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m1















キミとボクのキョリとアノコ








「25歳と数ヶ月! おめでとうシンちゃん!!」
 そう言ってマジックは、シンタローが読んでいたニューズウィークを取り上げる。
「ちょ、返せよッ」
「25歳と数ヶ月! おめでとうシンちゃん! おめでとう私!」
 週刊誌をはるか後ろにぽいと投げ捨て、もう一度謳う。その飛びつかんばかりの浮かれように、毎度のことながら脱力して呆れた。
「あーそうだナ。だがな、5月に歳くってからこの数ヶ月間、なにも今日に限らずにその“25歳と数ヶ月”とやらだったぜ?」
「そう! 私もいつかいつかとずっと楽しみにしていたんだよ! そして! 今日だと思ったんだ! 理由はないけど! でも確信といってもいいね!」
 マジックは機敏にシンタローの手をとりその爪先にキスを落とす。
「なんだそりゃ。…やめぃ。昼間っから」
 握られた手をぺしりと振りほどくと、マジックは残念そうにして、それでも笑って再び手のひらをシンタローに差し出す。
「さあ起きて、こっちにおいで」
「チッ……あんだってんだよ…休日なんだからのんびりさせろよナー」
 渋々と手を引かれて立ちあがったシンタローを、マジックはうきうきと自分の私室へと誘った。
「…おい、変な事したらはったおす」
「あっはっは。しないよー。私は」
「そのとってつけたよーな一言はなんだ」
 嫌な予感がしないでもないが、マジックはベッドのほうには脇目もふらず、更に奥にあるクロークルームへと連れ込むと、白い布で覆われたモノを示した。
「ふっふふふふ…じゃーんッ!」
 マジックの頭の中ではドラムロールが流れたことだろう。反対にシンタローの頭の中ではシベリア凍土の冷たい風が吹き荒んでいる。
 早くひとりになりたい、そう思った。
 そんな切実に冷静なシンタローの前で意気揚々とマジックが白布を取り除けると、そこには。
「…鏡?」
「うん! 鏡だね!」
 2メートル近く縦に長い楕円を描き、周囲は精緻な細工が巡る、その古めかしい姿見は過去に見覚えがある。シンタローが幼少、グンマと遊びまわっていた時にみかけた記憶が。その時も同じように白布に包まれて使われていなかった。
「これが? 25歳と数ヶ月のプレゼントってかァ?」
「プレゼント!?」
 マジックはびっくりしてシンタローを見た。のにシンタローもぎくりと驚いた。強いていえばお化け屋敷に一緒に入った隣の奴の悲鳴にびびる感じだ。
「それはそれは! 贈り物! これにはぴったりだ! 私からシンちゃんへと! 私から私へと! とっておきの! 贈り物! なんッて素敵な言葉だろうね!」
「つーかなんだってこーいちいち反応が大袈裟かなー」
 そんなに興奮してこんな狭い所で長い手足を振り回していると、いつかどこかにぶつけて痛い目をみるだろう。いっそぶつけろと念じたくもなる。ただし俺にはぶつかるな。ぶつけろ。
「で、話が一向に見えてこねェんだが」
「あ、うん見えなくても大丈夫! シンちゃんは感じるままに行動してくれればそれで万事オッケーだから!」
「あーそうかよ」
 もう何のことやら、まともに聞く気にもなれない。
「それでは次元縦断魔法の鏡で過去の旅! 行ってらっしゃいシンちゃん!」
 どんッ!
「あ? って、は?!」
 意味不明の言葉に疑問符を投げかけたが、時既に遅く。
 突き倒された先には鏡があり、条件反射で衝撃に備えて思わず目を瞑ったシンタローの常識を覆してそれに融け込むように自分の身体がすり抜けていく。
 その感覚の気色悪さと、あとはひたすら暗闇を落下する感覚がつきまとう。
 気持ち悪くて、目を開けることができなかった。



















キミとボクのキョリとアノコ







 *****


 いままでのおはなし。

 忍者もいれば魔法使いもいる、ガンマ団率いるシンちゃんは、
 休日のんびりしていたらマジックパパの粋なはからいで
 どうやら昔にタイムスリップしちゃったようです。


 *****








 巨大な姿見に勢いよくたたきつけられるダメージを想定して目を瞑ったが、ぞろりとした感触と共に通り抜けた。頭から落ちて天地が逆転するのと同時にカーテンの向こうから声をかけられたようにくぐもった、楽しんでおいで、というマジックの声が聞こえた。…のを思い出す。
    !
「ちょっと待てぃ超常現象ッツ!!」
「うわっ」
「……………あ…?」
 怒りにまかせて腹筋の限りに起きあがると、目の前で少年が驚いていた。
 否、ただの少年というより。
 どくどくと自分の動悸が鼓膜に響く。
 思慮深げな碧い瞳と輝くような金色の髪、戸惑いがちに開かれた唇は、大丈夫ですかとシンタローを気遣う言葉をのせた。
「ごめんなさい、僕はあなたの身元を知らない。僕は、用心しなければならない」
 少年の言っていることが両腕の拘束を示しているのだと気づく。手首をタオルで縛められていた。不快ではあるが、今、大事なことはそこじゃない。
 シンタローが返事もできないでいると綺麗に整った形の爪がおずおずとのびて、やわらかく何度も何度もシンタローの唇をなぞった、その瞳。
「…名前を訊いても?」
「あ、っと……シンタロー」
 うわごとめいて呟くと、そう、と少年は頬を紅潮させて金の睫毛を伏せた。
「とても、とてもいい名前だ。シンタロー」
 これは。と仕草と熱っぽく掠れた口調に思い当たると、シンタローも自分の頬が熱いのにも気づく。
 自分の好みとぴったり合致していて、またその相手がこちらに好意を抱いている時、こんな場合、どうする。そんなの決まってる。
 ということは。
 感じるままに? 冗談だろ。…趣味悪ィぜ、親父。
 もはや誰何せずとも察しはつく。
 シンタローの葛藤を知らずに少年は毅然として口を開いた。
「僕は、僕の名はマジック。ガンマ団総帥の長男だ」
 やっぱりか、と思うのと同時に警鐘が鳴る。
 ヤバイと思っていてもマジックの顔が近づいてくるのを避けることができない。間近に潤んだ瞳を見て、それに屈するように、誘うように、シンタローも瞳を伏せた。
 マジック少年の唇を受け入れながら、これは、というかこれでも淫行になるんだろうか、という不条理なモラルハザードが一瞬だけ脳裏を掠めたがあっという間に流された。
 ただ重ねるだけの拙いキスの後、マジックはシンタローを見つめる。
「どうしよう。シンタロー。お願いだから正直に答えてほしい。シンタローは、…ガンマ団の敵だろうか」
 生真面目な言葉がくすぐったくて、シンタローはつい頬をゆるめた。
 このマジックが危惧する気持ちも勿論わかる。
 ここでやっと余裕ができたのか、シンタローがマジック以外のものに視線を転じると、今いるのはどうやらベッドの上らしい。ぐるりと見渡すと、件のアンティークな姿見が見えた。単純に、アレからアレへと通り抜けた、と考えるならばシンタローは密室トリックよろしく突然この部屋に出現したことになる。タネは非常識な魔法の鏡でした、などと説明したって信用を得られそうにもない。彼の身の上を考えれば自分の不審さはどこかのスパイか暗殺者と思われても致し方がないだろう。よくわかっているつもりだ。けど。でも。
 あーやべーやべー。喰っちまいてー畜生なんだよこれ反則じゃねェか!
「シンタロー。答えて」
 畳みかけるようにマジックから綺麗なキングス・イングリッシュでPleaseとお願いされて、シンタローの理性でできた防波堤はあっけなく決壊した。
 時に、自分の好みの相手がこちらに好意を抱いている、こんな場合。
「ああ悪ィ、馬鹿にしてんじゃなくて、…マジックがすげェ可愛いから、さ。つい」
 全身全霊ちからの限りたらしこむに決まってる。
 どうにでもなれと、シンタローはマジックに飛び切りの笑顔を向けた。























キミとボクのキョリとアノコ







 *****


 聖書のくだりはどうだったっけ。
 誘惑の蛇に唆されたイヴ。
 禁断である果実を口にして、
 アダムにもおなじ知恵の実でもある林檎を食べさせて?

 果たしてお互いに顕れたのは羞恥心と、


 目の前の相手への、激しい、恋情?


 *****








「なあ、これ解いてくれよ」
「…で、できません。無理です」
 シンタローが投げかける言葉に少年は過敏なほど几帳面に返してくる。
 なれの果てがあんな阿呆なオヤジになるとはとても思えない。
 一挙動作、言葉尻からなにからもう可愛くて可愛くてつい手が、…今は出せないのでつい口が出てしまう。
 シンタローは、どうにか先に進みたくて仕方がない。
「じゃ、キスして」
「…」
 かるいシンタローの口ぶりに、マジックは黙然と見返した。
 マジックにはこれから先、どうしたらいいのか判断がつかない。
 ここを出て、誰か大人を呼びにいかなくちゃ。
 きっと警邏の者を呼ぶのが正しい。
 そう、やらなくてはいけない義務はわかっているが、目の前のシンタローを見つめるともっと大切なことがある気がして、決心が鈍るのだ。
 ずっと、こうしてそばにいたい。触れていたい。
 結局義務よりも、唇に触れることを選んでしまう。
 シンタローの身体に乗りかかるようにしてキスをすると、タオルを十字にして捕えていた手が両者の胸板に挟まれて邪魔になる。けれどどうやったらうまくできるか迷った末、シンタローの両手を押しつぶしての無理矢理なキスになった。
「だからこれ、外してくれれば、」
「だ、駄目だってばっ!」
 苦笑するシンタローの語尾に重ねてマジックが否と悲鳴に似た声を上げると、シンタローは意味ありげに、その実、可愛いナァと心底思いつつ秋波を送る。
「ふーん…  俺の事、怖い?」
 マジックは口を結んだまま首を振って否定する。
「じゃ、嫌いか?」
 再度、首が大きく横に振られる。
「…シンタローは、こわくない」
 否定を繰り返した後マジックは口ごもって、でも、と続けた。
「でも?」
「……わからないんだ。こんなの、どうしたらいいの…」
 シンタローはそんなマジックに淫して笑う。
「別に、好きにしていいんだぜ?」
 好きに、とシンタローの言葉をぼんやりと反復してマジックは、はっと気づいたような挙動で真っ赤になった。
 そんな反応をされるとシンタローとしてはにやけてしまう。
「俺のこと、好きにしていーんだぜ? ほら」
 マジックの想像したように言い換えてみて、シンタローは縛められた自分の両手をホールドアップとばかりに上にしては、少年を危うい道へと誘う。
 両手を挙げると、休日だからと気負いなくくつろいで着ていたシャツの胸元に、キスの間中マジックに圧されて皺がついていた。
 それにさえマジックは罪悪感をもよおす。
 困った顔で指を伸ばしてその皺に触れる。くっきりとついた跡が自分の緊張を表しているようでとても情けない気持ちになる。
 ガンマ団だとか、総帥の息子だとか、長男だとか。
 ちゃんとした、しっかりした、頼りになる、英邁な、そういう言葉の数々を自任してきたはずなのに。
 今のこの状況だとどれもまったく役に立たない。
 こういう場合にはみんな、こういう風になっちゃうんだろうか。
   好きに。
 もう一度、今度は心の中で呟くと、マジックは吸い込まれるように唇を重ねた。
 角度を変えて何度も何度も唇を押しつけていると、濡れた舌がぺろりと唇を舐めあげてくる。それに吃驚してつい身を引こうとしたが、先にシンタローが自分の手首を輪のようにしてマジックの細いうなじに掛け、逃がさないとばかりに引き寄せてくる。
 シンタローの胸にすっぽりと収まって、密着すると心臓の音がふたつ、せわしく聞こえてくる。より早いのは確かに自分のほうだと確信した。
 おそるおそる、シンタローの唇を舐める。
 シンタローも舐め返してくる。
 やわらかくてあたたかい、濡れた舌と舌が掠めて触れる。
 そうされると細かい刺激がびりびりと、ぞくぞくと伝わってくるようで気持ちいい。
 マジックがシンタローに倣って舌を舐めると、シンタローはマジックのそれを絡めとって更に深いキスにしていく。
 そうやってふたりして、飽きるまでキスばかりしていた。
「シンタロー」 
 愛しい、思いの丈をこめて名を呼ぶと、シンタローもうっとりとした視線でマジックを見つめてくる。満たされていく、この幸福感。
 愛しい。
 シンタローを抱きしめて、もう何もなくてもいい。マジックがそう思っていると、シンタローは頬にキスをしてくる。
「…続きは?」
「続き?   あ。あ、あの…」
 マジック少年が満たされてもシンタローには、まだまだ足りない。
「そういやオマエ、やり方、わかってんの?」
「え?」
 致すためには大事な問題だが、シンタローとしては大して期待していない。
 教え込むのも一興だ。
「ヤッたこと、あんの?」
「……ない、けど。でも! わかる…と思う」
「ホントかぁ?」
「大丈夫だよ! 心配しないでシンタロー!」
「ハハ、  なら」
 任せたと薄く笑ってキスをされ、先を促されて、マジックは覚束ない指先でひとつひとつシンタローの胸元のボタンを外していく。長い黒髪映える白い肌を露わにしてみて、ごくりと喉をならした自分にマジックは気づかなかった。
 一番下のボタンまで外して、そっと両手で、胸に、肌に、直に触れる。
 手のひらに伝わる肌触りに一瞬で身体が熱くなる。シャツを押し広げると、シンタローが粟立つ感触に、うわ、とかそけく喘いだ。
 マジックはその喘ぎ声にくらくらしながらも無言でシンタロー広い胸板を晒しきると、馬乗りになっていた場所からずれてジーンズに手を掛ける。
 ジジ、ジ。
 音を立ててゆっくりジッパーを下ろし、シンタローの下着にその幼い手をかけ。
「…………く」
「く?」
 うつむいて突然ぴたりと凝固したマジックを、脱がされかけの間の抜けた格好でシンタローは見返した。
「黒いんだ………」
「は?」
 いやそんな驚かれるほど黒いモノは持っていないぞと訝しんでいると、小声でマジックが付け足す。
「あの、その、け、毛…が…」
 ハの字の眉でマジックが呟くと、シンタローは吹き出した。
「あったりまえだろー。髪だって黒いんだしヨ」
「っ…そう、そうか。そうなんだ…。ごめんなさい、僕、父さん以外、というかオトナのってあまり見たことなくて…、色が違うなんて知らなくて…っっ!」
(ぎゃーコイツ可愛いッツ!!)
 シンタローには目の前で恥ずかしがるマジックの反応がつくづく新鮮だ。
 抱きしめたいのに、両手の自由がないのが残念に思う。
「何、変か? 勃たねェ?」
「っ…そんなことない! …すごくドキドキする…」
 言って、マジックはシンタローにそろりと触れてくる。
 勃ちあがりかけていたシンタローのそれは子供の指先に反応していた。
「ァ  …。え、待っ」
 マジックは紅潮した頬寄せ、ちゅ。ちゅ、と何度もそれにくちづけをした。
(ぶっ    !!)
 マジックは手の中にある熱いものをゆっくりと根本から先端まで舐め上げてから、シンタローの反応を見ようと見上げると。
「シンタローッ!?」
 シンタローは鼻血で顔面を真っ赤に染めて倒れ伏していた。
 吃驚したマジックが慌てて手を伸ばす。
「シンタロー大丈夫? どうしたの?! シンタロー!」
 何か拭くもの、と、とにかく安静に、が頭を占めて、マジックはシンタローを戒めていたタオルを急ぎ無理矢理に振りほどいて流れた血糊を拭きとる。
「シンタロー、だいじょ…」
 うぶ? と訊き終わる前に腕を引かれて今までとは逆に押し倒された。
「悪ィ、限界   」
 圧し殺した声で言ったが最後。
 シンタローは強い力でジーンズを下ろし、脚から引き抜いた。
「シンタロ   ん、」 
 唇をふさがれると、シンタローの長い髪がマジックの顔を撫でた。
 先ほど、マジックからしていたキスとはまるで違う熱烈さで繰り返しくちづけてマジックを蕩かしながら、シンタローは自分とマジックの服を脱がせる。
「シン…」
 マジックが抵抗できずにただ熱い吐息をこぼすうちに、シンタローはマジック自身を一気に呑みこむ。
「ひっ」
 快感に悲鳴をあげるマジックに、ごめんと囁いてシンタローは腰を揺らす。
 蠕動の気持ちよさに眼もくらむ。
「あっ…熱い…シンタロー…シンタロー…!」
 のけぞって身体を震わせると、マジックはすぐに達ってしまった。
「あ…?」
 あっけない幕引きに、シンタローが間の抜けた声をあげた。
「……っ」
 力が抜けて、涙が出てくる。
 うれしいのか、かなしいのかも判らない。それでも泣いた。
 泣くなんて、どれくらい久し振りのことか。
「マジック」
 覆い被さるように抱かれて腕をどけられる。
「俺のこと、好きか?」
 にやけてシンタローは青い眼の泣き顔に尋ねる。
 それには首肯で返ってきた。
「んじゃ、こーいう時には好きだって言うんだよ。わかるか?」
「…うん…シンタロー、好き。好き。大好き…!」
「よし。上出来」
 シンタローが大満足で微笑むと、マジックも泣き笑いで笑顔をつくった。
 長いキスをして身を起こすと、マジックが言う。
「シンタロー、もう一回…」
「…できんの?」
「うん…シンタローも…気持ちよくしたいんだ…」
 ぎゅっと力強く押し倒してくるので、シンタローも笑ってされるがままでいた。

























NEXT→


















































2004.9.24. BGM:5!! モンキー


も・こっちのほうがげんかい!

とうたつじかんはそれこそみこすりはんで!!



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ms

オリキャラ(♀)が出てきます。ご注意。





「本当は好きなくせに、曖昧な態度でいるからいけないのよ」

そんな女性の声が響いたその場所は、シンタローの自室である。
けれどそれはシンタローとの会話ではなく、部屋の隅に設置されたテレビから流れてきたものだ。
テレビの前のソファに座り、ブラウン管を眺めているシンタローの視線は、何故か真剣だ。
ちなみに映っているのは、日本で放映されているドラマである。衛星放送で、この国でも見る事が出来る。
日本では昼間の時間帯に放映されている、ドロドロの恋愛劇であるそれ。本来なら、シンタローには全く興味ない内容のものなのだが。
彼がこうして、苦虫を噛み潰したような表情で見ている理由は、出ている女優にある。
今、ブラウン管に映っているのは、二人の女優。
片方は清楚で大人しそうな雰囲気の女性で、もう片方はキツめで派手な顔立ちの美人。
その二人が言い争っている。というより、おとなしめな方は打ちひしがれた様子で、喧嘩腰なのはキツめの方だけだ。
「太郎さんはもう私のものよ」
「そんな……」
毎回ちゃんと見ているドラマではないから、細かい内容は勿論シンタローには判らない。ただ、この二人の女性が男一人を挟んだ三角関係になっている設定らしい、ということは大体判った。
諍いというよりは、男を寝取る事に成功した女の勝利宣言の場面のようだ。
まあ、大人しめの女性キャラの方がヒロインで、キツめの方は悪役のようなので、大抵男はまたヒロインの元に戻るものだが、シンタローはそんなことは知らない…というか、知ったこっちゃない。
このキツめの美人女優自身が、問題なのだ。
視界を少しずらし、部屋の反対側の隅に投げ捨てた雑誌を見遣る。
その時、その女優が高笑いしながら放った台詞が、シンタローの耳に届いた。

「好かれている事に甘えて、あなた何か努力した? 尽くされるのが当たり前だと思ってたんじゃないの? そんなだから、あの人は疲れて私を選んだのよ!」

ぐさり、と。不意打ちなその言葉に心を抉られて、思わずテレビを消してしまう。
静かになった部屋でしばらくぼーっと今の台詞を頭の中で反芻していたシンタローだが、やがてはぁっと息を吐き出し、力なく立ち上がる。
投げ捨てられていた雑誌を拾い上げ、ページを捲ると、そこには見慣れた男の写真がでかでかと載っている。
その横には寄り添うように、今のドラマに出ていた、キツめの方の美人女優の姿があった。
写真の横に記された見出しは、日本語で、『有名女優と元ガンマ団総帥、国も立場も年齢差も越えた熱愛発覚!!』などと書かれていて。
更にページを捲れば、高級そうなレストランで二人で食事をしている姿や、世界的に有名な高級ホテルのロビーに二人でいる姿とか、諸々の写真がわんさか載っているではないか。

「…ったく……日本で何やってんだあいつはァ……」

そのページを破る衝動には何とか耐えたものの、握り潰す勢いで丸められた雑誌は、シンタローの手の中でしわしわになっていた。
そりゃあ、あの父親にも、過去様々な恋愛遍歴があったことだろう。自分が生まれてからも、何かしらあったかもしれない。
しかし自分が知る限り、パパラッチに撮られ写真誌で暴露された事などなかった筈だ。
お付の秘書達は何してるんだ。こんなのが撮られる前に阻止するべきではないか。
憤懣やるせない気持ちで、シンタローは一週間後帰国予定のマジックに対してどういう態度を取るかを考え始めた。
これは何だと問い詰めるか、無視するか。
……んー、無視する方があいつには効くんだよな、必死で俺の機嫌とろうとして…。
そこまで考えて、ふとさっきのドラマの台詞を思い出した。

「曖昧な態度でいるからいけないのよ」
「そんなだから、あの人は疲れて私を選んだの」

長い黒髪の綺麗な女優が、高笑いしながら言い放つ言葉は、自分へのものでは決してないのだが。
でも。しかし。
……………………………………。
暫くの沈黙の後、何かを決意したように視線を上げ、シンタローは部屋を出ていった。


「日本へ行く!」

緊急の仕事だけさっさと片付け、スケジュールを調整し、急遽僅かな休暇をもぎ取った現総帥の来日宣言が響いたのは、それから間も無くの事だった。




「シンちゃんどうしたの? この時期、日本での仕事あった?」
日本へ向かうという情報は、あっという間にマジックに伝わったようで、彼は愛しい息子を空港まで出迎えに来ていた。
だがさすがに、来日した理由までは判らなかったようで、ホテルに向かう車の中で、運転しながら尋ねてくる。それには「別に」とか、明確な答えは返さないでいたら。
「ああ判った! パパに会いたくなったんだね!!」
全開の笑顔で、でもどこか冗談を飛ばすような軽い口調でそんな事を言い出す。いつもなら全力で否定するところだが、シンタローは無言で何も反論しない。
常と違う様子を感じ取り、首を傾げるマジックから視線を逸らし、窓の外を見ていた。しかしふと、ある事に気づき、シンタローはマジックに問いかけた。
「ティラミス達は?」
本来なら、運転などは彼ら秘書がしている筈だ。なのに何故ここにいないのか。
「今回は仕事じゃなくて、プライベートで来たからね。連れてこなかったよ」
「………」
マジックの日本好きは、シンタローも知っている。時間が空くと、たまに旅行に行ってる事も。
だがしかし、今回のプライベートとは。
……もしかして、あの女優に会う為とかだったら。
ぐるぐるそんな事を考え込み、益々シンタローは貝のごとく黙り込んでしまったのだった。



やがて、車は都内のあるホテルへ到着し、扉を開けながらベルボーイが恭しく一礼する。
マジックもシンタローも日本へ来ると、よく滞在する高級ホテルだ。しかし、雑誌に載った写真では、別のホテルのロビーにいた。てっきり、そこにいると思っていたから、迎えが来なければそちらに向かおうかと思っていたのだが。
「今回泊まってるの、ここじゃねえと思ってた」
「え、何で? 仕事だと大抵ここに泊まるでしょ。うちの一族御用達だよ」
「あんた、プライベートって言ってたじゃん」
「ああ、仕事じゃなければ京都の旅館なんかにもよく行くけどね。今回用があったのは東京だから」
最上階へと向かうエレベーターでの会話である。乗っているのは二人だけで、会話には気兼ねがない。
「今回は、東京で会う約束した人がいてね」
その言葉に、シンタローは訝しさを感じてしまう。

会う約束をした人間?
……それってやっぱり?

チンと音が鳴り、エレベーターが止まる。最上階についたようだ。静かに扉が開き、マジックが先に出てゆく。
しかし。
「シンちゃん? どしたの」
なかなか降りようとしない息子を振り返り、マジックはエレベーターの「開」ボタンを押しながら、不思議そうに声をかける。
「あ………」
「あ?」
「会うのはいいけど、もっとうまくやれよッツ!」
「え?」
何かしら言いよどんでいた彼が、やっと口に出したのは、怒ったような口調のこんな言葉だった。意味が判らず、マジックは首を傾げ問い返す。
シンタローにとっては、彼のそんな態度が益々気に食わない。
「写真撮られただろうが!」
怒鳴りながらも、心の中では頭を抱えている。こんな筈じゃ、と。
能天気な父親の態度につい、こんな形で切り出してしまった。もう少し、慎重且つ冷静に探りを入れる予定だったのに。
何を言われたのかやっと判ったらしいマジックは、ああ、と頷いた。
「あー、あれね…。シンちゃん見たの? 日本でしか売ってないのに」
「団の匿名目安箱に雑誌入ってた」
「…パパ、つくづく団員の反感買ってるねえ…」
しみじみとマジックは呟く。
現総帥であるシンタローは団員に絶大な人気がある。そのシンタローにべったりのマジックに反感を持つ者が多いのは、D●本でも知られる通りである。
「え、ていうか、シンちゃんそれで日本まで来たの?」
少し驚いたように問いかけられた言葉に、シンタローは、うっと狼狽えてしまう。
「いや、違、そうじゃねェんだけどッ、……ええと、もう総帥じゃないとはいえ団の恥晒すのも何だしっ、調査しなきゃだし、父親がヘンなことしてんじゃないかって息子としては……」
反論するつもりで口を開いたのに、出てきた言葉は何だか支離滅裂だ。
「まあ、とにかく降りて。エレベーター止めてたら迷惑だし…部屋で話そう」
慌てているシンタローを制し、部屋へと促す。
まだまだいろいろ反論したいことはあるが、確かにこんな所で立ち話も何だし、内容も何だ。
シンタローは、マジックのその申し出にとりあえずおとなしく従った。




最上階スイートルームの装飾は、これでもかという程に華美なものだった。
ベッドなど、天蓋付きでやたらでかい。どちらかというとシンプル好みなシンタローにとっては落ち着かない空間だが、派手好きなマジックがここを好むのは判る。
白く大きなソファに座っていると、マジックが自ら紅茶を淹れて持ってきた。
「長旅お疲れさま」
にこやかにねぎらわれるが、シンタローにとってはそれどころじゃない。
しかし急かすのも余裕が無いように思われそうで嫌だなと、とりあえず茶に口をつける。薫り高く深みのあるその味は、家でもよく出されるものだ。マジック好みの茶葉も用意されているあたり、このホテルは本当に馴染みなんだなとシンタローは実感する。
「で、さっきの話だけど」
紅茶を味わいつつ、先程の会話についてどう切り出すかと迷っていたら、マジックの方から言い出した。
「あの雑誌は勿論嘘だし、パパが今回会う約束していた人は、あの女性じゃないよ」
「…じゃあ誰だよ」
まず最初に答えを全て口にする彼の口調は、言い訳している風でもない。
「あの女性の父親の方だよ。実は元総理大臣で、パパとは昔から交流あるんだ」
聞けば、その元総理大臣とやらも相当なダンディで、昨年度のワールドナイスミドル大会にも出場し、見事3位入賞したとか何とか。
マジックとはダンディ仲間として気も合い、日本に来るとちょくちょく酒を酌み交わす仲だったという。
その相手に急用が入り、会う約束がおじゃんになった。それを娘であるあの女優が、わざわざ謝りにきてくれたのだと言う。
ついでに、その元総理と行く筈で予約していたレストランに、キャンセルするのも何だしと食事に行き、その後女性が宿泊していた高級ホテルのロビーまで送っていったとの事だった。
「まあ、そこで迫られはしたけどね」
「何ィ!?」
「向こうはずっと付き合っていた俳優と別れたばかりらしくて、何か自棄になってたみたいで」
それだけじゃないだろう、とシンタローとしては思う。
この男は見た目的には決して悪くないし、気兼ねする妻がいるわけでもないし、世界的にも有名なガンマ団の元総帥とステイタスもばっちりだ。
遊びだろうと本気だろうと、一般的に見れば相手として不足は無いのだろうと思う。
…近くで本性を見ている自分としては、ツッコミどころは多数、ありすぎる程あるのだが。
───ああもう。なんだかな!
もやもやした思いを感じつつも、それをどう言葉にしていいのか判らず、眉根を寄せて頭を掻く。
そんな息子の様子を見ていたマジックは、嬉々として

「シンちゃん妬いてくれたの? 嬉しいなあ」

こんな台詞を言い出す。反射的にシンタローは「そんなんじゃねー!」と否定していたが、全く意に介した様子もなく、マジックは続ける。
「心配しなくても大丈夫だって、愛してる人いるからって、ちゃんと断ったから。勿論シンちゃんのことだよv あ、何ならパパの身体点検してみる?」
「っ……」
ふざけた軽い口調が気に入らない。
マジックはこういう言い方をして、自分が拗ねたり照れたり慌てたりするのを、どこか楽しんでいる節がある、と思う。
心にある、ムカムカとかモヤモヤしたものが、あの雑誌を見てから積もり積もって、たった今シンタローの中で臨界点を突破した。

「……………点検、したろーじゃないか」
「え?」
「て・ん・け・ん。何かヤバイ証拠あったら殺す」



言い放った彼の目は、完全に据わっていた。











「シンちゃん?」

マジックからすると完全に予想外の答えが返ってきた為、確認するかのように名を呼んでみるが。
「あんだよ」
対して返事するシンタローの据わった目が、「あんたが言い出した事だろ」とばかりに自分に向けられている。
こっちももしかして自暴自棄かねぇ、とマジックは考えるが、このサプライズはなかなか面白い。
「いや、何でも。どうぞお好きに。…で、どうやって点検してもらうのかな」
「服、脱げ」
質問に対する今度の答えは、予想通りのものだ。
わーシンちゃんてば積極的!と口に出したいが、臍を曲げて逃げてしまう可能性が高いので止める。そもそも、マジックはまだシンタローの真意を測りかねていた。
まあ、あの雑誌のせいで疑われているのだろうとは思うが、シンタローならこちらが嘘を言っているかどうかは判るだろう。こちらは騙す気など無いし、相手も勘が鋭い子だから。
じゃあ、わざわざ「点検」すると言うのは何故なのか。
「点検でもする?」という、こちらのからかったような言い方で、逆に天邪鬼な性格が刺激されたか。

…それはそれで楽しいんだけどね。

頬が緩みそうになるのを耐え、言われた通りにスーツの上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し素肌を顕わにしてゆくと。脱いでる本人ではなく、脱がせる命令をした側の人間が、落ちつ着かなげに視線を泳がせ出した。
目線を空に彷徨わせるシンタローの頬が、少し朱に染まっている。
その様子を横目で見つつ、「可愛いなあ」などとマジックは思うが、いつもと違うこの空気が新鮮で、壊さない為にやはり口に出さないでいた。
ズボンにも手をかけ脱ごうとすると、ベッドに移動するよう指示される。
あくまで優位な立場を保ち命令を下すシンタローなのに、やはり視線は微妙にこちらを向いていない。
それで点検ってどうやるんだろう、とマジックは状況を楽しみつつ思う。
ベッドに腰掛けつつ、ズボンも下ろし下着姿になった所で、うろうろと視線を移動させつつ、暫く葛藤していたらしいシンタローが、気合を入れるかのように一つ大きく息をつき、ベッドのすぐ傍へとやってきた。
「横になった方が点検しやすいかな?」
問うと、シンタローは頷く。
「さあどうぞ。存分にご検分を」
シンタローと親子の域を超えて関係を持ち、もう数年経つが、こちらが先に脱いで見下ろされるというのは、初めてのシチュエーションかもしれない。
などと思うマジックは、それでも照れるでもなく余裕を持っている。これが年の功というものか。
対して、シンタローの方は心中穏やかではない。というか必死だ。
うろたえたら負けだ、そんな感覚のみで行動していた。
マジックの素肌が見えている部分に、怪しげな痕などは無い。見下ろす相手はまだ下着はつけている。所謂、ぱんつ一丁姿。
身体を点検すると言ったのだから、そこも対象箇所なんだろう。とは思うものの。
「…………」
マジックの下着を手ずから脱がせるという行為に、これまた激しい葛藤で、背に汗すら流れそうだった。
照れやら羞恥やらで怯みかける心を無理矢理奮い立たせ、がっと下着のゴムを引っ張り、一気に下ろす。いっぱいいっぱいのシンタローは、「色気の無い脱がせ方だなあ」というマジック側の内心の僅かな不満など知る由も無い。
「う……」
顕わになった下肢を、やはり直視するのは難しかった。
見慣れてる筈なのに、何故か妙に恥ずかしい。
いや、見慣れてるようで実は見慣れていない。コレに散々啼かされてはいるが、受け入れる時も促されるまま口に含んだ時だって、目は逸らしてたり閉じてたり。思えばまじまじと見た事なんかない。
…自分のとは結構、大きさとか角度とか違うな、などと。やっと視線を向けつつ観察して。
でもやっぱり気恥ずかしくて、乱暴に腿やあちこちに手を這わせながら、「点検」を始める。
「シンちゃんに視姦プレイされる日が来るとはなぁ」
マジックの方はといえば、相変わらず照れた様子もなく、むしろ感動すら感じているようで、しみじみと呟いている。
「ちがう!!」
真っ赤になって怒鳴りつけながら、シンタローは気力を奮い立たせて、内腿まで点検し探っていた。
時折マジックは「くすぐったいよ」などと笑ったりするものの。

……なんなの、何なんだよ、コイツ。

シンタローとしては納得がいかず、内心で不満を漏らし始める。
これだけあちこち弄ぐってるのに、マジックの中心に全く反応は無い。表情も余裕で、面白がっているような様子さえある。
そりゃ直にモノに触れてるわけではないのだが。もしこんなこと、自分がされたら。
───服を剥がれ指を這わされただけで、きっと身体は反応してしまう。
例え、性感帯に直に触れられなくてもだ。

「あームカつく!」
「え、なに? 何かあった?」
「何ってなにが!」
「何がって、調べてるんでしょ。キスマークとかあるかどうか。え、無いよね??」
心当たりが全く無いマジックとしては、そんなものは身に付いている筈がないという確信はあるものの、シンタローの奇妙な反応につい確認してしまう。
「ああ無いさ。なーんも無い! だから何だってー!?」
「無ければいいんじゃないのかい? シンちゃん、わけ判んないよ」
横になった状態から、肘で僅かに上半身を持ち上げ、小首を傾げ不思議がるマジック。そんな様子にシンタローはまた腹が立つ。

俺がこんなに近くで、それもベッドで、あんた裸で、見て、触って。
なのに何でそんな冷静なんだ!?


シンタローとしては、元々先程の会話で、写真の件は潔白だろうと納得していた。
この「点検」は、ささやかな意趣返しとでもいうところか。それに加え、ベッドへ追いやった時点で、半ばやけくそ気味に誘っているつもりだった。
いや、誘うというには色気が足りないのは自覚があるので、仕掛けるという単語の方が適当かもしれない。
しかし。
それでも。
この自分がベッドに誘ってるというのに(というのは語弊があるかもしれないが)、今のところマジックの方は何も反応していない。
ここまでしているのに、まだ曖昧だというのか。
もっとストレートに、言わないと駄目なのか。
ええと何だ、「×××しよう」とか「○○○○したい」とか…………
……………………
………………………………………………。

「言えるかああ!!!!!」
「な、何どうしたの!?」

突然、その場にちゃぶ台があれば引っくり返しかねない勢いで叫んだ相手に、マジックも驚き尋ねる。
「シンちゃん?」
その問う声を無視し、シンタローは突如相手の足の上に跨るように圧し掛かった。
そして反応していないマジックの性器を、色気もなくむんずと手に取り。
少し躊躇った後に、その中心へと顔を寄せ舌を這わせた。
言葉で言うよりは行動の方がまだ出来る気がして、試してみたのだが。

「…っ」

マジックにとっては予想外の行動だったのだろうか。舌が触れた瞬間、呼吸が微かに乱れた。
その小さな吐息を耳にし、シンタローの心に奇妙な勢いがつく。勢いのまま半ばまで口に含むと、それは漸く反応を見せ始めた。
芯を持つように、徐々に硬く、熱くなってゆく。
口内から感じる生々しいその感触に、シンタローの方も煽られる。
「…シンちゃん………」
名を呼ぶ声が僅かに上ずっているように思えるのは、気のせいだろうか。
しかし、続いた言葉が実によろしくない。
「もしかして欲求不満?」
「違っ」
「ッ!」
とんでもない質問に、モノを口に含んだまま反論したら、うっかり歯を立ててしまった。
さすがのマジックといえど、これには相当な痛みを感じたようだ。見上げた視線に、苦痛に顰めた表情が映る。
「…あ、悪い」
若干自業自得だと思う気持ちが無いでもないものの、この痛みは相当だろうと想像がつくので、歯を立てた箇所を謝罪の意を込めて柔らかく舐め上げる。暫くそうして舌を這わせていると、大きな手に頭を緩やかに撫でられた。
不思議なもので、その手の動きに、荒れていた心まで宥められていく気がする。
心の中にずっと在った不満とか、不安とか。

自分の知らない所で、別に浮気なんかじゃなくても、あんな写真を撮られていたこと。
それを知らされたのが、マジック本人からじゃないこと。
会話からすると、あの記事についてマジック自身は、大した事でもないとばかりにこちらに言うつもりすらなかったらしいこと。
わざわざ傍に来たのに、腹立つぐらい、いつもと変わらない態度で。
その上、どんな相手なのかとつい見てしまったドラマは、あんな調子で。
何もかもが面白くなくて、気づいたらこんな状況になっていたけれど。

「…イイよ、シンタロー」

そんな言葉と掌の接触に、何故か心が熱くなる。
口の中で、今や完全に張り詰めているマジックのものの感触にも煽られ、身体も反応し出す。
決して欲求不満なんかで、こんなことを仕掛けたわけじゃないけれど。
不満があったのは、強いて言えば身体じゃなくて心の方であったのだし。
それなのに、こうして舌で舐り、吸い上げ愛撫していると、どんどん息が荒く熱くなってゆく。
触れられていないシンタローの中心は、その吐息よりももっと、篭もる熱を持って立ち上がっていた。
「パパばっかりしてもらうのは、悪いよね…」
そんな状況を判っているらしいマジックの方も、シンタローの頭を撫でていた手を頬へ、そこから首筋へ、そして胸へと移動させてゆく。服の上からでも判るほど、硬く存在を主張する突起を摘まむように触れ、指の腹で柔らかく擦ると、シンタローの肩が跳ね小さな声が漏れた。
「…ぁ、……」
「シンちゃんは…どこに、どう、触って欲しい?」
そんな風に問われ、熱くなり始めた頭で、シンタローは思う。
───ああ、そういや
この男は行為の最中、やたらいろいろ煽る言葉を発し、そしてこっちにも言わせたがる。
こちらから接触を望むような、卑猥で具体的な要求を言わせようと、焦らしたり様々な悪戯を仕掛けたりしてくる。
「どうしてほしい?」
そう聞かれると、今までは限界まで耐えて、無言で首を横に振っていたけれど。
……そりゃそうだ恥ずかしい。簡単に言えるか。
シンタローとしては、そう思うものの。
一応、聞かれた内容について考える。どこに触れてほしいか、とか、どうしてほしいのか。
答えはいつも性的な欲求だけじゃない。それをマジックは判っているだろうか。

「………なあ…」

吐息と共に濡れた唇から零れるような、シンタローの小さな呼びかけに、マジックは頬を撫で先を促す。
視線が合う。
熱っぽく見つめてくるその視線が、他の人間に向くなど考えた事もなかった。
あの雑誌の写真を見た時に、その事について初めて考えてみた。そうして生まれた不安という感情。

───欲しいものは何なのか。言ったら全部くれるのか。
過去も現在も未来も、その存在の全てを。
全部、この手に与えてくれればいいのに。

「………欲しい」
そう感じた瞬間、ねだるように口から零れた小さな声。
どーも状況がよくないというか、今まで口腔で愛撫していたソレにまだ指は触れたままで、位置的にも頬擦り出来るような所に顔があるせいで、マジックにはまさに「コレ」が欲しいと取られるだろうけど。
真実の要求はもっと欲深いものだから、誤解されてもまあいいかと諦める。本当の意味など、どうせ口には出来ない。意地っ張りな性格は嫌という程自覚している。
淫乱とか思うなら勝手に思え、などと自棄気味に考えていると、マジックが体勢を変えてきた。
抱き寄せられ、そのまま身体を反転させ押し倒される。
からかわれる事を覚悟していたのに、マジックは何だか嬉しそうに微笑んで自分を見つめていた。
秘石眼と呼ばれる、その青の瞳。
深いその色に、己の全てを委ねたくなる。そんな感覚に耐えられず、シンタローは目を閉じた。

全てを欲して。その分、全てを与えて。
多分望みは尽きないまま、それでもずっと傍にいるのだろう。

「愛しているよ」
そう耳元で言われた後、その唇は肌へと直に降りてくる。
触れてくるマジックの手に与えられるのは、激しい快楽と優しい温もり。
余裕など消えるぐらい、相手にも全てを求められたいと願い、精一杯の表現としてその背に腕を回し抱き締めた。





「積極的なシンちゃんも可愛いかったーv」
「……うるさい」
「ヤキモチも可愛いねッv パパ凄く嬉しかったよ!」
「黙れその口」
「あれ、もういつものシンちゃん?」
情交の後にはいつもだるさを感じるが、今日は何だか常よりも数倍の疲労感がある。
ぐったりとベッドに横たわったシンタローの身体には、まだマジックの腕が絡みついていた。
まだ汗が完全には引かない素肌を、緩やかに辿っている掌。しかしその動きは煽るものではなく、むしろ宥めるかのように軽く撫で摩るものだった。
その行為は事後のアフターケアというより、単にシンタローを離すのが惜しくてのものだったが、いつもなら大抵鬱陶しがられる。しかし今日は、言葉では生意気な事を言いつつもあまり嫌がる様子はない。それがマジックにはまた嬉しくて、寝転がる相手を深く腕に抱き込んだ。
「このくっつき魔」と不平を口にしたシンタローに、大好きだよ、などとまた甘ったるい言葉が返ってくる。
溜息をつきつつ、抱き込まれた胸に額を当てる。くっついたり、甘やかしたりするのが本当に好きな男だと、つくづくシンタローは思う。
ふと、あのドラマの台詞が脳裏に蘇る。

好かれている事に甘えて、あなた何か努力した? 
尽くされるのが当たり前だと思ってたんじゃないの?

愛されていて、当たり前。
物心付く前、それこそ生まれた時からそうだったのだから、この意識は今更変える事は難しい。コタローの件で対立した時も、自分に向けられるその愛情を疑った事などはなかった。
やたら溺愛され、口では反発しまくった。そりゃそうだろう、こちらから同等の愛情を態度で示せば、ただの迷惑なバカップルが完成するだけだ。
しかし、自然に存在する空気のように、自分にとっての「当たり前」なもの。それを失う事を想像した時の不安感は、思いがけず大きくて。
今、こうして触れている温もりが消えるなど、考えたくもない。
その為なら、多分何でも出来るのだろうと感じた。それも努力と言えるだろうか。

……それにしても。
温もりと疲労に意識が微睡みへと傾くのを感じつつ、シンタローは思う。
なんか、やたら恥ずかしいことをしまくった気がする。多分、後で滅茶苦茶後悔するんだろう。
ただ、自分の行動で相手が段々煽られていく様子は、少し優越感を持てて悪くはないなと思ったし、こちらが珍しく積極的だっだせいか、マジックは何だか嬉しそうだった。
その分、結果的にいつもより激しく抱かれた気がして結局疲労困憊なのもどうか、などと葛藤もしつつ。


抱き締められた温もりに溶けるかのように、シンタローの意識は眠りへと落ちて行った。




えろがえろくない。その上うっかり
途中で逆転しかけ…いえ何でも(◎△◎;)
襲い受は加減が難しいですねい…。
UPはパパ誕生日。おめでとうございます。
シンちゃんとお幸せにー+

BACK


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私の心に在る、彼に対する愛という感情は、常に矛盾を孕む。
親として持つ、見返りを求めない無償の愛情。
対して存在する、彼の心も身体も自分だけが所有したいという、独占欲に塗れた愛情。
後者は、他者に言わせれば劣情なのかもしれないが、愛しているからこそ欲するのには違いない。
同じ「愛情」という言葉で表す感情でも、あまりにも違う。
その矛盾に、未だ戸惑う事はある。




その日、シンタローの帰りは遅かった。
秘書達もとっくに下がり、住み込みの使用人達も別棟の自室へと戻った、深夜にも差し掛かろうかという時間。
「おかえり」
「………」
まず最初に、いつも通り深い眠りについている弟の部屋へ寄り、その後居間へとやってきた、赤い総帥服に身を包んだシンタロー。
どうやら、少々機嫌が悪そうだ。大好きな弟の安らかな寝顔を見た後なので、多少は緩和されているのかもしれないが、それでも私の挨拶にも無言で返事をしない。
私自身がよく彼の機嫌を損ねさせるが、今日のこの態度は、私が原因ではない。
原因は予想がついている。仕事関係だろう。
本日の彼の仕事は、私の秘書から聞いて知っている。隣国首脳陣と、領土の境界線についての会議があった筈。過去から幾度か話し合いを行っているものの、なかなか解決しない難題の一つだ。
特に、隣国のトップに座る男とシンタローは性格的に合わないようで、会談がある度不機嫌になって帰ってくる。精神的に疲れてしまうのだろう。元々、駆け引きと謀略の渦巻く話し合いが得意な性格ではない。
それでも、会談内でこちらに不利な結果を齎すような真似はしてはいないだろう。直線的な性格ではあるけれども、本質は頭が良く機転の利く子だから。その点では信頼を置いている。
だから、今日の会議については何も聞かず、お疲れ様とだけ声をかけた。
その言葉にも返事はせず、シンタローはブーツを脱いで居間のソファに寝転び、問いかけてきた。
「グンマとキンタローは?」
「団の研究室に篭もってるよ。今夜は帰ってこないんじゃないかな。何でも、開発中の物質転送システムのトラブルが……」
「ああいい。その辺の事は俺よく判んねーし」
私の答えを、ひらひらと手を振りつつ遮る。そう、と頷いて私は話を変えた。
「ご飯、食べるなら用意するけど」
「いい、食べてきた」
「疲れてるみたいだね。お風呂入って寝るかい?」
「そーする…」
頷きながらも、彼は相変わらず寝そべったまま動かない。
瞳は閉じられているが、寝ているわけではないのは、気配で判る。

これは、小さなサインだ。

本当に疲れ切って、私に構われるのを鬱陶しがっている時は、私のいる部屋になど来ない。真っ直ぐに自室に向かい、閉じ篭ってしまう。
こんな風に、傍に留まる時は。
恐らく本人も無自覚な、僅かな僅かなシグナルを発している。

「シンちゃん」

ソファの傍らに立ち、上から覗き込むように呼びかけると、閉じられていた瞳が緩慢に開いた。
漆黒のその色に、吸い込まれそうになる。
ソファに乗り上げるように体勢を変え、間近でその瞳を覗き込んだ後、瞳を先に閉じ唇を重ねた。
ほんの数秒、黙って受け入れていた彼は、顎を引き唇を離し、「やめろ」と小さな声で制止を促した。ゆっくり上げられた手は、私の胸の辺りで押し退けるような動きをする。
だがそれは、本来彼が持つ力からすると、あまりにも弱いものだ。
だから私は行動を止めない。
「最近シンちゃん忙しくて、あんまり話してないね」
前髪を払うように柔らかく額を撫で、頬や唇に口づけながら、話しかける。
淋しかったよ、と。まるで甘えるかのように囁いて接吻けて。
しょうがねえな、ホントあんたは。…という呟きが、耳元で聞こえる。
「こんなとこで、がっついてんじゃねーよ…」
「誰もいないよ」
「………そうじゃなくて…ッ、ん」
言葉では、あくまで抵抗を示す。だが衣服をはだけさせ再び唇を重ねると、ゆっくりと首に腕を回してくる。
まるで私を引き寄せるかのような行動に、誘われるように唇を深く貪った。
舌を絡めると、僅かにだが応える仕草を見せる。どうしていいか判らないといった風に、舌どころか身体中を硬直させていた最初の頃に比べると、随分反応も柔らかくなった。
全て、教えたのは私だ。
首筋に唇を移動させ、痕が残らない程度に吸い上げると、ぴくりと肩が跳ねた。
「人の話聞かねーな、あんたは」
唇を尖らせ、不満を零す。
聞いているよ。お前の声は全部。
「やだって、言ってんだろ。疲れてんだから…」
言葉は全て、拒絶まではいかない軽い拒否。
嘘つきだね、という言葉は心の中で呟くに留めておく。
「駄目。あんまりパパに淋しい思いさせないでよ。こうして、ずっと触れたかったんだから」
顔を上げ目を合わせ、こう言うと。自分勝手だの何だの、文句を言いながらも許容する。今この時、主導権は自分が持っていると彼は信じているようだ。

自尊心の強いこの子は、無意識に私に甘え、癒されたがっている事を決して認めないだろう。
それは、こんな性的な接触を望んでいるわけではないかもしれない。
会話をしたいだけかもしれない。仕事の疲れで、愚痴でも言いたいだけかもしれない。
しかし。
この手で、人肌の安心感と快楽を教え込んだ身体は、私の接触に簡単に反応を返し出す。

「愛しているよ」
囁く言葉は確かに真実で、腕の中の子は疑いもしない。
私のその言葉の意味を、理解しているのかは判らないが。

愛情によるこの行為は、与えているのだろうか。奪っているのだろうか。
未だ、その疑問に答えは見つからない。




狭いソファでは嫌だと言うシンタローの言葉に、私の寝室へと移動する。
抱き締め、広いベッドに押し倒しても、もう抵抗はなかった。
私の背に、ゆっくりと腕が回される。

例えば。
今後もしこの子に愛する人間が出来て、添い遂げる意思を告げられたとしたら。
親としての私は祝福するだろう、と思う。
しかし、嫉妬に狂い何をするか判らない、とも思う。
どちらの行動も愛情に因るものなのに、齎される結果はあまりに違う。
様々な矛盾を抱えて「私」は成り立っている。
彼を自分だけのものにして、この腕に閉じ込めておきたいと切望する、私の中の歪んだ愛情が、この行為へと駆り立てたのが、思えば最初だった。
しかし、それにより新たな焦燥も生まれる。
愛する子にまで押し付けてしまった、罪悪感。
自分一人で、畜生道に堕ち罪人となるなら、何も感じはしなかったのだけれど。息子に対しては、迷い後悔することが度々ある。
シンタローに対しても、コタローに対しても。
あの時、ああすることは、正しかったのか。それとも間違っていたのだろうか。
そんな風に、後から後悔する事もあるし、先に逡巡が付き纏う事もある。
腕の中の子は、恋愛感情からこの行為を許すのではなく、親への思慕と安心を求めているのだろう。それは、こちらに向けられる不器用ながらも純粋な愛情で、私の中に在る罪悪感を煽り続ける。

「……何だよ?」
腕の中から、僅かに戸惑いを孕んだ、憮然とした声があがる。
ほんの少し、意識を逸らしていただけで。鋭い子だと苦笑しつつ、耳元で謝罪を口にした。
「ちょっと考え事してた。ごめんね、シンちゃんといるのに」
「………」
私の目を見つめ、何か言いたそうに開いた唇に、己の唇を重ね塞ぐ。
すかさず再開した愛撫に、触れ合ったシンタローの唇から、小さな吐息と喘ぎが零れた。




「く……っあ、…!」
堪え切れなかった嬌声は、艶を含んで快楽を現している。
その声を聞かれるのが嫌なのか、咄嗟に口元を押さえたシンタローの手を取り、ベッドへと縫い止める。
そのまま、指を絡ませると、ぎゅっと握り返してきた。
「……シンタロー……」
吐息まじりの声で、耳元に名を囁くと、身体が震え波打つ。
その振動は、体内へと挿入している私自身に絡み付き、締め上げる。
柔らかく解れたそこは熱を持ち、更なる快楽を求めて奥へと私を誘っていた。
「あ、────ッ!!」
その誘いのままに体内を激しく穿ち、最奥まで突き上げると、シンタローは小さく悲鳴を上げて絶頂に達した。
同時に私の欲望の証を、その体内に注ぎ込む。
ごめんね、と。
己にすら聞こえるか聞こえないかの小さな呟きは、ぐったりと寝具に沈み込み、未だ意識が朦朧としている様子の彼には届かないだろう。




汗に濡れた身体を拭き、後始末をしてから寝衣に着替えさせようとしていると、シンタローは閉じていた目を開き、「自分でやる」とその手を遮った。
「お風呂はどうする? 温めてあるけど」
「…起きたら入る…」
意識は戻ったとはいえ、先程の行為で疲労は増しただろう。瞼が半分落ちた目は実に眠そうで、手元も少し危うい。本人は不満そうだったが、ボタンかけだけ手伝った。
衣服を整え終わると、途端にぱたんとベッドに横になる。
「おやすみ」
「…………」
かけた言葉に、返事は返ってこなかった。余程疲れて即座に眠ってしまったのか、単に無視したのかは、私に対して背を向けているから判らない。
私の方はというと。愛しい相手との交歓で身体は満足しているものの、神経が興奮したままなのか、まだ眠気は感じなかった。
寝酒でも用意しようかと、ベッドを離れた時。

「判んねーな」

唐突に背後から上がったその言葉に、軽い驚きと共に振り向く。だが、シンタローは相変わらず背を向けたままで、その表情は測れない。
「シンちゃん、起きてたの」
判らないって、何が。
そう問おうとするが、それより先にシンタローの呟くような声が部屋に響く。
「好き放題に手ェ出してくるくせに、俺が嫌がらないと変になんだから、あんたってよく判んねえって事」
今度の驚きは先程より強く、心に衝撃を齎した。
気づかれているとは思わなかったのだ。
シンタローからこの行為に誘った事は、今まで無い。ただ、今日のようにほんの小さなサインを見せることはある。
私の腕を欲していると。
そういう時は、私の中に在る「矛盾」が頭をもたげ、それは葛藤へと変わる。
本当は、私に囚われる事を望んでいるのではないか、と。
そう考えるが、それは私の中の歪んだ愛情が望む思い込みではないか、とも思う。
そして自分はどちらを望んでいるのか。
だが。
「何、なんかパパ変だった?」
私の口から出たのはこんな、誤魔化すかのような明るい口調の台詞だった。
「…………」
聞こえた小さな吐息は、呆れによるものか、諦めによるものか。
次に放たれたのは、独り言にも聞こえる、低く幽かな言葉。
「何で俺に謝るんだか…」
意識を失っていたと思っていたが、あの時に呟いた私の言葉も聞いていたようだ。

鋭い子だとは思っていたが、彼は私をどこまで見抜いているだろうか。

暫く、その場に沈黙が降りる。
それを破ったのはシンタローの方だ。
「近親相姦が禁止されているのは、血が濃くなるからだろ」
突然、そんな事を言い出す。
「だとしたら、あんたと寝ても問題ないじゃん…」
近親同士で子を成し、血が濃くなればなる程、遺伝子には異常が発生しやすくなる。
しかし自分達は、例え本当に血が繋がっていたとしても、子孫など出来やしない。
「なーんも、悪いことなんてしてない……多分」
「………」
それは、自分に言い聞かせるものではないだろう。あくまで、私に向けられているものだと感じた。
相変わらず顔はこちらに向けてはくれないから、表情は判らないけれど。
判ったことがある。
────許されている。少なくともこの子には。
シンタローは彼なりに、この関係にも疑問は持っていただろうけど、私にぶつけたことはなかった。

私の中で矛盾する二つの愛情を、葛藤を。彼はとうに知っていたのだろうか。
それでいて、何も言わずどちらも受け入れていたのだろうか。
どちらの愛情をも身の内に住まわせる事。それは、罪ではないと。
他の誰に糾弾されても、例え神が許さなくても、私は全く構わないのだ。
…シンタローにだけ受け入れられれば、それだけで。

与えたい愛情と、奪いたい愛情。
そのどちらも受け入れ、求めてくれるのならば。私の中の葛藤は消える。




「シンちゃん、愛しているよ」
「……ああ」
ベッドに戻り、シンタローに寄り添うように横になる。
あくまでこちらを向いてはくれないので、その項に頬を摺り寄せ、黒髪に顔を埋め囁いた。万感の想いを込めた告白に、彼は頷いてくれる。
それは同じ言葉ではないけれど。私はそれでも満足し、お休みと会話を収束させた。

私は幾度も「愛している」とは言ったが、一度だって「愛してくれ」とは言ったことがない。
シンタローも、その言葉は言わない。私への想いを明確にすることはない。
だが、それでもいい。
愛している事を、許してくれるのなら。



それだけでいい。



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大人なパパと甘えんぼシンちゃん。
甘えんぼパパと大人なシンちゃん。
表裏一体ですよーと。
しかし下手にパパに葛藤抱えさせたら
収集がつかなくなりましたすみません;
それにしても。
うちのシンさんは、本当パパ大好きですねい…。

BACK


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幼い子供の頃、自分の手を包み込んでくれる、父親の大きな手が好きだった。
並んで歩く時、背の高い男に対して腕を伸ばすような形で、繋いでいた手と手。
夜寝かしつけられる時も、その手を握っていると、何故か深く心地良い眠りに就けた。

────幾つぐらいからだったろうか。
その手を離し、一人で歩くようになったのは。
一人で眠るようになったのは。




父親であるマジックの庇護の元、彼の言う事だけ聞いていた幼児の頃には知らなかった世界が、年を重ねる毎に見えるようになってくる。
マジックは隠したかったようだが、それに甘んじるには、この世界には情報が氾濫しすぎていた。
いつしか、彼が世界に名だたる暗殺集団のトップに君臨する権力者だと知り、その瞳に恐ろしい力を宿す事も判るようになった。
それでも、彼から離れようとは思わなかった。それどころか、その跡を継ごうと団に入隊する道すら選んでいた。
馬鹿にするような発言をしたり、反抗したりもした。ある程度の年になってからは、敢えてそんな態度を取るようにしていたから口にはしなかったが、心の底では常に畏怖と畏敬の対象でもある父親だった。そんな彼にただ認められたかったのだ。

しかし弟のコタローが生まれてから、それまでのそれなりに良好といえた関係は一変する。
可愛く無邪気な弟とは、マジックによって引き離され、弟はどこかに幽閉されてしまった。
父親との喧嘩なんてたえずしていたものだが、親子ゲンカの域を出ないそれまでのものとは全く違う。この一件で、マジックに初めて、殺意を持つ程の憎しみを抱いたのだ。
本気で、この父を殺して弟が解放されるのならば、とすら考えた。
恐らくその殺意を実行に移そうとしたならば、情愛による違う感情も芽生えただろうし、実際は実行することなど出来なかったのだけれど。
だが、そんなドス黒い闇に心が染まる程、あの頃追い詰められていたのは確かだった。

そして、己の説得を聞かず、本気で反抗し憎悪をぶつけてくる息子に対し、マジックも焦燥感があったのだろうか。常に見せていた余裕が、弟について糾弾する度に無くなっていくのが判った。
元々、息子である自分に対しては、愛情過多だった男だ。強すぎる愛情は激情にも変わり易い。
自分に向けられるものが普通の父親が子供に向ける愛情とは、一線を画すると感じるようになったのは、ある程度自立心が芽生えてからだ。
一方の息子は溺愛し、一方の息子は監禁する。
「お前さえいればいい」と彼は言う。
そんな言動が、愛情が、どうしても判らなかった。
コタローは、潜在的に強大な力を持っているらしい。にしても、まだほんの子供だ。強力な力を持ち、様々な経験も積んでいるマジックに対して、何も出来やしないだろう。
それでも、父にとってそれ程脅威だというなら。それならば幽閉などせずに、俺と共に力の及ばない遠国にでも捨て去ってくれればいいのにと思った。自分は年齢的にも精神的にも、自立が不可能ではなかったのだから。弟を守り、どこでだってきっと生きていける。そう思っていた。
だが、マジックは弟の幽閉も解かなかったし、俺が離れる事も許さなかった。
己から手放そうとはしない。しかし、敵対する意のままにならない者は捻じ伏せ抹殺してきたマジックにとって、他人と同様に簡単に消す事の出来ない息子は、どう扱っていいのか判らなかったのだろう。
解決策が見つからないまま、日ごとに俺達の関係は険悪さを増してゆく。

危ういバランスの糸は、ある日簡単に切れた。




マジックの自室に押しかけて、弟の情報を何とか聞き出そうと、その日も詰め寄っていた。
教えろ、と何度も怒鳴った。頑なな相手に激昂し、殺してやる、とも叫んだ。
放った言葉は全て、嘘ではなかった。
勿論、俺に簡単に殺される相手などではないと判ってはいたから、どこまでその殺意が本物だったかは、今思うと自分でも不明だけれど。
しかし、心に巣食う闇はお互いの心を黒く染め抜いていて、俺はもう限界だった。
そして、恐らくマジックの方も同様に。
きつく眦を上げた視線が正面から合い、絡まる。
睨み合う。
───そんな状態が暫く続いて。睨みつつ、俺が再び毒づいた時。
見下ろす相手の冷たい蒼眼に、激しい感情の火花が散った気がした。

「!?」
その瞬間、伸びて来たマジックの大きな手に手首を掴まれ、強引に床に引き倒されていた。
吐息が触れるほど間近で見る青い目は、あまりに冷酷な光を点していて、思わず身体が震え肌が粟立つ。
それは紛れも無く、恐怖心による竦みだった。
だが認めたくなかった。だから、必死にその目を睨みつけていた。睨みながら、足掻く。
俺の両手首を纏めて押さえているマジックの手は、片方だけなのに。両腕に渾身の力を籠めて身体を捻っても、その手は振り解けなかった。
その力の差が情けなくて仕方なかった。

支配する、絶大な力。

「何……ッ」
空いている片手を襟元にかけられ、破くように衣服を剥がれ、彼が何を目的として行動しているのかが判った。
同性、それも血を受け継いだ相手に対してなど、普通なら考えられない行動。
「どうして、お前は……」
間近から見下ろす男が小さく呟く。低い響きの言葉は、一旦沈黙に途切れた後、「私がどんなにお前を愛しているのか判らない?」と続いた。
だが、違うと感じた。少なくとも今は。
愛情に拠って身体を繋ぐのが目的なんかじゃない。見下ろす視線には、そんな欲望の熱は感じない。
目的は、支配だ。
一番屈辱を感じる方法で、矜持を殺ぐ手段として、身体ごと心まで支配しようとしているのだと、本能が感じ取る。
歯向かう敵の牙を抜き、敵対する意思を消失させる程の傷を与え、抵抗を封じ支配下に置く。抗えば抗う程、弱らせる為に傷を深く抉ってくる。
ならば、と。俺はそこで抵抗するのをやめた。

大事なものを奪われ、憎み、殺したい、と思っても。
結局この男を殺す事など出来ない。
力も敵わない。それに、過去に培われた愛情が心に蓄積されており、それは記憶ごと捨て去らない限り、どんなに憎しみに塗れても消す事は出来ないのだ。
だが、コタローへの兄としての愛情も本物で、こっちだって消せない。
弟にについてのしがらみがマジックとの間にある限り、その支配を受けるわけにもいかない。
葛藤する思いは袋小路に迷い込み、出口は見つかりそうに無かった。
ただ、こんな行為には絶対屈したりしない。それだけを決意し瞳を固く閉ざした。




衣服を剥がれた後、いきなり下肢を弄ぐられて息を呑む。
濡らしてもいない指が体内を探り出す。その性急な動きに優しさは無く、齎される感覚は苦痛のみだったが、唇を噛み締め声を上げずに耐えていた。
声は出さないものの、痛覚を鋭く刺激される度に吐息は浅く乱れて、額には脂汗が浮く。
お互いに、言葉は無かった。

こんな行為は、異常だと。
後で思えば、とてつもなく常識を外れている行動だと判るのに、その時は何故か、反抗する自分に対して彼がこうするのは、当然のように感じていた。

狭い箇所を広げていたマジックの指が、体内から引き抜かれる時の感覚に怖気立ち、無意識に身体を捻って逃れようとしてしまう。そんな自分に気づき、意識して深く息を吐き、落ち着こうとする。こんなことは、何でもないと。
とりあえず体内を犯す指の痛みから、逃れられただけで安堵はしていた。その程度の痛みなど、序の口だと知るまでに時間はかからなかったけれど。
足を掴まれ、大きく広げさせられる。そこに割り入る相手の身体が、腿や下肢に触れる。そこから低めの体温が伝わってくるが、今まで指で解されていた箇所に当てられた性器は熱く硬かった。
その熱に、どうしても身体が竦む。本能的に怯える身体を心で叱咤し、決意する。
───絶対、声は上げない。言葉でも行動でも、制止も求めたりはしない、と。
そうすれば、何故か負けない気になっていた。こんなのは勝負でも何でもないのに。
ほんの少し、唇の端で自嘲気味に笑う。
この行為が愛情によるものだったなら、どんな気分だったんだろうと、ふと思った。
だけど今は目的が違いすぎる。

固く閉ざした瞼の向こうの、マジックの表情はどんなものだったろう。
あの冷たく青い瞳は、自分を見ているだろうか。

「────…ッツ!!」
体重をかけられ、歯を食い縛る。無理に開かれる身体に激痛が走った。
質量のある楔に貫かれる衝撃は、脳を焼き尽くすようだった。弟の件などでの意地がなければ、この時点で泣き喚いて哀願していたかもしれない。
「……っく、ぅ……」
不規則な動きで内部を少しずつ深く抉られる度に、堪えきれず呻きが零れる。
それでも、やめてくれとは言わなかった。
ただ、あまりの苦痛に涙が溢れ出すのだけは、どうしても止められない。生理的なそれすら弱みを見せるようで嫌で、眉根が強張るほど強く瞳を閉ざして横を向いていた。
揺さ振る動きと齎される苦痛に翻弄され、意識が霞み始める。
気を失った方が楽だな、そんな風にぼんやり思い、黒い靄に意識を委ねようとした時。
「………?」
マジックの手が、頬に触れてきた。ちょうど、瞼の下。濡れているそこを拭うかのように。
下肢に穿たれる凶器とは裏腹に、その手の動きは優しく、頬を緩やかに撫でている。
視線すら向けるものかと思っていたのに、その感触のせいで、先程の疑問が再び心に湧き上がって耐えられなくなってしまう。
どんな目で、どんな表情で。マジックは自分を見ているのだろうか。
耐え切れず目を開けた丁度その時は、頬にあった相手の手が額に移動しようとする瞬間で、視界はその掌に覆われていた。
広い掌の、大きな手。
指の隙間から、マジックの顔が少しだけ見えた。
少し眉根を寄せているその表情は、どこか苦しそうに感じた。

冷酷無比に振る舞い、全てを思い通りにしようとするのも。
優しい笑顔で、大切に自分を慈しんで育ててくれたのも。
どちらも同じ、マジックという人間だ。
額を優しく撫でる、固く大きな手。この手で、幾人もの人間を葬ってきたのだろう。
だけど自分にとっては、安らぎの象徴だった。
幼い頃はその手に自分の手を握られると、嬉しくて。安心出来て。ただ幸せだった。

そんな事を思い出しつつ、再び目を閉じた。マジックの掌は、汗ばんだ額を優しく撫で続けている。
その感触が、心地良いと思った。

体内を穿つ動きが早くなる。馴染んてきたのか苦痛は弱まってはいたが、完全に消えたわけではない。相手の肩に爪を立て、顎を仰け反らせ耐える。
頭を動かしたせいか、額を撫でていた手が外れた。それを少し淋しく感じていたが、すぐに手はまた俺の身体に触れてきた。首筋を撫で、胸から腹へ、そして下肢へと。
触れられた部分が熱を帯びる。
「あ……」
絶対に声は上げないと己に誓っていたのに。辿り降りてきたマジックの指が、中心に絡まった瞬間、小さく喘ぎが零れた。


支配するなら、その牙で噛み殺す程に傷つけてくれればいいのに。
どうして行動と裏腹に、その手だけは優しさを見せるのだろう。
指先に撫でられ、掌で緩やかに扱かれるそこから、甘い熱が生まれ出す。
その熱に、心が解かされそうで。形振り構わず、目の前の男に縋りついてしまいそうで。
それだけが怖かった。




それから、沢山の出来事があった。
この一件後のマジックの心理の変化は判らないが、彼はそれ以来俺の身体に触れはしなかった。それどころか、顔を合わせることすらほとんど無くなった。
俺の方も、それまではコタローの件で毎日のように怒鳴り込んでいたのに、それが出来なくなったから。
どうしていいのか判らなかった。あの手が再び触れてきたら、いつか支配されてしまう気がして怖かったのだ。
全てをかなぐり捨てて、その手を求めてしまいそうな弱さが、自分の中に確かにある事を自覚してしまっていた。
でもそんな感情を認めたくない自分もいて、葛藤し、自棄のように遠い戦地の前線へと赴き、マジックから離れようと努めた。結局団にいる限りは、彼の掌の中には違いなかったが。
お互い何も言わない。顔も合わせない。時折会っても、大切なことは何も言えない。
そうしていつしか、全てが停滞してしまっていた。
何も言えないせいで、煮詰まって、行き場を無くしてしまった感情が悲鳴を上げる。

このままでは駄目だ。
弟の為にも、俺の為にも────マジックの為にも。
現状を打開しなければいけないと思った。

密かに調べ続けていたコタローの居場所が判明したのは、そんな時だった。
弟を救う為に秘石を持って団を脱出し、それにより停滞していた俺達の関係に、大きな変化が訪れる。
逃げた先で俺の運命も、思いがけない方向へと流れ始めた。
慕情も愛着も、引け目も憎しみも、感情の全ては父か弟など、血の繋がった相手に向けられていた自分。他人に対しての愛着はどこか薄かったと思うのに、流れ着いた島で大事な親友が出来た。哀しい別れも経験した。
今はもう無い南国の小さな島と、そこで出来た小さな親友のおかげで、どれだけ精神的に成長出来ただろう。追い詰められていた心が癒されただろう。
狭かった世界が広がってゆく。

そんな世界の中で。マジックとの関係にも、激動が訪れた。
血の繋がりが無いと知り、それでも自分達の間には、確かに培われた絆がある事を再確認して。いつしか蟠りは消え和解していた。
やがて、青と赤の一族を巻き込んで、最後の戦いへと事態は流れてゆく。
まだ幼少の身で、長い間苦しんでいた弟に対して、何も出来なかった。最後に彼に真正面から向かったのは、父であるマジックだった。
俺は、その僅かな手助けしか出来なかったと思う。それを悔やんで、全てが終わった後に言葉にしたら、マジックは笑って言っていた。
「シンちゃんが皆を助けてくれただろう。コタローも、私もね」
その時の穏やかな笑顔がどれだけ嬉しかったか、言葉には出来ない。




「子供の頃みたいに手を繋いで寝てみない?」

眠くて途切れかけていた意識に、低く甘い声が染み込んできた。
聞き慣れたマジックの声。艶気を込めるのは絶対わざとだ。
情事の最中のような、…先程まで嫌という程、耳に囁かれていた声音で。
もう少し体力が残っていたら、再び身体の芯に火が点いていたかもしれない。


あれから、ガンマ団に戻って総帥の座を継いだ。暗殺稼業が染み付いている団を生まれ変わらせるのは、並大抵の苦労じゃない。忙しくも、それでも日々充実していた。
深い眠りに落ちている弟が目覚めたら、胸を張って紹介出来る場にしようと思う。
総帥の地位を俺に譲り渡したマジックはといえば、楽隠居でもするかと思ったのに、あちこちで公演を行ったりと結構忙しそうだ。
会える日が、そう多いわけじゃない。
そんな中、久々に顔を合わせて。会えないでいた時間を埋め合わせるように触れられて。

こんな風に身体を繋ぐようになったのも、あの島から帰ってからだった。
和解し凍てついていた心が解かされてしまえば、元々反発しつつもその手を求めていた感情には、枷が無くなってしまった。
前とは比べ物にならない程に優しく触れられて。
泣きたくなるくらいに、そのぬくもりに飢えていたのだと。幼い頃のように、その手を求めていたのだと。嫌が応にも、心は認めざるを得なかった。


手を繋いで……。
子供の頃のように…?
半分意識の無い頭で、今の言葉を反芻する。
事後の気怠いまどろみの中では、こちらが反抗する事も出来ないのも、相手は承知の上だろう。
「………ん…」
案の定、まともな返事も出来やしない。
寝具に投げ出された手に、マジックの手が触れてくる。
軽く握られ、反射的に握り返す。
大きくなった自分の手よりも、更に大きな手。無意識に、頬を摺り寄せていた。



子供の頃は、自分の手を包み込んでくれる、この大きな手が好きだった。
そして今も、変わらずに。
一度離してしまったそれは、再びこうしてこの手に与えられた。
その、力強く優しいぬくもりを、もう二度と手放す事の無いように。

それだけを願って、深く心地良い眠りへと落ちた。


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「BLUE SEASON」という同人誌の
過去に当たる内容のつもりだったり。
それ見てなくても平気なように書いたつもりですが、
これだけだと何か暗くてすみません…||||
パパ側の心理も無いしなあ…;
本の方では、見事にバカップルになります…。

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