分かっているのに、俺は傷口をどうしても開いてしまう。血が溢れて来て、それにどこか快感めいたものを覚える。流れ落ちそうになった血を指ごと口に含んで、しゃぶる。鉄の味が広がって鼻から抜けるのを感じながら、昨日のことを思い出していた。
ベッドに投げ出していた俺の手を、ハーレムはおもむろに掴み上げた。
だるさに身を任せてそのまま何もせずに居たら、ハーレムは近くにあった小さなナイフで俺の指に軽く切り傷を付けた。痛みがあったのは一瞬。騒ぎ立てることすら億劫で、俺は目を閉じた。それに、ハーレムが何をするのか、興味もあった。ハーレムは傷をつけた俺の指を銜えて、自分が傷を付けたくせにまるで誰かの付けた傷を癒すように傷口を舐め始めた。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てているのが、俺には耳障りだった。
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