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 いつものことだけどさ。
 慣れちゃったけどさ。
 どうすんのさ。
 ――俺らのメシ。





昼、食堂にて。



 偶然だった。
 予定より早く遠征から帰ってきたアラシヤマが、予定より遅れて外国の会議に出席するシンタローと出くわした
のだ。
 しかもシンタローがめったに表れない、一般食堂で、だ。
 ミヤギ、トットリ、コージの3人と一緒に食事をしていたら、突然食堂の入り口あたりが騒がしくなった。
 何事かと顔を上げるトットリが、条件反射のようにアラシヤマの肩を強く叩いた。
「何どすか。わてはこの後報告書書かなあかへんのやから、余計なもん見とる時間なんぞあらしまへんのや」
「でもアラシヤマ。入り口にシンタローがいるだっ…」
 トットリが全て言い終る前に、アラシヤマは立ち上がった。
 確かに入り口には、シンタロー(とキンタロー)が立っていた。
「あぁ~んっ、わてのシンタローは~んvv」
「げっ」
 目にも止まらぬ速さでシンタローのところに駆け寄るアラシヤマを見つけ、シンタローが身構えた。
 慌ててキンタローを盾にするシンタロー。
 キンタローも慣れたもので、シンタローそっくりの大きな手でアラシヤマの頭を鷲掴みにした。
「は、離しなはれキンタロー!あんさんには用なんぞないんどすっ」
「だったら自力でどうにかしろ」
「キンタロー…。わてに触れると火傷しますえ?」
 上目づかいで、格好をつけるアラシヤマ。
 『俺に触れると怪我するぜ』もしくは、『俺に惚れると火傷するぜ』だろと、その場にいた全員が心の中で突っ
込んだ。
 些細な違いほど、ツッコミたくなるものだ。
「そうか」
 すると呆気ないほど、簡単にキンタローの手が外れた。
「「「「あ……」」」」
 一瞬、静まり返る食堂。
 キンタローとアラシヤマ以外の誰もが思った。
 ヤバイ。――と。
「――――シンタローはぁぁぁ~~~んvv」
「テメ、キンタローっっ!裏切ってんじゃねーよっ」
 目の前に肉を置かれた猛獣の如く、人参を目の前でプラプラされた馬の如く、リキッドを見つけたウマ子の如く、
アラシヤマの目にはシンタロー以外は映っていない。
 まさに、ターゲット・ロックオン☆
 アイ・アム・ラブハンター!!
 もはや意味不明。
「別に裏切ったつもりはない。単に、俺は火傷をしてドクターに手間をかけさせたくないだけだ」
「嘘吐けっっ」
 ドクターの実験台になりたくないだけだろっ。
 それがわかっているのは、シンタローと直属部下であるガンマ団幹部のほんの数人だけだ。
 それ以外の人間は、キンタローのお気遣いの紳士っぷりに胸をキュンとさせていた。
 まるでどこかの、ファンシーヤンキーのように。
「~~~っっ、クソ!」
 必死でアラシヤマの手から逃れようとしていたシンタローは、諦めたように振り返った。
「シンタローはぁぁんvv」
 おもむろに前に差し出される右手。
 食堂にいた人間は、咄嗟にテーブルの下に身を潜めた。
 瞬間、青い光が食堂内を包み込む。
 ドンッという大きな音と振動と共に、ガラスの割れる音や爆風が襲ってきた。
「危なかったっちゃ」
「んだ。日頃の非難訓練のおかげだべ」
「つーか、食堂ふっ飛ばしてどうすんじゃ、メシ」
 テーブルの下に逃げ込んだ3人は、手元のうどんをすすりながら辺りを見まわした。
 同じようにテーブルに身を隠した者たちは、突然起こった衝撃に呆然としていた。
 首をめぐらせると、肩についたホコリを悠然と払うキンタローと憮然とした表情のシンタロー。
 その近くにある黒い物体は、…まぁ放っておいて。
「ちっ、メシ食えなくなったじゃねーか」
「7割くらいはお前の所為だがな」
「半分はお前の所為だろうが! もういい。出先で食う」
 責任のなすり合いをしながら足元の黒い物体には目もくれず、2人は食堂から出て行った。
 ガタガタと音を立てて、テーブルから抜け出た3人はその背中を静かに見送った。
「…隊長ぉ」
 静まり返った食堂に、かすかな涙声が響いた。
「コージの隊の新人だべな」
 ミヤギの声に、コージは振り返った。
 確かに今年コージの隊に入隊したばかりの新人だ。
 彼の足元には、例の黒い物体がある。
 コージは頭を抱えたくなった。
 今年入ったばかりのルーキーに、アレの処理は酷だ。
 真っ黒になっていても、隊長クラスの幹部。
 しかもガンマ団No2の実力者だ。
 ハッキリいって面倒だ。
 というか、迷惑だ。
 彼にアラシヤマを運べとは流石に言えない。
 運ぶこと自体に抵抗があるだろうし、更にその行く先はあのドクター高松のいる医務室だ。
 お気遣いの紳士キンタローですら近寄りたがらない、魔の区域。
 コージ自身も何度あのヘンタ…ドクターに泣かされたことか。
 新人にトラウマを残すのはあまりにも忍びない。
 体はゴツイが、シンタローたちよりは優しさをもっているつもりだ。
 やはりここは自分が運ぶしかないのか。
 アラシヤマを運んでやる義理も、友情もありはしないが――。
「コージ…」
「手を離して欲しいっちゃ」
 溜息をついたコージから逃げようとする2人の襟首をがっしりと掴む。
 誰が独りだけで運んでやるものか。
 赤信号みんなで渡れば恐くない。
 交通弱者を舐めんじゃねー。
 あのドクターの部屋に行くのも、3人ならばそれほど恐くはない。
 もしものときは、どちらか1人を生贄として置いて来ればいいだけの話だ。
 腕っ節は、この中で1番強い自信がある。
 ドクターに関しては、優しさなど持ち合わせてはいられない。
 コージは右手にミヤギとトットリの襟首、左手にアラシヤマの右足を掴んで食堂を出て行った。
 ズルズルと音を立てて、時折テーブルや椅子の脚に身体をぶつけるゴツッという痛そうな音を響かせるアラシヤ
マの姿に、その場にいた団員たちは皆恐怖した。
「またですか…」
 扉の外で肩を落としているティラミスを見つけた。
 食堂はほぼ全壊といってもいいだろう。
「アラシヤマの給料から、引いとけ」
 修理費がどれだけかかるかなど知らない。知りたくもない。
 アラシヤマがほとんど悪いのだから、アラシヤマの給料から引くのは当然だろう。
 シンタローたちに言っても、どうせ金は出やしない。
 修理も、今日明日に終わりはしないだろう。
 必死に暴れるミヤギとトットリを押さえ込みつつ、今夜の夕飯からしばらくは店屋物になるのかと思いコージは
大きな大きな溜息をついた。




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