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 2人は、3間を隔てて暫くの間動かず対峙していたが、急にアラシヤマは走って間合いを狭めると、木刀を横たえて跳躍し、振りかぶり、打ち込んだ。
 シンタローは木刀を下段に移していたが、木刀を摺りあげ、アラシヤマの木刀と打ち合わせた。
 アラシヤマは、ぱっと飛び退って、下段に構えた。
 シンタローは、次の瞬間、中段の構えを取り体を低めて踏み込んだ。
 同時にアラシヤマも大上段に構え、シンタローの攻撃を迎え撃ったが、次の瞬間アラシヤマは小手を打たれ木太刀は手から叩き落されていた。しかし、木刀を叩き落されたアラシヤマは身を沈め、シンタローに足払いをかけ、彼が倒れるとその木刀を奪い、喉元につきつけた。
 「降参どすか?」
 アラシヤマはそう問うたが、シンタローは自分を組み伏せているアラシヤマを睨むと、
 「降参?・・・んなわけッ、ねーだろーがッツ!!」
 と、一瞬の隙を突き、アラシヤマの胸倉を掴むと、起き上がりざまに反動をつけ投げ飛ばした。
 アラシヤマは床を転がって受身をとり、立ち上がった。
 再び2人は対峙し、今度は格闘術で戦いはじめたが、なかなか決着がつかなかった。
 そのうちお互いに息が切れかけた頃、
 「それまでッツ!!今日のところは、引き分けじゃ」
 と有無を言わさない小野老人の鋭い声がかかった。
 あまりにも激しい立ち合いであったので、見ていた者たちもいつの間にか脂汗を掻いていた。
 「あいつら、化け物かよ・・・」
 と、思わず門人の1人が呟いたが、胸中で同感する者も多かったようである。
 向き合って礼をする際、シンタローは小声で
 「―――命拾いしたナ」
 と言ったので、
 「―――あんさんこそ」
 とアラシヤマは応じた。


 稽古が終わり、シンタローは稽古場を後にしようとしたが、アラシヤマの前を、
 「オマエ、さっきのわざとダロ?」
 と言って通り過ぎた。
 アラシヤマは、シンタローの後を追い、
 「まぁ、俺はどっちでもええんどすが。・・・シンタローの助けが入らんかったら、たぶん殺してましたナ」
 彼がそう言うと、少し立ち止まっていたシンタローは眉間に皺を寄せ、さっさと歩きだした。
 アラシヤマが流れ上何となくついて行くと、シンタローは外に出、井戸の前で立ち止まった。
 そして、髪紐を外し稽古着を脱ぎ始めた。
 「あああ、あんさんッツ!一体どーいうつもりなんどすかッツ!?」
 動揺したアラシヤマが思わずそう叫ぶと、
 「えっ?どーいうつもりって、汗掻いたから井戸を借りて水を浴びるだけなんだけど・・・。あんだヨ?文句あっか!?」
 シンタローはキョトンとした後、どうやら喧嘩を吹っかけられたと思ったらしくムッとし、アラシヤマを睨みつけたようとしたが、当のアラシヤマの姿は忽然とその場から消えていた。
 「・・・一体何なんだ?」
 シンタローには訳が分からなかったが、すぐにアラシヤマの事は忘れ、とりあえず服を全て脱ぎ、水を浴びた。
 一方、アラシヤマは人気のない建物の陰に隠れていた。
 (鼻血が出るやなんて、予想外どすッツ・・・!!)
 結局、中々鼻血が止まらなかったので、アラシヤマは結構な時間そこに居た。
 勿論、シンタローは水を浴びると換えの服を着て、コージが同心連中の歓迎会を街中の居酒屋で行うというので集合場所へと足を向けた。


 その少し前の時刻、トットリとミヤギは近所の茶屋でお茶を飲んでいた。
 「なぁ、トットリぃ。そういやアラシヤマの姿が見えねーべが?」
 ミヤギが団子を食いながらそうトットリに話しかけると、トットリは、
 「先に帰ったんと違うんか?あんな奴ほっといたらええっちゃ!」
 茶を飲みながらそう言った。
 「おお、そう言われてみれば、そうだっぺ!」
 ミヤギは納得し、残りの団子を頬張った。




 五月も半ばを過ぎており、江戸の夜は日中の蒸すような暑さが依然として尾を引いていた。
 夜八つの時刻、家々の棟の下では、多くの者が寝苦しさに中々寝付けなかったようである。それは、八丁堀の同心長屋で眠りに就いているアラシヤマとても例外ではなかった。
 彼は、現在、夢現の状態であった。
 夢の中、何故か、彼はシンタローと戦っていた。
 (あぁ、これは、昼間の立ち合いどすな)
 アラシヤマがそう思いつつ、もう1人の自分を眺めていた。
 激しいの剣戟や木刀同士の競り合いは、現実かと思える程そのまま忠実に再現されており、アラシヤマは、
 (へェー。傍らから見とったら、こんな感じなんやナ)
 と暢気にも感心していた。そうしている間にも、場面はアラシヤマがシンタローに小手を打たれて木太刀を取り落とす場面にきたが、
 (そうそう。この時わて、えろうムカつきましたなぁ。・・・認めとうはおまへんが、シンタローの方が剣術では上いうことどすし)
 そう思っていると、もう1人のアラシヤマはシンタローを組み伏せ、
 「降参どすか?」
 と訊いており、シンタローはアラシヤマを睨みつけ、
 「んなワケ、ねーダロッツ!」
 そう応じていた。すると、シンタローを組み伏せているアラシヤマは、嗤うとシンタローの髪を掴んで引き寄せ、噛み付くように口付けた。
 (えっ!?わて、何しとるんや!!相手はシンタローでっせー!!)
 そう思うアラシヤマにはおかまいなしに、もう1人のアラシヤマはシンタローの服をどんどん脱がせていった。いつの間にか、木刀や脱いだ服が周囲から消えうせ、場所も一体其処が何処なのか定かではない中、シンタローはアラシヤマの腰にほとんど日に焼けていない白い足を絡め、背中に爪を立てていた。爪を立てられた傷口からは、細い血の筋が流れていた。
 アラシヤマからは座っているもう一人の自分は後ろ姿しか見えなかったが、シンタローの表情は見えた。眉間に皺を寄せ唇を噛んでいたシンタローは、不意に目を開け、自分を見ているアラシヤマの視線を捉えた。そして、薄く妖艶に哂うと、自分を抱いているアラシヤマの頭を引き寄せ、強引に口付けた。
 (こっ、こんなん、シンタローやおまへん!)
 アラシヤマは思わず、その場から逃げ出そうとしたが、足に根が生えたように体が全く動かない。それでも必死で足掻くと、不意に目が覚め、いつもの長屋の天井が薄ボンヤリと見えた。そして、体中にはベットリと汗を掻いていた。
 (も、もしかして・・・)
 嫌な予感がしたので、おそるおそる見てみると、やはり、案の定であった。
 「何で、シンタローで・・・」
 溜息を吐き下帯を外すと、未だ己の分身は元気で収まりがつきそうになかったので、二~三度扱いて始末をつけると洗濯物を抱えてこっそり外へ出、井戸の方へと向かった。
 洗濯をし、自分も水を被るとアラシヤマは再び長屋へと戻ったが、眠れなかった。
 アラシヤマがまんじりともせず、布団に横たわっていると、いつの間にか窓の外が薄っすらと明るくなり、朝が来た。

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