まったくなんだってんだ。朝っぱらからいつにもまして激しいストーキング。声をかけてきたかと思ったら、やたらどもってもじもじして結局は
「なんでもありまへん」
ってなんじゃそらぁ!だったら初めっから声をかけてくるんじゃねぇ!
憮然としながら洗濯カゴを家の中に放り込んでパプワとチャッピーに声をかける。
「おーい、ぼちぼちいくぞー!」
秋晴れの中、チャッピーに乗ったパプワが俺を先導して森へ向かう。当然俺はその後をついて歩くわけなのだが…。
こっそり後をつけているつもりなのか、やっぱりアイツもついてきている。振り返ると木や物陰にさっと隠れる。数歩歩いて振り返るとやっぱり隠れる。
あれで尾行しているつもりなのかね?バレバレだっつの。いっそうもう、「だるまさんがころんだ」といってやりたいくらいだ。
俺が後ろに気を取られているとパプワたちはずんずん先を歩いて気がつけば遠くで俺を振り返っている。
「シンタロー、早く来い。置いていくぞ!」
「ああ!」
ちらりと後ろを気にしながら収穫用のカゴを担ぎなおしてパプワたちのところへ走っていく。当然その後をアイツもついてくるわけで……。
* * *
森につくとさっそくパプワが手近な木に二足歩行で登っていく。まったく物理学を徹底無視したお子様め! 一気にてっぺんまで上りきるとよく熟れた梨をもいでは下で待ち受ける俺に投げてくる。次々と投げられる梨を掴んでは背中に背負ったカゴに入れていく。カゴが半分ほど埋まった所でパプワに声をかけた。
「おーい、もう十分だ! 降りてこいよ!」
「うむ」
登った時と同じように身軽に物理学もニュートンの法則も無視して木から降りてくる。その手には最後にもいだであろう梨が一つ。足元までやってきたパプワが背伸びをしながらそれを俺に差し出した。
「たくさん採れたな! ナニを作るんだ?」
「そうだな、そのまま食ってもうまいけど…。タルトでも作るか?」
「わーい! タルトタルト!」
チャッピーと二人で小躍りする姿を微笑ましく見ながら、最後に受け取った梨をまじまじと見る。
今日採った中では一番よく熟れている梨。みずみずしく、甘い匂いがする。
「なぁ、パプワ」
「なんだ?」
「これ、俺がもらってもいいか?」
「かまわんが、どうするんだ?」
パプワの問いに俺は答えず振り向きざまに振りかぶって見え見えに隠れているヤツに放り投げる。
「わ、わわわ!」
慌てて受け止めたアラシヤマに指差しながら言ってやる。
「食えよ」
「……は?」
「誕生日なんだろ、今日。プレゼント代わりにくれてやる」
「シ……シンタローはん……!」
感極まってウルウルするアラシヤマをよそ目に、パプワとチャッピーを促してパプワハウスへ戻っていった。
その後、トットリの調べによると、その日もらった梨をアラシヤマは後生大事に持っていて結局食べなかったらしい。その梨の行く末は…恐ろしくて聞けなかった……。
END。。。。。
『君からの贈り物』
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アラシヤマ氏お誕生日記念SSでございます。お誕生日記念なんですが……。
もっとアラシヤマ氏が報われている話を書こうと思っていたはずなんですがねー(遠い目)
私にしては珍しく、一人称で話が進みました。本当はもっと短くしようと思っていた名残です。アラシヤマの話のはずなのになぜかパプワくんが出てくるし…。
そんなわけで時間軸は南国です。
PAPUWAのアラシヤマならもっと強烈にアピールしていることでしょう!控えめなので南国アラシヤマです。
……というか、アラシヤマ氏は本当に書くのが難しい……。
もうちょっと修行をしよう、と思ってみたりして……。思うだけだったりして……。(コラ!)
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