今日の休日はシンタローにとって降って湧いたような休みだった。秘書にスケジュールを確認したが彼らは口をそろえて「明日は休日のご予定です」と言いきる。シンタローが覚えているだけでも午前中は幹部と会議、午後は外交を伴う仕事があったはずなのだが、それらは全て都合でキャンセルになったという。
「よって総帥は明日一日お休みです。ごゆっくりなさってください」
ティラミスに真面目腐った顔でそういわれると別の仕事を片付けたいというセリフを飲み込まざるをえなかった。結局シンタローは半ば押し切られるような形で休暇をとることになった。
突然の休日とはいってもやることは普段の休日とさして変わらない。いつもは人にまかせっきりにしている自室の掃除をしてみたり、以前から気になっていたキッチンの汚れをぴかぴかに磨いてみたり。そんな彼の見事な主婦っぷりは新総帥を崇拝してやまない一般団員達には見せられない姿である。
昼食は珍しくマジックとふたりきりだった。グンマとキンタローは研究が大詰めを向かえているとかで自分たちのラボで簡単に済ませてしまったらしい。
食事が終ってからは買うだけ買って目を通してもいなかった本を居間でゆっくりと読んでいた。
こんなふうにゆったりとした休日は久しぶりだ。
シンタローたち一族はガンマ団本部に居住空間を構えているために総帥業はある意味、巨大な自営業のようなものだ。何か問題がおこったり、どうしても必要な場合はシンタローの休日は消えてしまう事が少なくない。だがいつものそんなアクシデントが今日はまったくない。
――珍しいこともあるもんだな。
その日の夕食にもグンマとキンタローは姿をあらわさなかった。グンマが手がけていた研究が終了して、研究室の連中とお祝いで飲みに行くのだという。飲みに行くなら誘ってくれりゃいいのに、と思いつつ支度をして昼食と同じくマジックとふたりきりの食事。普段のにぎやかな食事風景と比べてなんと淋しいことか。だが、たまにはこんな落ち着いた食事も悪くない。
食事の後は紅茶を飲みながら、ゆったり過ごす。
こんなふうに平穏で余裕のある日は本当に珍しい。
一日の終わりに濡れた髪をタオルで乾かしながら寝酒でも飲もうとキャビネットからボトルを取り出しながら、ふと目に入ってきたカレンダー。
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