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「 『楽園』 というのはここの事をいうのだろうな。」
砂浜を歩きながら隣を歩くキンタローが呟く。
まるで人工砂のように綺麗だ。砂を踏む感触が心地よく体に伝わる。
視線を上げれば視界は見事なまでの紺青に塗りつぶされる。船など一切見えない。
人の手によって作り出されたものは拒絶される。
パプワ以外の人間は意図的に排除されているといっても過言ではない。
先の過ちの所為で尚更そうなったのかもしれない。
人がいなければ無意味な争いは生まれない。人のみが同じ過ちを何度でも繰り返す。
「そーだな。」
シンタローは相槌を打つ。
キンタローはシンタローの余計な力が抜けた、その様子に不安になる。
この島に来ると決まった時から懸念していた事だ。
万が一この島に捕らわれたまま戻ってこなかったら、と。
シンタローは時々仕事の合間、僅かな時間だがふっと姿を消す事がある。
探しに行くのはたいがい、屋上。シンタローはただ、何をするのでもなく、空を眺めている。
その空漠たる姿をみていると無理矢理にでもこちら側の世界に繋ぎ留めておきたくなる。
「俺はお前にとって、あちらの世界でのこの島になれるか?」
「・・・恥ずかしい事を真顔で言うな。」
この楽園を彩る海と同じ色の瞳が謹厳な色を帯びる。
シンタローは茶化して終わりにしようとしたが、どうにもそういうわけにはいかないようだ。
ふいっと顔を背けて小声で言う。
「俺が前だけを向いていられるのは、後ろを確認しなくてもいいからだ。
 どんなに俺が無茶をしても必ず付いて来てくる。休みたくなった時は隣にいる。」
突然シンタローは、大声を張り上げる。
「こんなこっ恥ずかしい事言わすなっ!」
キンタロー以上に恥ずかしい事を言っていると気づいたのだろう。
その声に驚くでもなく、キンタローは満足そうに一人頷いている。
「やはりこの島はいいな。」
足を止め海を眺める。
「うん?」
つられてシンタローも歩みを止める。キンタローの意図が掴めなく聞き返す。
「まさかこんなに容易く本音が聞けるとは思わなかった。」
この島のお陰だ、と。
「なっ」
嵌めたのか、とシンタローが憤る。
「俺は別に嵌めたつもりなど無い。シンタローの本音が聞きたかっただけだ。
 それに俺はいつでもシンタロー相手には正直なのに、不公平じゃないか。」
キンタローは妙に胸を張って、子供の様なことを言う。
「ああ、そうかよ。」
そりゃよかった、と投げやりに答える。
キンタローはもうこんな機会は無いと思ったのだろうか、また訊ねる。
この島にいる間なら、本音をききだせるはずだ。
元々が相手の中にいるという異常な状態だったが、いざその状態から開放されると
シンタローの声が全く聞えない。もう数年経過するが、不安なのだろう。
「今はお前が考えている事がはっきりとはわからない。言ってくれなければ通じない事もある。」
「・・・側にいてくれるだけで十分だ。」
「そうか。」
「ああ。」
暫くは無言で海を眺めていたが、またどちらともなく歩み始める。
砂浜には二人の足跡が転々と続いた。


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