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浮上したパプワ島を後にした。
パプワ達とはもう二度と会えないだろう。
そう思うと、あの夢の様な時間をすごした島を少しでも長く見ていたくて
部屋の小さな窓からずっと外を見ていたが今はもう深い青色の海が見えるのみだ。
何時までもこんな窓際に立っていたら変に思われるだろう。
というか、先ほどから視線を背中に感じる。もう既に変に思われているのかもしれない。

何故かこの部屋はもう一人いる。
『従兄弟同士仲良くしなくちゃね』とかなんとか言ってグンマがヤツを連れて来た。
『キンちゃんって言うんだよ。宜しくね。』
隣に立っていたヤツにキンちゃんもお辞儀っと言うと素直にペコっと頭を下げる。
頭を下げた拍子に、硬そうなヤツの長い金髪も前に垂れる。
そのままグンマが部屋に備え付けてあるベッドにここに座ってと指差し、ヤツはでどんと座った。
グンマは『僕はおとーさまと親睦を深めてくるよ~』と呑気に告げてさっさと帰りやがった。
グンマがいりゃ少しは会話があるだろうに。
年中頭に花が咲いているよーなグンマだがああ見えて結構しっかりしている。
今度の事もショックだったろうにとっとと前向きに受け止め
傍目には抵抗無くマジックの事を『おとーさま』と呼んでいる。
俺のことはマジックの息子、従兄弟のままらしい。矛盾しているがそうと勝手に決めたみたいだ。

ため息一つついて振り返り、ヤツが座っているベッドと少し離れて並んでいるもう一つのベッドに
向かい合うように腰掛ける。
ぼすっとベッドがなる。そんな些細な音すらまるで大きく響くように聞える。
連れて来たコイツも従兄弟らしい。名前はキンタローになったそうだ。
二人になってから俺もヤツも何も言葉を発していない。
口をきかないのに、何故か俺の方ばかりを見ているような気がする。
「なぁ、何か言ってくんねー?見られてばっかじゃ気持ちわるいんだけどさ」
ひょいっと肩をすくめる。
「何か?」
と反応した。
暫くの間視線をやや下に、何か考えているようだった。
そしてふいっと俺を見る。
「好きだ」
「…………。」
自分の耳を疑った。
よもやこの相手からそんな言葉を聞こうとは。
「何?」
「好きだと言ったんだ」
聞えなかったのか、と言う感じでコイツはもう一度はっきり言う。
思わず青い目をまじまじと見つめてしまった。
俺の言葉を待っているようにじっと俺を見つめている。
「……それは、アレか?恋愛の情ではなく人としての俺が好きだと言う事だよな?」
と訊いてみる。
「俺はお前がどこにいるのかと常に気になる。姿が見えないと不安にもなる。
 グンマにそう告げたら『それは好きということだ』と教えてくれた。
 それはお前の言う、お前という人間が好き、という事になるのか?」
本当に真面目な顔で訊いてきた。
……。後でグンマを殴ろう。思わず拳を胸の前で固めた。
コレがマジックなら単に俺をからかっているのだとわかるから、眼魔砲をぶっ放して終わりだ。
だがコイツだとそうはいかない。大真面目に聞いているのだ。
コイツのこういう変な所は、理不尽な話だがそれは俺にも責任はある。
あるからにはどうにかしなくちゃならないだろう。
これもいわゆる刷り込み、と言うのだろうか。
どう答えれば良いのかと考えていると
「触ってみたくもなる」
すいっと音も無く立ち上がると、少しかかがんで抱きしめられた。
……頭痛がした。
コレは一体どーしたら良いのか。
目の前には黒のレザー。皮特有の匂いも、俺のむき出しの両腕に掛かる髪の感触も
伝わってくる体温も、この怪異な行動が夢じゃないと告げている。
出来ればこのまま気を失って、気づけば夢オチだったという事を願いたい。

コンコンっとノックの音と共に
「シンちゃーん。入るよー?」
グンマの間延びした声が、逃避しかかっていた俺の頭に響いた。
「わぁ、もう仲良しさんだね。僕、心配で見にきたんだけどぉ」
そんな必要なかったね、とほわほわとそんなことを言いやがった。
「おい、グンマ」
額に青筋がたっているだろう、きっと。
動けないので顔だけ向ける。
「なぁに?シンちゃん?」
「コレはお前の言う『仲良し』なのか?」
「え?どうみても仲良しじゃない」
そーか、大の男が男に抱きついているのは仲良しなのか。
「おい、今度はグンマに引っ付いてみろよ」
「わかった」
ヤツは俺が力ずくで剥がす前に、素直にスタスタとグンマの元へと行く。
グンマの目の前に立つと、そのまま腕を広げ軽く抱きしめる。
「キンちゃん、どぉお?」
グンマはなーんにも思っていないような、いつも通りに訊ねた。
「お前も落ち着くが、アイツのほうが落ち着くような気がする。
 それにずっと触っていたい感じもする。」
グンマを解放する。
「でしょ?」
「それが『好き』って事だよ」
教師が生徒に教えるように言う。
「アイツは『恋愛の情か人柄を慕う情か』と聞いてきた。これはどっちだ?」
「うーん、愛情、恋愛の情なんじゃない?」
くりんと可愛らしく顔を上げてヤツに応じる。
「こぉら、グンマ! 適当なこと言うなっ!」
駄目だ、グンマ一人に任していたらきっとその内グンマを無愛想にしたような人間になってしまう。
「えー、適当じゃないよ。キンちゃんが自分で思っている感情を僕が教えているだけだよ?」
「なお困るわっ!」
声を荒げる。
そんな俺がおかしいかのような目で二人が俺を見る。
「なにか問題あるのか、グンマ? 知らない事を教えてもらうのはありがたいが」
「さあ? 僕も問題ないと思うよ」
グンマは何事にも大らかな分、どっかずれている。
今ならよーく分かる。間違いなく、マジックの血を引いている。
「シンちゃんが何を怒っているのか僕には分からないけど、キンちゃんのこと宜しくね」
キンちゃんもね?とグンマはにっこりと笑いかける。
「わかった」
コックリと素直に頷いている。
何を宜しくするんだ。何を。
そして何がわかったんだアイツは。
そう言いたいのを抑える。言ったら当たり前のようにサックリと変な事を言われそうだ。
それをヤツが鵜呑みにしたら更に事態は悪化する。
ここは抑えろ、俺。
自分に言い聞かせる。
そんな俺の葛藤に全く気づかずグンマは
「じゃあ、僕もう行くね。二人ともとっても仲いいみたいだから心配して損しちゃった」
そう言い残し再び軽やかな足取りで、部屋から出て行った。
またコイツと二人きりだ。
どーしろってんだよ、一体。
とりあえず、まだ突っ立ったままのアイツに声を掛ける。
「座ったらどーよ」
「そうだな」
何故か俺の真隣に腰を下ろす。
「……なぁ、なんで俺の、」
途中で言葉を飲み込む。ヤバイ。自ら墓穴を掘る所だった。
「なんだ?」
「いや、なんでもない。…………俺、なんだか疲れたから寝るわ」
腰を上げ隣のベッドへと移動する。
そして、相手の顔もみずにそのまま布団を頭まで被る。
きっとまたこっちを見ているんだろうなぁ。
重い、重すぎるため息が出た。

嫌われるのは覚悟していたが、こんな事態は全く想定していなかった。
どっちがマシなんだろうか。
島を後にした感傷はどっかにふっとんでしまった。
それはありがたかった。が、この先俺にどーしろと。
馬鹿グンマを呪いつつ寝たふりを決め込む事にした。

12.4

→お題28 「今」 がコレの続きっぽい。
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