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作・渡井




晴天・好日




吹き抜ける風は気持ちいいが、日差しはじりじりと肌を焼く。

よく晴れたパプワ島で、リキッドは洗濯物を干していた。翻る白が目に眩しい。
「リキッド、今日のおやつはケーキがいい」
先ほどまで家の中でチャッピーと踊っていたパプワが、堂々と胸を張って宣言した。
「ケーキ? だけど卵がないぜ」
「取って来ればいいだろう」
「簡単に言うのねお坊ちゃま。じゃあパプワが取って来てくれよ」
「ノン。紫外線は肌に悪い」
「まあっ、この子ったらコタローの影響?」
言いながら少し可笑しかった。

パプワは最強のちみっ子だ。それはただ強いというだけではない。
この島は人を変える。かつて自分もそうだったように。そしてパプワ島の力とはすなわち、パプワの力なのだと思う。
コタローもこの島に来て、パプワの影響でずいぶんと変わった。あの女王様っ子は今も友人のために一生懸命に違いない。


だけど、パプワだってコタローの影響をちゃんと受けてるんだ。
コタローの言い草を真似られて、結局は自分が卵を取りにいく羽目になったけれど、何となく嬉しい気がした。

「っと、危ねえ」
険しい崖を登っている途中で手が滑りかけ、慌てて体勢を立て直す。
この場合の「危ない」とは滑落によって怪我をする危険性ではない。滑落によって服を破いた、あるいは汚したためにお姑に怒られる危険性を指す。
でもなあ、とリキッドは緩みそうになる口元を引き締めた。眼魔砲や悪口雑言や猫シャーでリキッドを叩きのめすあの俺様お姑だって、パプワに多大な影響を受けているし、与えてもいる。それはもう、弟以上に。

シンタローがパプワとチャッピーに向ける笑顔には、傍にいるだけのリキッドですら見とれてしまう。他人が入り込めないものを感じて、寂しくないと言ったら嘘になるけれど、安心する。

パプワはこの島の主で、シンタローはガンマ団の総帥。
頂点に立つがゆえに時に誰より孤独な存在が、かけがえのない絆を見つけられたなら、それはやっぱり幸せなことではないだろうか。


パプワ島ヒエラルキーの最底辺あたりに位置する自分も、いつかパプワやチャッピーやシンタローやコタローやナマモノや特戦部隊に、大好きな人たちに影響を与えられるくらいの存在になれるように。
リキッドは腕に力を込めて頂上へと這い上がった。
パプワ島の食材集めはナマモノたちとの真剣勝負。一瞬たりとも気は抜けない。軽く両頬を叩いて気合を入れる。
こんな何気ない日常だって、過去の自分が望んだ大切な未来だ。それを、未来の自分が誇れる大切な過去に出来るように。
もしかしたら全力片想い中のお姑が、ケーキ作り手伝ってくれるかもしれないし。なんて、少し虫のいい考えが頭をちらりとよぎるのもご愛嬌。


吹き抜ける風は気持ちいいが、日差しはじりじりと肌を焼く。
パプワ島は今日もいい天気。


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リッちゃんが思うパプワ・チャッピーとシンタロー・コタロー兄弟。
「全力片想い中の」は、下手するとリキシンよりリキ→シンが好きな渡井の趣味です。

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