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m*

自分を乗せたまま止まってしまったエレベーターの中で、シンタローは深いため息をついた。

あぁ、まったくついていない。

特に急いでいたわけでは無いけれど、それにしたって何もマジックと二人きりで居合わせている時に
止まらなくても良いだろうに。
密室に『二人きり』なんてあまりにも都合が悪すぎる。
シンタローがちらりと目線を横にいるマジックの方に向けると、案の定彼はこの状況を楽しんでいるかのように
顔を綻ばせていた。
・・・絶対に話しかけたくない。シンタローは視線を元に戻すと壁を背にしてその場にしゃがみ込む。
いつものようにしつこく喋りかけてくるかと思っていたら意外にも彼が長いこと黙ったまま立っているので
シンタローは自分の方が何だか落ち着かなくなり、もう一度彼の方に目をやると真っ先にマジックの手が視界に入って
‘男のくせに随分と綺麗に爪を整えているんだな’とシンタローが聞くと

「シンちゃんの中を傷つけないように気を遣ってるんだよ」

とマジックは答えた。
此処がエレベーターの中でなければ、即座に眼魔砲をぶっ放されていたところだろう。
シンタローの顔は怒りと羞恥でひくひくと引きつっていた。
「余計なお節介だ。」
そう嫌味を吐いてやると、マジックはふ・と無邪気に微笑んで見せた。
「あぁ、そうか。シンちゃんは痛い方が好きだもんね。」
揶揄された事に腹を立て、シンタローは勢い良くその場から立ち上がりマジックの胸元を両手で掴む。

アンタなんか、オレがその気になればすぐにでも襲えちまうんだぜ。

どすの利いた声で言ってやると
「そうなんだ。知らなかったな。」
と笑われてしまった。
その人をおちょくった態度にシンタローは怒りを覚えて、気が付けば思わず、彼の首元を痕が残るほど強く噛んでいた。
マジックが低く呻いたのが解かる。
ざまぁみろ、とシンタローは一度噛んだ場所と違う所を同じように強く噛んだ。
それを何度も繰り返している内に腰元を強く抱かれて、シンタローが口を離すと彼は静かに微笑んで見せた。

声が出そうになったら、そうやって噛んでると良い。

囁かれた言葉にシンタローは全身の血の気が引くのを感じた。
マジックの腕から逃れようとしても、こうも腰をがっしりと強く抱かれた状態ではそれも無駄な抵抗に終わるだろう。
ずるりとマジックの指が服の隙間から入り込み、何の前戯も施されていないそこを、遠慮なく貫いた。
「――――――・・・・・ッ・・・!」
激痛に身体が仰け反る。
まさか、こんな事をされるとは予想もつかなかった彼はマジックの肩に顔を埋もれるようにして声にならない悲鳴を上げた。
こんな、いつ動き出すか解からないエレベーターの中で、一体どんな神経をしてるんだと怒鳴ってやりたかったが下半身の痛みでそれも叶わない。
カメラだってあるって言うのに。
荒い息をついて痛みに耐えていると、マジックは冷たくシンタローに言い放った。
「コートも着ているし、最後までしなければ何をしてるかまでは見えないよ」
次第に増えていく指に、シンタローはマジックにしがみ付く事しかできなくなっていった。
内部を弄られながら、中心に手をかけられる。
直接触れてくる手の感触にびくびくと悔しいほど感じてしまい、頬が快感で赤く染まっていく。
熱い吐息が途切れる事なくシンタローの口から零れた。
「はぁ・・・、あッ・・・・」
すっかり濡れてしまっていやらしく蠢く内壁を爪で引っ掻かれる度気持ち良くて、
指だけで腰がこんなにも悶えてしまっている事をマジックに気付かれる事が嫌でしょうがなかった。
啄ばむようなキスの合間につく息が、たまらなく熱い。
「やっぱり痛いのが好きなんだね」と呟く声に、シンタローが何も言い返さなかったのは
肯定を示すためじゃなく、キスをやめたくなかっただけなんだと言う事に彼は、マジックは解かっているだろうか。
深いキスと、肌に触れる指先。
それら全てにシンタローは酔い痴れた。
開放を促されるように、先端を押される。白濁した液体がマジックの服と、掌を汚した。
「くそ・・・ッ」
はぁ、と息をついて彼を見ればやはり笑っていて、おまけに
「シンちゃんも変態だね。パパと同じ。」
とまで言われてしまった。
やるせない気持ちになったが、それでもまた唇を求められてしまえば再び目を閉じてしまう。
このまま時が止まってしまえば良いのにとすら考えてしまう自分は、もしかしたら本当にこいつと同じ変態なのかもしれない。
そう思いながら、シンタローは彼を強く抱きしめた。
扉が開くまで、ずっと。
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ms*

「またケンカしたのか・・・」

部屋に入るなり、アザのついた兄の顔が目に映りハーレムは呆れたようにそう言い放った。
またシンタローだろう、と付け加えてもマジックの方は気にも留めないないのかニコやかにこちらを微笑んでいる。
そんな兄の気取った態度が癇に障ったのか、ハーレムはわざとらしく子供じみた稚拙な言い回しでシンタローの愚痴を零したが、
それでもマジックは上品に笑ったままだ。
おもしろくない、とばかりにハーレムが口を閉ざすとマジックは優しい口調で彼に言った。

「オマエにもその内わかるよ。」

あぁ、まったく。この人はいつもこうやってすぐに兄貴ぶるんだよな。
そんなコトをぼんやり考えながら寂しかった口元に1本のタバコを咥えてライターで手早く火をつける。
このライターはお気に入りで、いつも持ち歩いている。
フー、と息を吹けば濁った煙が天井を舞った。

「わかりたくもねぇな。」

タバコの煙を目で追いながら、そう呟くとマジックはく、く、と肩を揺らした。

「何がおかしンだよ?」
「ハーレムは、子供だね。」

四十幾つにもなって実の兄に‘子供’呼ばわりされるとは思わなかった。
思わず目を丸くしていると、マジックは自信たっぷりに彼に言った。

「素直じゃない子ほど、可愛いと思わないかい?」

はいはい、カッコつけ屋さん。
と、心の中でハーレムは軽くあしらってやった。





静かな、誰もいない総帥室の中でシンタローは一人、ギシギシと椅子を前後に揺らしていた。
今朝方、ほんの些細な事が原因で父親を殴ってしまった右手をシンタローはじっと見やる。
殴った自分でもコレほど痛いのだから、マジックの方は相当痛かったコトだろう。アザでもできているかもしれない。
そもそもケンカの原因は、シンタローが昨夜、部下と連れ立って夜遅くまで酒場で飲み明かして早朝6時を回ってから家に帰宅したコトにある。
マジックが嫌味ったらしくネチネチネチネチ文句をつけた事がシンタローの神経を逆撫でし、ついには暴力沙汰にまで発展してしまったと言うワケだ。
だが、シンタローの言い分としては大の男が25にもなって朝帰りした位でそこまで過剰に口を出される筋合いはない!
であったが生憎どちらも一歩も引かず今に至る。

右手を開いては閉じ、開いては閉じ、を繰り返す。

いつも思うのだが、何故あの父親はこう言う激しいケンカの時に絶対に手を出さないのだろう。

・・・まるで自分が本当に手のつけられないガキみたいじゃないか。

くそッ!!!と、力まかせに目の前の机を拳で思い切り叩く。
イライラしてしょうがない。仕事も手につかない。本当に最悪だ。
へらへらと笑うあの憎い父親の顔が頭をよぎった。

まったく。
何だってアイツはいつまで経ってもファンキーな親父でいるつもりなんだか!!!

そんな事でシンタローの頭はいっぱいだった。
無駄な時間が刻々と過ぎていく・・・。

(あんな父親、大嫌いだ。)

ゴツン、と硬い机に突っ伏して頬を密着させる。
そのまま目を瞑ると、やはり目蓋の裏にも父の影ばかりを追ってしまってまったくもって落ち着かなかった。

『私はオマエの父ではない』

突然、父親の痛烈な言葉が脳裏に甦り、シンタローはぎょっとして慌てて目を見開いた。
寒気がする程の冷たい言葉に未だショックを引きずっていると言うのか。
それが急に恥ずかしくなってシンタローはますます身体を縮めて机にうつ伏せた。

「・・・・。」

そっと自分の下半身に手をやる。
そう言えば暫らく女を抱いていないな。
そう一人ごちた。
こんな鍵の閉め切った寂しい部屋で一人でマスをかくなんて自分はどれだけ孤独なんだかまったく救われない。
シンタローは重いベルトを外す手を早めた。

「ぅわ・・・」

手にはもうネバり気がついていて、コレが所謂疲れマラってヤツか。オレはそんなに疲れてるのか。
それもこれも全部あの親父のせいだ。
そんな自己中な事を考えながら、欲望に忠実に、シンタローは自分のそれを片手で扱いた。
くぐもった声が部屋中に響き渡る。
何か、何か良いネタはないか。
そんな事を貪欲に求めるとやはりあの父親の事が頭に浮かんで、
そんな自分が情けなさ過ぎてシンタローの目にじわりと涙が滲んだ。

「くそ・・・・ッ」

感じてしまう自分が悲しかった。
認めない。認めたくない。絶対に。
それでも早める手を止める事ができなかった。

『シンタロー』

(アンタが!!アンタがそんな風にオレの事呼ぶから・・・!)

たまらなく胸が熱くなって切なくなる。
だけど絶対に言ってやるもんか。

「――――――――・・・・・父さん・・・・ッ・・・!」

一声啼いて、シンタローは自分の手の中にそれを放った。
部屋には、熱い吐息ばかりが残った。
・・・悲しかった。





昨夜のケンカが尾を引いていて、仕方なくシンタローは寄り道をする事もなくまだ夜も早い内から自宅へ帰ると
リンビングの方に煌々と明かりがついているのでそのままそこへ向かうと彼はいた。
テレビの前の大きなソファーベッドの上で綺麗な顔を仰向けにして眠っている。
目を閉じているせいかいつもよりあどけない無防備な顔には自分のつけた青いアザが未だくっきりと痛々しいほどに残っていた。
何かで覆い隠せば良いものを、まったく嫌味な父親だとシンタローは悪態をついた。
「そーゆートコがムカつくんだよ。」
寝ている事を良いことに、ここぞとばかりに文句を言ってやる。
それでも黙ったままの父の顔は、何だか奇妙な感じがした。
自分のつけたアザにそっと触れてみる。
何も、こんなに痕が残るほど殴ることはなかった。
嫌になるほど自己反省をする。
この人は、自分の事を可愛いと言っては愛してくれるがシンタローにしてみれば、そんな事はまったく信じられなかった。

本当はずっと昔から自分にコンプレックスを抱いていた。

父親とまったく似ていない事。
秘石眼を持っていない事。
素直になれず、つまらない意地ばかり張ってしまう事。

従兄弟のグンマの方が、よっぽど素直で親父に似ている。
そう思っていたらまさか本当にグンマが親父の実の息子だったなんて、
シンタローは今まで信じてきたものを一気に失ってしまった。
「父さん」
呟いてみる。・・・返事はなかった。
「父さん・・・」
目を瞑ったままのマジックの唇に自分の唇を合わせた。
涙が頬を伝った。
自分でもどうして泣いているのか解らなかった。
ただ、キスがしたかった。それだけだった。
頬を濡らす涙はとても苦いのに唇だけはひどく甘かった。
苦しいのと悲しいのとで胸がいっぱいになる。
声には出さず何度も彼を呼んだ。すると、
それに応えるように下から腰を抱かれて、思わず口が開くと舌がゆるりと歯列を割って口腔を犯した。
迎え入れた舌に自分の舌を巻き取られ、唇の端から吐息が零れた。
お互いの舌を何度も濃厚に絡ませながら、お互いを抱き締める。
唇を離すと、彼は笑っていた。
「どうしたのかな。シンちゃん。」
揶揄うようにそう言われて、シンタローは自分の顔が一気に熱くなったのが解った。
あんまりと言えばあんまりの仕打ちに怒りで身体が震える。
何も言わずに立ち上がろうとした時、とてつもなく強い力でその場に押し倒された。
「―――・・・あにすんだ・・・ッ!」
「それはこっちの台詞なんじゃないの」
意地悪すぎる問いかけに、シンタローは恥ずかさで死んでしまいたくなった。
これが昨夜の仕返しなのかと、そう思うと悔しくてしょうがない。
「・・・そんな顔しないでよ。」
苦笑するマジックに、シンタローは黙ったまま顔を思い切り背けた。
どうせ、どうせ何を言っても無駄だ。
コイツはオレの事なんて、ちっとも解ろうとしないんだ。そう思ったから。
冷たい人だと軽蔑するのに、どうしてキスだけはこんなにも優しいのだろう。
赤い舌がちらりと覗いて、どちらのものとも言えない唾液をしつこく絡ませ合う。
こんな事を繰り返していると、頭がどんどんぼやけてきてしまって何をされてもイイような気分になってしまう。
(もう、どうにでもなればイイさ。)
シンタローはそのままマジックのキスに溺れた。
長い指が慣れた手つきで服を脱がしていく。
胸を弄られる度、声が漏れそうになったが相手を喜ばせたくない一心でシンタローは必死にこらえた。
本当に生意気だと耳元で囁くと、マジックはシンタローの首元にきつく噛り付いた。
「ぅあ!」
これはたまらなかったのか、シンタローの口から叫び声が上がった。
それをおもしろがって執拗にそこばかり責めてくるので、シンタローはキッと目の前のサディストを睨み付けた。
「アンタわざとやってんだろ・・・!」
「もちろん」
にこやかに返される。腹が立つ親父だ。
「でもねシンタロー。噛まれて感じるなんて、オマエも結構な変態だと思うよ。」
「・・・・ッ!」
もう既に反応しきってる自身を握りながらそんな事を言う父親に、自分の羞恥心を極限まで煽られ、シンタローの顔が
今度こそこれ以上無理な位にカァーッと赤くなった。
「何でそんなコト言うんだ・・・!」
もう泣きたい。泣いてしまいそうだ。
顔を隠したいのに、両腕を片手で抑えられてそれもままならない。
本気で嫌になる。
こんな変態な親父も、

そんな変態を好きな自分も。

「シンタローが可愛いからだよ。」
“だからつい苛めたくなるんだ”そう呟いて、彼はシンタローのそれを包んでいる手を勢いよく擦り上げた。
「ッあぁ!」
途端に上がる嬌声。出したくないのに口から漏れて、自分でも止められなかった。
「ヤだ・・・!嫌だ・・・!!」
それでも扱かれる度どんどん感じてしまって、自然に腰が揺れだしてしまう。
マジックが戒めていた手を離すと、シンタローは両手で彼の首にしっかりとしがみ付いた。
「んん・・・あぅ・・・・うぅ・・・・!」
力一杯自分にしがみ付く息子のあまりの可愛らしさに、マジックはごくりと喉を鳴らした。
狙ってやっているのかと思う程、たまらない仕草だ。
中に指を挿れてやると、シンタローの口から切ない悲鳴が上がった。
「シンタロー・・・」
「父さん・・・・ッ!」
狭い入り口がめいいっぱい広げられて、襞を抉るように掻き乱される。
中を指が行き来する度にもっと奥に刺激が欲しくて、たまらなくて、シンタローの腰が揺らめき出した。
女を抱くよりも、こんな男に抱かれる方が感じるだなんて絶対に認めたくないがそれがどうしようもない事実だった。
「・・・、ッやァ・・・んん・・・・ッ!」
根元まで指が差し込まれて中の柔らかい部分に爪が当たって痛いのに最高に気持ち良い。
指が引き抜かれる瞬間思わず出しかけた声が浅ましくて情けなかった。
「んはぁ・・・・!」
微かに掠れた官能的な響きの声で、マジックがシンタローの名を何度も呼び続けると、
それが嬉しくてそれだけで何でも受け入れてしまえるような気になってしまう。
「はぅ・・・・ッ」
抵抗もなく受け入れると彼自身が深く奥へ差し込まれて内壁を抉るそれは、指よりもずっと熱くてたまらなかった。
「あ、は・・・・ぃや・・・ッ!」
「・・・嫌じゃないクセに。」
いやらしい吐息が部屋中に充満する。
広い背中に服の上から思い切り引っかいても、マジックは怒ることなくシンタローを抱いた。









***




「またアザが増えてるな・・・」
うんざりした顔のハーレムの皮肉にもマジックの顔は緩みっぱなしだ。
ニヤつく顔を抑えながら持っていた書類に目を向ける。
「よくあんなヒネくれモンを相手にできるな兄貴は。」
「そうかな?結構わかりやすくて可愛いと思うね。」
不適に笑う兄に、理解不能だとハーレムは肩をすくめた。
マジックの背中に引かれた赤い爪跡は、暫らく残ったようだ。
「せっかくのクリスマスだし、恋人らしくどっか行こうよ!」
そうマジックが言い出した。
言ったらウザイ位聞かない奴だから、仕方なくという感じでシンタローは了承した。
シンタローの本音を言ってしまえば嬉しいのだが、表面では表現できない性格なので終始仏頂面。
「やだよ。さみーし。」
「何でそんな事言うの!クリスマスは世界で1番恋人達が愛を語り合う日なんだよッツ!」
シンタローが座っている机の上に両手を思いきり叩く。
バンッ!!と大きな音がしたので、ビク、と、シンタローはマジックを見た。
なんだかんだ言ってシンタローはマジックを一目置いている。
シンタロー自身はそうだと認めないだろうが、心の奥底ではマジックを自分より上だと思っていて。
「シンちゃん、パパの話し聞いてる?」
「きーてるヨ。だから、行きたくねぇんだって言ってんだろ!」
「……どうして。」
マジックの秘石眼が光った。
オイオイ、息子脅すんじゃねーヨ!
少したじろいて、シンタローは「解った」と頷きざる得なかった。









それからマジックの行動は早かった。
もう勝手に予約してあるホテルの地図をシンタローに渡し、時間も決めてある。
「じゃ、ここに午後8:00に待ち合わせだよ!」
そう言い残し、マジックは満面の笑みで、じゃあね、と言い残し去っていった。
「………あんだったんだ。」
あまりの迅速さに呆然とするシンタロー。
背中に日差しを浴び、マジックの去ったドアを見つめた。









仕事の合間に何度も時計を見る。
あくまでもチラチラと、人に気付かれないように。
マジックと出かける事を楽しみにしている、という事を他人に知られたくなかったから。
ここからだと、マジックが予約したホテルまでざっと一時間位か。
少し早めに着いたり、ピッタリに着いたりして、マジックに嬉しがられるのも嫌だった。
しかし。
仕事が今日に限って早く終わってしまった。
これならホテルまで充分間に合う。
「チッ!」
舌打ちをしてからシンタローは着替える為に自室へ。
お洒落してマジックに会うという事には疑問はないらしい。
お気に入りの服を着て、コートを羽織って、シンタローは部屋を出た。
地下の駐車場から車を出して目的地へと向かう。
車は混んでいたが、シンタローの予測通り一時間程で着いた。
ネオンが光り輝く豪華なホテル。
いかにもマジックが好きそうなたたずまいで。
そのホテル庭にある、噴水の縁にシンタローは座った。
そこからだと時計がよく見える。
時刻は8時5分前。
時計の文字盤も光っているので、綺麗だし見やすい。
「俺より先に来てねぇなんて何様のつもりだ、あンのクソ親父ッツ!」
小さい声で悪態をつくが、後5分もしたらやってくるであろうマジックの事を思うと、実はそんなに腹がたたない。
どっかりと座り込んで、コートをすっぽりと首まで覆った。
今日は何だかとても冷える。
ぶる、と身を震わせて父が来るのを待った。










約束の時間になって、5分が過ぎ、10分が過ぎてもマジックは現れなかった。
ホテルの中に入るには、シンタローの居る場所のすぐそばを通らないと入れないので先に中に入っている可能性はないだろう。
シンタローが来る前に来ているのだとしたらさっさと煩い位に連絡が入っているはずだ。
約束の時間から一時間を過ぎた頃、目の前にチラチラと白いものが落ちていく。
は、と、白い息を吐きながらシンタローは空を見た。
「雪……」
どうりで寒いはずだ。
ホテルのイルミネーションに反射して、七色にキラキラ輝く雪のカケラ。
寒いが綺麗だなと、シンタローは空を仰いだ。
シンタローは待つ事には慣れている。
小さい時から父はいつも多忙だったから、決められた時間いっぱい一緒に居られた事がない。
半ばシンタローも諦めのようなものが身についていて。
だからいつも期待しないように、しないように、と言い聞かせていたのだが、その場になるとどこか期待している自分がいて。
そして裏切られて寂しい気分を味わうのだ。
今回も、総帥業を自分が継いだのだから忙しくない、と。
今回だけは違うと思ってしまっていたがために、いつもより悲しい気分を多く味わってしまった。
涙が出てきそうになる。
遅れるなら連絡位しろっつーの!
ポケットから携帯を取り出すとナイスタイミングでマジックから電話がかかってきた。
かじかむ指で急いで通話ボタンを押すと、マジックと繋がる。
『モシモシ、シンちゃん。』
「おう。」
『パパちょっとお仕事入っちゃって今日行けなくなっちゃった。ごめんね。』
やっぱりな、と思った。
いつもいつもどうして俺は性懲りもなくマジックに期待してしまうんだろう。
「だからやだって言っただろーが。」
『うん。ごめんね。もう待ってた?』
「まさか。」
待ってたって言うのが嫌だった。
楽しみにしてたと思われるのも嫌だったし、自分がマジックを必要としてると知られるのも嫌だった。
『そっか。じゃあ、暖かくして寝るんだよ。』
「はーいはいはい。」
『じゃあね。』
「おう。」
ぷつ、と回線が途絶えてから、シンタローは上を見上げた。
温かいものが頬を伝う。
「勝手な奴ーー。」
涙でぼやけているせいで、七色の雪が余計幻想的に見える。
コートの裾でゴシゴシと涙を拭く。
はーー。と一息つくと、白い煙りが口から出た。
「嘘つきシンちゃん。」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえて、シンタローは振り返る。
そこには昼間見た父が微笑んで立っていた。
「それを言ったら私も同じか。お待たせシンタロー。」
そう言って抱きしめられた。
寒空の中一時間以上も待たされていたシンタローは冷たくて。
温かいマジックに抱きしめられて、シンタローは軽く目を閉じた。
頬を両手で掴まれると、顔が温かい。
そのままマジックの顔が近づくので、シンタローは黙って目を閉じたのだが、急にばち、と目を開けた。
「アンタ!そんなんじゃ騙されねーぞ!遅くなるならなんでもっと早く連ら…むぐっ!」
怒りをマジックに当てようとしたのに、マジックに唇を手で塞がれて最後まで言えなかった。
「怨みつらみは後で聞くから。
それより私は嬉しいよ、シンタロー。私の為にずっと待っててくれたんだね。」
そう言われてしまえば黙るしかない。
「愛してるよ、シンタロー。今夜は待てそうにない。」
その言葉の意味を理解して、シンタローは顔が熱くなるのを感じた。









ホテルのVipルームに入るやいなや、シンタローはふかふかのダブルベッドに押し倒された。
スプリングの利いたベッドがギシリと大きな音を奏でる。
押し倒したシンタローの上に馬乗りになり、ジャケットを脱ぎ捨てる。
言葉だけじゃなく、本当に今日は余裕がないらしい。
「早くお前に会いたかったよ。待たせてごめんね。」
なんて優しい声で言うから。
いつもの調子がでねぇじゃねぇか。
先程お預けされたキスをかわす。
舌を入れられ歯をなぞられた。
「ふ…ぅんッ…」
口を無理矢理こじ開けられ、ぬめりとしたマジックの舌がシンタローの舌に絡み付く。

苦しいけど心地良い、そんな感覚。
うっとりとしていると、マジックの指がシンタローの素肌に触れた。
キスをしている間にさっさと脱がせていたようだ。
いつもより焦っている感じがシンタローは新鮮で。
マジックの人間らしい部分を目の当たりにした心境だった。
「シンちゃん、ごめんね。」
「ふぇ?」
いきなり謝られて、何の事だろうと気の抜けた返事をすると、いきなり襲い掛かる下半身への快感。
「あああっ!ま、待った!ちょっ!待ったッツ!!あ、あああ!!」
マジックがシンタロー自身を口に加えこんだのだ。
ぢゅぷぢゅぷと唾液を湿らせる。
その快感に、シンタロー自身は促されるようにヒクヒクと天に向くのである。
舌先を固くして、先端をくるくる回すように嘗めたり、上下にグラインドさせたり、シンタローの性感帯を熟知した動きをされる。
「や、やだ!あ、あぅ……」
マジックの髪を掴むと、意外にもサラサラな髪はするりとシンタローの指を抜ける。
口をすぼめて激しく吸い付くと、シンタローはビク、と、体を震わせた。
マジックの口の中では、唾液とは違う、シンタローの出す液体が充満してくる。
それを美味しいと感じてしまうのは相当やばい証拠だろう。
「父さんッツ!あ、あ!」
上で喘ぐシンタローの声に反応してしまう。
可愛くて仕方のない息子。
だから。
つぷり、と濡れたシンタローの蕾に指を入れた。
「あ!あん!だ、ダメだっ!!ああん!!」
唇からは溢れ出した唾液。
目には生理的な涙がうっすらと見える。
「シンちゃん、可愛いよ。」
優しく口は動くのに、指は容赦なくシンタローの蕾をかきまぜる。
シンタローはイヤイヤと頭を振る。
指の本数が段々増えてゆき、三本になった所で一気に引き抜いた。
「やああああッツ!!」
ビクビクン!と、体を震わせるシンタローを見て、既に余裕のないマジックは、シンタローの蕾へ自身を何度かヌルヌルとこすりつけたかと思うと、ずる、と、中へ混入させた。
「ひゃあああっ!」
海老剃りになり、シンタローは目を見開いた。
目の前がチカチカする。
「シンちゃん、シンタロー。」
「あ、あ、とぉさん…!」
マジックの背中に腕を絡め、腰には逃がすまいと無意識のうちに足を絡める。
パンパンと、筋肉のぶつかり合う音が聞こえた。
気持ち良くて死にそうだった。
玉の汗が跳ぶ。
ダイヤモンドみたいにキラキラして見えた。
マジックがシンタローの腰を鷲掴みにして、動かしまくる。
「し、死ぬッツ!死んじゃう!!ちょっ……」
「気絶するまで気持ち良くてしてあげるよ。」
理性は既に手放してしまっていて。
マジックにすがりつく。
マジック自身をくわえ込んだ所が熱くて堪らない。
息が上手くできなくて。
大粒の涙がシンタローの頬をいく筋もつたった。
「シンちゃんの中、きゅうきゅう締まって暖かいよ。」
「て、テメッツ!!」
そーゆー事を言うんじゃねぇ!と言いたくても声がでない。
だからマジックの背中に爪を立ててやった。
「フフ、痛いよシンちゃん。」
でも、嬉しそうに笑うから、シンタローのいやがらせはどうやら逆効果だったらしい。
シンタローの頬に触れるだけのキスをすると、ラストスパートと言わんばかりに激しく腰を打ち付けた。
「ちょ、待っ…!あああっ!!」
余りの激しさに声どころか息を吸うのもやっとで。
マジックの背中をぎゅっと抱きしめる。
そして、マジックの頬に自分の頬を擦り寄せた。
下半身だけが自分のものではないような感覚。
でも、髪を掻きむしりたいくらいの快楽はずっと下半身からふつふつと沸き上がっていて。
熱くてたまならい。
「シンタロー、中に出すよ。」
少しかすれた声でそう言われた。
余裕がないのが見て取れる。
だから。
シンタローは何も言わない代わりに頭を前へコクリと下げた。
その瞬間。
「あああああああッツ!!」
マジックの白濁の液体がシンタローの中に注ぎ込まれる。
その熱と、既に限界だったのが重なり、シンタローも保々同時に精子を吐き出した。

「と…さん……ッツ!」

ドクドクと中に注がれるそれを下半身で感じる。
「あ、あつい……」
グス、と、鼻を啜ると、マジックがシンタローの涙を指で掬ってくれた。
ずる、と、抜かれると、蕾からはマジックの出した液体がゴポと、音をたて、溢れ出した。
「ん、んん…」
「シンちゃん、メリークリスマス。」
ぼんやりとしてきた意識の中、マジックの声だけがはっきりと聞こえて、その心地良さにシンタローは意識を失った。









目が覚めたシンタローは、掠れた声でマジックに聞く。
聞く、というか問い詰める。
それも喧嘩ごしで。
「何で遅れたんだヨ!遅れるなら連絡位しろっつーんダヨッツ!」

その質問に、マジックはニコ、と笑うと、さっき脱ぎ捨てたジャケットのポケットを何やらごそごそと漁る。
取り出したのは小さな箱。
「ンだよ、コレ。」
「まあまあ、開けてみて。」
指輪か、と思い込んでいたシンタローは度肝を抜かれた。
そこに入っていたのは、ブルーサファイアの原石。
しかもでかい。
「シンちゃんの好きなブルーサファイアを買いに行ってたんだ。買っておいた原石より大きいのが入ったって連絡があったからそれを買いに行ってたら遅くなってしまったよ。」
ごめんね、と、もう一度謝るから、ムカつくけど許してやる。
大好きなブルーサファイアは、やっぱりマジックの目と同じ色をしていた。










終わり。











黒く長い髪をたなびかせ、戦場で鬼のように戦う人。
しかし、息子には優しかった。そして、厳しい人だった。
子供は父のようになりたいと願い、父の後ろ姿を見て育つ。
いつか父を超える男になろうと胸に秘めながら。









子供の名前はシンタロー。幾年月がたち、彼は成人を過ぎ、28になる。
しかし、彼の中でもっとも偉大な父親は、背中こそ小さくなりはしたが威厳を持ち、威風堂々としていて。
真っ黒だった髪はいつしか白髪混じりになったが、剣の腕は衰えを感じさせない。
そんな中、大きな戦にシンタローと父は行く事になった。
心戦組の最大の敵であるガンマ団。
沢山の軍団を所有しており、総帥の一族は何やら怪しい術を使うとか。
「シンタロー、油断はするなよ。」
「解ってる。」
父に背中をあずけ、父もまたシンタローに背中をあずけ戦う。
腰に下げた愛刀が、今日はやたらにずっしりと重く感じた。
父は隊長という職務にはついていなかったが、彼の腕は心戦組の隊員全てが一目置いていて。
シンタローはそれを自分のことのように誇らしく思っている。
「配置を言い渡す。」
局長である近藤イサミが幾重にも畳まれた紙を解きながら配置を言う。
シンタロー達は激戦区ではなかったが、要となる場所に配置された。
山南ケースケが調べた所、どうやらその場所にはガンマ団の主要人物が来る事になっているらしい。
総帥の息子か、はたまた兄弟か。
とにかく総帥の血縁者が来る、という情報があったらしい。
腕がなる、と、シンタローは己の愛刀を見る。
黒漆で作られた光沢のある鞘。
中にはきちんと手入れをされた直刃が控えている。
触って感覚を確かめた。
「シンタロー、戦場は遊びじゃないんだ。気を引き締めろよ。」
「解ってるさ、親父!」
眉間にシワを寄せる父親に、シンタローは笑顔で答えた。









激戦区から少し離れた場所が自分達の持ち場であった。
雑魚どもは何人か見たが、山南の言っていた主要人物らしき者は見ていない。
山南さんの言った事は外れた事ねーんだけどナ。
ぼんやりそんな事を考えていたら、父に又叱咤された。
へーへー、解りましたよー。
唇を尖らせ、父を横目で見た後、又刀を構える。
しかし、ここで主要人物を捕らえる事ができたら、位が上がり、隊長になる事だって夢じゃない。
シンタローは野心に燃えた。



胸に抱いた父を超えるという夢を実現できるかもしれない。
期待に胸を膨らませる。
早く来いよー?ガンマ団のお偉方!
ジャリ、と、林から砂を踏む音が聞こえた。
足音からして一人。
この地区を任された隊員達は総てシンタローの目の届く範囲に要る。
終戦したとの情報も通達されていない。
ともすれば。
ガンマ団という事しか考えられない。
一人で複数の中に来るなんて、よっぽどの馬鹿か、それだけ強いかどちらかだ。
後者であればガンマ団に大打撃を与えられる。
自然と鞘を握る手に力が入った。
林から現れたのは金髪碧瞳の男で、真っ赤なブレザーを着ている。
余裕しゃくしゃくな態度、蔑む顔、心戦組の人間なら誰もが知っている顔だった。
主要人物どころじゃない。要の人物そのものだった。

マジック!!

シンタローは初めて見たガンマ団総帥に恥ずかしくも、動けなくなってしまった。
力の差が歴然としている。
これ程までとは。
嫌な汗が背中を伝った。
「覚悟!」
隊員が五人がかりでマジックに襲いかかったが、マジックの瞳が一瞬怪しく光ったかと思うと、隊員達は細切れに吹っ飛んでいた。
「あ、ああ……」
「た、助けてくれッツ!!」
逃げ惑う隊員達。
負け犬にもマジックは容赦はしなかった。
再び光る閃光が、シンタローの横を掠める。
断末魔すら浴びる事を許されなかった隊員は弾け飛んだ。
ビシャ、と、シンタローの頬に隊員の血が飛び散る。
呆然とその光景を見詰めるシンタロー。
さっきまで一緒に生きて戦っていた仲間。
同じ釜の飯を食い、共に笑い、共に悲しんだ。
それを一瞬で奪われた。
コイツに。この男に。
沸々と沸き上がる怒りと悲しみ。
「マジックーーーッツ!!」
気が付いたら刀を握りしめ、泣きながらマジックに向かって行っていた。
許せない、許せない!!
仲間を虫ケラのように殺したこの男を。
しかし、マジックは冷笑すると、又瞳を光らせる。
畜生!アイツに傷を付ける事さえ敵わねぇのかヨ!!
ぎゅ、と目をつぶったシンタローであったが、いつまでたっても痛みが訪れない。
不思議に思って目を開けると、そこには信じられない光景があった。
「無事か、シンタロー……」
全身から血を流す父の姿。
「お、親父……」
信じられないものを見るように、シンタローは父を見た。
シンタローを庇って背中に眼魔砲を受けたようだ。


父の滴り落ちる血の付いた指先が、シンタローの頭を撫でた。
「逃げなさい、シンタロー。そして、生きるんだ。」
一瞬だけ父が笑ったような気がした。
シンタローが父を抱き抱えようと手を延ばしたが、それとすれ違うように父はドシャリと地面に落ちた。
呆然とするシンタロー。
何が起きたか理解できない。いや、したくない。
「と……さん……?」
しゃがんで父に触れてみる。
ドロリとした生暖かい血の感触が不快だった。
触れた所が段々温かさが無くなっていく気がする。
さっきまで動いていた父さん。
生きろ、と、頭を撫でてくれた父さん。
もう、動かなくなった父さん。
「うわああああッツ!!」
叫んで黒い頭をかきむしった。
俺のせいだ!俺が浅はかな行動を取ったから!
油断するな、とあれほど父が言ったのに!!
「父さん!父さん!父さぁんッツ!!」
叫んでも父が動く事はない。
どうやったら父が動くんだっけ?どうやったら人って又息を吹き返すんだっけ?
シンタローはその方法を必死になって探したけれど、そんな方法はあるはずもなく。
涙が先程の感情と入り交じり、より深い悲しみを放出させていた。
「無駄な人口は増えん方がいい。」
悲しみにくれるシンタローにマジックの卑劣な言葉が浴びせられる。
強くきつく睨むシンタローだが、マジックもそんな瞳を真っ向から受けて平然としている。
「テメェなんか人間じゃねぇ!人の皮を被った化け物だッツ!」
そうシンタローが叫んだ瞬間、回りの空気がピリッと震えた。
シンタローは言ってはいけないキーワードを言ってしまったのだ。
「……父の下へ直ぐに連れていってあげようと思ったが、気が変わった。君には死ぬより辛い拷問にかけてあげよう。」
そう言うと、マジックは秘石眼の力でシンタローを押さえ付けた。
父の腹の上に顔を押し付けられる感覚。
身動きが取れない。
「く……ッツ!!」
歯を食いしばって悔しい、と、涙を飲む。
さ、と、マジックがシンタローの後ろにまわると、シンタローの腰にある刀を抜き、帯紐を切った。
ぱさりと落ちる紐。
それと同時に引っ掛けてあった黒漆塗りの鞘も落ちる。
ガシャンと重たい音が耳を掠めた。
無言でシンタローの袴を脱がす。
ぱさ、と絹の擦れる音がした。
あらわになったフトモモと、下半身を隠す褌。
そして、外気に触れられた肌が寒さで鳥肌を立てる。


褌も、紐をシンタローの刀で破かれた。
ビリビリと嫌な音がする。
「よく切れるね、この刀は。手入れを怠っていない証拠だね。」
売ればいくらになるだろうね、なんて言う。
「ふざけ…ンな!ッツ!!返せッツ!!」
その刀は俺が親父から元服の際に貰った刀だ。
一人前の男になったあかつきにくれたんだ!
それをお前なんかに!お前なんかにやるものかッツ!!
下半身を曝されて、秘石眼の力で身動きの取れないシンタローは、ただただ悔しさに唇を噛む。
すると、マジックの指がシンタローの前へ延びてきて、中止部分をいじる。
ビクリと体が強張った。
「ふざけんな!止めろッツ!!」
マジックのテクニックは凄かった。
しゅ、しゅ、と前を激しく動かしたかと思うと、親指で先端をぐりぐりと円を描く。
つるつるした表面をマジックは楽しんだ。
父の死体を押し潰しながらマジックは容赦無しにかきたてる。
「ンンッ!や、やめ……」
酷くしてやるのは簡単だ。
いきなりぶち込んで気絶させたら殴って起こさせる。
しかし、終わった後私だけのせいにして、精神の安定をはかるだろう。
それよりも。
アンアン鳴かせて、気持ち良くさせて、感じさせて。
終わった後心のバランスを崩させる方がよっぽど楽しいじゃないか。
特にこういった人種にはこれが1番きくだろう。
「いやらしい男だね、君は。父親の死体の上で、父親を殺した私になぶられて喜んでる。」
耳元で囁いてやると、蚊の鳴く声で「ち、ちが……」と、聞こえた。
「何が違うんだい?ち〇ぽこんなに大きくして。だらだらヨダレ垂らしてるのに、何が一体違うのか私に教えてよ。」
シンタローの肩を掴み、ぐるりと仰向けにする。
劣情に落ちる自分を嫌悪する顔がそこにあって。
マジックは益々ゾクゾクした。
シンタローは既に力が入らないらしく、それでも必死に快楽から抵抗している。
シンタローの既にはだけた襟からは外気に余り触れていない桃色の乳首が固く尖っていた。
マジックは舌なめずりをした後シンタローの腕を上で束ねると、秘石眼の力を解いた。
圧迫感を抜け出すと、シンタローにはもう快楽しか残されていない。
先程嘗めた唇で、シンタローの乳首を甘く噛む。
「ンンッ!」
ビクリと体を震わせて、声を出さないように唇を強く噛み締める。
「乳首なんかが気持ちいいの。私なんかより、君の方が化け物だね。父親を殺した男に抱かれて喜んでる。」


嫌だ、嫌だ!
快楽に負けそうな自分が死ぬ程嫌だ。
背中に感じる冷たくなっていく父の骸。
バタバタと体を動かしてみるが、マジックにあっけなく押さえつけられた。
「も、やめ、やめて……やめて下さ……」
命令系から懇願になる。
ヒクヒク感じる自分の体に嫌悪する。
ず、ず、と鼻をすすり、生理的な涙が頬を伝った。
その顔にマジックは何故だか引かれた。
久しぶりに感じる高揚感。
体が熱くなるのを感じた。
私はこんな男がタイプだったかな?
自問自答してみるが答えがかえってくるはずもなく。
マジックはそのまま片手をシンタローの尻の間に持っていった。
シンタローの先走りで指は充分過ぎる程濡れていて。
つぷ、と入れると、シンタローは苦痛に歪んだ顔をした。
「ひ、い、痛…いたぁ…ッツ!」
そんな言葉は聞かず、マジックはどんどん指を中に入れ、くるくると何かを探すように指を回した。
「ンひッツ!!」
ビクビクとシンタローが奮えたのを見て、マジックはほくそ笑んだ。
見つけた。
その一点をぐりぐりと集中してやるとシンタローの体は魚のように跳びはねる。「いや!や!やだ!ア、ア、や!やぁッツ!!」
頭をフルフルと震わせて快楽を取ろうと試みるが上手くいくはずもなく。
「ひぁ、ああああッツ!!」
ぶるりと震えたかと思うと、ビクンビクンと性器が奮え、マジックの手の中に白濁の液を吐き出した。
涙でぐちゃぐちゃの顔で呆然とし、荒い息遣いの為、肩が引っ切りなしに動いている。
「う、うう……」
イッてしまった。
父の骸の上で。
父を殺した男の手で。
悲しみと嫌悪と憎悪がぐるぐるとシンタローを渦のように巻き込む。
「まだ終わりじゃないよ。」
悪魔の囁きが耳をかすめた。
初めての快楽にシンタローは脱力しきっていて、足も腰も立たない。
無理矢理足を開かせ、先程までマジックの指が出入りしたソコに別のものが宛てがわれた。
それは指よりも熱くて太いもので。
それが何だか理解できたシンタローはサッと血の気が引いたのを感じた。
「やめ!お願い、やめて!!」
必死になって懇願し、身をよじるが、既にくたびれてしまっている体は思う通りには動いてくれなかった。
「じきにガンマ団がこの戦いを制するだろう。その時総帥不在では示しがつかないからね。早めに終わらせようか。」

言うが早いか、マジックはシンタローの間に自身を推し進めていく。
「ああああ……!」
喉が上下にコクリと動く。
何かにしがみつきたくて、シンタローは無意識のうちにマジックの服を掴んだ。
それにはマジックも驚いた様子だったが、顔には出さず、シンタローの黒髪を撫でた。
「名前は?」
そう聞いた自分にまた驚く。
私が他人に関心を持つなんて。
しかし、一向に返事をしないシンタロー。
だから、下から上へ思いきり突き上げてやった。
ガンガン腰を振られ、奥まで突っ込まれる。
初めての結合で、血がシンタローのフトモモを濡らしていた。
「名前は、と、私は聞いたのだが。聞こえなかったのかな?」
私は気の長い方ではないんだよ。
そう耳元で地を這うような低音で言ってやると、「……ロ…」
ボソッと声が聞こえた。
「もっと大きな声が出せるだろう。さっきまであんなに大声で鳴いていたのだから。」
「……くっ…シ、シンタローッツ!!」
これ以上激しく体を揺さぶらないで欲しくて、シンタローは戸惑っていた己の名前を叫んだ。
「ふぅん。シンタロー君…ね。」
きっと私が彼に興味を持ったのは、彼の中が想像以上に気持ち良かったから、だろう。
だから今度は優しく抱いてやる。
その方が彼は望まないから。
じゅぷ、じゅぷ、といやらしい音が辺りを支配する。
その時、ピピピ、とトランシーバーの音。
マジックも一瞬止まるが、また、行為を再開させる。
鳴っていたのは父のトランシーバー。
「形勢はかなり不利だ。一旦引け!モシモシ、聞こえているかい?もしもーし!」
山南だ。
トランシーバーはこちらから押さないと、会話ができない。
山南が自分達を心配する声を聞きながら二人は快楽を求めていた。
「シンタロー君、ボタン、押してあげようか?」
もしかしたら助けに来てくれるかもしれないよ?
「嫌、押さないでッツ!」
こんな恥態を誰にも見せたくなかった。
マジックが後ろだけでなく、前をいじり始める。
既に限界に近かったシンタローは呆気なく二度目の放出をした。
「と……さん」
それだけ言うと、長い髪がふわりと浮いて落ちた。
きゅ、と締め付けられて、マジックもシンタローの中へ吐き出したのだった。









目が覚めると、見慣れない場所で。
腰に手をやると刀がなく、体に酷く残る鈍痛に夢でなかった事を理解した。

父が死んで、父を殺した人に抱かれて、喘いだ自分。
人の風上にも置けない。
あいつの言う通り俺も、イヤ、俺の方が化け物なのだろう。
服は自分の上着だけ身に纏っていて。
色々思い出すうちに、心が壊れていくのを感じた。

俺は親父の骸の上で散々犯された。
しかも喘いでいた。
親父を殺し、仲間を殺したマジックの腕の中で。
不快感で胃が浮き上がる感じがした。
そして、それだけの犠牲を伴ったにも関わらず、心戦組はガンマ団に負けたのだろう。
おそらくここはガンマ団の鑑の中。
どうにかここを抜け出さないと。
腰が痛いので、ベッドに捕まりながら立とうとしたその時。
運が最悪に悪いのだろう。
マジックが入ってきた。
「目が覚めたのかい?シンタロー君。昨夜は凄かったよ。」
そう言われて顔が赤くなるのを感じた。
「ぶっ殺してやるッツ!!」
怒りに顔を歪ませて睨んでやるのに、当のマジックは涼しい顔でシンタローを見つめている。
「何故?お互い様だろう。何故君は怒る?心戦組の君達に切られた団員には家族が居ないとでも思ったのかい?これはね、シンタロー君。戦争なんだよ。」
そう言われてハッと我に返る。
確かにこの両手でガンマ団の奴らを殺した。
昇級したくて、英雄になりたくて、父を越えたくて。
「私が君を抱いたのだって、私が独りよがりのセックスをしたなら謝るが、シンタロー君だってノリノリだったじゃないか。アンアン喘いで私にしがみついて。……君のお父さんを布団代わりにして、ね。」
体中の血が一気に沸騰したような、凍りついたような、今までにない感覚に、シンタローは唇を片手で覆う。
口の中が酸っぱい。
胃液が込み上げてきて、思わず吐きそうになる。
「私を殺したければいつでも来なさい。最も君の父が死んだのは君の浅はかな行動のせいだが、ね。」
「おぇ……」
胃液を我慢出来ずにその場で吐き出す。
そんなシンタローを見て、マジックはまるで楽しい玩具を見つけたように、薄い唇の端をあげる。
このテの男程自虐精神が強い。
そして、自分を恐れないその目。その目をマジックは大変気に入った。
長い事独裁者をやっていると、誰も自分に本音を言わないし、拒否しない。
だから例え怨まれても本音を語る人物は久しぶりであった。
そして、初めて出会う自分の思い通りにならない人間。
過去が変えられないようにそれだけは変えられないだろう。

なんと言っても実父を殺したのは紛れも無いマジックだから。
「君は負けた。だから、君は私の戦利品になる訳だ。君の意思に関係なくね。だからね、君は今日から私の玩具だよ。」
苦痛に歪める顔が何とも言わずイイ。
このじゃじゃ馬を立派に開拓した時、きっと今以上の快感が得られるだろう。
怨まれ、いつか殺してやる、という瞳も気に入った。
この世の中には楽しいか楽しくないか、の二種類しかなく、マジックの中でシンタローという存在は前者なのだ。
ゲームのように楽しむ感覚。
父の遺言を守り、歯を食いしばって耐えるシンタローをまた押し倒し行為を行う。
シンタローの心が砕けるのが先か、マジックが飽きるのが先か、

それとも………












終わり






その日シンタローは憂鬱であった。
理由は簡単。
今日、激しく彼を愛する男、マジックが訳の解らないサイン会から帰ってくるのだ。
シンタローは別にマジックを苦手な所はあるが嫌いな訳ではない。
昔、コタローの事、一族の事、生き方の事で激しく対立してきたが、今は全て和解し、男らしく水に流した。
過去はどうあがいてもリセットはできない。
だからといってうじうじぐちぐち言っても埒があかないだろう。
だったら綺麗さっぱり水に流すべきだ、というのがシンタローの考えだった。
では何故憂鬱なのか。
その理由もまた簡単である。
これは昔からの儀式のように行われてきた肌と肌との触れ合い。
いわゆる情事。ぶっちゃけセックス。
幼い頃はただの過剰なスキンシップであったが、ある年齢を過ぎた頃から父親は自分を息子という枠組みだけでなく恋愛対象として見るようになった。
まだ知識がなかったことを思うと、多分10歳かそこらだったのだろう。
父親は自分に一般の勉強、経営学、社会学、精神学等いたる学問を学ばせたが、保険体育のいわゆる性の学びは一切学ばせる事はしなかった。
そして、親子でセックスをするのを当たり前の事だと教えてこられては誰でも暗示にかかるだろう。
それは不自然な事なんだと知ったのは士官学校に入って一年位経った後か。
コタローが幽閉された時には知っていた。
知ってからも含めてマジックが遠征から帰って来ると必ずシンタローを求める。
殺した後の興奮からなのか恐怖からなのか解らないが、会えない期間に比例して激しく抱くのだ。
今はもうドロドロの関係は終わり、バカップルとまではいかないが落ち着いてきている。
実はシンタローは抱かれるのが嫌いな訳じゃない。
暗示にかかっているのかどうか、それはハッキリとは解らないが、シンタロー自身マジックを“男”として見ている。
そして、セックスをマジック以外の人間とはしたいとは思わない。
そして。ここからが本題。
マジックの憂鬱ならぬシンタローの憂鬱の答え。
じゃあ何がシンタローは嫌なのか。
実は情事中のマジックなのである。
とにかく五月蝿い。
喘ぎ声ではなく、シンタローにとって死ぬ程恥ずかしい事を引っ切りなしにベラベラ喋りまくるのだ。
何処がいいの、と聞くのは当たり前で。
言わせたがったり、果ては自分で動いてみて、なんて言い出す事もある。
再度言う。
シンタローはマジックに抱かれる事が嫌いではない。
ただ五月蝿いのが嫌なのだ。
邪険にする、とかそうゆう嫌ではなく、何と言うか、まあ、ぶっちゃけ恥ずかしいのである。
あの低音の甘い声で耳元に囁かれるだけで恥ずかしくなるのに、卑猥な言葉を口に出されたらそれは結構なダメージとなるだろう。
何とか逃れる術はないか、と考えるが、あったらとうの昔からやっている。
何をしたって駄目だったではないか。
マジックの方が一枚も二枚も上手なのだ。
「は~ぁ……」
重たい溜息をついて外を見上げれば青空が広がっていて。
自分の心とは対象的な天気にシンタローはまたテンションが下がる。
シンタローが願う事は、マジックが疲れきって帰り、何事もなく終わる事。
さもなければ非常に淡泊なセックスである事。
普通に考えて疲れきって帰って来てもシンタローを抱かなかった事などないし、淡泊なセックスに至っては一度としてない。
それでも願わずにはいられないのだ。
憂鬱な気分ではあったが、テキパキと手を動かし目も動かす。
仕事に私事は禁物。
例え乗り気じゃなくてもやらなければならない。
それが総帥。それが俺。
「これが次の資料だ。」
バサッと無情にも置かれた書類。
やってもやっても終わらない。
「来週のサミットで使われるやつだ。一応目を通しておけ。グラフ化したものはコンピュータにも入れてある。」
「ああ。サンキューな。あーあ。この紙が全部札束だったらいいのにナ。」
パラパラと書類を指で撫でながらそう言うと、キンタローは訳が解らないという風にシンタローを見た。
彼はこの世界に現れて二年しか立っていない。
頭脳面ではずば抜けて優秀なのだが、冗談が通じないのである。
「あ~…、悪ィ。何でもねぇ。」
「そうか。」
とりあえず可哀相だから謝ってはおく。
そして仕事をまたし始めるのだった。










深夜0時。
外はもう真っ暗で。
総帥室とちらほらと何部屋か明かりが点いているだけとなった。
それでも星が余りよく見えないのは大気汚染の関係とガンマ団本部の馬鹿高い建物から鼠の侵入がないかチェックするライトが煌々と目下を照らしているからだろう。
よっぽどの事がない限りガンマ団へ侵入する馬鹿はそうはいない。
が、ごく稀に居る事もある。
あのライトが透明から赤に変わって警報が鳴ったら、侵入者もしくは脱走者が出た事となる。
結局マジックは帰って来なかった。
安堵と不安が同時にシンタローの心に生まれる。
しかし、不安は直ぐに掻き消される事となる。
バラバラバラとヘリコプターのエンジン音が頭上から聞こえ、段々近づいてくる。
サーチライトが一瞬だけそのヘリを捕らえガンマ団のマークを確認すると、直ぐに定位置を照らす事に専念した。
軍用機でないそれは正しくマジックの乗っていったヘリで。
シンタローは深い溜息をついて椅子から立ち上がる。
そして、トントンと書類を整え引き出しに入れると明かりを消して総帥室から出た。
どうせ仕事をこのまましていたってアイツはお構いなしにやってきて、ここで事をおっぱじめる可能性がある。
それだけは潔癖なシンタローは嫌だった。
前にも何度かそういった目にあったが、次の日の朝、ここに来ると思い出してしまうし、バレてやしないかと不安になる。
総帥室のドアをロックしてシンタローは最上階の自室に向かうのであった。










自分の部屋に着くと、ピンクの親父が部屋の前に立って。
シンタローが近づくと気付いたらしく満面の笑顔で片手を上げ、ブンブン振った。
「シ~ンちゃ~ん!」
「はーいはいはい。」
呆れたようにマジックの呼びかけに答える。
マジックの服装や、時間的に行って、屋上のヘリポートから直行してきたのだろう。
「ハイ。お土産。」
そういって渡された小さな箱。
とりあえず部屋にマジックを招き入れてからその箱を開けてみる。
「………。」
「ソレ、すっごくカワイイでしょ!是非シンちゃんに履いて欲しくて思わず買っちゃった☆」
入っていたのはパンツ。
しかも、トランクスや、ボクサーパンツなんかじゃない。
黒いスケスケのレースパンツ。
多分女もの。
ヨーロッパ系のものだからアジア系のシンタローにもはけるものだろう。
「何。死にたいのアンタ。」
「やだー!シンちゃんったら!それ履いてパパを出血死させる気?でもパパ死なないように頑張る!」
「人の話を聞け。会話をしろ。」
パンツを握りしめながら怒りにわななくのだが、あっけらかんとした父に笑顔で交わされた。
深い溜息をついてマジックから視線を反らしたその時。
ぐらりと視界が回り、ベッドに押し倒された。
バフン!と音を立てて倒れ込むシンタローの足を掴んでさっさとズボンを下ろす。
「わー!わー!わー!や、やめろッツ!!」

足をばたつかせようとするが、現役を退いたとはいえ最強の人間である事に代わりはない。
「ちょっと履いてみよーか、シンちゃん!」
笑顔でそう言い放つと、シンタローのベルトをさっさと取り、ズボンと一緒にパンツも脱がせる。
そして、買ってきたパンツを履かせるのだ。
「いやー!ピッタリだね!パパの採寸に間違えはないみたい。ま、当然だけどねー!」
「~~~ッツ!!」
恥ずかしさと、惨めさでシンタローは顔を真っ赤にしてマジックを睨みつける。
何を考えているのだ、この馬鹿は。
女もののパンツなんか履かせて。
身をよじるがびくともしない。
する、と、マジックの指先がシンタローの中心部分を撫でる。
ビクリとシンタローの体が強張った。
「ふふ。ココちょっと出っ張ってるネ。女の子の下着着て興奮しちゃったのかな?」
「あ、あほか!ンな訳ねぇだろーがッツ!!」
ガアッ!と怒るのだが、マジックは口の端を軽く上げて笑っている。
ムカつくと思うのだが、絶妙なマジックの指捌きに、シンタローも感じる。
イヤ、それだけではない。
慣れない総帥業務をいつも激務でこなしている為疲れているのもその要因なんだろう。
「ちょ、テメ!いい加減にしろヨ!」
「良い加減にしろ、なんてシンちゃんてばだいたーん!」
ふふ、と笑うが目は笑っていない。
しかし、その父の言葉にシンタローは少し殺意を覚えた。
「あれ?シンちゃん。なんだかパンツが湿ってきたねぇ?」
目を細めてシンタローの中心を見てからシンタローの顔を見る。
カァッと顔が熱くなるのを感じた。
マジックと顔を合わせたくなくて、ふい、と横を向く。
事実パンツの中の自身がキツイと訴えているのも当の本人が一番よく知っている。
「ココだけ色が変わってきたよ……。それに何か持ち上がってきてる。シンちゃん、何が持ち上がってきてるのかな?お前の体の何処がパパに顔を見せたがっているのかな?」
くるくると円を描くように先端を撫でると、シンタローが小さいうめき声を上げる。
その我慢する姿がまた愛おしい。
それと同時にマジックのサディストな部分も刺激する。
快感を必死に消そうと試みるのだが、そんなこと出来る訳もなく。
シーツを噛んだ。
「ココ、何処なの?シンちゃん。パパに教えて。気持ちよくってだらし無く泣いてるのは何処?」
ついに下着から顔を出したシンタロー自身を直に指の腹でぐりぐりと押す。

親指がシンタローの愛液で濡れた。
そんなことは構わず、ぐりぐりとピンク色の先端をいじってみる。
「体の名前言えないのかな?そんなお勉強してなかったもんね。でも、知ってるでしょ?28にもなって知らない訳ないよね。」
シンタローの愛液でぬるついた指先でシンタロー自身を刺激しながら言う。
「くぅ……ッ」
唾液で濡れた唇から苦しそうなうめき声を出す。
だが、出した所でマジックの愛撫が止まる訳もなく。
親指と人差し指で円を作り、立ち上がったシンタロー自身をくぐらせて上下にグラインドさせる。
ひくひくと震えるシンタロー自身を見て、心底楽しそうな笑みを浮かべながら。
「ホラ、段々後ろのお口も淋しくなってきたんじゃないのかな。お前は前だけじゃ満足できないからね。そう私が仕込んだ。」
マジックの言った事は当たっている。
もう正常な男子とは違い、女みたいに刺激してもらわないと開放された、という気にはなれなくなっていて。
それは小さい頃からマジックに教えてもらっていたから。
前だけじゃ足りない。
例え開放したとしても後ろはきっと疼いてしまうであろうし、脳から溶けたような快感はもらえないだろう。
「欲しかったら、今パパが触ってるの何処だか言ってご覧。」
円を外し、親指を先端に当て、グリグリしながら上下に動かす。
「あ、あ、あ、し、知るか…アホ……ッツ!」
涙目になりながらもまだ反抗する。
「フーン……」
薄い唇が弧を描いたかと思うと、耳元に近づいてきた。
マジックの息遣いがはっきりと聞こえる。
一番凶悪なパターンがきた、とシンタローは目を強くつぶった。
「じゃあ、今から体の仕組みのお勉強をしようか。」
悪魔の囁きがシンタローの耳から脳髄へ染み渡ったのであった。











「ハイ、シンちゃん。今からパパとお勉強だよ。」
暴れないように、と、ベルトで腕をベッドに括り付けた後、マジックは笑顔でそう言い放った。
「ふざけンナ!解きやがれッツ!!」
睨みを効かすが、マジックにとってシンタローはどんな顔をしても可愛いので怖くない。
「ハーイ。まずはココ。首筋。」
チュウッと強く首筋を吸い上げれば、シンタローはビクンと体を震わせた。
唇を離すと、くっきりと映る赤い跡。
「や、やめろ……」
抵抗もできなくて、小さな声で反論するが、まるで聞こえないというようにマジックは知らんぷり。
「次は…ピンって尖ってる胸、かな。でね、ココは乳輪。」
そう言って乳輪をくるりと指で円を描く。
「―――ッツ!」
シンタローが息を止めた。
ビクリと震える上半身は、寒さに震えた時のものとは異質を放っていて。
マジックはますます嬉しくなる。
「でね、シンちゃんお待ち兼ねのツンツンして自己主張しているココは……」
グリ、と、乳首を親指の腹で押し潰す。
「やあ!ッツ!!」
思わず大声を上げてしまい、シンタローは慌てて口を閉ざした。
は、恥ずかしい……!
なんて声を出してしまったのだろうと歯を食いしばりながら苦悩する。
「気持ちよかったの?じゃあ、ちゃんと覚えておいて。ココはね、乳首だよ。シンちゃんココ指でいっぱいいじめられるの好きだもんね。」
好きじゃねぇ、と悪態をつこうとしたその瞬間。
両方の乳首をマジックの人差し指で上下に弾かれる。
「や、あ、あ、あ!あぅ!あ!」
無意識に腰を淫らに揺らしながらマジックが与える快感に身を任せてしまう。
弾いたかと思えば摘んだり、舌で舐めたりかじったりして、マジックはシンタローの淫らな反応を楽しんだ。
「男の子なのに乳首が気持ちいいんだねぇ、お前は。これだけでイッてしまいそうでパパ、ハラハラしちゃったよ。」
ハラハラなんてしていない。
むしろ楽しんでいたくせに。
嘘ばかりつきやがる。
乳首から唇を離すと、今度は腹筋から脇腹にかけてを緩やかな曲線を描きながら指先で撫でる。
その度にシンタローは感じやすい体を怨む。
しかし、怨んだ所でシンタローの体はマジックの指先にいいように操られ、ビク、ビクと小刻みに震えるのだった。
「そして、ココは……」
先程散々いじくりまわしたシンタローの中止部分を優しく撫でる。
それは愛おしいものを愛を持って撫でるように。
「ン、ふ……ッツ!」
思わずビクリと体を奮わせ、我慢できない声が漏れた。
「ペニスだよ、シンちゃん。男の子の大事な所。シンちゃんはオシッコする時と、こうやってパパに抱かれて精子を出す時にしか使わないけどね。」
まぁ、もっとも他の人間に入れる為や、抱かれる為なんて絶対使わせないけどね。
シンタローに聞こえる程度の小声でそう呟き、意地悪そうに笑う。
悔しそうに睨むシンタローの瞳が心地よくてドキドキする。
「最後はココ。シンちゃんの一番恥ずかしい所。」
前を触っていた手が、シンタローの蕾を布越しに触れた。
「やっぱりパクパクしてるね、かわいい。」
うっとりと見つめ、指で股の部分の布を左にずらす。
ひくひくうごめく蕾を軽く指先で刺激した後、少しづつ埋めていく。
「ンンンンッツ!!」
唇を噛み締めて、痛みと快感に耐える。
ズズ、と、肉の中を割り込まれ、マジックの指が埋め込まれていくのをシンタローは後ろで感じた。
奥まで入った指をくるくると円を描くように掻き交ぜられる。
「あ、あ、や、ヤダ!あ、アッ、や、やめ……!!」
体に甘い電流が走り、涙が滲み出る。
目を見開きマジックにしがみつく。
「あ…あぅ……」
スンスンと鼻を啜り、マジックの肩に顔を埋めた。
「もう、準備万端だね。前からだらしなぐ垂れた精子で、お前のアナルはいつでもパパを受け入れようとしてる。」
そう言いながらも指を出し入れしたり、くるくる掻き回したりして、シンタローの反応を楽しむ。
シンタローといえば、恥ずかしさと苛立ちで、弱い光を点しながらマジックをひたすら睨んでいた。
それがシンタローに残された唯一の反抗だったから。
劣情に全てを飲み込まれないシンタローにマジックは舌なめずりをする。
簡単に落ちないから攻略のしがいがある、といった所か。
そんなシンタローが劣情に落ちた瞬間がマジックは最も好きだったが、そこに行くまでの行程もまた、最も好きなのであった。
シンタローとのセックスは大好きだ。
体だけじゃなく、心も一つになれるから。
全力の愛に押し潰されず、全力で返してくれる。

この子は私の全てだ。

「そろそろ私のペニスも、お前の中に入りたがってる。」
「や……」
「ね、お願い、シンタロー。お前と一つになりたいんだ。」

意地悪ばかりして、都合のいいことばっか。
でも、全部引っくるめてマジックなんだよナ。

「お願い……ね?」
耳元でささやかれて、くらっときた。
マジックの匂いが充満してる。
凄く切羽詰まった声だったから。
そんなに求めてくれるなら。
「うん……」
コクリと頭を下に振ると、マジックの優しい笑みがシンタローの目下に滑り落ちた。
「ありがとう。」
そう言われた瞬間貫かれた。
「―――ッツ!!」
声にならない叫び声を上げて、海老剃りにしなる背中。
しかも、ピンポイントでシンタローのいいところを狙ってくる。
「ッハ、シンタロー、お前の感じる所はね、前立腺っていうんだよ。」
「ぜんりつ、せん」

たどたどしくそれを言うと、マジックは微笑んだ。
「そうだよ、シンタロー。男にしかない性感態さ。」
グイ、と奥まで入れると、シンタローが目を見開いた。
目の前がしてチカチカ星が見える。
「あああ……!」
ぎゅ、とマジックに足でしがみつくと、優しく頭を撫でられた。
そして、さっきまでの乱暴が嘘だったみたいにゆっくり動き出す。
意地悪しないで確実にシンタローを絶頂にまで高ぶらせていく。
シンタローの目に宿していた小さな光は消えて、代わりに劣情を含んだ甘ったるい、瞳でトロンとする。

落ちた。

マジックがそれに気付かない訳がなく、少しだけ唇の端を上げる。
シンタローの自由な足がマジックの腰に絡まり、もっと、と催促するように締め付ける。
「かわいいよ、シンちゃん。お前の中はとっても気持ちがいい。熱くて、締め付けて、パパのをくわえて離さない。」
「ふ、ひ、ぁあぁ、とうさんッツ!」
生理的な涙がぽろぽろ流れてシンタローの睫毛を濡らし、頬に伝う。
ぬぷぬぷと耳を犯す水音。
羞恥を忘れ理性の糸も切れ、シンタローは快感だけを追う。
気持ち良くて堪らないこの行為はきっと、心と心が一つになれるからだとシンタローは頭の隅で考える。
マジックもそう思ってくれたらいいな、なんて思う。
「あ、とうさ……も、もぉ……あ、あ、」
びくびくと太腿の内側に電流が走る。
「いいよ。一緒にイこうね。」
そう言って激しく突き上げる。
シンタローの体が、寒さに震える子猫みたいにフルフルと震えた。
「あ!あ!ダ、ダメ!あ、あ、ああああ―――ッツ!!」
「―――ッツ!」
びゅく、びゅく、とだらし無くシンタローは精子を吐き出し、マジックの腹と己の腹を汚す。
それとほぼ同時にマジックの精子がシンタローの中に注入された。
荒い息遣いだけが部屋を支配する。
マジックがシンタローの額にキスをすると安心したのかそのまま気を失った。
「ふふ、シンちゃんたら、下着すごい事になってるのに無防備なんだから。」
汚れた女性用のパンツは前はシンタロー、後ろはマジックで汚されていて。
いそいそとシンタローの足をM字に立たせると、携帯を開き、パシャ、とその淫らさを収める。
かなり上機嫌なマジックだが、数時間後それがバレてシンタローに携帯ごと破壊され、尚且つ口を一週間聞いて貰えなくなる事をまだ彼は知らない。









終わり

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