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ak
 絶対という言葉がありえないというのならば、きっとという言葉に言い換えよう
 きっと貴方の元へ―――――参ります。






「認めまへん………」
 ざらざらに乾いた舌先から漏れた言葉は、自分以外誰も聞き取れないほどの掠れたかすかな声。
 その思わぬ頼りなさに、発した自身が、眉を顰めて見せた。
 心まで気弱になりそうな声を自分が出したとは思いたくない。
 今の状況でそれは、あまりにも絶望的なものを得てしまうからだ。
(そんなこと認めまへんで)
 声に出すことは拒絶して、心中でしっかりとその言葉を刻む。
 言霊に誓うように、願うように、その言葉に思いを込める。
「………っぅ」
(ふざけんで欲しいわ)
 どうしようのない苛立ちがこみ上げる。
 少し動くだけで、脳天突き破るほどの激痛。
 どうして、自分がそこまでのケガを被い、さらに悲壮なほど危機的状況におかれなければいけないのだろう。
 その思考は、すでに八つ当たりの部類に入っているのだが、仕方ない。

 味方ゼロ。
 救援未定。
 敵多数。
 
 くらくらしそうなほどの素敵な状況。
 任務はかろうじて成功というところが、まだしも慰めになるだろうか。
 否、なるはずがなかった。
 生きるか死ぬかのこの状態では、そんなものは何も役には立たない。
 役に立つのは、仮に自分がここで命を落とした後だ。それも、無駄な死ではなかったと讃えられるだけである。
 そんなもの、どうでもよかった。
 今の自分が願うのは、未来への生命。
 今のところ敵に見つかってないからこそ、かろうじて生き延びられているという状況に、感謝だけはしている。
 それでも、硬直状態が続いており、状況の悪化もなければ好転もありえてないのは否めなかった。 
(帰られへんかも―――――って、そんなこと認めまへん、言うといりますやろっ!) 
 自分の中で生まれる気弱を即座に突っ込み入れて、怒鳴り返す。
 そうでなければ、最悪の結果ばかりが脳裏をかすむ。
 はあ、と苦しげにもらされた吐息。
 同時に伝う血の苦味。
 外側に受けた傷だけでなく、内側もかなり傷ついているのがわかる。
 じくじくと痛む内の傷とズキズキと痛む外の傷。
 区別するのも面倒なのだが、それでも両方とも感じてしまうその痛みが心底むかつく。
 いっそ、痛みで意識を飛ばしてしまいたいのだが、そうなると自分の死期が早まるだけだ。そんなことは、ごめんである。
(わては、帰るんでっせ。あの人の元へ)
 約束したのだ―――――戻ってくると。
 約束は、破るためにするものではない。必ず守りとおすために、されるものだ。
 相手を信頼しているからこそ結ばれる誓い。
 何があろうとも、その約束を貫き通せる隙があるのならば、どれほどの困難が待ち受けよとも、叶えなければいけない。
 少なくても、自分が愛する人は、それを実行し、実現させている。
 ならば、自分もそれに準じなければいけない。
 決して相手に引けをとらないために。
 相手に見くびられないために。
 相手に相応しい人間になるために。
 約束は必ず守る。
「わては、生きて帰りますえ。あんさんのところへ―――きっと」
 だから、今は生きる。
 大切なのはそのことで、アラシヤマは、状況を十分判断してから立ち上がった。
 戦場は、まだ続いていて、巻き起こる砂煙でかすむ大地の中を、確実に一歩ずつ進む。
 血を大量に流れたせいで、かすむ視界の中で、必死に大地を踏みしめる。
「きっと…………きっと、わては…………あんさんのところへ」
 ――――戻るから。

 願いは空へ。
 思いは風に。
 身体は前に。

 全ての力を振り絞り。
 かすむ未来を確かに掴んで。
 望む先はあの人の元。 



 ――――だって、待ってくれてますやろ?

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