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klk
「シンタローの髪は綺麗だな」

キンタローはたまに突拍子も無いことを言う。
”生まれた”ばかりだから仕方ないのだが、それでも、乾いたスポンジが水を吸うように知識を吸収するキンタローの発言には驚かされる。
「どうした?急に」
もう慣れた、とばかりに、微笑みながらシンタローは尋ねる。
日々新しい発見をするらしいキンタローの言葉は、もうそれらに慣れてしまったシンタローたちには新鮮だった。そこから出てくる言葉を、待つことも出来た。
「・・・いや、特に意味は無いのだがな」
呟いて、キンタローは側にあった本棚から分厚い一冊を取り出す。
思ったことをためらいも無く言うから、こうなることも多い。くす、と苦笑いを浮かべてシンタローは執務に戻る。心地の良い静寂が再び二人の間に降りる。

「・・・黒くて、艶があって綺麗だ。夜の闇のようで」
ふ、としばらくして誰にとも無くキンタローは言った。
それがさっきの会話の続きだと理解するのに、シンタローは少しばかり時間を要した。書類から視線を移動させて、真剣に本にかじりついているキンタローを見遣る。
「・・・お前の髪の方が綺麗だ」
キンタローの見事な金髪に目をやって、シンタローは言う。
ぱっとこちらに目をやったキンタローと視線が重なって、今の言葉は嘘ではない、と、念押しするように微笑んだ。
ゆっくりと、キンタローはシンタローに近づく。シンタローはと言えば、次にキンタローがどんな行動に出るのか期待している目だった。
おもむろにキンタローはシンタローの髪の一房をつかみ、”夜の闇”に口づけた。たちのぼるシャンプーの香りに、一瞬くらりとする。
「・・・・やっぱり、綺麗だ」
心から、という風に呟くキンタロー。その間にもシンタローの視線はキンタローの金髪に注がれていて、『どっちが綺麗か』攻防戦が始まっていた。

青の一族が受け継ぐ、金髪という性質だが、個々人に個性があって全く同じ色というものはない。ハーレムなんかはオレンジが少し混じっているし、サービスは金の色素が薄い。ただひとつ同じものが無い中で、キンタローは、本当に『金』だったから。

黄金がさらさらと揺れて、シンタローの黒髪に滑り落ちる。
金と闇の混じった部分は恐ろしいほどの美しさと妖艶さを持って、女王のごとくそこに君臨する。ぶつかる視線。どうやらもうキンタローの興味は別の所に移っているようだった。新しい愛情表現を覚えたキンタローは真っ直ぐにシンタローを見下ろし不器用にそれをねだる。
仕方ないな、という風な仕草をとってみせて、シンタローは立ち上がる。双子にも似たふたりは、同じ高さになる。
「少しだけだからな」
言ってシンタローは、無防備なキンタローの頬に口づけた。

シンキンっぽいなぁ
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km
最近のキンタローのお気に入りはどうやら、「月を眺めること」らしかった。「らしかった」というのは、実際キンタローに聞いた訳じゃなく、なんとなくそう感じていたからだ。例えば夜、すれ違って挨拶をしたとき、声は確実にこちらに向けているのに、視線は窓の外に注がれていたりする。例えばグンマが、キンタローが月を見ていて実験に付き合ってくれない、と泣きついて来たりする。興味を持ったものとはとことん付き合う男らしい。

「シンタロー」
廊下ですれ違った時、後ろからそう呼ばれた。
「どうした?キンタロー」
振り返りながら答えると、呼んだはずの本人はどこかそっぽを向いていた。ああ、そうか。キンタローの体の向きに添って視線を移動させれば、そこには月。夜闇にぽっかりと、誰かの忘れ物のように浮かんでいた。
「シンタロー、一緒に月を見ないか?」
「今一緒に見てるけどな」
キンタローはパッと振り返り、怪訝な表情になる。キンタローがこの手の冗談が嫌いなのは知っているが、つい何度もしてしまう。視線で、悪い、と謝り、シンタローはキンタローの側へ歩み寄る。
「で、どこに行く?お前の部屋か?」
「いや、俺の部屋は角度が悪い。シンタローの所に行こう」
まさか自分の部屋の角度まで知っているなんて。思わず笑ってしまうがそんなことは気にならないのか、キンタローはいち早く歩き出していた。

電灯をつけない真っ暗な中、シンタローとキンタローは手探りで、窓の近くへと椅子を移動させる。コツコツと乾いた靴音が響くのに、夜の静けさを改めて思い知らされる。きっと手持ち無沙汰になるだろうと思って持って来た酒を、キンタローは気に入ったようだった。この前の月見酒で、キンタローは月見酒が好きになったと言う。キンタローに『好きなもの』ができるのは嬉しい、と言えば、キンタローは恥ずかしそうに笑う。それもまた、成長だから、と。

乾杯の後だけは、体に酔いが廻るのを楽しんだ。
酒を片手間に、キンタローは熱心に半分だけの月を見上げていた。
「綺麗だな、シンタロー」
「満月じゃなくても、か?」
「満月も美しいが、月は満月でない方が好きだ」
どうしてだ、と視線で問えば、キンタローはすぐには答えずグラスに少しだけ残っていた酒を呑み干した。その動作を追って、シンタローの視線はキンタローの目へたどり着く。
「満月は完璧だからな」
「・・・どういうことだ?」
酔っぱらって来たのかキンタローは、熱い息で答える。
「・・・ある学者の手記にあった。この世に完成されたものは無く、しかし人はそのなかで愛しいと思うものや、好きなものが出来る。ならばそれは”人は未完成はものに惹かれる”ということだ、と」
「・・・未完成な方の月に惹かれる、ということか?」
「そうだ」
そして確かめるようにキンタローはもう一度月を見上げ、微笑む。

「・・・さっきの話だけどよ」
もう大分酔いも廻りきったころ、最後の一杯、と、なみなみと酒の注がれたグラスをテーブルに置いて、シンタローは不意に喋り出した。
「なんだ」
「あの話、人間同士にもあてはまるんじゃねぇのか?」
「人間にも?」
シンタローのこういった話は滅多に聞けないんじゃないかと、キンタローは思わず身を乗り出す。酔いの力が、シンタローを饒舌にさせる。
「人間も、言ってみりゃ未完成だろ?男と女が・・・人と人が惹かれ合うのも、それと同じなんじゃねぇかなと思って」
「・・・俺たちみたいにか?」
そう言うとシンタローは、酒で赤くなった頬をさらに赤くする。
「お前なぁ・・・」
ぼりぼりと頭をかくのはきっと照れ隠し。シンタローの気持ちが手に取るようにわかって、キンタローは思わず笑う。

元は一つであったはずのものが離れてしまい、その解離への拒絶反応で惹かれているのではないか。キンタローはそう思っていた。けれどシンタローの言葉は、そんな妄想も吹き飛ばす力を持っていた。
見ればシンタローは、そんなキンタローを置き去りにして既に、眠りの世界へ入っているようだった。打って変わって間抜けな寝顔に、キンタローは、大きく、けれど起こさぬようにと声を出して笑う。

「・・・おやすみ、シンタロー」

少しだけ欠けた月は、真っ直ぐに二人を見下ろしていた。


最後のセリフが言わせたかった
kkk
会議を終えて総帥室に帰って来ると、何やら先客がいた。
「・・・なにやってんだ、キンタロー」
何やら黙々と書き物をしているキンタローは、どこか人を寄せ付けないオーラをまとっていた。ちらりと見えた万年筆の先端は、何やら難しい記号や指揮を羅列していて、少し見ただけでも目をそらしたくなった。
「分析だ」
何を今更、とまでに一言言って退けて、キンタローは「分析」とやらを再開した。
「それは別にいいんだけどよ、そこじゃなくちゃ駄目か?」
キンタローは、床に立て膝を付き、総帥用のデスクでひたすらに万年筆を走らせていた。格好を気にしないはずがないキンタローがこんな変な姿でしているからには相当急ぐものだったんだろうが、それにしても自分が帰って来たからにはどいて欲しいというのがシンタローの一番の気持ちだった。
「あと少しだ」
キンタローは小さくそう言って、紙を裏返しさらにペンを走らせる。どうやら待つしか無くなったシンタローは、近くの来客用のソファに腰掛けキンタローの様子を見守る。さらさらとペンの音だけが、部屋の中に在った。
不意にキンタローは、トン、と最後に紙をペンで叩いて、立ち上がる。
「終わったか?」
「ああ」
満足したのか、キンタローは笑顔で答える。
「そりゃよかった」
これから山積みの仕事を片付けなくちゃならないんだ、と、キンタローとは反対に苦笑いを浮かべて、シンタローは言う。それに答えるようにキンタローは微笑んで、インクで黒くなった紙に視線を落とした。
「シンタロー」
「ん?」
それは告白とも呼べないような、独り言のようなものだった。
「・・・好きだ」
迷いも無く、キンタローは言う。まるで天気の話でもするみたいに。
「・・・は?」
聞き慣れない言葉に、シンタローは立ち止まる。しばらくして、思い出したようにシンタローは喋り出す。
「・・・なに言ってんだ?キンタロー」
「俺はお前が好きだと言っている」
まるでさっきと変わらぬ様子で、キンタローは少しだけ長くなった言葉で、もう一度「告白」をした。
・・・ああ、なるほど。
「ふざけてんな、キンタロー」
どうやらこの男は自分が世間知らずなのをいいことに、ふざけて周りのひとで遊ぼうとしているらしい。その手には乗らないと、シンタローはキンタローの言葉を笑い飛ばす。
「ふざけてはいない。本心だ」
言って、キンタローは紙を差し出す。見たって分からないとは思ったが、シンタローは一応受け取る。いくつもの長い式をざっと目でなぞって、次にキンタローを見る。
「これが何だ?」
「分析の結果だ。どうやら俺はお前が好きらしい」
裏返してみれば、そこには”=0”の文字。それが、式の答えらしい。
「俺はお前が好きだ、シンタロー」

図らずもシンタローは頭を抱えることになる。
ただ、受け流すにはもったいない言葉だと、思った。


キン×シンの告白はこんなんだったろうなと想像してます
kjf
夜汽車に乗るのは初めてだった。
最終も間近、駅の構内に居る人はまばらだった。舗装された道をコツコツを歩く音が、冷えた空気にきんと響く。一両編成の列車はかなり使い古されているようで、定員が乗ったら危ないんじゃないかというくらいだった。すれ違う人も少なく、キンタローは寒さを列車の外に置いて急いで中に滑り込んだ。案の定列車の中は暖かく、むしろ暖房が効きすぎて暑いくらいだった。一番近くの席に座り、とりあえず、と荷物を近くに置く。大荷物を抱え、やっぱり二人で来れば良かったか、と少しの後悔を覚える。
しばらくして発車のベルが鳴り響き、列車は重くゆっくりと動き出す。

降り始めた雪を横目に、キンタローは荷物の整理をしていた。旅先で土産に迷う人の姿を見て不思議に思っていた頃もあったが、こうなるともう、そうはいかなくなる。手にしたものを順番に眺め、受け取るであろう人の顔を思い浮かべる。グンマ。高松。マジック叔父貴。次々に出て来るその一番奥に、小さな袋に入った花があった。物と物の隙間に上手く入り込ませていたそれは、状態も綺麗な物だった。手に取り、眺める。人に聞けばそれは、クリスマスローズという花だと言う。木から離れても長持ちすると聞き、キンタローは迷わずそれを選んだ。

迷いのない白さは、きっとシンタローの黒髪に映えることだろう。


キンタロー一人旅
klk
「シンタローは、死が怖いと思ったことはないのか?」
唐突に、キンタローは尋ねた。それはたまった執務を片付けている最中のことで、普通ならば聞かなかった振りでもしている所だが、今回は人物が人物だった。聞かない振りも無視もすることも心苦しくて、シンタローは書類に向けていた視線をキンタローへと向けた。
「死?」
たった一言だが、それは重い。言葉にした瞬間、どこか息苦しくなったような気がして、シンタローは思わず咳払いをする。
「そうだ。怖くはないか?」
うしろを向いていたキンタローは振り返り、まっすぐにシンタローを見つめる。生まれて、あの島から帰って来てすぐの頃「話す時は、相手の目を見て」ということを習ったらしいキンタローの、それは癖だった。負けじと見つめ返し、視線に視線を重ねる。
「怖くはないな」
それは紛れもない本心だった。士官学校時代も、そのあともずっと、第一に教え込まれたことは、死への恐怖などではなく、それがいかに側にあるかということだった。それは自ら、もしくは誰かの手によって日常化し、まるで最初からそこにあったみたいに存在している。
「本当か?」
言葉と、視線でキンタローは念押しする。シンタローは微笑み、走らせていたペンを休ませる。組んでいた脚も解く。
「ま、職業柄な」
まるで独り言のようにシンタローは誰にともなく言い、執務を再開する。

「・・・俺も、怖くはない」
忘れたころにその言葉は降って来て、シンタローはゆっくりとキンタローを見遣る。
「ま、そうだろうな」
再三、キンタローは「俺はもう死んだ男だから」と言っている。あの島で死を覚悟し、そして死ななかった男の本心に違いない。
「・・・ただ、」
そこで一旦ためらいがちに言葉を区切り、キンタローは天井を仰いだ。なにかを突き止めるようにその視線は真っ直ぐを射抜いていた。言葉が続いたのは、もうすこし後になってから。
「・・・お前や、グンマや、皆と最後の別れだと思うと、それが悲しい」
その声はもしかしたら気づかなかったほどに少しだけ震えていて、シンタローは思わず立ち上がる。背を向けたキンタローがどこか小さく見えて、不安になった。
「・・・キンタロー?」
少しずつ近づき、おそるおそるシンタローはキンタローの顔を覗き込む。けれど目元を拭うような仕草に、予想が確信に変わりシンタローは慌てて、見なかったことに、とキンタローから少し距離をとる。キンタローは何も言わず、シンタローはただそれを見ているだけだった。沈黙が流れて行く。
「・・・すまない、シンタロー」
これで最後だ、とばかりにキンタローは何かを振り払うように頭を振り、振り返る。その目元だけは見ないようにと、シンタローは応える。
「いい。・・・気にしねぇよそんなこと」
せめて笑えれば、その空気を消せたのかもしれない。そこで話を終わらせれば、本当に終わりのはずだった。けれど。
気づけばシンタローはその胸に、キンタローを抱きしめていた。きっと、そうすることでしかキンタローを想えなかった。触れ合った体はまだわずかに震えていて、抱きしめた腕に力を込める事でしか、応えられなかった。
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