「シンちゃんてさ、おとー様の事嫌い?」
グンマの無邪気な質問に対し、シンタローは至って爽やかに
「大ッ嫌いだ。」
と答えた。
「ふーん。そんなにおとー様に纏わり疲れるの、嫌?」
「嫌ですね。ついでに言うと今のこの状況もオレは大変不満だ。
何なんだ?何がしたいんだ?」
「シンちゃん。良いものあげようか。」
コトン、とテーブルの上に小さな小瓶が置かれる。
中には水のような透明な液体が入っていた。
奇妙なそれにシンタローは訝しげに首をひねる。
コレは?と問えばグンマは可愛らしい笑顔で魔法の薬だよ、と言った。
「魔法の薬?」
「高松にお願いして作ってもらったんだ!
おとー様はシンちゃん好きだけど、シンちゃんはおとー様嫌いでしょう?」
「あぁ。」
「そしてその状況にウンザリしている。」
「あぁ。」
「でもおとー様はシンちゃんにメロメロだから、シンちゃんに冷たくされる度に泣いちゃう。」
「オマエの前でも泣いてんのかいアイツは。」
「だからさー、おとー様がシンちゃん嫌いになっちゃえば良いと思わない?」
「…はァ?!」
一気にシンタローの声のトーンが上がる。
グンマはそれを気にもしない様子で両腕を組み、ウンウン、としきりに頷いていた。
「もっと早い内からこうすれば良かったんだよ。
そしたらシンちゃんも大嫌いなおとー様から解放されるし
おとー様もシンちゃんが大嫌いだから、例えシンちゃんに嫌われてもちっとも悲しくなんかならない。
一石二鳥だと思わない?僕ってば天才!」
「・・・・。」
「シンちゃん?」
「あー…あぁ、そうだな。名案だな…」
晴れやかなグンマの表情とは逆に、シンタローの表情は暗雲に満ちていた。
「じゃあ、これからおとー様来るから紅茶の支度をするね。
おとー様のカップの中にこの薬を混ぜるから、シンちゃん傍で見てると良いよ。」
暫くするとグンマの手筈通りにマジックが訪れる。
マジックは自分の視界にシンタローが入るなり、それは嬉しそうに
シンちゃんだー!と彼に近寄った。
「シンちゃんもグンちゃんのお茶会に呼ばれたの?!
嬉しいなー!嬉しいなー!!」
幸せそうなマジックの笑顔が更にシンタローの顔を曇らせる。
マジックは自分や身内には甘いが他人にとても厳しい面も持っていて
あの、感情の篭らない冷たい視線が
グンマの用意した薬を飲んだ後、自分にも向けられるのかと思うと
途端に胸が苦しくなる。
そんなのは嫌だと、気が付けば心の中はそればかりだった。
「おとー様~!はい、ミルクティーですよ~」
「ありがとー!グンちゃん!」
グンマから渡されたカップを受け取り、マジックがそれに口をつけようとした瞬間、
シンタローは乱暴にテーブルを叩き「やめろ!!」と大きな声で怒鳴った。
「それを飲んだら死んでやるッツ!!!」
シンタローの悲痛な叫びにマジックが目を丸くする。
‘死’と言う言葉に動揺を隠せない。
「え、死ぬって、シ、シンちゃんが?」
「飲むな!」
「の!?いや飲まないけど…シンちゃんこれ欲しいの?」
そんなに怖い事を言って脅さなくてもあげるよ?とマジックは大人しくシンタローに言われるまま
カップを下に置いた。
きっと今、自分は相当酷い顔をしているに違いない。
グンマの視線が痛くて顔を上げることができずにシンタローが俯いていると
グンマはシンちゃん、と呼んで一言。
「アレ、実はただの水だから安心してね。」
シンタローの顔がカァ――――――ッと赤く染まる。
(ホントに死にたい…)
そう思わずにはいられなかった。
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