【似たもの同士】
シンタローが秘石を持って団から逃げ出したその日の夜、
マジックは眠れずにただじっと自室で窓の外を眺めていた。
夢だと思いたい。
秘石を失った事より、シンタローが 目の前から消えてしまった事の方が
マジックに大きなダメージを与えていた。
きっとあの子は、自分の弟を取り戻したいがためにこんな事をしたに違いない。
もし、両の目に自分と同じように秘石眼を持つ息子の力を恐れて幽閉したのだと
そう言えばシンタローは納得してくれるだろうか。
いいや、そんな事は言い訳に過ぎない。
真相はもっと残酷で幼稚で稚拙なものだ。
シンタローの中で自分より大切なものができるのが、ただ怖かった。
それを傍で見ていたくなかった。
自分がどれ程愚かで酷い事をしているのか、解かっていても
この、狂った感情を消すことが出来なかった。
結果一番大切なものを失ってしまった無様な現状を
マジックは笑わずにはいられなかった。
いつから自分はシンタローを独占したいと思い始めたのだろうか。
あの子が、サービスを慕うようになってからだろうか。
サービス・・・と弟の顔を思い浮かべると同時にずっと昔恋焦がれていたある男の顔が
脳裏に蘇った。
思い出したくない、と首を打ち振るう。
けれど無情にもまだ、彼の影が自分の中に色濃く残っていた。
あぁ、
自分は、あの男とシンタローを重ね合わせているのだろうか。
あの時叶わなかった想いをシンタローを振り向かせる事で成就させようとしているのだろうか。
そんな事はない!
窓を強く割ると、打った方の拳から血が流れた。
後ろのドアが開く。
振り返ればいつも自分の傍について離れない秘書が立っていた。
「誰も部屋に入るなと言ったはずだが」
厳しい口調で諌めるとティラミスはふっ、と笑った。
扉に鍵をかけずにいたのは一体何のためなのかと尋ねられて
マジックは何も言えなくなってしまった。
橙の美しい瞳の中に自分の姿が映りこむ。
頬を撫でる手が心地よい。
愚かな人だと、彼は言った。
自分自身が深く傷つかなければ失ったものの大切さに気付けない人だと。
彼はそう言った。
そうだな、とマジックは苦笑する。
自分はあの頃から何ら成長していない。
いつまで経っても手に入らないものを欲しい、欲しいと駄々を捏ねる子供と同じだ。
自分で自分を殺したくなるのはこれで何度目だろうか。
報われない想いだと知っていてそれでもこんなにも息子を、シンタローを愛している。
いっそ死んでこの地獄の苦しみから抜け出したい。
そんなマジックの思いをティラミスは彼の表情から読み取っていた。
最愛の者から愛されない事がどれ程辛く、惨めか。
マジックと同じ地獄を、ティラミスは痛い程身に染みてよく解かっている。
自分もまた、マジックがシンタローを想うようにマジックを愛していたから。
だからこそ、放っておけなかった。
ティラミスは彼を自分の全身で癒してやりたかった。
例え
マジックが見ているものが自分では無いと知っていても。
シンタローが秘石を持って団から逃げ出したその日の夜、
マジックは眠れずにただじっと自室で窓の外を眺めていた。
夢だと思いたい。
秘石を失った事より、シンタローが 目の前から消えてしまった事の方が
マジックに大きなダメージを与えていた。
きっとあの子は、自分の弟を取り戻したいがためにこんな事をしたに違いない。
もし、両の目に自分と同じように秘石眼を持つ息子の力を恐れて幽閉したのだと
そう言えばシンタローは納得してくれるだろうか。
いいや、そんな事は言い訳に過ぎない。
真相はもっと残酷で幼稚で稚拙なものだ。
シンタローの中で自分より大切なものができるのが、ただ怖かった。
それを傍で見ていたくなかった。
自分がどれ程愚かで酷い事をしているのか、解かっていても
この、狂った感情を消すことが出来なかった。
結果一番大切なものを失ってしまった無様な現状を
マジックは笑わずにはいられなかった。
いつから自分はシンタローを独占したいと思い始めたのだろうか。
あの子が、サービスを慕うようになってからだろうか。
サービス・・・と弟の顔を思い浮かべると同時にずっと昔恋焦がれていたある男の顔が
脳裏に蘇った。
思い出したくない、と首を打ち振るう。
けれど無情にもまだ、彼の影が自分の中に色濃く残っていた。
あぁ、
自分は、あの男とシンタローを重ね合わせているのだろうか。
あの時叶わなかった想いをシンタローを振り向かせる事で成就させようとしているのだろうか。
そんな事はない!
窓を強く割ると、打った方の拳から血が流れた。
後ろのドアが開く。
振り返ればいつも自分の傍について離れない秘書が立っていた。
「誰も部屋に入るなと言ったはずだが」
厳しい口調で諌めるとティラミスはふっ、と笑った。
扉に鍵をかけずにいたのは一体何のためなのかと尋ねられて
マジックは何も言えなくなってしまった。
橙の美しい瞳の中に自分の姿が映りこむ。
頬を撫でる手が心地よい。
愚かな人だと、彼は言った。
自分自身が深く傷つかなければ失ったものの大切さに気付けない人だと。
彼はそう言った。
そうだな、とマジックは苦笑する。
自分はあの頃から何ら成長していない。
いつまで経っても手に入らないものを欲しい、欲しいと駄々を捏ねる子供と同じだ。
自分で自分を殺したくなるのはこれで何度目だろうか。
報われない想いだと知っていてそれでもこんなにも息子を、シンタローを愛している。
いっそ死んでこの地獄の苦しみから抜け出したい。
そんなマジックの思いをティラミスは彼の表情から読み取っていた。
最愛の者から愛されない事がどれ程辛く、惨めか。
マジックと同じ地獄を、ティラミスは痛い程身に染みてよく解かっている。
自分もまた、マジックがシンタローを想うようにマジックを愛していたから。
だからこそ、放っておけなかった。
ティラミスは彼を自分の全身で癒してやりたかった。
例え
マジックが見ているものが自分では無いと知っていても。
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