今日は学校帰りにミヤギ達と回転寿司を食べに行ったから晩飯はいらない。と言ったら案の定親父は『回転寿司って何?』と尋ねてきた。
オレも始め、ミヤギ達から『回転寿司』と言う言葉を聞いた時親父と同じ事を思った。
マジックは寿司が大好物だ。
だからお気に入りの寿司屋を見つけてはオレを連れてご馳走してくれる。
だが、ヤツの行く寿司屋って言うのは所謂銀座だとかにある一般人には到底足が運べない店ばかりだ。
オレも今まで14年間『寿司って言うのはこーゆー場所で食べるものなんだ』と認識していたから
親父と行く店が『一般人には行けない店』だと知らなかった。
だから。
ミヤギ達に『寿司を食いに行こう』と言われて付いて行って、オレは相当ショックを受けた。
既に店の入り口からしてオレの想定していた物とまったく違ったからだ。
オイオイ…こんな所で寿司なんか出るのかよ?と失笑しそうになったが暖簾には確かに『寿司』と書いてあるし
何より一緒にいたトットリとコージは何ら違和感を感じているようには見えない。
その事に対し、自分が重度の『箱入り息子』だった事を知り恥ずかしくなったと同時にそれを他の3人に見破られたくないオレは
内心の焦りを必死に隠していた。
しかし、暖簾に書いてある『寿司』の前にある文字『回転』が気になってしょうがない。
回転!?寿司が!?
寿司自体が回転しているのか、それとも寿司を乗せている皿自体が回転しているのか
どちらにせよそんな物をどうやって食べると言うんだ?手で回転を止めるのか?掴むのか?
「スンタロー、とっとと入るべ。」と呼ばれてやっと我を取り戻し店に入るが
そこで目にした光景に、オレはあまりのショックで持っていた鞄を床に落とした。
寿司の乗った皿がコンベアでコトコトと円を描くように1周してはそれを繰り返していたのだ。
客は回っているコンベアから皿をとって寿司を食べている。
そうか…。コイツらにとってはこれが『普通の寿司屋』なのか…。
と、ぼんやり立ち尽くしていた。
オレが行く店は純和風な内装で、ちょっと照明が暗くてカウンターがあって、そこでその店の職人と顔を見せ合いながら
寿司を注文して談話もして親父はオススメの焼酎を勧められて・・・
「シンタロー?どうしたんじゃ?」
コージがオレの背中をぽん、と軽く押した。
いかん、ついトリップしてしまった…!
何でもねぇよ、と席につく。
店内の壁にかけてあるメニューを見た所どうやら皿の色で値段が違うらしい。
まぁ、どれも安いもんだが。と思っていたら『金皿なんか高くて食えない』と3人は口を揃えて言った。
バカな・・・!
値段の安い高いは人それぞれの価値観だからしょうがないとしてもだ。
オレの好きなネタはどれも金皿に集中していた。
金皿が食えない連中3人の前で金皿が食えるワケもなく。
オレは仕方なく銀皿と銅皿ばかりを食っていた。
寿司屋に来てるって言うのに大トロが食えないなんて、そんな事があって良いのか…!
3人と店を出る時、泣く思いだった。
親父の『回転寿司って何?』と言う質問に、オレが意地悪く笑って『何だと思う?』と尋ねると
マジックは困った顔して腕を組んだ。
う、う~~ん?と眉間に皺を寄せている。
きっとコイツにも『コンベアに乗って寿司の乗った皿が1周する』なんて概念はないのだろう。
「寿司が回転してるのかな?ソレって…」と言われ、オレは思わず噴出した。
あぁ、やっぱりな。
そうだよな。
やっぱアンタもそう思うよな。
アンタもオレと同じ『お坊ちゃま』すぎだぜ、親父。
今度連れて行って、教えてやるよ。
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