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いつもの元気な声がソコにはなくて。
いつもの元気な笑顔がソコにはなくて。





風邪を引いたと聞いた。
からかいにいこうと思った。



あまり風邪を引かなかった俺は風邪が辛いものだと忘れていた。
小さな子供が高熱を出す事は命に関わることがあるということも忘れていた。
普段が元気だから。
忘れていた。
シンタローの母親が、義理の姉が病弱であること。
姉に関しては、病弱を忘れた事はないが。



部屋に行くとシンタローは一人で眠っていた。
兄貴はきっと一日だって傍を離れずに看病したいのだろう。
が、仕事があるのだから仕方ない。
なんだ、寝てるのか。
起こさないようにと近づいた。
苦しそうな呼吸。
熱で赤くなった顔。

急に不安になる。
ベッドまで行かず、足が止まった。
もし、悪化してしまったら?
もし、治らなかったら?


「…ん……、おじ、ちゃん?」

シンタローが目をあけた。
無意識のうちに安堵の息を吐いた。
声が少し擦れていたから、テーブルに置いてあった水を汲んで、ベッドに近づく。

「飲めるか?」

うん。とシンタローが弱々しく笑った。
起き上がるのが辛そうで手を貸す。
俺に支えられたまま、水をコクリとのんだ。
熱はどんなもんなのかと額に手を当てた。
一瞬目を見開いた。
予想以上に熱が高いようだ。

「つめたくて、きもちいい…」

笑いながらシンタローが言った。
ずいぶん熱が高い証拠だ。
俺の手は別段冷たくない。
ソレなのに、俺の手が冷たいと感じる程に体温が上がっているのだろう。

「もう寝ろ」

支えていた腕でゆっくりと寝かす。
シンタローがじっと俺を見る。
なんだ?ベッド脇の椅子に座って問い掛ける。

「…おじちゃん、どっかいたいの?」

いたそうな顔してるよ?
心配そうなシンタローの声に苦笑する。
自分の方が辛いくせに。
黒い髪をくしゃくしゃと掻き混ぜる。

「なんでもねぇよ。…早く、治せよ」

シンタローが笑った。
つられて笑った。

「ぼくが起きたとき、そこにいてくれる?」

熱で赤い顔。
辛そうな呼吸。
それでも無邪気な笑顔。

「仕方ないからな」

一つ呟いて、頭を撫でてやる。
絶対ね。
シンタローの言葉に、あぁ。と短く返事をした。





次の日。
いつもの元気な声。
いつもの元気な笑顔。

心の底から息を吐いた。


END


あんたどんだけ甥っ子が可愛いんだ?
ただの風邪だよ、ハーレムさん。

06.6/23
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