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「痕は残すな」とシンタローはうるさく言う。
じゃあ何でこんなことするんだとハーレムが聞けば、シンタローは口をつぐむ。
「・・・好きだからだろ?」
・・・こういうことも、そして俺のことも。
言えばシンタローは真っ赤になって、それが肯定の合図になる。
苦笑いを浮かべると、シンタローは真っ直ぐにハーレムを睨む。けれど効果はなく、一族の異端の証である黒い目は、むしろ心地良いくらいだとハーレムは思う。

だるさの残る体を持て余して、シンタローはベッドに寝転がっていた。ふと、シーツにこすれた背中に走った痛みに顔をしかめる。傍らの鏡で、写り込んだ背中を覗き込めば、そこには3本の爪痕が縦に走っていた。聞かなくたって、ハーレムのものだった。
あれだけ言ったのに、と舌打ちして、シャワー室からハーレムが出てくる音が聞こえて慌てて手鏡を元に戻す。
「背中だから、別にいいだろ?」
まるで今までのことを見ていたみたいに、ベッドルームに入ってくるなりハーレムは言った。
「首よりかましだろ?」
くく、とハーレムは笑ってベッドサイドに腰掛ける。はっとして鏡を覗き込めば、確かに首には何も痕がついておらず、綺麗なものだった。本当は首にも残したかったんだけどな、とにやつきながら言うハーレムを睨んで、鏡を今度は放り投げる。
ガチャ、と音がして、ハーレムがそっちに気をとられている隙に、シンタローはハーレムに一発喰らわせようとした。けれど出来なかったのは、それよりも早くハーレムの手が出て来て、止められたからだった。ぱん!と大きな音がして、拳と、掌がぶつかる。
「っと、危ない危ない」
余裕を見せるハーレムに、シンタローは、体に残像のように残る痛みに攻撃を止める。
「・・・っ、」
思わず尻の辺りをさする。そんなシンタローにはおかまいなしにハーレムは、立ち上がってベッドの上のシンタローを片腕で引き寄せる。
「俺とお前の秘密だ。ちゃんと、持っててくれよ?」
けっ。シンタローは鼻で笑って、大きな隙を見せたハーレムに今度こそ一発入れたのだった。

ハレシン初結合
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