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士官学校時代からとても気になっていて。
彼の黒い艶のある髪だとか、真っ直ぐな気性とか、総てが自分には輝いて見えた。
でも、彼は自分の所属する団の総帥であるマジックの息子で。
一生報われない恋心を軋む胸に抱いているしかなく。
好きと伝える事すら許されないこの気持ち。
彼が唯一自分に興味を持ってくれたのは、日本人にあるまじき金色の髪と青い瞳。
その色、いいよな。と、言ってくれたから、特に好きでもなかったこの色が自慢になって。
いつしか伸ばすようになっていた。
憧れの人。
彼に話しかけてもらえた、会話してくれた、それだけで今日が素晴らしく意味のあるものになっていく。
なのに。
突然届いた訃報に、ミヤギは愕然とするのだった。
“シンタローが秘石を持って逃げ出した”
その情報に耳を疑った。
シンタローは頭のいい奴で。
どうしてそんな馬鹿な真似をしたのだろうと、ミヤギは普段殆ど使われない頭を使って考えた。
例え総帥の息子であろうとも、総帥の物を盗んだとなれば罰を受ける。
それはシンタローも解っているはずなのに。
しかし、悲しいかな、自分が忠誠を誓ったのはシンタローではなくマジック。
団がシンタローを連れ戻し処分を決定すると言われればそれに従わなければならない。
総帥が右と言ったら右、左と言ったら左。
団とはそうゆうものであり、ミヤギも又、ガンマ団の士官学校でそう教わった。
裏切り者には死を。
これは教訓。
世界一の殺し屋集団なのだ。
その位は当たり前だろう。
「そっちにシンタローは居ただぁらかミヤギ君!」
「いや、こっちには居ねぇべ!」
警報機がやけに煩くなり響く。
団員達が血眼になって探したにも関わらず逃げおおせたシンタローに、ミヤギは素直に流石だと関心する。
程なくして、シンタローと士官学校時代の同期がマジックに呼び出された。
集まったのは100名。
数人かけているのは戦いで殉職した者がいるからだ。
「君達に集まって貰ったのは他でもない。シンタローを連れ戻して来られる人選を探している。君達はシンタローと同期だ。シンタローのパターンを他の者達よりは知っているだろう。勿論連れ帰って来たあかつきにはそれ相当のご褒美をあげるよ。誰か行ける者は居るかい?」
“褒美”という甘美な響きにざわついた。
行くか行かないか。迷う所でもある。

行って運良くシンタローを連れ戻して来られれば英雄だろう。
しかし、その可能性は限りなく低い。
なんていったって、相手はガンマ団No.1の殺し屋なのだ。
失敗すれば二度とガンマ団には戻れないだろう。
運が悪ければ殺される危険性もある。
しかし。
皆が悩んでいる間、ミヤギはスッと手を上げた。
褒美が欲しいとか、そんな理由じゃない。
ただ単にシンタローに真相を聞きたかったから。
あの頭はいいが、真っ直ぐで、自分の意思を貫く彼が何故こんな騒動を起こしたのか。
大体の予想はついている。
多分、弟の事だろう。
でも、それだけだろうか?
シンタローはマジックを恐れながらも愛している。
それは家族だけが持つ無償の愛で。
だからこそシンタローはマジックから離れる事ができなかった。
例え弟を監禁する父親であっても。
「ミヤギ、だったね。解った。第一の刺客は君に任せよう。」
マジックは少しだけ笑いを讃え、そのまま背を向け、そのまま去っていった。
マジックの姿が見えなくなると、隣に居たトットリがミヤギの腕を掴んだ。
「どうしたんだぁらか、ミヤギ君ッツ!シンタローに僕達が敵う訳ないっちゃ!」
「そっだらこと解んねーべ!オラは行くっつったら行く!」
「褒美だって、命あっての物種だっちゃよ。」
「褒美とかそんなん関係ねぇ!オラはスンタローに勝ってNo.1の座を取りたいだけだべ!」
嘘だった。
本当はシンタローに会いたい、ただそれだけ。
いつも見てしまう。
居ないはずの黒髪を。
あの声を。
ガンマ団を取るかシンタローを取るか、まだ答えは見つからないが、それでもシンタローに会いたい気持ちは本物で。
心配するトットリには申し訳ないが、ミヤギの決心は変わりなく。
「僕等離れててもベストフレンドだっちゃよ。」
「勿論だべ、トットリ。」
ガッシリと熱い友情の言葉と握手を交わしたのだった。
出発は今すぐらしく、ミヤギは簡単に荷物を纏めるとまるたに乗ってシンタローの元へと出発した。










パプワ島についてからいろいろあった。
しゃべる生物に無敵のちみっ子。
そしてそのちみっ子にめちゃめちゃこき使われているが、見た事もない位生き生きとしたシンタロー。
全力で戦ったがあっさり負けて植物にされた事もあった。
次々と新しい刺客が現れたりもした。

それでもシンタローは全戦全勝。
No.1の名は伊達ではなかった。
シンタローにリベンジする為、トットリとミヤギはよくコンビを組んであれやこれやと考える。
いつも失敗するのだが、それでもやるのだ。
「ミヤギ君、僕そろそろバイトの時間だっちゃ。」
「こげな夜遅くにか?」
「遅くって…そんなに遅くないっちゃよ。」
「それもそうだべな。」
パプワ島には時計がない。
だがら日が沈むと、とっぷりと暗くなったように思える。
トットリを送り出した後、ミヤギは何もする事がなく、横にごろんと寝転がった。
星が近くに見える。
手を伸ばせばそこにある気がした。
「何してんだ、オメー。」
気を抜いていたのだろう。
ミヤギは声をかけられて初めてシンタローの存在を知った。
食料を取りに来たのか、大きな、蔓で編んだ籠をしょっている。
「ス、スンタロー!!」
いきなり目の前に現れた人物に、思わず大声を出した。
そして、素早く起き上がる。
「な、なすてオメーがここに居るべ!!」
そう言って、生き字引の筆の柄に手をかける。
戦闘体制だ。
しかし、当のシンタローは特に気にした様子もなく、さっさとミヤギの場所から離れて行く。
どうやら、ただ通り道だっただけらしい。
オラ、めちゃくちゃ意識しすぎだべ……!
むしろ、シンタローが俺様過ぎるだけなのだが、惚れた弱みというか、なんというか。
それだけでなく、ミヤギの頭が弱いというか……。
「無視すんでねーべ!スンタローッツ!!」
「アアン?何だヨ。」
「クッ……自分から質問投げかけてきたくせにこの仕打ちはねーべ……」
悔しがるミヤギにシンタローはたいした興味もないとばかりにちらっと一瞥してさっさと行こうとした。
なので、慌ててシンタローの腕を掴む。
「き、今日こそオメを倒すてガンマ団No.1の座を頂くべ!!」
シンタローの腕を掴んだまま、生き字引の筆を抜こうとした時。
「お前に俺を倒せる訳ねーだろ。……だってお前、俺に惚れてるもんナ。」
…………
…………
…………
一瞬時が止まったと思った。
サワサワと風が木々を揺らす音すら聞こえない。
「……な、なすて……」
声が裏返ってしまう。
隠せてた。隠し通せてた。
確かにそう思ったのに。
どうしてこの男には解ってしまうのだろう。
考えを読まれてしまうのだろう。

「えッ、マジで?」
「は?」
ミヤギの慌てぶりを見たシンタローは内心慌てた。
冗談で言った言葉。
ミヤギとは士官学校時代からの知り合いであった。
昔からシンタローに対して尊敬しているような所があって。
シンタローと同じ学年の人間は三つのパターンがあった。
一つはガンマ団総帥の息子である自分に気に入られようと媚びを売る人間。
もう一つは、そんなシンタローを疎ましく思う人間。
そして、最後の一人は、シンタローをシンタローとして見て尊敬する人間。
ミヤギはこの三番目のタイプの人間であった。
だが、まさか惚れてるなんて。
「騙したんだべか!スンタロー!!」
「人聞きの悪い言い方すんなよナ。オメーが勝手にベラベラ喋ったんじゃねーか!」
「オラ、ベラベラなんて喋ってねーべ!」
「喋ったからこーなったンじゃねーかッツ!」
「それはスンタローが知ってるよーな口ぶりだったからだべ!」
「だからー……やめよう。水掛け論だ。」
ふぅ、と一息ついて、シンタローはその場に腰を落とした。
背負っていた籠を横に置いてミヤギを見上げる恰好になる。
立ち尽くしていたミヤギだったが、自分だけ立っているのも、と思い、地面に座った。
「ま、一回位なら抱かせてやってもいいぜ。」
「は?」
ミヤギが座ったと同時に言われ、これでもかという位、間抜けな顔をした。
何て言った?
パチクリと目をしばたかせた。
「俺、お前嫌いじゃねーし、お前の髪と目の色、結構好きだし。」
「え、と……」
これはスンタローも好き、とかいう美味しい展開なんだべか。
ドキドキしながらシンタローを見る。
動悸がしてるのだから当然顔も熱くなってきた。
静まれ~!静まるベ!オラの心臓ッツ!!
ゴクリと生唾を飲み込む。
そんな雰囲気のせいか、はたまた動悸のせいか、いつもよりシンタローが色っぽく見えた。
「だけど付き合うとか、そーゆーのはナシな。」
え。
シンタローの言葉にミヤギは固まった。
それは俗に言う体だけの関係ってやつだべか?
「………馬鹿にすんでねーべスンタロー。そんなの要らない。オメも、もっと自分の体、大切にすろ!」
そうだ、そんな心が伴っていない関係なんてなりたくない。
両思いかも、なんて浮かれていた自分が恥ずかしい。
「恋人なんてのになっちまったらその時点から別れのカウントダウンだぜ。俺はお前とはそうなりたくない。」

真面目な顔つきで言われた。
「そ、そんな事言われても騙されねーべ。心が大事なんだ!」
「俺はきっと誰とも付き合えない。オメーも解ってンだろ?秘石取り戻して、コタローを外の世界に出せたとしても、結局俺はマジックに掴まっちまう。そうゆう運命なんだよ。」
そう吐き捨てるように言うシンタロー。
オラと一緒に逃げよう。コタロー様の事は忘れちまえ!
そう言いたいのを喉元まで出かかって言うのを止めた。
言える訳がない。
だって、そうだろう?
コタローの為に危険を犯して、父であり、総帥であるマジックから逃げ出した。
そして。
ミヤギは思い出す。
学生時代、コタローを監禁された時のシンタローを。
あんなに明るくて元気だったシンタローが人が変わったようにニコリともしなくなった。
その位弟が大切なのだ。
自分はどうなってもいいから弟を助けたいのだろう。
ああ、そうか。
それが秘石を持ち出した理由か。
答えはこんなに簡単だったのだ。
「オメーだってガンマ団の人間である以上、総帥であるマジックには逆らえねーだろ。」
その腕を握って逃げていける程自分は強くもないし、弟を見捨てろ、なんて言える権利もない。
体だけの関係はシンタローにとっての最大限の愛情の証なのだと気付いた。
やはりシンタローは頭がいい。
常に自分の一歩先を見ている。
「で、すンの?しねーの?言っとくが、したからってイイ事なんて一つもねーぜ?」
少し間が開いてから、ミヤギの形の良い唇が動く。

「する。」










「ん、ふ、ぁッ!」
控え目な鼻にかかった声が辺りに漏れた。
既に暗くなっているので、ナマモノも家に帰っているらしく、昼間の喧騒が嘘のように静まりかえっていた。
街頭なんてものもないから、明かりは空に浮かぶ三日月だけ。
その三日月も雲に隠れようものなら辺りは真っ暗になってしまう。
体だけの関係をあれ程拒んでいたミヤギではあったが、それがシンタローの最大の譲歩だと気付いたお陰か熱くシンタローを抱く。
南国の島だから開放的になっているのも加わるが、真ん中の芯の部分は憧れの人を抱いている高揚感。
今オラが触ってる髪も、顔も、胸も、四肢も全てスンタローのモンだ。
そう考えると、益々興奮する。
「あ、あふ、ミ、ミヤギ……ッツ!」
「スンタロー……」
確かめるようにシンタローの顔を指で撫でる。

ミヤギの金色の髪がサラリとシンタローの汗ばんだ腹に落ちる。
シンタローの黒髪も辺りに散らばるように流れた。
「あ、あ、」
ツンと尖った乳首に手をかける。
一差し指と親指で摘んでやればさらに固くなって指を押し返す。
体を揺らし、シンタローの中へ既に入っている己の雄は内側から締まる肉に絡められ正直直ぐに達してしまいそうだった。
下と上。
その両方を犯されて、シンタローも気が狂いそうな程感じでいて。
ミヤギの事は昔から目についていた。
その金色の髪と青い目が好きだった。
そして何より、その屈託のない笑顔。
秘石眼とは違う温かい青い瞳。
隠す事のないお国言葉。
彼が自分を好きだという事は昔から知っていたが、恋愛対象として見ている事は知らなかった。
だが、そんなミヤギに今自分は抱かれている。
「……大丈夫だべか?スンタロー……」
白い肌だから頬が赤いのがよく解る。
「大丈夫に……ッツき、決まってんだろ……?」
そう言ってシンタローはミヤギを抱きしめた。
鍛え抜かれた肌がミヤギの布一枚ごしに密着する。
熱い吐息がミヤギの耳にかかり、益々興奮した。
そして。
「ミヤギッツ……もっと、もっと、激しく…ッツ!!忘れさせて……!!」
「……ッツ!!」
悲しくなった。
それはシンタローの気持ちがここにはないと勘違いした訳じゃない。
ダイレクトに気持ちが伝わったから。
この思い運命から逃れられないシンタロー。
一時でいいから全て忘れたいのだろう。
何も考えず、ただ子供のように全て忘れたいのだ。
あの頃に戻りたいのだ。
「ン、ふッツ!」
「いくぞ、スンタロー……。」
シンタローの足を思いきり開かせ、膝を肩の方まで折り曲げる。
流石に恥ずかしいのか、シンタローは己の手の甲で顔を隠した。
「オラが忘れさすてやるべ。」
今にも泣きそうなシンタローにそう投げかけ、ミヤギは自信をギリギリまで抜き取ると一気に貫いた。
「ああああああッツ!!」
声をあらわにシンタローが叫ぶ。
「んんッツ!!」
その瞬間、キュウウッ!と内壁が締まり、ミヤギは力を入れて堪えた。
シンタローの顔を伺うと、うっすらと涙で濡れている。
そのまま激しく揺さぶると、ガクガクと腰が揺れ、ビクビクと足が震えていた。
可愛いという思いと、可哀相という思いが交差する。

汗ばんでピッタリとくっついている黒髪の上からおでこにキスをした。
「ふ、う、」
そして、涙を舌で掬った後、唇にも。
「スンタロー、少し口さ開けるべ。」
情にまみれた熱い声で言うと、おずおずとだが、シンタローが口を開く。
そこにミヤギは舌を入れた。
「ん、ンンッツ……!ん、ふッツ!」
くちゅくちゅという水音が聴覚を刺激し、ぬめりとしたミヤギの舌が快感をより一層強いものにしていく。
トロンとした目がやけに官能的だった。
「スンタロー………」
唇を離すと、はっ、はっ、と息を吸うシンタロー。
溢れた唾液がシンタローの唇から流れ落ちた。
「あ、あ、ミヤギッツ!も、もぉやべぇ……ッツ!!俺、も、イッちゃ……!」
ヒクヒクとシンタローは体を痙攣させたかと思うと、ミヤギの服の端を強く握った。
「アッ、アッ、アアッ!いっちゃッツ―――!!」
「――ッツ!!」
ビクビクと体をわななかせ、シンタローは白濁の液体を思いきり吐いた。
その官能的な表情を見たミヤギも又、シンタローの中に己の精を吐き出したのであった。
事が終わり、肩で息をする二人。
荒い息遣いがやけに響いているな、と感じた。
トットリはまだ帰って来ない。
この有様を見せる訳にもいかなかったから良いのだが。
ほんの数分熱に浮かれた体を寄せ合っていた二人であったが、シンタローは直ぐに衣服を整え始めた。
それを止めたいミヤギであったが、止める術を彼は知らない。
恋焦がれていたシンタローを先程までこの腕で抱いていたのに。
一気に現実に戻される気分だった。
夢でも見ていたような気分になる。
唯一夢でないと理解出来る事があるとすれば、まだ覚めやらぬ熱と、中にまだ残る快感。
「忘れろとかは言わねぇ。この事は誰にも言うな、とも言わねぇ。」
見出した衣服を完璧に整え、腰の紐を縛りながらシンタローが呟いた。
シュ、と、布の擦れる音がした。
既に一つに縛った髪が暗闇より黒くて、振り向いた解きに綺麗に弧を描く。
「確かに俺はお前に抱かれてお前は俺を抱いた。でも、それ以上にはなれない。」
「解ってるべ。それを承知でオメを抱いたんだ。」
「だけど俺はお前を……」
最後の言葉は聞こえなかった。
言わなかっただけかもしれない。
ミヤギも衣服を整えた。
その間帰ろうとしたシンタローの後ろからミヤギの声が聞こえる。

「オラはオメが好きだ。」
「――ッツ!!」
ビクンとシンタローは肩を一瞬震わせた。
「サンキュ。」
消えそうな声でシンタローは走り出す。
ミヤギは止めなかったし、シンタローも振り向かなかった。
月明かりだけが二人を平等に照らす。

なんでこの道を選んでしまったんだろう。

二人の思いは交差するばかり。















終わり





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朝、太陽から音が出ているんじゃないかと思われる位の快晴。
サンサンと降り注ぐ日の光は流石南国といったところか。
そして、今日もパプワハウスは賑やかなのである。
「めーしめし!」
「わーうわう!」
パプワとチャッピーが箸を両手にトンテンカンと椀を叩く。
「こーらこらこら!お行儀悪いからやめなさい!」
黒い長い髪を一つに束ね、熱く煮えた味噌汁の鍋をぐるぐる掻き回していたシンタローがオタマを持ってパプワとチャッピーをたしなめる。
「チャッピー、今日はご飯どの位にするんだ?」
隣ではエプロンを見にまとったリキッドがしゃもじ片手にチャッピーに聞いている。
「わおーん!わんわん!」
「普通でいいらしいぞ。」
「わんわん!」
チャッピーの言葉はパプワにしか解らないので、パプワの解釈通りリキッドはチャッピーのお椀にご飯を持った。
白い飯から温かい湯気がほんのりうかぶ。
勿論パプワには大盛っていうかタワー盛り。
朝のパプワハウスは忙しい。
何たって大飯食らいがいるのだから。
作る量も数もハンパじゃない。
数についてはパプワハウスの主であるパプワいわく

「おかずの数は朝、昼、晩合わせて最低15品!」

という亭主関白宣言の名の元に。
「ほーら、出来たぞー。オイコラヤンキー!そんなにぎゅうぎゅう米を詰め込むんじゃねーヨ!うま味がくっついてせっかくの飯がまずくなるダローがッッ!」
「スイマセン、お姑さん…。」
シンタローに足で膝を蹴られ、目線を下にして諦めたように謝る。
きっと一生この人に頭上がらないんだろうな、とか考えたりして。
今日の朝食は、ご飯、味噌汁、焼き魚、海苔、キュウリと茄子の漬物、卵焼き。
デザートはブルーベリージャム入りのヨーグルトである。
「ホラ、できたぞ!ちゃんといただきますしてから喰うんだゾ!」
ででん!とちゃぶ台に和食を置かれて、パプワとチャッピーは、ワーイ!とバンザイをしてから手を合わせてきちんといただきますといってから箸を動かす。
作り終わったシンタローは腰を下ろし、早食いのパプワのご飯や味噌汁のお代わりを継ぎ足す。
一方のリキッドはお茶を入れていた。
そんな戦場のような和やかのような雰囲気のパプワハウスにノックの音。
「誰だろ。はーい!」
リキッドはお茶を接ぐのを止め、パタパタと玄関へ小走りで向かう。
ドアを開ければ見慣れたメンツ。
「トシさん!」
「よぉ、リキッド。」
片手を上げて加えタバコをして現れたのはお隣りさんのトシゾーこと土方トシゾー。
「どうしたんですか?」
「いや、な、裟婆斗の森近くにスゲェいっぱいココナッツがなっててよぉ。一緒に取りに行かねぇかな、と思ってよ。」
回りくでぇ奴。
シンタローは心の中でそう思った。
おそらくはリキッドをデートに誘いたいんだろう。
直球勝負で当たって砕けるより、リキッドの主婦根性をくすぐるやり方にしたんだろう。
目にみえているが、この馬鹿ヤンキーは鈍くさそうだからきっと理解していない。
おそらく頭ン中じゃ“やったー!今日の昼はココナッツのデザートができる!”としか考えてねーンだろーナ。
「本当ですか!?でも、そんなに沢山取れるんじゃ…あ!シンタローさん!シンタローさんも一緒に来て下さいよ!」
「「は?」」
余りの鈍くささにシンタローとトシゾーは口を揃える。
バッカ!オメーと一緒に居たいからあの褌侍はわざわざココナッツの報告をしに来たんじゃねーか!
俺が行ったら元も子もねーだろーが!
そう言おうとしたシンタローだが、まてよ、と、思い留まる。
散々今までガンマ団の邪魔をしてきた心戦組。
しかもこの俺様にいつもいつも特に喧嘩をふっかけてくるコイツ。
シンタローは作戦という名の妄想を開始した。
リキッドは多少なりとも自分に好意を持っている。
それはこのパプワハウスで共に生活をしていて知っていた。
そんでもってアイツはリキッドにめちゃめちゃ好意を抱いている。
ともなれば。
俺がリキッドにちょっかいを出す→リキッド照れる→ストーカー侍気に入らない→リキッドに話し掛ける→相手にされない→落ち込む

いい…!

グッと握りこぶしをして目を輝かせる。
シンタローの心理描写で、ざっぱーん!と波が険しい岩山に押し寄せ飛沫が舞った。
「まー、そうだナ。沢山採って来て島の皆におすそ分けでもすっか!」
ポン!と膝を叩いてリキッドとトシゾーの方を見る。
「げ」
明らかに癒そうな顔をするトシゾーにシンタローは軽くご満悦だ。
この鬼の副局長にあてこすりをするのが今のシンタローのひそかな楽しみでもある。
ひそかではないか。実に堂々としているから。
「じゃあ朝ご飯食べたらすぐに行きます!」
そう言ってにこやかに笑うリキッドにトシゾーは顔を赤らめた。
所詮は惚れた弱みというところか。
そもそもシンタローを誘ったのは大好きなリキッド。
リキッドに嫌われたくない為、ガンマ団総帥のシンタローと肩を並べて行かなくてはならない。
それでも我慢。
武士に色恋沙汰は邪魔等と言っていたあの頃の彼とはまるで別人だ。
「チャッピー散歩に行こう。」
いつのまにか食べ終わっていたパプワがチャッピーを連れて散歩に出掛けようとしている。
「パプワ!ちゃんとごちそうさまをしろ!後、遅くならねぇうちに帰って来るんだぞ!!」
「子供扱いするな!」
喧嘩ごしの口調ではあるがパプワは笑っていて、親友とも呼べるこの二人の隙間はもうない程に縮こまっていて。
何だか少し妬けると、リキッドは思う。
それは赤の番人としてでもあり、シンタローを想う一人の男としても。
お互いに妬けるのだ。
「リキッド行こうぜ。」
トシゾーがポンと軽く背中を叩く。
「ハイッ!」
笑顔で振り向いてからシンタローを見ると、朝飯を食べていたので、はたと気付く。

俺まだ食べてない!

「あ!シンタローさん!俺も食べますッッ!」
「さっさと食え!ココナッツ沢山取るには体力が要るんだぞ!!」
「はいッッ!」
二人でパプワとチャッピーの残飯処理のような朝食を食べる。
残飯処理といっても、おかずもご飯もちゃんと自分達の分はあるのだが、それに手を付けるパプワも居る訳で、パプワよりもおかずが数品欠落している程度。
味噌汁を喉に流し込み、朝食を平らげる。
そして、デザートのヨーグルトはパプワが友達を連れてくる事があるので余分に作ってある。
「トシさんもどうですか?ヨーグルト。嫌いじゃなかったら一緒に食べませんか?」
「リキッド…!」
誘って貰った事が嬉しくて、トシゾーはほのかに瞳を潤ませる。
やはりリキッドはいい子だな、なんて改めて思ったりして。
三人で仲良く(一部抜かす)ヨーグルトをつつきあったのち、さあ、いざココナッツ採りにレッツらゴー!









「ここだ。」
「「うわぁ~…。」」
トシゾーに案内された場所。
そこには所狭しとヤシが生い茂り、トロピカルなココナッツがたわわに実っていた。
が。
シンタローとリキッドは呆然と下から上へ視線を移す。
確かに多い。これだけあれば島の連中にココナッツゼリーでも作って皆に食べさせる事ができるだろう。
しかし。

流石、というのだろうか。
裟婆斗の森が近いだけの事はあり、カラスがギャーギャーと鳴きながら飛び回っている。
しかし、いつまでも唖然としてはいられない。
二人の主婦根性は今、めらめらと燃え上がるのだ。
「おし!採るゾ!」
「はいっ!」
籠を担いで一気に走り出す。
その時、激しい地鳴りが。
バリバリバリバリ!
足元にひびがつき、自分の場所に来るまでに三人は咄嗟に後ろに跳びはねる。
「げ。」
「なんだ、ありゃ。」
地割れをした方向をみやると、女王カカオならぬ女王ヤシが自分達を威嚇している。
ゴクリ、生唾を飲む三人。
女王ヤシはブンブンと枝を手のように操りココナッツを投げ付ける。
三人共バラバラに避けた。
なんとしても今日のおやつはココナッツと決めている二人の主婦はかなり真剣そのもの。
しかし。
ただ単にリキッドと出歩きたいとだけ思っていたトシゾーだけはそこまで燃え上がってはいなかった。
だから、なのかもしれない。
油断していたわけではないのだが、女王ヤシの攻撃がトシゾーの腹にぶち当たる。
「ぐっ!」
「トシさんッッ!!」
「褌ッッ!!」
ガクンと膝をつきそうになった時、シンタローがトシゾーを支える。
ぐっと体重がシンタローの背中にのしかかる。
「リキッド!ここはテメーに任せる!ココナッツ死んでも取ってこい!」
「ええッ!?俺一人でっスか!?」
「ったりめーだ!絶対パプワ達に食わせるんだからナ!!」
そう言い走り去るシンタローを見送ってからリキッドは溜息をついた。
めの前にビュッ!と勢い良くココナッツが飛んでくる。
それを眺めてから、リキッドは戦闘体制に入った。
パリパリと電気がリキッドの体を覆うように流出する。
「元特戦隊の力見せてやるぜ。」










ひとしきり走った後で、危険なナマモノが居ないか確認した所でシンタローはトシゾーを降ろす。
腹を掴み苦しそうにしてはいるが、シンタローに睨みを効かせる事は忘れない。
「礼は言わねぇからな…。」
「ああ?別に欲しかねぇよ。」
そう言って、トシゾーの上着を掴み勢いよく広げる。
トシゾーが制止の言葉を言う前に。
腹を見遣れば少し鬱血していて、ココナッツの堅さからいって骨に異常がないか調べるが、流石鍛えてあるだけはあり別状はなかった。
ほぅ、とシンタローは安堵の溜息を漏らす。

そんなシンタローを見て、トシゾーの胸は高鳴った。
キュンキュンと胸が悲鳴を上げる。
そういえば、とトシゾーは思う。
シンタローの事を嫌いな理由は、勿論天敵ガンマ団の総帥だからという理由もあるが、ただ単にリキッドと必要以上に仲がいいから、というのが今のトシゾーの大半を閉めている。
ようはトシゾー自信にシンタローが何か危害を加えられたわけではない。
自分が露骨にシンタローを嫌うからシンタローだって露骨に自分を嫌う。
他人は自分の鏡だ、という言葉をふと思い出した。
この胸の高鳴りはリキッドに思ったそれと同じもの…いや、それ以上で。
この感情にトシゾーは焦りを感じていた。

山南の事馬鹿にできねぇぜ。

気付いてしまえばもうどうにもならない。
リキッドには思わなかった体への関係も持ちたいと、そこまで思ってしまう。
幸か不幸かシンタローはまだこの自分の気持ちに気付いてはいないだろう。
いきなりの人の心代わりなんて心が読めない限り解らないもの。
「オイ、ブラコン総帥。」
「あんだよ、褌侍。」
「俺の帯紐ん所に瓢箪があるだろ。そん中は酒が入ってる。それを口に含んで腹に吐いてくれ。…消毒だ。」
シンタローはそう言われてトシゾーの帯紐を手探りで確認する。
酒を吹き掛けるのが消毒になると言う事はシンタローも知っていた。
士官学校時代、手元に消毒がない時は代用出来るものは代用しろ、と教わった代用出来る物の一つに酒があったのだ。
「あった!」
止めてあった栓を口で開ければ、キュポン!と小気味よい音がする。
チャプリと中の酒が揺らめいた。
その酒を思いきり口の中に含んだのだが。
ブッ!
明後日の方向へ吹き出してしまった。
「どうした!」
「ゲホ、ゲホッ…」
口に手の甲を宛がい噎せるシンタロー。
実はシンタロー、こう見えても酒が余り強くない。
トシゾーが持っていた酒はアルコール度数が相当ありそうな日本酒。
焼け付くような口内の痺れに思わず吹き出したのだった。
「わ、悪ィ…」
しかし酒が弱いと思われたくないシンタローはなんでもない風を装ってトシゾーの腹に酒をかける。
ブゥッ!と水飛沫が舞い、それに伴うアルコールのむわんとした匂い。
クラクラと頭が回る。
何度かかけたシンタローだったが、既に酔っ払い状態。
瞳はウルウル潤んでいるし、顔も真っ赤に染まっている。

辛うじて保っているであろう意識も飛びそうだ。
そんなシンタローを見て、またもや胸がキュンと高鳴る。
気付いたらシンタローを押し倒していた。
シンタローは目をパチクリさせてトシゾーを見遣るのだが、トシゾーは何の前触れもなくシンタローの唇にキスを落とす。
酔った頭では到底理解できない行動にシンタローは驚きを隠せない?
なんだったのか聞こうとしたのだが、口の中を犯す舌に、鼻にかかる甘ったるい声を出すだけ。
「ン、ンンッッ…んむ、」
舌を吸われれば、ゾクン!と肌が粟立つ。
ヒクヒクとわななく体。
ぼぅ、とした頭の中見えたのは余裕のなさそうなトシゾー。
何でコイツが目の前に?確かコイツが怪我したから俺が治療してやって。
そんで、そんで、
………そんで?
スルリと剣ダコのついたゴツゴツとした指がシンタローのシャツを託し上げる。
少しだけ日に焼けていない肌が見えた。
胸の突起物をざらつく舌で舐めてやれば、女のような声を出す。
酔いのせいか羞恥心が殆どないらしく、素直な反応にトシゾーは気を良くした。
形のいい胸、無駄のない筋肉。
腹筋を舌でつつ、と舐めて下半身へ移動する。
「いて…ッッ」
シンタローが眉を潜めた。
何故ならトシゾーがズボンの上から男性自信を掴んだから。
シンタローのソコは服の上からでも解る位熱くて太くなっていて、天を仰ぐようにそそり立っていた。
「辛いか?」
そう聞けば、シンタローはコクコクと頷く。
なのでソレを開放するべくトシゾーは丁寧に下半身を脱がせていく。
ベルト代わりの紐、ズボン、そしてパンツ。
パンツを下ろせば可愛いピンクの精器が精一杯天に向かって立ち上がっていた。
それを掴んで上下に擦り上げる。
同じ男同士、どうすればキモチイイか、とか、感じる、だとかは解っている。
「あ、あ、あ、あ…」
涙を流しながら快感の渦に飲み込まれていく。
自然とシンタローは自分の指をトシゾーの腕に絡ませる。
止めて欲しい訳ではなく、縋るものがないから。
「――ッッ!」
トシゾーの手の動きが早くなり、シンタローは呆気なく己の精を吐き出した。
びくり、びくり、と鼓動するかのような精器と、飛び散った精子。
息を張り詰め欲望をソコから吐き出す。
「ッは、は…ッ」
肩で息をして、ぼやけた目でトシゾーを見る。
泣いていた為、頬には涙の後。
それを舐めとると、まだ呼吸の荒い唇にキスを落とす。
「悪ぃな…」
「へ?」
いきなり謝られてシンタローは素っ頓狂な声をあげた。
「ああああっ!!」
しかし、直ぐに謝られた意味を知る。
ゴツゴツしたトシゾーの指がシンタローの蕾に侵入してきたのだ。
酒と、イッた余韻で多少緩くなっているのだが、やはり慣らさないときつい。
ソコは男を受け入れるようには作られていないのだ。異物を吐き出すようにトシゾーの指を拒絶するシンタローの蕾。
ぬめりとした精子を指で掬い取り、ゆるゆると中へ入れてゆけば、次第にシンタローの腰も上に上がる。
「や、やだ、やめ…」
ゆらゆらと腰を揺らすのだった。
苦しいのか、熱い吐息と共に言葉を発する。
途切れ途切れの言葉がまるで哀願するように聞こえて、トシゾーの中心を熱くさせた。

俺はさっきまで恋敵だと思っていた奴を抱いている。
リキッドの事は好きだ。
それは今も変わらない。
ただ、リキッドに対する思いとシンタローに対する思いが少し違っただけ。
それは恋と愛の違いのようなニュアンスで。
微妙の違いのような完全に違うというようなそんな狭間の思い。
「あ、は、はぅ…」
焦点の定まらない瞳でうろうろと辺りを見回すシンタロー。
汗で額に張り付いた黒い髪を上に上げてやる。
もう良い頃だろうと、トシゾーは思った。
それに、自分自信これ以上理性を留めておけるほど我慢強い方ではない。
しゅるり。
布の擦れる音と共にトシゾーの袴が落ちた。
褌の紐を緩ませ全裸になる。
鍛えられた男の体がそこにあって。
一瞬息を潜めてから思い切り中を…貫いた。
「ひああああッッ!!」
ビクン!と体を海老そりに曲げる。
黒い髪がそれに伴いアーチを描いた。
ズブズブと中に侵入していくトシゾー自信を、熱い体の中でシンタローも感じ取る。
目の前がチカチカして、ゾクゾクと鳥肌が立った。
最奥まで到達すると、シンタローは快感の涙をポロポロ零した。
透明な水滴がシンタローの瞳から溢れては流れる。
トシゾーはシンタローの腰を掴み小刻みにシンタローの腰を揺らす。
「あ、あぅ…」
揺らしながらふと左肩にシンタローの指が捕まるのを見た。
無意識の行動なのだろうが、その行為がトシゾーの心をぽんわり春色にさせる。
「畜生…」
言葉とは裏腹にトシゾーの口角は斜め上に持ち上げられる。
シンタローの腰をがっちり掴むと、緩やかな動きから激しいものへと移し替えた。

「――ひッッ!」
閉じかかっていた瞳がカッ!と見開かれる。
いきなりの激しい行為にシンタローの体がついていかないようで。
中をグチグチと掻き回されているのをシンタローはただひたすらに堪えた。
トシゾーの汗がキラキラと生まれてはぱたりと落ちる。
その繰り返し。
「も、や、や…やめ…」
トシゾーの首に自分の腕を回し耳元で熱い吐息と共に掠れ切った声で哀願する。
そんなカワイイ事をされてはトシゾーが止まるはずがない。
ラストスパートと言わんばかりに激しく腰を揺らした。
「―――――ぁ!」
声にならない甲高い声を上げてシンタローは達した。
ビュクビュクととめどなくシンタロー自信からは精子が飛び出しシンタローの腹を汚す。
それとほぼ同時期にトシゾーもシンタローの中へ注入したのであった。
「あ…ふ…」
中で感じるトシゾーの熱い液体。
ドキドキと心臓が破裂してしまいそう。
けだるい体とまどろみを二人で噛み締め、ややあってシンタローが口を開いた。
「……この事はアイツにゃ黙っててやるヨ。」
「アイツ…?」
誰の事かと言いかけて、それがリキッドなんだとピンときた。

「別に黙ってなくてもいいぜ。」

よっ、と掛け声をかけてから服を着だすトシゾーに、シンタローは目を丸くした。

アイツあんなにリキッドリキッドって煩かったのにどォいう風のふきまわしだぁ?

呆然とトシゾーを見つめていると、トシゾーはいくらか顔を赤くしながらシンタローを見た。
「チッ!だから責任取るって言ってんだ!」




「はぁぁああ?!」
素っ頓狂なシンタローの疑問の声が辺り一面に響き渡る。
これから恋に発展するのかしないのか。
それは当の本人達しか知らない。














終わり。
「シーンちゃんッッ!」
ぱたぱたと笑顔で走ってくる兄グンマ。
隣にいるのは真逆で真顔の従兄弟キンタロー。
この科学者コンビが一緒に居る事はまったくもって珍しくない。
珍しいといえばグンマがアフリカ1号に乗っていないと言う事位か。
「ねーねー、シンちゃん!ハッ禁のビデオあるんだけど一緒に見ない?」
「はぁ?!」
笑顔で言う童顔の兄には似合わない台詞にシンタローは思わず驚きの声を上げる。
隣に居たキンタローは終始無表情でグンマの話を聞いていても何も言わない。
「ねー、見ないのー?」
上目使いで見上げられ、シンタローは少し考える。
ハッキンといってもAVとは限らない。
最近ではホラーや、暴力表現の激しいものも全てハッキンとなる事が多いのだ。
「どーゆーやつ。」
「んーとねぇ。」
ガサゴソと持っていた茶色い袋をまさぐる。
そして中から出てきたDVDは全部で3本。
全てAVらしいが、全てコミカルらしい。
題名が有名な映画や、ドラマをパクっている所からそう伺える。
「何故よりにもよってそーゆー奴にした。」
「だぁって!真面目なのにしたらやばくなるかもしれないでしょー?お互いに!」
グンマも男だったんだなと、シンタローは改めてそう思った。
そしてやっぱり気になるのがキンタロー。
そうゆう系のを見たらキンタローはどうなるのか、どんな顔をするのか。
シンタローはすっっごく気になった。
なので。
「じゃあ、さっさと見よーぜー!」
あっさり欲望に負け、二つ返事でOKを出したのだった。










場所はグンマのお伽話の部屋。
何故ピンクなのか。
ピンク好きはもはや直系の遺伝なのか。
コタローもいつかピンクになってしまうのだろうか、と不安になるほどのピンクとレースとお花に囲まれた部屋。
無意味にベッドに天涯までついていて、しかも、縫いぐるみがちょこちょこ置いてある。
AVを見るような部屋では断じてないだろう。
親達が入って来れないようにきちんと鍵を閉めてDVDを再生する。
「俺久しぶりだな。」
「僕も。」
「こういったDVDを見るのは初めてだ。」
「ま、何事も経験だ経験。」
「笑えるよ~?キンちゃん!」
初めてというキンタローに二人はそう薦める。
キンタローはキンタローでクソ真面目な顔をして「そうか。楽しみだな。」と、呟いた。
予告が始まり、三人は食い入るように画面を見る。
すると、金髪の女性二人が上半身を剥き出しにして、不可思議な踊りを踊り初めたり、濃厚なキスを始めたり、揚句の果てには男性と絡んだりし始めた。
シンタローはキンタローの様子が気になったのでチラ、と見てみると、キンタローは唖然としていて、グンマは見るまでもなく笑い転げていた。
しかも、何故か沢山の金髪とか黒髪とかいろんな髪色の女性がダイナマイトボディを決めつつ教師のように居て、同じ位居る男は生徒のようにその女達の話を聞いている。
出来ないと下半身に悪戯されるらしい。
全くもって理解不能である。
「ねー、シンちゃん、あれのマネっこしよーよー!」
きゃ、きゃ、と楽しそうにグンマが画面を指差す。
シンタローは断固拒否をした。
すると、グンマはぷく、と頬を膨らませる。
「だって僕、あんな雌豚じゃ勃たないもん…。」
ん?
シンタローは聞き違いかと思った。
あのグンマが雌豚とか言った?
そんな事言う奴だっけ?あいつ。
キンタローは平然としていた。
まるで当たり前のように。
何故ならグンマはシンタローの前ではぶりっ子だが、他の人間の前では至って普通なのである。
シンタローに可愛がって貰う為、あえてキャラを作っているのだった。
作っている、というより、それが普通になってしまっている所が既にやばい。
「じゃーいーもん!僕が雌豚の役やっちゃうから!」
「ああ?ふざけ…ンンー!」
ふざけんな、と言う前に、グンマがシンの舌に舌を絡めてくる。
ちゅ、ちゅ、と唾液の混ざり合う音が聞こえて、シンタローは目をきつくつぶった。
口を離すと唾液が名残惜しそうにつらつらなり、眉を潜め顔を蒸気させるシンタローを見て、グンマは笑った。
「ほらぁ、キンちゃん!ぼぉっとしてないでシンちゃん押さえてよぉ~!」
「あ?ああ。」
キンタローは訳も解らずシンタローの腕を後ろから押さえる。
くったりとしたシンタローを腕の中に納めると、グンマは又シンタローにキスをする。
「ん、んん、ふん、あ、」
苦しそうに、しかし気持ち良さそうにシンタローが鼻にかかる吐息を吐く。
キンタローは思う。
何故あれしきの破廉恥な映像で、ここまで心が高ぶれるのか。
しかし、シンタローの恥ずかしそうな顔を見て、キンタローの中心も又熱を帯びていた。
グンマはキスをしながらシンタローの鎖骨、そして乳首までをその華奢な指先でつつ、と渡る。
「ん!ンン!」
びく、とシンタローの体が跳ねた。
キンタローがしゅる、とシンタローのズボンの紐を緩め、パンツの中に手を突っ込む。
「ふ。や、あぅ!」
直に触られグンマの口を離し、シンタローは講義の声を出した。
しかし、直ぐに又グンマにキスをされるのである。
口内、乳首、性器と、1番感じる場所を弄ばれて、シンタローは抵抗する事すらできなくなってしまう。
「気持ちいいのか?シンタロー。」
耳元で囁かれ、耳たぶをペロ、と、舌先で嘗められる。
「ふ、うん!」
「シンちゃん、男の子なのに乳首も感じるのぉ~?」
あはは~と、キスを離し、脳天気な笑い声を出すグンマだが、シンタローを攻める事は止めない。
「ン、や、め、ンンッ!」
抗議の声はグンマの口内に掻き消された。
舌を絡められ、吸われ、音を立てながらいたぶられる。
キンタローも、シンタローの下半身に緩急をつけて上下にグラインドさせている。
シンタローの性器が限界を示すかのように硬くそそり立つ。
びく、びく、と体が面白いように震えていた。
「あ、駄目だよぉ~シンちゃん!一人でイッちゃうのは、なし~!」
「あ、だ、て、もぉむりぃ…」
は、は、と浅い息を口から吐きながら、とろんとした目でグンマを見つめる。
その顔を見て、グンマは、知らず知らずのうちに唇の端が上がるのを感じた。
おもむろに自分の首元からネクタイを緩め、しゅる、と、外す。
そしてシンタローの性器に縛り付けたのだった。
間抜けなアヒル柄をプリントしてあるグンマのネクタイは、直ぐにシンタローの液体により、絵柄に似つかない惨事になっていく。
「いた、やだ!取れよ!ふ、あ!」
イヤイヤと頭を振るが願いは聞き届けられそうにない。
間抜けなAVの女優が声をあらげているのが遠くで聞こえる。
今、一番聞こえるのは己の液体を弄ぶ音。
くちゅ、くちゅ、と聞こえるその音にシンタローは耳を塞ぎたくなる。
そして戒め。
イキたくてもイケないもどかしさ。
「や、や、やだぁ!グンマッ!!コレ、取ってぇ…」
取って欲しくてグンマに縋り付く。
細い体に腕を伸ばせば、温かい体温を感じる。
「グンマばかりでは不公平だろう。シンタロー。」
不意に後ろからキンタローの声が聞こえ、シンタローの尿道に爪を立てられる。
カリ、と引っかかれ、シンタローは思わず海老反りに。
喉仏がコクリと上下に動いた。
「そんな口は必要ないな。」
キンタローはそう言い放ち、ストライプの自分のネクタイをシュルリと素早く取ると、シンタローの口をそれで塞いだ。
「ンーンー!!」
「シンちゃん、ソレ、さるぐつわみたーい!」
喜んでグンマはシンタローの汗ばむ額にキスをする。
グンマの長い睫毛がふわりと、近づき、シンタローは目で止めてと訴えるが知らんぷりをされて悲しくなる。
既に体の自由が効かなくなっているので、キンタローの顔を動かす事もできない。
キンタローなら助けてくれるかも、何て淡い期待は次の瞬間跡形もなく消え去る事となる。
シンタローの体が宙に浮き、前に倒された。
視界がグラリと揺れ、離された両腕で咄嗟に自分の体を受け止める。
それでも受け止めた両腕には少し鈍い痛みが走ったが、今置かれている状況の方がシンタローにとって一大事であった。
「ふ、ンン!!ンーンー!!」
目線だけをキンタローに向けるが、それはかちあう事もなく。
すっかり力の入らなくなった体、浮いている腰。
その腰をキンタローは両腕で持ち上げて、既に己の液体でヌルヌルにはなっているソコに指を入れた。
ツプリと音がして、徐々に指を埋め込む。
「ンン!!」
「少し力を緩めろ。いいか。少し力を緩めるんだ。」
クニクニと内側から円を描くようにクルクル指を回し、辛そうに顔を歪めるシンタローの腰を優しく撫でながら、ゆっくり閉じられているソコを解きほぐす。
言われた通りシンタローは少しづつではあるが力を緩め始めた。
それを指先で感じたキンタローは、ふ、と満足そうな笑みを浮かべる。
「え~!二人だけでずるいよぉ~!!僕も!」
そう言ってグンマはシンタローの唇を覆っていたキンタローのストライプのネクタイを外す。
息がシンタローの肺に思い切り吸えるようになり、シンタローは少し咳込んだ。
咳込みが終わるのを待ってから、くい、とシンタローの顎を持ち上げれば。
屈辱と羞恥にまみれ、それでも意識を飛ばせまいとしている意思の強い瞳とかちあった。
「シンちゃん、噛まないでね~」
グンマはニッコリと可愛らしく微笑んで、その微笑みとは正反対の凶暴な己の性器をシンタローの口に無理矢理捩込むのだった。
「ふぐぅっ!!」
いきなり又始まる息苦しさと、口内に広がる苦くて塩っぱい何とも言えない味。
一言で言えばまずい。
しかし、それを舐めているという事実がシンタローを興奮させた。
「シンちゃん、アイスキャンディー舐めるみたいにペロペロ舐めるんだよぉ~」
そう言われて、シンタローは言われた通りに舐め始める。
シンタローの脳内は既にスパークしており、快感のあまり何も考えられない。
ただ言われた事をたどたどしく行動する。
シンタローの舌捌きはお世辞にも上手いとは言い難いものがあったが、そのたどたどしい舌のうねりにグンマは熱い息を吐いた。
そして、シンタローの黒い髪をさらさらと撫でる。
それが心地いいのか、うっとりとするその表情にグンマもご満悦。
そんな空気に浸かっていたのもつかの間。
「ふぐ、ンンンン!!!」
シンタローが声なき声を上げる。
原因は後ろのキンタロー。
もう大丈夫と判断したのか、シンタローの蕾の中に己の高ぶりを捩込む。
ぐぐ、と奥に進み、最奥迄到達すると、キンタローは軽い溜息を吐いた。
シンタローの中はピッチリとキンタローを加え込み、中の肉壁がキンタローを離すまいとうねる。
「ふー、ふー、」
シンタローも、鼻で息をしながら、余りの快楽に涙が一筋流れ落ちた。
「気持ちいいの?シンちゃん。」
そう質問するグンマに、シンタローは素直にコクコクと頭を振る。
「お前の中も相当気持ちいいぞ。」
「もー!キンちゃんったら先にしちゃうんだもん!終わったら次僕だからね~」
そう言うが早いか、グンマはシンタローの頭を掴み腰を前後に動かす。
その度に唾液と交わる卑猥な音がシンタローの聴覚を犯す。
唇の端は既に飲み込めなくなった自分の唾液とグンマの液体。
だらし無く垂れ流される。
そして後ろにはキンタローが腰を掴み、ガクガクと震える足の間に割って入り込み、ガンガン貫く。
熱い。
口の中も体の中も。
前からも後ろからも快楽に犯されて。
なのに中心に縛られている戒めによってイク事が出来ない。
体が壊れてしまうような過ぎた快楽にシンタローの顔が歪む。
睫毛に着いた己の涙をしばたたかせて、それでも消える事のない快楽に身を委ねるしかなく。
キンタローが中を掻き交ぜる。
ゴポゴポと白濁の液体がフトモモに流れ出た。
それに不快感を少なからず感じたが、この快楽の前では微々たるもの。
グンマも乱暴にシンタローの髪をつかむ。
「ん、シンちゃん、きもちいーよぉ…」
上目使いでグンマを見ると、普段から女顔のグンマが潤んだ瞳でシンタローを見ていて目がかちあった。
ニコ、と、笑うグンマだったが、何時ものような無邪気な笑顔ではなくて。
一人の成人男性の顔をしていた。
「シンちゃん、イキたいの?」
その質問にも質問はコクコクと頭を動かす。
「そう簡単には取れないぞ。結び目がお前の、いいか。お前の液体で取れ難くなっているんだ。」
背中から声をかけられ、その吐息が当たり、シンタローはぶるり、と体を震わせた。
「切ってあげるよ~!そのかわり、ちゃんと僕達を満足させたらねν」
悪魔のような囁きをシンタローにぶつける。
「ふ、ううん!!」
グンマとキンタローが無遠慮に律動を繰り返す。
ボロボロ涙を零しながら浅はかないやらしい体を二人に差し出す。
「ん、ん、んんっ!!」
「あ、僕もうやばいかも。」
「俺もだ。」
「あ、キンちゃんも?」
表情を表に出さないキンタローは一言そう言うと、シンタロー自身に手を延ばし、ネクタイに曝されていない場所を直に触る。
「ふ、ッッ!!」
ちょっと触っただけなのにシンタローの体はビクつき、中をきゅ、と締め付ける。
「出すぞ、いいか、シンタロー。受け止めろ。」
「ふえ?ふ、ンンンン!!」
どくり、どくり、と波打つようにシンタローの中に吐き出されるキンタローの白濁の液。
とっくに限界地点を超えているシンタローは虚ろな目で、キンタローの欲望をその中に受け入れる。
体が震える。
膝が笑う。
そんな中、全てを出し切り、キンタローはシンタローの蕾から自身を取り出す。
ズルリ、というリアルな音と、それと一緒にコポと、出てくるキンタローの液。
「じゃ、僕もシンちゃんの中で出そうっと。」
グンマはシンタローを仰向けに押し倒す。
そして、まだ自由のきかない両足を肩に担いで、猛った己をねじこむ。
さっきまで使われていたのですんなりと入っていった。
やっとキンタローという熱から解放されたのに、今度はグンマという熱がシンタローを支配する。
熱さと快楽で身をよじるが、グンマはそれを許さず、シンタローの中に出し入れを早める。
熱の絡み付く感覚だけが妙にリアルにシンタローを支配してゆく。

「シンちゃん、ちゃぁんと受け止めてね~ν」
グプ!
シンタローの奥を貫いた。
「ふ、ふぁ!や、やだ!」
「シンちゃんワンワンみたいνヨダレ垂らしちゃってカワイイν今から切るからシンちゃん動いちゃダメだよぉ~」
ヒタリと、冷たい金属の感触に、シンタローの動きビクリと止まる。

ジャキ、と、近くにあったハサミでグンマは自分のネクタイを切った。
ぱさ、と無残にも真っ二つになったネクタイがシンタローの腹の上に落ちる。
シンタローがそれに気を取られた瞬間をグンマは見逃さず、シンタローの足を思い切り開かせ、ガクガク揺らした。
「ひゃ、あ、あ、ああっ!!」
「シンちゃんッッ!!」
肌と肌がぶつかり、汗が飛ぶ。
「ん、あ、あああああ!!」
ビクリと体をわななかせたかと思うと、グンマを締め付け、シンタローは長い間精子を吐き続けた。
びゅくり、びゅくり、と白濁の液体がシンタローの腹と顔を汚す。
中の収縮運動によって、グンマもまた、シンタローの中に己の精子をぶちまけたのだった。
「シンちゃん、随分出したね~」
「顔まで飛ぶとは若いな。シンタロー。」
「ッッはー、はー、」
誰のせいだとか、恥ずかしいから何も言うなとか、今のシンタローの思いははち切れんばかりのものだったが、体のあの、情事の後のけだるさと痺れによって言い返す言葉も紡ぎ出せない。
寧ろ、喉がカラカラで声がでないのだ。
「みず…」
シンタローはそれだけ言うと、荒い息遣いだけをして、何もしゃべらなくなってしまったのだった。












「テメーらさいッッてーだ!!ばかたれ共ッッ!」
水を飲んで喉を潤したシンタローが放った第一声はそれで。
キンタローとグンマは耳を塞いだ。
AVは既に終わっており、目次の画面に飛んでいる。
「第一グンマ!何でテメーはこーんなチンケなAVでムラムラすんだ!テメー最初笑ってたじゃねーか!」
ビシ、とグンマに指を指す。
「次にキンタロー!何でテメーまで乗るんだ!フツー止めるだろ!フツー!!」
続いてキンタローに指を指す。
「だって。僕シンちゃんが欲しかったんだもん。」
「はぁ!?」
「欲しいものは全力をかける。俺達は青の一族だからな!」
やけに清々しく言い切るキンタロー。
グンマもウンウンと頷いている。
「綺麗にまとめてんじゃねーヨ…」
何だってこの一族は馬鹿しかいないのか。
その馬鹿どもに俺は…クッ!
「シンちゃんだってノリノリだったじゃん。」
「ウム。とても気持ち良さげだったぞ。」
ムーカーツークー!!
ここがグンマだけだったらシンタローは迷う事なく眼魔砲を撃っていた。
しかし、今はキンタローが居る。
力の均衡が平行な奴が居るのだからやたらに撃っても相殺されるか、グンマまで加われば、いくら弱いグンマでも少しは加勢になる。
そして返り討ちに会うのは目に見えているので。
シンタローはただ奥歯をギリギリ噛み締めるのだった。
このゴーイングマイウェーの同世代にシンタローは何時もしない我慢をさせられて。
「ねーねー!そんなにカリカリしないでもーいっかいしよ…」
ゴツン!!
カワイイ笑顔で提案した兄に、シンタローのゲンコツが頭に直撃した。
「ぶわぁああん!!シンちゃんがぶったーー!」
「その位で泣くんじゃねー!俺の方が泣きたいわい!」
「さっき散々鳴いていたじゃないか。」
キンタローじゃなければオヤジギャグかよ!とノリで殴れたかもしれないのに!
キンタローじゃ、100%真面目になので、シンタローは何処に向ければいいか分からない苛々を募らせる。
そして、落ち着く為、はぁ、と溜息をついた。
あ、頭痛くなってきたぞ。つーか、こいつらには悪かったとか、そーゆー懺悔はねーのかよ!
だが、そんな事望むだけ無駄だという事を既にシンタローは知っている。
「シンちゃん。僕ら別に遊びじゃないからね~」
「いいか、よく聞けシンタロー。責任は取る。お前の事は俺達二人共愛しているんだ。いいか。愛しているんだぞ。」
「二度言わんでよーし!」
一人常識的に、血は繋がってなくても、男同士という事とか、従兄弟とか、兄弟とかを考えるシンタローだったが、二人の余りのノーテンキさ加減にコメカミを押さえるのだった。
三人の奇妙な恋愛関係はまだ始まったばかり。









終わり




rr*
 昼間だというのに、深く暗い森。その中をリキッドとシンタローは歩いていた。二人の背には大きな竹籠がある。
 
「こんなもんでいいだろ」
「そうッすね」
 
 脚を進める度に籠の野菜やら果物が音を立てた。
 
「じゃ、帰んぞ」
「あ、ちょっと待って下さい」
 
 そう言うや否や、リキッドは傍の樹に駆け寄ると、実を二つもぎ取った。そして、その内一つをシンタローに手渡した。
 
「これ美味しいんすよ」
 
 リキッドは手の中にある果実の朱くつるつるした皮をめくりとっていく。
 
 柔らかな香りが辺りに広がって、白い果肉からは汁が滴ってリキッドの手を濡らす。リキッドはそれを噛り、飲み込んだ。
 
 それを見届けてから漸くシンタローも果物を食べ始めた。それは桃のように甘く、林檎のようにさっぱりともしていて、けれどもどの果物とも違う味がした。
 
「確かに旨いな」
「でしょ?今度これで何か作ろっかなって思ってるんす」
 
 にこにことリキッドは笑っていた。晩のおかずや家事について話をする内に二人は果実を食べきってしまう。
 「手ぇ、べたべたになっちまったな」
「大丈夫ッすよ、この近くに湖があるんです」
 
 そこでリキッドはちらりとシンタローの眼を見た。瞳は碧く、一瞬光ったようにシンタローには見えた。
 
「で、それは何処なんだ」
「すぐですよ、行きましょう」
 
 リキッドは今来た方でも帰る方でも足を向けた。シンタローもそれに倣い、ついていく。
 
 しかし、歩けども二人は湖の「み」の字すら全く見つけられない。
 横から漂ってくるあからさまな怒りのオーラにリキッドはだんだん小さく縮こまっていく。
 
「…で、何処にあんだよその湖とやらは!」
「…す…すみません…」
「ったく、使えねぇなぁ」
 
 じろりとシンタローに睨みつけられ、リキッドは小動物のように竦み上がった。
 
「あ…あの、でもこの辺だと思うんで…手分けして探しませんか?」
「何だ、俺にたかが元ヤン風情が指図すんのか?」
「……一緒に探してやって下さい…お願いします…」
 
 頭を地面に擦り付ける、リキッドの土下座にシンタローは鼻を鳴らした。
 
「で、どっちの方なんだよ」
「じゃ…シンタローさんはあっちの方をお願いします。俺はそっちに行きますんで」
 
 シンタローはそう言われると直ぐに向きを変えて、肩を怒らせて大股で歩いていってしまう。
 
 そんな後ろ姿を見つめるリキッドの眼差しは先程の様子とは異なっていて、口角が吊り上がっていた。
 
 
   今や、シンタローは何十本の蔦によって宙に吊り上げられていた。
 
「…な…なんなんだよ…一体……ッ!」
 
 しっかりと巻き付いて構成された蔦は思った以上に頑丈で、シンタローがもがいてもびくともしない。
 
 その上、眼魔砲をぶっ放そうとするものの、突然の出来事に頭は真っ白になっていて、意識を集中させるのは困難な作業となっていた。
 
 そして、そんな囚われの身のシンタローの躯に新たな蔦が触れ始めた。
  「…やめろ…ッッ!」
 
 相手は植物で聴覚なんて存在しているかもわからなかったが、そうシンタローは叫んでいた。
 
 顔や腕を撫でていく蔦にシンタローの身体には鳥肌が立っている。
 
「……っ……!」
 
 タンクトップの脇口から蔦が入ってきて、シンタローは身を固く強張らせた。
 
 そして、調べ尽くすように蔦は彼の上半身を丹念に這っていく。
 
 蔦の表面に生えそろっている細かくて柔らかな毛がシンタローの上を何時も往復していた。
 
 ――ただそれだけであるのにも関わらず、刺激に餓えたシンタローの肉体は徐々に変化していく、本人の意思に反して。
 
「ん…っ…やめろっ!」
 
 シンタローは首を振ったが、その動きさえも顔の周囲の蔦に制限された。逃れようと身をよじっても、植物はまるで鋼鉄でできているように揺るがない。
 
「………ド……」
   出来る事は、声を出す事だけだった。
 
「…リキ…ッド……ッ!」
 
 声はかすれて甘くなっていた。
 
「リキッド……ッッ…!」
 
 すっかり形を整えた胸の飾りを繊毛が愛撫をして、シンタローは思わず吐息をもらしてしまった。羞恥でシンタローは身体が更に熱くなる。
 
 そして同じく準備が整い始めているものにも、蜂が蜜に吸い寄せられるように侵略の手がのばされていた。
 
「触るな…っ…やめろ…!」
 
 布越しの動きにさえ反応してしまう身体をシンタローは呪った。
 
「…ぅ……いや…だ…っ」
 
 いっそこのまま意識を手放してしまえば、とシンタローは思ったが彼の自尊心はそれを許さず、より一層彼を苦しめた。
 
「い…や……リキ…ッ…ド…」
 
 
 
「…電磁波ッッ!!」
   焦げる臭いがしたあと、シンタローは重力を感じた。
 
 そしてその身体は地面にぶつかることなく、抱き留められた。
 
「大丈夫ッすか、シンタローさん」
 
 見上げるとそこには求める人物の顔があり、シンタローの体からは力が抜けおちた。
 
「……ん……」
 
 リキッドは子供をあやすようにシンタローの背中をゆっくりと撫でている。
 
「…くすぐってぇよ…リキッド」
   シンタローの手首は今だ拘束されたままだった。
 
「じゃあ、ここならどうすか?」
 
 手は移動すると、今度はシンタローの脇腹を撫でた。ぴくんと、シンタローの身体が震える。
 
「…っ…何すんだッ…!」
 
 リキッドはシンタローを抱え上げると、先程の場所から離れた所に乱暴に下ろした。
 
 そして、白い上衣を無理矢理めくる。
 
「おいっ! やめろっ!!」
 
 リキッドが突起を摘むように指の腹で揉むと、シンタローの身体は揺れた。
 
「もうかなりイイみたいッすね、シンタローさん」
 
 より深く覆い被さられて、シンタローは直にではないにせよリキッドの熱い欲望が身体に当たっているのに気付き、そして背中を流れる冷たい汗も感じた。
 
「やめろっ、冷静になれっ!」
「俺はずっと冷静ッすよ」
 
 リキッドは微笑んでいた。しかし、見知らぬ人間のようにシンタローの目には映った。
  「やめ……っ!」
 
 硬く結ばれていた腰紐はたやすく解かれ、リキッドはシンタローの姿を露にさせた。
 
 シンタローは固く眼を閉じる。けれど突き刺さる程の視線にすら感じてしまい、羞恥はその頬を紅く染め上げた。
 
「みるな…!」
 
 リキッドは躊躇うこともなく、それに手をのばした。十分に火照らされた身体はリキッドにとても素直だった。
 
 それでも、理性はシンタローの口を借りて拒否の言葉を繰り返した。
 
「へぇ…でもここ、こんなですよ」
 
 先端から早くも溢れ出た蜜を拭うと、リキッドは自らの親指と人差し指を重ねる。離すと、糸がひいた。
 
「やだ……やめろ…っ…」
 
 リキッドは手の動きを早める。先刻前の植物とは異なる刺激にシンタローの身体はますます促進されてしまっていた。
 
「いや……だ……っ」
 
 疼き続ける所からは摩擦が与えられる度に、濡れた音がした。
 
「や…めろ…リキッドッ…!」
 
 途端にリキッドは動きを止めた。瞼を上げると、シンタローの視界は涙でぼやけていたが自分の上にいるリキッドを見て取った。
  「…シンタローさん、そんなに俺の名前呼ぶと気持ち良くなれるんすか?」
「…ちが…う…」
「違うんすか?」
 
 リキッドはシンタローの耳元に口を寄せた。
 
「さっき植物に襲われてた時だって、すごくいやらしい顔して何回も俺の事呼んでたじゃないすか」
 
 シンタローはその黒い眼を見開いた。
 そんな様子を見て、体制を直したリキッドは再び不敵に笑った。
 
「見てた……のか…?」
「ええ」
「…最初…から…?」
「そうですよ」
 
 事もなげにそう言うと、リキッドは行為を再開した。
 
「…い……や…だ…ぁ…」
 
 動きに従って、シンタローの呼吸は荒く熱くなっていく。
 
 限界が近づき、シンタローは唇を噛んだ。それだけが彼に出来た事だった。
 
「…随分溜めてたんすね」
 
 掌に零れた白濁した液を見て、リキッドは驚いたようにそう言った。対して、シンタローは乱れた呼吸を整えようと胸を上下させていた。
 
「今度は俺の番ッすね」
   リキッドの指が対象部分の周りをなぞる。
 
「いや……や…め……」
「駄目ですよ、シンタローさん」
 
 口調は優しいのに慣らす指は強引で乱暴だった。先程の液体を潤滑油代わりにしているものの、シンタローは痛みに顔をしかめている。
 
「ぃ…や……だ…」
「シンタローさん、どうして俺が蔦に襲われなかったか教えてあげますよ」
 
 指が一本増やされ、シンタローは苦しげに呻いた。
 
「さっき、果物食べましたよね。あれの香りに反応して、植物が寄って来るんすよ」
「…っ…そこ……や……っ」
 
 リキッドは的確にその弱点を探り当て、集中的に攻め立てた。
 
「…ん…っ…」
「俺は湖でちゃんと洗ってから来たんです。だから大丈夫だったんすよ」
 
 触れられていないのに、形を取り戻したものにリキッドの瞳は冷たく光った。
 
「…なん……で…」
「そんなこと、どうでもいいじゃないすか」
 
 指が抜かれた。そして、触れるか触れないかの所に準備をした状態でリキッドは諭すようにシンタローに言った。
 
「もう誰も助けてなんかくれませんよ」
 
 
   シンタローはぐったりとして、リキッドの腕の中にいた。リキッドはその黒髪をすいている。
 
「シンタローさん」
 
 名を呼んでも返事はない。
 
 彼の人は事が終わると、ショックのためかそのまま気絶した。
 
 今はただ、涙を浮かべたまま眠っている。
 
 リキッドはシンタローの両手を縛っている蔦を外した。自由になったその二つの手首には赤く痣が残っている。
 
 そしてしっかりと握られていた手を開くと、堪えようと強く力をこめていたために爪でつけてしまった傷から血が滲んでいた。
 
 リキッドがその手をとって傷を嘗めると、果実の甘い味と鉄の苦い味が広がった。
 
 満足げに笑うと、リキッドはシンタローの唇にキスをした。
 
 『きっと、この人の心にも同じように深い傷がついたのだろう』と。
 
 『そして、その痛みがこの人の中に自分の存在を刻み込むだろう』と。
 
 そう、考えながら。
 
   END


















sa*



 夜も更け、闇ばかりが視界を支配する時間。
 静かな部屋は耳を突くほど静かで、濡れた音を余計に際だたせる。
 それが嫌で裸の身体をよじれば、胸の辺りを彷徨っていた唇が咎めるように乳首を噛んで、思わず声を上げてしまう。
 上にのしかかっている男が、少し笑んだ。
「ぅッ……ん…」
 口に含んだ突起を押しつぶすように舌で嬲られて、声が出そうになったのを唇を噛んで耐える。そうすると、呻き声にも似た音が洩れた。
 その声に満足したのか、片方だけだった愛撫が手を加えることで二つに変わる。
 舌で潰され、指で摘まれて、背中の骨の辺りを這い昇ってくる快感に、身体のふるえが止まらない。……止められない。
「アッ……! おじ、さ…ん……」
「なんだ、シンタロー。これだけで感じているのか?」
 軽く吸い上げられて悲鳴を上げると、おじさんが笑いながらそう言った。口に含んだまま喋られると、振動が伝わってきて快感が増した。
「しゃべん、ないで……っ」
「……ここを、もうこんなにしてるのに?」
「ああッ……! ん……ぁ」
「気持ちいいんだろう」
 おじさんのあいてる手が下半身に伸びて、不意打ちに声が抑えられなかった。
 ゆっくりとそこを揉まれて、その上乳首も弄られたままで、頭が混濁してくる。
「ぅ、ん……ッ、は……」
 押し殺すように息をついて、唇を噛みしめる。

 始めのうちは声は出さない。
 おじさんがそれを求めているのを知っているから。

 いつからだろう。おじさんが俺を通して他の誰かを見ていることに気付いたのは。
 隻眼の蒼い瞳は、いつだって遠くを見ている。
「んん……」
 降りてきた唇が、ヘソの辺りを舐めてくる。次に来る快楽を期待する身体は正直で、おじさんの手に握られたそれが小さく震える。
 枕に結んだままの髪を押し付けて、快感の波に耐える。
 髪を解かないのも、おじさんが望んだことだった。
 言葉に出して言われたことはないけど、髪を解いたときも、耐えるということを知らなくて始めから大きな声を上げてしまったときも、おじさんは少し嫌そうに目を眇めた。
 普通の人間ならば、わからないようなその変化。けど、俺にはわかった。
 誰よりも好きな人だったからこそ。

 だからこそ、おじさんが自分を通した誰かを見ていることを知っていても、抱かれる。
 たとえおじさんが俺を見ていなくても、明確な繋がりが欲しかった。
「感じているのか?」
 だから、演じ続ける。
 おじさんが見ている”誰か”を。
「あ…! お…じさ……」
 ”誰か”は呼んでいるだろう、おじさんの名前は呼ばない。
 それだけは、自分の自尊心を満たすために残した。残さないと、自分の心が崩れてしまうような気がした。
「……もっと感じるんだ、シンタロー……」
「あああッ……!!」
 おじさんの合図のような囁きに、神経が焼き切れる。抑えていた声が溢れ出す。
 口に含まれ、形を辿るように舐め上げられる。それまでの愛撫で勃ち上がりかけていたものに、その刺激は強すぎた。ビクビクとおじさんの口の中のものが震えて、恥ずかしさに腕で顔を覆った。
 見えなくなった視界で、おじさんの笑った気配を感じ取る。そしてその瞬間、先端を舌で強く刺激されて、身体が激しく痙攣した。
「あ、ぅああ……ッ!」
 射精した後の力の抜けた身体を、おじさんに抱き寄せられる。
 抵抗も享受もない。
 おじさんは俺の出したものを指に絡めると、もっと奥へと指を進ませる。次の行為を感じて身体が少しこわばる。
 自分のためにもおじさんのためにも、力を抜いた方がいいことはわかっているけど、こういうのはリクツじゃない。反射ってヤツだ。
 予想通りナカに入ってきたおじさんの細く長い濡れた指に痛みを感じる。この異物感はそうそう慣れるものでもなくて、無理矢理二本に増やされた指に、息が詰まった。
「辛いか、シンタロー」
 汗で額に張り付いた俺の髪を掻き上げながらおじさんが訊いてくる。
 返事もままならなくて首を縦に振るだけで答えると、ナカに入った指はそのままに、あいているおじさんのもう片方の手が、勃ち上がりきった俺のものに指を絡めた。
 激しく扱かれると、身体の強ばりが抜ける。その隙をついて、おじさんの指がもう一本中に入り込んでくる。
 俺よりも俺の身体を知っている指が、一番感じる場所を掠って、身体が悲鳴を上げる。それを聞くと、おじさんの指はいっそうそこを強くさすってきて、凄まじい快楽に頭が殴られたようにクラクラした。
 そうしているうちに、いつの間にかおじさんの指は抜けていて、代わりに熱い塊が押し付けられた。
 自分を狂わせる熱。
 灼熱のそれを求めるために、おじさんの首に腕を回してしがみつくと、一気に中に入り込んできたそれに貫かれた。
 揺すぶられ、快楽の光がフラッシュのように点滅する中、意識が沈没していく。

 白い光に呑み込まれる寸前、髪に隠されたおじさんのくぼんだ目から血の涙が見えたような気がした。
 あの見えない目で”誰か”を見ているのだろうか。

 そんなことを思いながら、今日も”誰か”を演じ続ける。



 end...


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