【うそつき】
自分に向けられている感情が、親が子に向ける感情以上のものである事は知っていた。
だがそれを知っていたからと言って、自分にはどうする事もできない。
マジックは父であり、自分はその息子なのだから。
あの島で『おまえも私の息子だよ』、と言ってくれたあの言葉をとても大切にしている。
だから、例え血の繋がりなど無くとも
シンタローはマジックと父と息子以上の関係を結ぶ気は全く無かった。
壁に両腕を押さえつけられ、無理やり口付けを交わされる。
お互いの唇を離すと、シンタローはマジックに向かって何故こんな事をするのだと
強く叫んだ。
何故?理由なんて解かっているくせに。
マジックの返事に一気に頭に血が昇る気がした。
オレはアンタと、こんな事をする仲にはなりたくないんだ!!
シンタローは精一杯、力の限り、思いをぶつける。
マジックはそれに失笑した。
「こんな仲にはなりたくない?」
両腕を掴む手に力が込められて、シンタローは低くうめき声を上げた。
肩口に顔を埋められる。金髪が肌にあたり、マジックのつけている香水の香りが
シンタローの鼻腔をくすぐった。
「父親の他人との情事を盗み見ては冷たい態度をとっていた子の台詞とは思えないな」
シンタローの顔が一瞬にして強張る。
胸に鋭い刃が突き刺さったような感覚に襲われる。
耳鳴りがする程動悸が高まるのを感じた。
知って・・・知っていたのだ。
自分が、父が度々部下と関係を持っているところを覗き見ていた事を。
「嫉妬していただろう?」
「違う!!!」
全身で否定を主張する。
あの時の、あの感情は、アンタが、母がいるのに別の誰かを組み敷いているのが許せなかっただけだ。
自分に言い聞かせるようにそうマジックに告げた。
全てを見透かすような青い瞳に恐怖を感じる。
マジックは静かに、すうっと目を細めた。
私の心をとらえたくて、部下を妬み
止めようとしても溢れ出る醜い感情を認めるのが嫌で
自分で自分の気持ちに気付かないふりをしていただけだろう。
シンタローは心の奥の大事な部分を容赦なく抉られた気がした。
これ以上、もう、自分の中に踏み込んで欲しくなくてシンタローは必死に
‘やめてくれ’と懇願した。だがマジックは止めない。
無慈悲に全てを暴こうとする彼の態度にシンタローは目に熱いものが溜まるのを感じた。
親、と子なら
永遠に離れる事のない絆が得られる。
それが崩れるのが嫌だから、自分の気持ちを押し殺しているだけのくせに
ただの痛がり屋なんだよシンタローは。・・・そんなにも、パパを独占したいと願っているくせに。
今も昔も、オマエは我が侭な子供のままだ。
言って、マジックはもう一度シンタローの口をキスで塞いだ。
ゆっくりと舌で歯列を割って彼の舌を捕らえる。
唇の端から吐息が漏れ、唾液が顎を伝った。
熱いキスにシンタローの閉じた瞳から涙が零れ落ちそうになる。
本当は
ずっとこれが欲しかったのに。
親と子、以上のものになってしまったら
自分とマジックの間にあるものが薄っぺらい絆に変わってしまう事を恐れて
自分自身にすら欺き続けていた。
父の部下に嫉妬する感情に支配されたくなくて
この怒りは父の母に対する裏切りを憎んでいるのだと、自分に言い聞かせていた。
マジックがどんなに自分を愛していると言ってもそれは、自分が息子だから至極当たり前の事で
彼は恋愛感情と親子間の愛情を履き違えているのだと思うようにしていた。
でなければもし、自分が彼の想いに応えたとして
父の心がいつか自分から離れて行ってしまったらと。
そう考えた時、死にたくなる程胸が苦しくなったから。
一生相手を自分に繋ぎつける絆を守りたくて真実からずっと目を逸らしていた。
こんなにも心は彼を望んでいたのに。
長いキスを終えて相手の顔を確かめる。
暫く見つめ合って、
シンタローは俯きながら、オマエなんか嫌いだ・・・ とマジックに言った。
自分に向けられている感情が、親が子に向ける感情以上のものである事は知っていた。
だがそれを知っていたからと言って、自分にはどうする事もできない。
マジックは父であり、自分はその息子なのだから。
あの島で『おまえも私の息子だよ』、と言ってくれたあの言葉をとても大切にしている。
だから、例え血の繋がりなど無くとも
シンタローはマジックと父と息子以上の関係を結ぶ気は全く無かった。
壁に両腕を押さえつけられ、無理やり口付けを交わされる。
お互いの唇を離すと、シンタローはマジックに向かって何故こんな事をするのだと
強く叫んだ。
何故?理由なんて解かっているくせに。
マジックの返事に一気に頭に血が昇る気がした。
オレはアンタと、こんな事をする仲にはなりたくないんだ!!
シンタローは精一杯、力の限り、思いをぶつける。
マジックはそれに失笑した。
「こんな仲にはなりたくない?」
両腕を掴む手に力が込められて、シンタローは低くうめき声を上げた。
肩口に顔を埋められる。金髪が肌にあたり、マジックのつけている香水の香りが
シンタローの鼻腔をくすぐった。
「父親の他人との情事を盗み見ては冷たい態度をとっていた子の台詞とは思えないな」
シンタローの顔が一瞬にして強張る。
胸に鋭い刃が突き刺さったような感覚に襲われる。
耳鳴りがする程動悸が高まるのを感じた。
知って・・・知っていたのだ。
自分が、父が度々部下と関係を持っているところを覗き見ていた事を。
「嫉妬していただろう?」
「違う!!!」
全身で否定を主張する。
あの時の、あの感情は、アンタが、母がいるのに別の誰かを組み敷いているのが許せなかっただけだ。
自分に言い聞かせるようにそうマジックに告げた。
全てを見透かすような青い瞳に恐怖を感じる。
マジックは静かに、すうっと目を細めた。
私の心をとらえたくて、部下を妬み
止めようとしても溢れ出る醜い感情を認めるのが嫌で
自分で自分の気持ちに気付かないふりをしていただけだろう。
シンタローは心の奥の大事な部分を容赦なく抉られた気がした。
これ以上、もう、自分の中に踏み込んで欲しくなくてシンタローは必死に
‘やめてくれ’と懇願した。だがマジックは止めない。
無慈悲に全てを暴こうとする彼の態度にシンタローは目に熱いものが溜まるのを感じた。
親、と子なら
永遠に離れる事のない絆が得られる。
それが崩れるのが嫌だから、自分の気持ちを押し殺しているだけのくせに
ただの痛がり屋なんだよシンタローは。・・・そんなにも、パパを独占したいと願っているくせに。
今も昔も、オマエは我が侭な子供のままだ。
言って、マジックはもう一度シンタローの口をキスで塞いだ。
ゆっくりと舌で歯列を割って彼の舌を捕らえる。
唇の端から吐息が漏れ、唾液が顎を伝った。
熱いキスにシンタローの閉じた瞳から涙が零れ落ちそうになる。
本当は
ずっとこれが欲しかったのに。
親と子、以上のものになってしまったら
自分とマジックの間にあるものが薄っぺらい絆に変わってしまう事を恐れて
自分自身にすら欺き続けていた。
父の部下に嫉妬する感情に支配されたくなくて
この怒りは父の母に対する裏切りを憎んでいるのだと、自分に言い聞かせていた。
マジックがどんなに自分を愛していると言ってもそれは、自分が息子だから至極当たり前の事で
彼は恋愛感情と親子間の愛情を履き違えているのだと思うようにしていた。
でなければもし、自分が彼の想いに応えたとして
父の心がいつか自分から離れて行ってしまったらと。
そう考えた時、死にたくなる程胸が苦しくなったから。
一生相手を自分に繋ぎつける絆を守りたくて真実からずっと目を逸らしていた。
こんなにも心は彼を望んでいたのに。
長いキスを終えて相手の顔を確かめる。
暫く見つめ合って、
シンタローは俯きながら、オマエなんか嫌いだ・・・ とマジックに言った。
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