず、左の頬を掌で包み込まれ、伸ばされた指先の爪が小さく掻くように耳の縁を辿ってくる。そのむず痒い刺激に反り返った喉が震える。
 身体の奥で燻る熱が更に高まり、中心に覚えるもどかしさもまた増していき腰が揺らぐ。
無意識のそれを、戒められた足首と椅子の軋みによって自覚させられた。
 頭を起こしたマジックが、唇に吐息のかかる至近距離で見つめてくる。耳孔の縁を滑らかな指の腹が丁寧になぞると、そのままゆっくりと奥へと。
 強く皮膚を擦るわけではなく、産毛を掠めるような小さな動き。ざわりと意外なほどに大きな音が響いて、背中を這い上がる奇妙な感覚。そこから呼び覚まされる欲望に一瞬ここがどこだかを忘れそうになり、椅子が小さく軋んだ。
「ほら、腰が揺れた。恥ずかしい子だね。ここがどこだかわかっているの?」
 愉しげな笑いを含んだ声に、意識を現実に引き戻され、背中が冷たくなる。
 このまま目を伏せて流されてしまえば楽だった筈なのに、マジックは許してくれなかった。
 卓上のペンを手に取ると、トントン、と机の端を叩いて鳴らし、机上に投げ出したままの書類の端をめくる音まで聞かせ、ここが俺の執務室であることを思い知らそうとしてくる。
 更に追い討ちをかけるように繰り返される問い。
「ねぇ、シンちゃん。ここがどこだかわかっている?」
「…ぁ……やだ…」
 乾いた指で嬲られた耳の縁を熱い吐息が覆う。強い羞恥に煽られた身体は、意識が冷えるのとは裏腹に更に過敏に感覚を受け止め、快楽へと変換していくらしく、息が甘く震えてしまう。
 堪え切れずに、両目を固く閉じる。今の自分の身体を目の当たりにしたくなかったのだが、それも逆効果だった。視界を塞いだ分、より匂いや音に対しては過敏に反応してしまい、耳を掠めてくる吐息や、僅かに鼻腔を擽る甘い香までが甘い刺激となって、俺の身体を苛む。
 張り詰めて脈打つ幹の先端から、とろりと何かが溢れ伝い落ちる気配に小さく息を詰めた。
「ぁ……っ……」
「やっぱり耳にもボタンがあったね」
「なっ…に……!?」
 囁きと共に、耳朶から耳孔へと濡れた舌が忍び込み、ぴちゃりと水音が大きく響く。
 何かを確かめるような口調に瞼を開けると、眼前にマジックが満面の笑顔で迫っていた。
 身体の内側に篭る熱を見透かすような深い青が、俺の喉元から下、胸元へと舐めるように視線を滑らせていき、一点で静止する。
 質量を伴いそうな視線に射抜かれ、胸元で僅かな主張を始めて固く尖り始めた乳首が主張を始めていた。






■6話 by Yukio

マジック

「も……っ、……よせっ!」
 私が濡れる耳朶から、ほどよく汗ばんで艶やかにしたシンタローの肌を舐めるように視線を走らせると、先ほどまでは大して変化を示さなかった乳首が反応を示す。
 シンタロー自身もそれを知ってか、居心地悪そうにモゾモゾと不自由な体を動かした。
 …それじゃ、弄って下さい。と言っているようなものだろう。
「なぜ……気持ちよくない?」
 口角を吊り上げて、耳元で低く囁くと微かなシンタローの動きとともに、胸の飾りが立ち上がりをみせる。
「あー、耳だけで感じちゃったのが恥ずかしい?でも、シンちゃんの乳首はそう思ってないみたいだよ」
 ほら。っと耳元で囁いたまま鎖骨に置いた指先を胸まで走らせて、飾りの周りの薄いピンクの部分をクルクルとなぞりあげる。
「………っ」
「触って欲しい、嘗めて欲しいって言ってるみたいだけど…」
 そう囁いて、口をうっすらと開くとシンタローの耳朶を包み込んで、じゅっと音を立てながら吸い付くと、顔を背けて
「離せよ、仕事中だろ……っ」
 きつい眼差しを私に向ける。
 ここまできても、抵抗を示すシンタローには、尊敬の念さえ浮かぶ。
 例え声が掠れて上擦り、瞳の奥では欲望の火が灯っていたとしても。
「ねぇ、嘗めて欲しくない?それとも歯を立てて…吸ってあげようか。音がするぐらいに」
 唾液で濡れた耳に、熱い息を吹きかけ、胸元で固くなった乳首を弾いた。
「あ、や……はっ」
「嫌?……やめて欲しい?」
 何度も指先で片方の乳首を弾きながら、もう片方は先端の周りをクルりとなぞりあげた。
 歯を食いしばりつつも、甘い吐息が唇から零れ落ちた。のは、一時ですぐに奥歯を噛み締めると、ギリギリと刺すような瞳で私を睨みつける。
 その瞳からは、『さっきから、そう言ってるじゃねぇか!同じことを言わせるなッ!』という言葉が聞こえてくるようで、思わず口元が緩んでしまう。
 …本当に、私を煽るのが上手いよ。故意にしてるのでは?とさえ思えてくるほどにね。

「素直じゃない子には、お仕置きが必要かな」
 私の言葉に微かに、動揺の色を浮かべたシンタローを見やりながら、彼の机へと視線を走らせた。
 几帳面な息子のことだ、あるハズだろう。
 折角だから、常に執務室で羞恥心が芽生えるようにするのも、面白い。
 そう想いを巡らせながらシンタローの執務机に手を伸ばすと、引き出しから目当てのものを探り出した。
「シ~ンちゃん。これ、なーんだ」
 それをわざとらしく、彼の目の前に見せ付けると左右に軽く揺する。はじめは 怪訝そうな顔をしていたが、私の行動に思い立つものがあったのか、ハッ!と顔色を変えた。
「そんなもの…羽根ボウキなんてどうするつもりだッ!」
 そう、どこにでもある…羽根の弾力がしっかりとした、片手に持ち消しゴムなどを払う時に使うそれである。
「どうって…シンちゃんの想像通りだと思うけど」
 そう言って、それでシンタローの首筋から胸元へと一瞬滑らせると、こそばゆいのか身を捩じらせた。
「………くぅっ」
「くすぐったいかい?」
 普段なら、くすぐったいと笑い声しかでない所だろうか、ある程度追い詰められた色気を帯びた体には辛いかもしれないね。
 何度も、肝心な胸の飾りには触れずに、耳元からお腹の臍あたりを往復させると、クネクネと体を身を捩らせ始めた。
「どうして、欲しいか。シンちゃんの口から聞くまでは、コレやめる気ないからね」
 シンタローの視線が羽根ボウキに集中するの見とめて、ゆっくりと胸元へそれを這わせた。
 最初は、羽根先が触れるか触れないかぐらいで、胸元の先端を掠めさせ、時折強く弾く。
「ぁ…、はぁっ……ん」
「感じちゃう?」
 クスクスと喉の奥で笑いながら、胸元の羽根ボウキはそのままに、もう片方の乳首に顔を近づけるとチュウとわざと音を立てて吸い上げた。
「あ……ッ、あ、あぁ」
 縛り付けたイスの時折軋む音を聞きながら、吸い付いた乳首がたっぷりと濡れたのを確認して口を離した。
「さ、今度はこっちの乳首を可愛がってあげよう」
 そういって、濡れた乳首を羽根ボウキでなぞりあげると
「やめっ…くっ、ん……あ……!」
 シンタローの甘い嬌声ともに、先ほどの先走りの蜜がトロトロと幹を伝って、革張りのイスに濃い染みをつくった。
「おやおや、シンちゃんから出た透明な液が革張りのイスを汚してるよ。ガンマ団総帥ともあろうものが、恥ずかしくないのかい?」


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