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ms
「シ~ンちゃ~ん」

脳天気な声が背後から襲ってくる。
オレはくるうり…と振り返り様に溜めナシ眼魔砲をぶちかましてやった。

「眼魔砲」
ドゴーン!
破壊音と共に煙りが立ち上る。

「うぜーよ親父」
「イキナリなんて酷いよシンちゃん…」

変態親父はとっさにかわしたのか、無傷でヨヨヨ…と泣き崩れている。

ちっ。
避けやがったか。

「せっかくパパがシンちゃんの為にお昼ご飯作って持ってきたのに、執務室前の廊下で眼魔砲はヤメてよ。ご飯が埃まみれになっちゃうでしょ~?」

ぷんすか。と膨れながら言う姿がハリキリむかつく…!!

「あぁ~ん?んなの知ったコトか。ちなみに食い物死守してなきゃぶっとばす」

そう言えばハラ減ったな~、と思いながらも横暴に問うてみれば、親父はニコニコしながらウィンクして見せた。

だからソレがムカつくんだっての…!

「まーかせて♪バッチリ無事だよ♪…ところでシンちゃん、何処行くの?」
「あ?雑務ばっかでイライラしてきたから気分転換に屋上庭園で休憩」
「それは良いね♪じゃあそこでお昼にしようか」

今日は天気もイイしね♪

親父はにっこり笑うとバスケットを抱えなおし、俺を促した。
ガンマ団本部の屋上庭園は一族しか入れない、豪華な作りである。
四季折りおりの花々がいつも咲いているのはともかく、滝や川や池があり森林まである。敷地も広い為小さい頃はよく迷子になったものだった。もちろんセキュリティも完備しているので程なく見つけてもらっていたが。

よく此処でグンマと遊んだ。
時には親父と散歩したりお昼寝したり、獅子舞と追いかけっこしたり美貌のおじ様とお茶したり。
太陽の光がキラキラと降り注ぐ中、自分は思いきり此処で遊び癒された。

懐かしさに浸りながらシンタローは芝生に寝転ぶ。
そのすぐ隣では親父がかいがいしく昼食の準備中だ。
バスケットの中からサンドイッチとスープとチキンを取り出し、ポットに熱湯を注ぎ紅茶を煎れる。
すべてを簡易シートに並べ終えると機嫌良く声をかけた。

「シンちゃん用意できたよ~♪今日のサンドはトマトツナ&バジルとフィッシュフライ&野菜で、スープはコンソメさ♪チキンはレモンハーブだよ~♪」
「紅茶は?」
「フォートナム&メイソンのダージリンをストレートで。食後はシンちゃんの好きなフォションのシトロネルティ(草原の中のレモンの香り)だよ」
「…今日はウィッタードのホワイトローズが良い…」

完璧に自分好みのものを用意されている照れと悔しさから、ちょっと意地悪してみる。
でも親父は更ににっこり微笑んだ。

「まかせて♪ちゃんとあるよ~♪…でも…サービスの好きな紅茶のホワイトローズ(花とハチミツの香りの非常にマイルドな紅茶)だね…」
「ふん。今日はそんな気分なんだよ。」
「はいはい…。それじゃ、冷めないうちにお食べ♪」

煌々と輝く日の光りを浴びながら、昼食会は始まった。

美味しい料理に舌鼓をうちながら、お互いにたわいもない事をしゃべる。
こんなにゆっくりと過ごすのは久しぶりだった。

「シンちゃん、最近お仕事詰めすぎなんじゃないの?程々にしないと寝込んじゃうよ?」
「うっせーなぁ。そんな柔じゃねーんだから大丈夫だっつーの。」
ちょっとむっとしながらハーブチキンに噛り付いた。

たしかにここ最近、書類整理が終わらなくて睡眠時間も削りがちだ。
一日2~3時間の睡眠が取れれば良い方なのは、たしかにあまり良くないのかもしれない。

でも。
早く完璧な総帥になりたかった。

親父の心配はくすぐったいけれども、追い付きたくて必死なシンタローはムカムカする。

焦っているのかもしれない。
しかも、ソレを見越しているらしい親父にイラつく。

ったく。人の気も知らねーで。

「いーんだよ。昼寝を一時間してっからよ」
「たしかに…昼寝の一時間は夜の睡眠の2~3時間に匹敵しているけれどもね」
「あんだよ」
「パパはシンちゃんと触れ合えなくて寂しいよっ!」
がばりと抱き着こうとしてきたので、空かさずハラに一発入れる。
今度はしっかりクリティカルヒット♪

ったく!調子にのんなっつーの!
「ウザイッッッ!」
「シンちゃん酷いよぉ~!」

いつもの会話にいつものやりとり。
でも。
最近スキンシップがなくて落ち着かないのも確かだから。

食後のホワイトローズを飲みながら、シンタローは呟いた。


「おい、バカ親父」
「な~に♪シンちゃん♪」
痛むハラを摩りながら、それでも健気に笑顔で対応する姿に感心しつつも素っ気ない態度で告げる。

「ちょっとそこに胡座をかけ」
「え。スーツが皺になっちゃうよ~」
「うっさい。イイからおとなしくヤレ」
「もー、しょうがないなぁ~」

ぶつくさと文句を言いながらも、結局はいつも俺の望みどうりにしてきたバカ親父は、どれだけ息子を甘やかしているのかわかっているのだろうか。

絶え間無く注がれる愛情と偏った過保護。それに依存しながらも抵抗するあまのじゃくな自分。
過ぎる程愛されている自覚があるから、いつでも傍若無人な態度をとれるのだ。

そんな自分を充分わかっていながらも、もはや変えようとすら思わない。

だって親父が悪いのだ。
こんな自分に育てたのだから。

ちゃんと最後まで責任もてよ、親父。


「シンちゃんコレで良い?」
親父がにっこりと笑えば、シンタローは胡座をかいた足の上にゴロリと寝込んだ頭をのせた。

「シ、シンちゃん??」
「うっさい。一時間したら起こせよ」

ちょっと慌ててる親父にしてやったりと思いながら、深く息を吸いこむ。


あぁ、懐かしくも安心する匂いがする。
幼い頃から嗅ぎなれたコロンと温もりに包まれながら、シンタローは穏やかな眠りへと落ちていく。

マジックはそんな無防備な姿の、息子の長い髪の毛を優しく撫でながら、ゆったりと微笑んだ。


なんと愛しい子か。
素っ気ない態度と言葉で私を困らせて楽しみながら、こっそりとひそやかに甘えてくる。

まるで気位の高い猫のよう。

いつまでも私の腕の中で囲っていたいのに、すぐにするりと抜け出てはこちらをチラリと伺う。
そして我が儘な程に、自分が愛されていないとダメだと無言で主張する。


マジックはくすりと笑うと、黒髪をひと房手に取り口づけた。

「愛しているよ」

そんな風にお前を育てたのは私なんだもの。
ちゃんと最後まで面倒をみるよ。


穏やかな風が吹き抜ける中、二人はしばしの温もりを分け合った。





暫くして、寒さに身を震わせながらシンタローが起きてみればすでに陽も落ちた夕方で、つられて寝込んでしまっていたマジックを蹴り起こし一悶着あったのを追記しておこう。

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