これからだった。
全て分かることが出来た。
これからだったんだ。
Doppel
Act0 夢から醒めた夢
「なんだそうか……」
2人を見たとき全てが分かった。
はまらなかったピースが、カチリとはまる感覚。
抱かれたときの体の違和感。
「俺、あいつの体だもんなぁ」
18歳当時の体。
「………なんだそうなんだ」
もう一度繰り返すと、その事実がはっきりと頭の中に入ってくる。
そして目の前にリプレイする今の光景。
急勾配な坂を一気に駆け上ったような、そんな動悸と目眩が。
全てが終わって、俺を抱いたのは。
なんだかんだ言ってそんな素振りは今までなかったのに。
「………………うわ、わかりやすー……」
ずるずると壁づたいに体が下がっていく。
どこまでも落ちて行くような感覚。
急激に体温が冷えていく。
それとは反比例にこみ上げてくる吐き気。
胃のあたりがたまらなく熱い。
気配が消える。
それでも体は動かなくて、冷たい床に座り込んだままどれくらい時間はたっただろう。
聞き慣れた足音が聞こえる。
「シンタロー様!こちらにいらっしゃったのですか!?急いでください、ハーレム様が……具合でも悪いのですか!?」
座り込んでいたシンタローに、駆け寄ってきたチョコレートロマンスが矢継ぎ早にまくし立てる。
しかし、俯いたまま僅かにも動こうとしないシンタローに心配そうな声が混じった。
その声に、ようやく体と神経が繋がる。
「いいや、別に平気だよ。結構ここ、穴場だと思ってたんだけどな?」
伸びをしながらうっすら涙目で欠伸をする。
見つかっちゃったなーとにっかり笑うシンタローに、チョコレートロマンスは脱力したように手を差し出した。
「後でお忙しくなるのはシンタロー様ですよ…。早く戻ってください」
「はは、ワリィ」
その手を取って体を起こす。
目の前がチカチカと点滅する。
さっき見た風景。
黒と白が交互に。
「シンタロー様?……本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、……ただの立ちくらみだ。行くぞ」
心配そうな色を隠さない、チョコレートロマンスに又一つ微笑んで。
シンタローは歩き出した。
自分のあるべき場所へ。
気もち、悪い。
そう大丈夫。
分かっていたことじゃないか。
昔から。
もう慣れていたことで。
この顔の向こうに誰かがいることは。
それが彼も例外ではなかったと言うこと。
今まで他の人の視線には気づけたというのに。
結構な笑いぐさだね?
「みんな、この顔好きだなーー……」
………………本当に。
秘石も粋なことをしてくれる。
あの男がドコまで浸透していたかと言うことをわかりきっていたらしい。
広いベッドに服も変えずに倒れ込んだシンタローは、その長い髪の毛が真白いシーツに散らばっているのをぼんやりと眺める。
とっくに中天を過ぎた月がその漆黒を照らしていた。
唯一違う、体のパーツ。
「マジック」
貴方も。
「勘違い、させないでくれれば……」
見ていた。
昼間見た2人の姿。
それだけでもう全てが分かった。
視線。
空気が、違った。
「………………影、ね」
輝きを失った月。
偽りの太陽。
「ここにいる意味、無くなっちまったじゃねーか……」
その呟きは、誰にも届くことはなく闇に溶けていった。
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はい、とりあえず序章~。
次からもっとお話ちっくになりますよ。
まずはマジックとジャンの関係を知るところから。
…………………………ねぇ?(ねぇっていわれても)
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