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 先程まで、古参の幹部への現状報告を中心とした長い会議が行われ、今やっとそれが終わったばかりであった。
 彼らは、我先にとシンタローの方にやってきて挨拶を済ますと、気が済んだのか、お互い懐かしげに話し合いながら部屋を退出したり、既知の相手を見つけその場に留まり世間話に興じたりしていた。その中、シンタローは机に片腕で頬杖をつき、
 「ッたく、何で俺が、長々とジジイどもの相手をしなきゃなんねェんだ?報告だけだったら、別にオマエだけでもいいんじゃねーの?」
 と、隣で書類を片付けているアラシヤマに言った。どうやら、久々に子ども扱いされたことに対して不貞腐れているようであった。
 「―――あの爺さん連中は、同期の桜にもどすけど、何より一番あんさんに会いとうて、出席してはるんでっしゃろ。まァ、老い先短い連中ですし、たまにはええんちゃいますのん?ちなみにわては、爺さん連中に全く人気がありまへんわ(というか、あんさんの傍に居るというだけで、ライバル視されてますしナ。全く、いつまで経っても元気な連中どすわ・・・)」
 シンタローは、彼らが自分や仲間達にこの機会を利用して会えるのを楽しみにしているということを分かりつつも、退屈な会議が長々と続く事が納得がいかないのか、まだ拗ねている様子であった。
 アラシヤマは、こちらを見ないシンタローの背に、声を掛けた。
 「シンタローはん、ずっと此処に居ってもしょうがないですし、そろそろ行きまへん?最近ちょっと暖こうなってきましたし、公園の中を通って戻ってみまへんか?」
 シンタローは、少し考え、
 「別に、いいゼ」
 と言って立ち上がった。
 
 建物の外に出、ガンマ団内の公園の入り口に差しかかった。時刻は既に黄昏時で、空は菫色に染まっていた。やがて、空の色は濃い藍色へと移り、空には何時の間にか白い三日月が懸かっていた。
 アラシヤマとシンタローは無言で並んで歩いていたが、不意に、強い風が吹き、2人は思わず目を瞑り、足を止めた。風はシンタローの長い髪を乱した。
 風が通り過ぎた後、目を開け、シンタローが忌々しそうに
 「何なんだヨ!?今の風!!」
 そう言うと、アラシヤマは、
 「東風でっしゃろか」
 と答えた。
 シンタローが数歩、歩き出すと、アラシヤマは、
 「ちょっと、待っておくんなはれ」
 と言って後ろからシンタローの腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。
 「―――眼魔、」
 「いや、ちゃいますって!さっきの風のせいか花びらが髪の毛に付いてたんどす!わてはただそれをとってあげようと思っただけどすえ~!?」
 シンタローを離さないまま、アラシヤマは後ろから、
 「これが証拠どす。どうやら梅の花みたいどすな」
 と言って白い小さな花弁を差し出した。
 シンタローは不審気な様子であったが、
 「―――とっとと取れヨ!・・・妙なことしやがったら、殺す」
 と嫌そうに言った。
 「わて、そないに信用ありまへんの~・・・」
 アラシヤマは、黙々とシンタローの髪に付いた花びらを取っていったが、最後の一枚を取り終えると、両腕で彼を抱きしめた。シンタローは、勿論振り払おうとしたが、アラシヤマが腕に力を込め、真剣な声で、
 「あと、ほんの少しでええんどす。お願いですから、もうちょっとだけ、このままで許してください」
 と言ったので、逃げるのをやめた。
 「―――シンタローはん、わて、毎日どんどん、あんさんのことが好きになります。それは、わてには予測もコントロールできへんことなんで、わては、怖うおます」
 そう言ったきり、アラシヤマは黙ってしまった。
 暫く時が経つと、シンタローは不意に、自分を抱きしめているアラシヤマが見知らぬ男であるような気がして不安になった。
 シンタローが身動ぎをすると、今度は簡単に腕は外れた。シンタローは、アラシヤマの方に向き直ったが、辺りは既に暗く周囲には街灯も無かったので、至近距離ではあったが表情は、分からなかった。
 「アラシヤマ?」
 シンタローがそう呼ぶと、不意に引き寄せられ、キスをされた。
 シンタローが呆然としていると、
 「シンタローはん。・・・やっぱりあんさん、めちゃくちゃ可愛いおす~vvvも、もう一回キスしてもええですやろか??」
 そう言ってアラシヤマが再びキスをしようとしたので、シンタローは、
 「眼魔砲ッツ!」
 と、ものすごく至近距離から、手加減せずに眼魔砲を撃った。アラシヤマは、芝生の方に吹き飛ばされたが、シンタローは振り返りもせずに一人帰って行った。
 芝生に取り残されたアラシヤマは、
 「アイタタた。今の眼魔砲、全く手加減なしどしたわ。シンタローはんは、照れ屋さんどすなぁ・・・」
 そう言って、芝生の上にゴロリと仰向けに寝転がった。
 細い月はいつしか中天に昇っており、何処からか、梅の香が流れてきた。









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