休日の朝はベッドでまどろみながらコーヒーの香りで目が覚める。シーツに包まってうっすら目をあけると、まぶしい朝日の中でマジックが笑いかけた。
「おはよう。コーヒー飲む?」
「…ああ」
寝乱れた前髪をかきあげながら答えるとマジックが手に持ったサイフォンから白い大きなマグカップにコーヒーを注いで差し出した。ベッドの中でそれを受け取ってシンタローは眉間にシワを寄せる。
「…いつも言ってるけどな、これコーヒーって言わねーんじゃねーの?」
カップの中にはなみなみとコーヒーが注がれている。ただし、半分は牛乳だ。
「起きぬけにブラックなんてダメだよ。いつも言ってるけど、胃に悪いでしょ」
「テメーのカップの中はなんだよ」
「パパは朝一番に牛乳飲んでるからね」
バチンとウィンク付きで返されてシンタローはこれ以上の反論は無駄と悟ってカップを口に運ぶ。休日の朝は不毛と思いつつ同じ会話を繰り返す。寝起きでなければ「いつまでも子ども扱いすんな!」と一通りケンカもするのだが、朝っぱらから血圧を上げるのも疲れるし、何よりいつまでたっても扱いは変わりそうにないことに最近やっと気付いて半ば諦めかけているのもある。
「それを飲んだら起きてね。朝ごはんにしよう」
そう言いながらマジックはシンタローの頬に軽くキスをしてキッチンへ行ってしまった。シンタローはその背中を見送りながら、さして熱くもないカフェオレをことさらゆっくりと飲んだ。
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