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作・斯波


君が寝ている
どんな夢を見てるのかな
そこに僕は
いるんだろうか?





夏空の向こう側





さっきまで笑ってたのに、もう寝ちゃってる。
そういえばもつれる舌でねむねむ大王が来たとか訳の分からないことを口走ってた。
あー来てるそこまで来てるよ俺もう勝てねーよ、と言ったと思ったら糸が切れたみたいにことりと眠りに落ちてしまった人の頬っぺたを、ちょいとつついてやった。
「ん―――・・・」
クムクム・・と言いながら寝返りを打ってこっちを向いた顔の可愛さに、地団太を踏んだ。

太陽が程よく照っていて、時折風が吹きぬける。
マッドなナマモノ達も今日は姿を見せない。
俺とシンタローさんだけの午後。




どんなに悪い奴だって、寝てる顔は憎めない。
ましてそれが大好きで大好きで仕方が無い人の寝顔だったら尚更の事。
何の夢を見てるんだろう。
かすかに緩んだ唇にそっと人差し指の先で触れてみる。
「大好きっすよ、シンタローさん。―――」
(小さな小さな声だったのに)

まるでそれが聞こえたかのように、眠ったままシンタローさんはにこりと笑った。




心地良い風がシンタローさんの長い黒髪を吹き乱す。
顔にかかるのを払いのけようとした手が、きゅっと掴まれた。
「え・・・?」
起きたんすか、と声をかけたけれどシンタローさんは目を覚ました訳ではなかった。
子供みたいに俺の手を握ったまま、すやすやと寝息を立てている。
(わざとやってんじゃねーのこの人!!)

深く息を吸って青い空を見上げる。
(好きだと言ったらこの人はさっきみたいに笑ってくれるだろうか)

―――夢の中でならもう、百回も言った言葉。

夏空の向こう側で、入道雲が俺の弱気を笑っていた。




眼を覚まして仰天した。
―――俺、なんでこいつの手なんか握ってんだ!!




リキッドは俺の隣で規則正しい寝息をたてている。
(てゆーか・・えーと・・・)
食料調達に出て、ここに腰を下ろしたまでは覚えている。
下らない話をしているうちに眠くなって寝転んだっけ。
そっから先は覚えてねェ。

でも、何だかとても楽しい夢を見ていたような気がする。
俺がいてパプワがいて、チャッピーがいて、コタローもいて。

そしてこいつが笑ってた。

リキッドを見ると俺はいつも胸がきりきり痛くなる。
苦しいような、切ないような、それでいて暖かい気持ちになる。
(シンタローさん)

ああ―――思い出した。
夢の中で、俺はリキッドに好きだと言ったんだ。




金色と黒の髪が、さわさわと風に揺れる。俺は握ったままだった手をそっとはずした。
寝ているリキッドは、普段よりもずっと大人びて見える。普段はくるくると変わる表情が動いていないせいなのか、それとも見てる俺の心の問題なのか。
夢の中身は曖昧だけど、リキッドがくれた答えだけははっきり覚えている。
震えてる俺の唇をそっとなぞって、リキッドは言ってくれた。
大好きっすよ、シンタローさん、と。

「ん・・・」
(カーテンを開けば光が射しこんでくるように)
リキッドが眼を開けた瞬間、俺の世界が音を立てて動き出した。
あの青い空をそのまま写し取ったような澄んだ瞳が俺を捉える。
「・・シンタローさん・・・?」




夢の中で言ったように、うまく伝えられるだろうか。
夢の中で見たように、こいつは優しく笑ってくれるだろうか。
「・・・リキッド」
夏空と太陽が俺の背中を後押しする。

「俺、―――」

嵐のような恋が、始まろうとしていた。


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ねむねむ大王は強大ですね。渡井もよく負けます。

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