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「よし…っと」
 
 軽く音を立てて書類の束を揃えると、シンタローは顔を上げた。
 
「もう良いぞチョコレートロマンス、ティラミス」
「はい、わかりました」
「シンタロー様は?」
 
 尋ねるティラミスをシンタローは椅子に座ったまま、言った。
 
「俺はもう少しやったら休む」
「そうですか…ではお先に失礼します」
 
 扉が閉められるのを確認すると、シンタローはまた新たな書類を手にとった。
 
 時は流れて、きりのついたところでシンタローは腕に嵌められた銀の時計を見る。針は日付が変わってしまったのを示していた。
 
 軽くのびをすると机の上を片して、新総帥は部屋をあとにする。しんと静まり返った廊下は薄暗く冷え切った中に、革靴の底が奏でる硬い音だけが響き渡っていく。
 
 そして、ある部屋の前に着くと足音はぴたりと止んだ。シンタローは指紋照合センサーに自らの人差し指を滑らす。間もなくして電子音が鳴り、戸のロックが解除された。

 内に踏み入れると、そこには一人の少年が眠っていた。
 
「コタロー…」
 
 そうシンタローは呟いた。
 
「コタロー、お兄ちゃんだぞー」
 
 優しく弟に呼び掛けるシンタローの声からは、いつもの厳しいガンマ団総帥の様子は微塵も感じられない。
 
「ごめんなー、遅くなっちまって」
 
 そっと、シンタローはコタローの髪に手を差し入れた。
 
 それでも少年は起きる気配を少しも見せない。
 
「…コタローは本当に美人だなー」
 
 指先から零れる髪はまるで金の糸のようだった。
 
「ママに似たのかな…?将来は叔父さんみたいな美人になるかもな~」
「その叔父さんってのは俺の事か~?」
「違えよ!サービス叔父さんの事だ…よ!!??」
 
 突然の声にシンタローが勢いよく振り返ると、そこには。
「…何であんたがここにいんだよ?」
「ん~?眠り姫を見に来たんだよ」
 
 ハーレムは部屋の壁に上半身を後ろにもたれさせて、腕をくんで立っていた。その口元にはチャシャ猫を思わせる、にやにやとした笑みを浮かべている。
 
「案外、キスの一つでもすりゃ目ぇ覚ますかもな」
「っ!テメー、コタローに変な事しやがったらぶっ殺すからなっ!!」
 
 シンタローは力強く握った拳を震わせる。
 
「する訳ねぇだろ、どっかのブラコンじゃあるまいし」
「あんだと~?」
 
 怒りに任せてシンタローは立ち上がろうとした。
 
 しかしすぐにその考えを打ち消すと、浮かせた腰を落とす。
 
「…いつまでいる気なんだよ」
「お前と飲みにきたんだよ」
 
 思いがけない言葉に、シンタローはハーレムの方へと顔を向ける。
 
「俺はあんたと飲む気なんてねぇよ。早く帰れ」
「あーそー」
 
 そう言うとハーレムはブラウスの胸ポケットから箱を取り出し、一本くわえる。
 
「おいっ!」
「ん~?」
 
 シンタローの制する声を無視して、ハーレムはジッポーで火を燈した。
 
「煙草やめろよっ!コタローの肺が汚れるだろー!!」
「あぁん?」
 
 それでもどこ吹く風という様子で、ハーレムは深く吸って煙をはく。
 
「ーっ、わーったよわーった!行けば良いんだろっ!」
「よーし、んじゃ行くとするかぁ」
 
 と、ハーレムはひょいとシンタローを抱え上げた。
 
「なっ!おろせっ!!」
 
 肩にタオルをかけるかのようにシンタローは持ち上げられて、ただ足をばたつかせるだけの抵抗しかできないでいた。
 
「あぁ~コタロォ~~!」
 
 シンタローののばした手も空しく、目の前で無情にも自動扉は音を立てずにしまった。
 
「…コタロー…」
「ぎゃあぎゃあうっせえなあ。早く行くぞ」
「いーからおろせー!」
「着いたらおろしてやるよ」
 
 それでもシンタローは暴れるのをやめず、ハーレムはそれを気にもとめる事なく歩いてゆく。時間のせいで人っ子一人いない通路にシンタローは少しだけほっとしていた。こんな姿、部下に見せられる訳がない。
 
「ほら、着いたぜ」
 開いた部屋の天井からはまばゆいばかりのシャンデリア、それから床には真紅の絨毯が広げられている。ここは特別な一部の客人にのみ使用される応接室となっていた。
 
 そしてハーレムは乱暴に甥っ子を上質な黒革張りのソファにおろした。
 
「もっとそっとおろせねぇのか」
「ァん?別に良いだろ、早く酒持ってこいよ」
「ったく…アル中が」
 
 さっと身体を起こすと、シンタローは隣にある台所へと向かった。そこには食料や酒類が納められている倉庫への通路がある。
 
 しばらくして後、シンタローは両手で盆を持って戻ってきた。
 
「あんだよ、そりゃ」
 
 ハーレムは苦虫を潰したような顔をして、吸っていた煙草を噛んだ。
 
「見りゃわかんだろ」
 
 ソファの前にある机に、盆は置かれた。その上には白い陶器でできたポットとカップが二組、あとは砂糖壷とミルクが。
 
「茶じゃねぇか」
「誰もあんたと酒飲むなんて言ってねぇだろ」
 
 そう言いながら、シンタローは紅茶をつぐと叔父の前に差し出した。
 
「酒出せよ、酒!」
「オッサンが3億返したら出してやっても良いけどな」
 
 半分ぐらいになった煙草を硝子の灰皿に押し潰すかのようにハーレムは炎を消すと、きまり悪そうな表情を浮かべて砂糖を茶の中にさらさらと落としこんでいった。
 
「…だったら茶請けとしてスコーンくらいあっても良いんじゃねぇかぁ?」
「…確かにそれはそうだな」
 
 そして、シンタローは踵を返すと再び台所へと向かった。
 
「ジャムとかクリームとか忘れないで持ってこいよ」
「わーてるよ」
 
 くるくると針は時計盤をまわり、男二人きりという奇妙な真夜中のお茶会にようやく終焉が訪れようとしていた。
「やっぱりオメーの作るもんは美味いなぁ。兄貴譲りか?」
「サービス叔父さんのおかげだよ」
 
 そのシンタローの言葉にハーレムは眉をしかめた。
 
「もう良いだろ、早く帰れよ」
「ん~、まだ足んねぇなぁ」
「まだなんかあんのか?」
 
 呆れたような顔をするシンタローの前にハーレムは顔を近づけた。
 
「酒のかわりにオメーで酔わせてくれねぇか、シンタロー?」
「はぁ?何言って」
 
 言葉は途中で遮られた。
 
「…っ…!」
 
 その身体を押し退けようとするものの、シンタローの力以上にハーレムの力はそれを上回っていた。
 
「……ふ……っ」
 
 無理矢理入り込んできた舌が口の内を荒らしてゆく。シンタローにとってそれは、甘くそして何処か苦く感じられた。
 
 十分に堪能されてからシンタローは解放された。
 そして潤み始めた眼でハーレムを睨む。
 
「…なにすんだよ」
「何ってキスだろ」
「そーゆうこと言ってんじゃねぇよ!」
 
 顔を真っ赤に染めるとシンタローは俯いてしまった。
 
「なに、もしかして久しぶりだから照れてんのかぁ~?」
「うっせーな、馬鹿」
 
 怒りの所為もあり、シンタローはますます熱く顔を火照らせた。
 
「シンタロー」
 
 耳元で名を呼ばれて、シンタローはぴくりと身体を震わせた。
 
「ぃや…だっ!」
 
 ハーレムから身体を離して、ソファに深く座り直すとシンタローは先程の耳を手首で擦った。
 
「本当にオメーは感じ易いんだな」
 
 野卑な口調で告げられる台詞に、シンタローはそっぽを向いた。
 
「なぁ」
 
 そう言うとハーレムはシンタローの隣に腰かけた。逃れようとするものの腰にまわされた叔父の手によって、動きは妨げられる。
 
「たまってるんだろ?」
「………なっ…」
 
 そのシンタローの表情の変化にハーレムは口元を吊り上げる。
 
「それとも誰かに処理してもらってたのかぁ?」
 
 ハーレムは意地悪く笑っていた。しかしその蒼の瞳は冷たく光をたたえている。
 
「んな訳ねぇだろっ!」
 
 シンタローは余計に怒ってしまい、叔父から距離を置こうとする。
 けれど、逆にハーレムは甥っ子を腕の中に納めた。
 
「離せよっ!」
「いやだ」
 
 そのままソファに押し倒されて、シンタローは身体を堅くした。
 
「やめんかオッサン!俺は明日も仕事があるんだっ!!」
「どーせ欲求不満だったら苛々して仕事なんかできねぇよ」
 
 首筋に沿って唇を落とされると、ハーレムの下でシンタローはくすぐったそうに首を竦めた。
 
「もうやめろ…っ」
「きこえねぇなぁ」
「や…めろっ!」
 
 慣れた手つきで赤い総帥服をハーレムが脱がせていくと、白い胸があらわにされた。
 
「痩せたんじゃねぇか?」
 
 ゆっくりとその肌を指がなぶっていき、シンタローは甘い吐息を漏らした。
 
「っ…さわ…んな…」
「なんだってぇ?」
 
 弱点を余す事なくなぞり、ハーレムはシンタローを玩ぶ。
 
「…やめ…」
「触られるだけなのにもうこんなになってんぞ」
「……っ!」
 
 悲しいまでに身体は正直で、シンタローは羞恥で染まった顔を手で覆った。
 
 しかし、その両手はすぐに外されてハーレムによってベルトで縛り上げられた。
 
「だめじゃねぇか、折角すげぇ良い顔してんのに」
「……うっせえよ、とれよこれ!」
「すんだらな」
 
 碧い目が細められた。どんな風に今の姿が相手に映っているか知りたくなくて、シンタローは堅く瞳を閉じた。
 
 すると、なにかとろりとした冷たいものがシンタローの身体に零れた。
 
「わりぃな、汚しちまって」

 見ると、ハーレムの手には先程のスコーン用にともってきたクリームの容器が空となって握られていた。
 
「ちゃあんときれいにしてやんねぇとなあ」
 
 そう言うや否や、ハーレムはシンタローの肌を濡らした白濁したクリームを舐め始める。
 
「…っう……やめ……っ」
「あー甘いなー」
 
 生暖かい舌が与える愛撫はどうしようもなく、シンタローを追い詰めてゆく。
 
「ーっ!そんなとこ…ついてねぇ…」
 
 両手の自由が奪われた今、シンタローの肢体はハーレムのなすがままだった。
 
「…っ……や……だ…っ」
 
 シンタローは首をふった。
 
 そのとたん突然思いがけない事が起こった。今まで覆いかぶさっていた黄金の髪と重さが離れていったのだった。
 
「……?」
 
 急に放置されてしまったシンタローは、体に残る変に疼く熱に耐える事しか出来なかった。
 
 すると今度は、ハーレムはシンタローを仰向けの格好から俯せへとひっくり返した。
 
「欲しくてしょうがねぇんだろ?」
 
 何を、と問う前にシンタローの口に何かが押し込まれる。
 
「…ふ…っ……ん…」
 
 甘い。
 正体はハーレムの指だった。器を拭ったのかクリームの味が広がる。
 
「…ん…はぁ……」
 
 口の中を指が荒々しく掻き回し、シンタローは軽く噎せた。
 
「噛むんじゃねぇぞ。こっちも可愛がってやるからな」
 
 空いた手が下へと降りた。シンタローは身体をひくつかせる。
 
「ぁ…く……っ!」
 
 直に触れられて嬉しいのか、露が潤みつつあった。そんな自分がシンタローは恨めしかった。
 
「ま、こんなとこにしとくか」
 
 指が去って、同時にもう片手も離れていく。
 
 シンタローは乱れてしまった呼吸を整えようと試みた。しかし。
 
「…痛……っ……!」
 
 異物が内でうごめいた。
 
「ゆび……やめ……ろ…」
 
 シンタローの声は掠れている。
 
「ぅ……っ」
 
 増えた指にシンタローの肢体は揺れた。
 
「ァん?ならさねぇで入れて欲しいのか?」
 
 また一本追加された。シンタローの膝はがくがくと壊れそうに震えている。
 
「や……だ…」
「やじゃねぇだろ、ここが良いんだろ…?」
「ぁ……んっ……」
 
 一層濡れてゆく。
「もっと強烈なヤツ、ぶちこんでやろうか…?」
 
 シンタローは力無く頭を振る。
 
「っあぁ…!!」
 
 黒の瞳から雫が溢れた。
 
「そう簡単にはイかせてやんねぇよ」
 
 先程とは打って変わって、ハーレムは緩慢に指を泳がせる。
 
「腰振れてるぜ」
 
 腰をなでる手にすらシンタローの吐息は熱くなる。
 
 けれど、それは決定的なものではなかった。
 
「挿れて欲しいんだろう?」
 
 シンタローは―――、こくんと小さくだが頷いた。
 
「そーかそーか…」
 
 ハーレムはニヤリと笑う。
 
「素直じゃねぇのも良いけど、素直なお前も可愛くて好きだぜシンタロー」
 
 拗ねたみたいな顔をしてシンタローは横を向いた。
 
「……あんたなんか好きじゃねぇよ」
「クソガキが」
 
 ハーレムは指を抜いた。
 そしてベルトを外してやる。もう暴れないのがわかっていたからだ。
 
「いくぜ」
 
 そのままのバックの姿勢のまま。
 
「あ……つぅ……」
「もっと力抜けよ」
 
 打ち付けられる激しい行為に、シンタローは両手を強く握り締める。
 
 けれど態度自体はさっきよりも、ずっとずっと優しい。
 
「ハー…レム……もぅ……」
「もう少し我慢しろよ…一緒にイってやるから」
 
 二人の身体は発熱したみたいに熱くなっていて溶けてしまいそうだった。
 
「ハ……レ…ム……」
 
 自らを求める声に、ハーレムは動きをより早くした。
 
 室内はソファのスプリングが軋む音と行為自身の音と喘ぐ声で満たされていた。
 
 そして滴はシンタローの頬に跡を残し、流れ落ちた。


「…ったく」
 
 小さく舌打ちすると、ハーレムは己の腕の中で眠っているシンタローを見る。
 
「終わってすぐ寝やがって」
 
 安らかに眠るシンタローの瞼の下には隈があった。
 
 そのまま、ハーレムはシンタローの長い黒髪をすいてゆく。自分のとちがってもっと滑らかなそれの感触を楽しみながら。
 
「シーンーちゃーん!」
 
 突然音を立てて扉が開き、驚いてハーレムはそちらを見やった。
 
「あ、兄貴………」
「ハーレム!私のシンちゃんを見なかった……か…」
 
 言葉は途切れた。
 
 マジックは視界に飛び込んで来たもの―上半身裸の弟と彼に抱き抱えられて眠っている息子の目もあてられない姿にわなわなと体を震わせる。その手は青く光っていた。
 
 
 
 翌日、ハーレムを含む特戦部隊はガンマ団から離脱させられた。(元総帥権限で)
         終
 














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