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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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マジックは日本好きだ。それはガンマ団を見ても分かるだろう。
支部の一つでしかなかった日本がいつのまにか本部になってしまっている。
日本にあるのだから建物は日本仕様になっている部分が多い。和室の応接間もあるのだ。
ガンマ団員でもごく一部、つまり青の一族しか出入りできない事実上住宅の一部と化しているフロアがある。
勿論このフロアも日本風が多い。その最たるものは風呂ではないだろうか。
マジックの跡を継ぎ、最近はようやく余裕が出てきて湯船につかりながらのんびりとするのがシンタローの
リラックスするする方法の一つとなっている。だが、その安らぎの時をぶちやぶる例のアレが湧いて出る。
一つの気配が近づいてくる。はぁーと深いため息を一つ付くとざっと湯をならし立ち上がり湯船をひょいと跨ぐと
風呂と脱衣所とを仕切る扉を勢いよく開けた。
「毎日毎日、こぉんの馬鹿がっ!」
シンタローが馬鹿呼ばわりした相手は、真顔でシャンプーハットをつけていた。
大の男、しかも端正な顔の持ち主が腰にタオルを巻き真顔でシャンプーハットを装着し
右手に幼児がよくプールやお風呂で浮かべている黄色いアヒルの玩具を持っている姿はなんとも言いがたい。
「……キンタロー、お前、何してるんだ?」
マジックだと思い込んでいたシンタローは拍子抜けしたのかそれともそのキンタローの姿に毒気が抜かれたのか
それとも脱力したのか、たぶん全部であろうが、妙に力の無い声で問いかける。
「おまえと一緒に風呂に入ろうと思ってきたんだ」
「それはいいけどよ。それは?」
それ、とシャンプーハットには取り敢えず眼を瞑り、この場には明らかにおかしい黄色いアヒルにひょいっと指を向ける。
「アヒルだ」
とても簡潔に誰が見ても分かる事を答えた。
キンタローは自分のポーカーフェイスに誰ともなしに心から感謝した。
聞かれたことをそのまま答えただけで嘘は全くついていない。
この時、シンタローの目をまっすぐ見つめて言うのが特に効果的ということまで既に把握していた。
「いや、そうじゃなくってよ」
キンタローの考えなど全く読めないシンタローはどうも調子が狂う、と濡れた頭をガシガシと掻く。
キンタローと過ごすようになりまだ日が浅い。
ずっと自分の精神内に閉じ込められていた為、キンタローは日常のコミュニケーションが取りづらい。
閉じ込められていた中から見ていたから基本的なことは全て理解してはいるようだ。
だた、どうも会話がし辛い。言葉の意味そのままを捉え返してくる。
会話から容易に憶測できる、尋ねた側が省略した言葉が解らない。
ただとても優秀だったといわれているルーザーの才を引き継いだのか飲み込みはとても早い。
最近はグンマの補佐などしつつガンマ団内で過ごしているのだが、グンマ曰く、『キンちゃんは凄い』そうだ。
グンマが言うのだからまぁ『凄い』のだろう。
俺の周りの頭の良いヤツってのはみんな変だ、高松・グンマの顔を思い浮かべ、そして目の前のキンタローを見ながらそう思う。
「その、どうしてアヒルを持ってきたんだ?そもそもどこにあったんだそんなの」
「風呂に入る時、これは必ず携帯するものだとグンマが言っていた。グンマがくれたのだ」
正確に言えば、対シンタロー仕様の為にグンマが特別にあつらえた物だがそんな事はキンタローは黙っている。
「そうか」
シンタローはまたグンマか、とため息をつく。
きっとシンタローはグンマに何か文句を言いに行くだろう。
許せグンマ、と心の中で謝る。その代わり、必ず戦果はあげるぞ、とも。
「いいか?普通それは風呂に入れない。幼児なら風呂場やプールで遊ぶかもしれないけどな。
いい加減グンマの言う事鵜呑みにするのは止めてくれ」
まるで保父さんになったかのようにゆっくりと説明をする。
肩をおとしすまなかったとキンタローは殊勝に謝る。
「あ、いやお前が謝る必要なんてないんだよ。俺の責任でもあるし」
唯我独尊を地でいくシンタローだが『キンタローには優しい』というのがシンタローの周辺の人々の談である。
引け目が無意識のうちにそうさせているのだろう。
キンタロー自身は既にシンタローに対するそういう思いは無い。
シンタローが自分にだけ見せるどことなく弱気な態度を見せた時に何度かそう言ったのだが効果は無いようだ。
だか、今はそれをありがたく思う。シンタローは自分に対しては警戒しない。
いつものように微妙な沈黙がおちてしまったので、取り敢えずキンタローはくしゃみをした。
これで中に入れるだろう。
「すまん、すっかり体が冷えちまったな。取り敢えず来い」
大の男二人が入ってもなお余裕のある湯船の中で喧騒が始まる。
喧騒といってもシンタロー一人が騒いでいる。
「おまえとは風呂に入らん!」
横に並んでいたキンタローから距離をとり、湯船の端まで身を寄せる。
「なぜだ?」
ぱちっと瞬き一つ。後は常と同じように無表情の様に見えた。が。
一瞬ごく僅かに口の端が持ち上がった。
「言わなくてもわかるだろうが!」
コイツ、ワザとなのか?シンタローはそんな疑念が湧く。
「何か問題があったか?風呂は男のコミュニケーションでは重要だと言っていた。俺はそれを試みただけだ」
シンタローの目にはキンタローはあくまでも大真面目、のように映った。
「はんっ、誰だよそんな事言ったのは!」
だいたいあんなのがコミュニケーションになるかよとぶちぶちと悪態をつく。
機嫌が奈落の底まで落ちたシンタローに対し、底なしに変わるような人物の名を出した。
「マジックだ」
「……おまえさ、ひょっとしてマジックとも入ったのか?」
「ああ」
「同じ事した、いや、されたのか?」
もしそうならあの馬鹿親父殺してやる、そうシンタローの目に書いてあった。
それが読めたわけではないがキンタローは首を横に振って否定した。
「…………誰かに……教わったのか……?」
まさに恐る恐ると言った様子でキンタローに再度問う。
「いいや」
「……………………。」
シンタローはキンタローからそっと目を逸らし、手で湯を掬い顔を洗った。
そして何事も無かったかのように無言で湯船に浸かり続けた。
キンタローはシンタローに気づかれない様にひっそりと笑った。
満足そうにつぶらな瞳のアヒルを撫でた。
H17.8.14
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マジックは日本好きだ。それはガンマ団を見ても分かるだろう。
支部の一つでしかなかった日本がいつのまにか本部になってしまっている。
日本にあるのだから建物は日本仕様になっている部分が多い。和室の応接間もあるのだ。
ガンマ団員でもごく一部、つまり青の一族しか出入りできない事実上住宅の一部と化しているフロアがある。
勿論このフロアも日本風が多い。その最たるものは風呂ではないだろうか。
マジックの跡を継ぎ、最近はようやく余裕が出てきて湯船につかりながらのんびりとするのがシンタローの
リラックスするする方法の一つとなっている。だが、その安らぎの時をぶちやぶる例のアレが湧いて出る。
一つの気配が近づいてくる。はぁーと深いため息を一つ付くとざっと湯をならし立ち上がり湯船をひょいと跨ぐと
風呂と脱衣所とを仕切る扉を勢いよく開けた。
「毎日毎日、こぉんの馬鹿がっ!」
シンタローが馬鹿呼ばわりした相手は、真顔でシャンプーハットをつけていた。
大の男、しかも端正な顔の持ち主が腰にタオルを巻き真顔でシャンプーハットを装着し
右手に幼児がよくプールやお風呂で浮かべている黄色いアヒルの玩具を持っている姿はなんとも言いがたい。
「……キンタロー、お前、何してるんだ?」
マジックだと思い込んでいたシンタローは拍子抜けしたのかそれともそのキンタローの姿に毒気が抜かれたのか
それとも脱力したのか、たぶん全部であろうが、妙に力の無い声で問いかける。
「おまえと一緒に風呂に入ろうと思ってきたんだ」
「それはいいけどよ。それは?」
それ、とシャンプーハットには取り敢えず眼を瞑り、この場には明らかにおかしい黄色いアヒルにひょいっと指を向ける。
「アヒルだ」
とても簡潔に誰が見ても分かる事を答えた。
キンタローは自分のポーカーフェイスに誰ともなしに心から感謝した。
聞かれたことをそのまま答えただけで嘘は全くついていない。
この時、シンタローの目をまっすぐ見つめて言うのが特に効果的ということまで既に把握していた。
「いや、そうじゃなくってよ」
キンタローの考えなど全く読めないシンタローはどうも調子が狂う、と濡れた頭をガシガシと掻く。
キンタローと過ごすようになりまだ日が浅い。
ずっと自分の精神内に閉じ込められていた為、キンタローは日常のコミュニケーションが取りづらい。
閉じ込められていた中から見ていたから基本的なことは全て理解してはいるようだ。
だた、どうも会話がし辛い。言葉の意味そのままを捉え返してくる。
会話から容易に憶測できる、尋ねた側が省略した言葉が解らない。
ただとても優秀だったといわれているルーザーの才を引き継いだのか飲み込みはとても早い。
最近はグンマの補佐などしつつガンマ団内で過ごしているのだが、グンマ曰く、『キンちゃんは凄い』そうだ。
グンマが言うのだからまぁ『凄い』のだろう。
俺の周りの頭の良いヤツってのはみんな変だ、高松・グンマの顔を思い浮かべ、そして目の前のキンタローを見ながらそう思う。
「その、どうしてアヒルを持ってきたんだ?そもそもどこにあったんだそんなの」
「風呂に入る時、これは必ず携帯するものだとグンマが言っていた。グンマがくれたのだ」
正確に言えば、対シンタロー仕様の為にグンマが特別にあつらえた物だがそんな事はキンタローは黙っている。
「そうか」
シンタローはまたグンマか、とため息をつく。
きっとシンタローはグンマに何か文句を言いに行くだろう。
許せグンマ、と心の中で謝る。その代わり、必ず戦果はあげるぞ、とも。
「いいか?普通それは風呂に入れない。幼児なら風呂場やプールで遊ぶかもしれないけどな。
いい加減グンマの言う事鵜呑みにするのは止めてくれ」
まるで保父さんになったかのようにゆっくりと説明をする。
肩をおとしすまなかったとキンタローは殊勝に謝る。
「あ、いやお前が謝る必要なんてないんだよ。俺の責任でもあるし」
唯我独尊を地でいくシンタローだが『キンタローには優しい』というのがシンタローの周辺の人々の談である。
引け目が無意識のうちにそうさせているのだろう。
キンタロー自身は既にシンタローに対するそういう思いは無い。
シンタローが自分にだけ見せるどことなく弱気な態度を見せた時に何度かそう言ったのだが効果は無いようだ。
だか、今はそれをありがたく思う。シンタローは自分に対しては警戒しない。
いつものように微妙な沈黙がおちてしまったので、取り敢えずキンタローはくしゃみをした。
これで中に入れるだろう。
「すまん、すっかり体が冷えちまったな。取り敢えず来い」
大の男二人が入ってもなお余裕のある湯船の中で喧騒が始まる。
喧騒といってもシンタロー一人が騒いでいる。
「おまえとは風呂に入らん!」
横に並んでいたキンタローから距離をとり、湯船の端まで身を寄せる。
「なぜだ?」
ぱちっと瞬き一つ。後は常と同じように無表情の様に見えた。が。
一瞬ごく僅かに口の端が持ち上がった。
「言わなくてもわかるだろうが!」
コイツ、ワザとなのか?シンタローはそんな疑念が湧く。
「何か問題があったか?風呂は男のコミュニケーションでは重要だと言っていた。俺はそれを試みただけだ」
シンタローの目にはキンタローはあくまでも大真面目、のように映った。
「はんっ、誰だよそんな事言ったのは!」
だいたいあんなのがコミュニケーションになるかよとぶちぶちと悪態をつく。
機嫌が奈落の底まで落ちたシンタローに対し、底なしに変わるような人物の名を出した。
「マジックだ」
「……おまえさ、ひょっとしてマジックとも入ったのか?」
「ああ」
「同じ事した、いや、されたのか?」
もしそうならあの馬鹿親父殺してやる、そうシンタローの目に書いてあった。
それが読めたわけではないがキンタローは首を横に振って否定した。
「…………誰かに……教わったのか……?」
まさに恐る恐ると言った様子でキンタローに再度問う。
「いいや」
「……………………。」
シンタローはキンタローからそっと目を逸らし、手で湯を掬い顔を洗った。
そして何事も無かったかのように無言で湯船に浸かり続けた。
キンタローはシンタローに気づかれない様にひっそりと笑った。
満足そうにつぶらな瞳のアヒルを撫でた。
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