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hj
くすぐる

 キスまでは、いい雰囲気だった。その前に飲んだ極上の酒のせいかもしれないが、甥はいつもより素直だったし、おかげで俺の機嫌も良かった。
 だが、シャツの釦を外し、肌を愛撫し始めたとたん、甥は唐突に笑い出した。無視して行為を続けようかとも思ったが、甥の爆笑が一向に納まらず、ついには腹をかかえてしまったのを見て、俺はため息をついて身体を離した。
「……いったい、なんだってんだ。急に」
 不機嫌さを隠さずに言うと、甥は目尻の涙を拭いながら、「だって」と弁解する。
「だって、あんたの手が、くすぐったくて」
 我慢できなかったのだと、せっかくの雰囲気をぶち壊しておきながら、甥は悪びれる様子もない。
 甥に言われて改めて手を見ると、指先は乾燥して白く粉をふいたようになっており、爪も先端があちこちひび割れてささくれができていた。
「うわ、ひでえ手荒れ。水仕事でもしてたのか、あんた」
 一緒になって手を覗き込んでいた甥がふざけて言う。むろんそんなはずはなく、この手荒れは長い遠征のおまけのようなものだった。ことさら気にする余裕もなく、いつの間にか慣れてしまっていたのだが、今になって思わぬところに落とし穴があったというわけだ。
 俺は甥の頭を軽く小突くと、行為の先を続けるべきか否か少し迷った。続きをしたいのは山々だが、また爆笑されるのだろうかと思うと気力が萎える。ついでに甥が「そんなぎざぎざの爪で俺に突っ込むつもりだったのかよ」などと身も蓋もなく非難するものだから、余計に気持ちが落ち込んだ。
 ふてくされて寝転んだ俺を、甥が笑みを浮かべて見る。
「……続き、しないのか」
「がさがさの手じゃ、嫌なんだろうが?」
 俺は脇机の煙草を取り、それに火をつけた。しばらくその様子を見守っていた甥は、俺が半ばほどまで煙草を吸い終えたころ、俺から煙草を奪ってそのまま灰皿に押しつけた。
「なにしやがる」
「余所見するあんたが悪い」
 睨む俺を気にもせず、甥は俺の手を取ると、そのうちの一本を口に咥えた。ゆっくりと舐めしゃぶり、唾液をからませると、別の一本に移る。そうして乾いた指先を全て湿らせて、甥は悪戯っ子のように笑った。
「こうすれば、気にならない」
 ──あとは爪で傷つかないように、あんたが気を使ってくれればいい話だ。
 甥はまだ乾いたままの方の手を取ると、それにも舌を這わせ始めた。うっかりそれを凝視しそうになった俺は、甥の珍しい積極的な誘いに答えるべく、濡れた手をその身体に滑らせた。
 ──要するに、笑う余裕すら奪ってみろって、そういうことだろ?


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(07.04.17.)
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